とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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だからミコっちゃんにアルコールを飲ませるなとアレほど




上条は鍋料理店の個室内で、料理にも酒にも手をつけずに、ただただ自分の腕時計を睨んでいた。
時刻は、23時59分55秒。今日が昨日へと、そして明日が今日へと変わる瞬間である。

「………4…3…2…1…」

秒針が12を指す5秒前、上条はカウントダウンを開始する。
今日に限りなく近い明日は、どうやら上条にとって、とても大切な日らしい。

「ゼロッ! 美琴、二十歳の誕生日おめでとー!!!」
「えへへ…ありがと♪」

上条に祝われて、照れながらも満面の笑みを浮かべるのは、
合い向かいの席に座っている上条の恋人、美琴だ。
大学2年である彼女は、本日5月2日に誕生日を迎え、ただ今を以って、めでたく成人した【おとなになった】のである。

「でもいいのか? せっかくの一生に一度の記念日なのに、こんな居酒屋みたいな店でさ」

言いながら、先に頼んでおいた美琴のカシスオレンジ
(美琴はアルコール初めてなので、軽いのを選んでおいた)を美琴に渡す上条。
ここは以前…と言っても、もう6年前になるが、上条が高校1年の時に、
当時のクラスメイト全員とクラスの担任教師(+上条の同居人1人と猫1匹)で、
大覇星祭の打ち上げを行った鍋の店だった。その時は当然ながら飲めなかったが、
ここは地ビールだけで30種類も揃えている、アルコール最高の店なのである。
しかしだからと言って、恋人同士が誕生日を祝うにはロマンチックさの欠片もなく、
店内はワイワイガヤガヤと賑わっている【うるさい】。
だが美琴は大して気にした様子もなく、カシスオレンジのグラスを持ったままこう言った。

「別にいいのよ、どこでも。
 私にとって重要なのは、どこで祝うかなんかじゃなくて、『誰と』祝うかなんだから」
「っ!」

思わずドキッとしてしまう上条。
つまり美琴にとっては、上条と一緒に居られればそれだけで幸せ、という事だった。
中学2年生の時【あのころ】と比べて、随分と素直な性格になったものである。
もっとも彼女のツンデレ姿がもう見られないというのは、少し寂しい気もするが。

「…そっか。じゃあ、まずは飲もうか」

気を取り直して、上条は自分のビールジョッキを手に取る。
何はともあれ、お酒の席でする事と言ったらまずはこれだ。

「それでは! お酒を飲める年齢になったミコっちゃんを祝して! カンパーイ!」
「カンパーイ!」

カチンと音を立てるグラスとジョッキ。こうして二人っきりの誕生日【のみかい】が始まった。
それがまさか、あのとんでもない事件の幕開けになるのだとは、この時の上条には知る由も無く。


 ◇


まさか…そうまさに、まさかである。
美琴の母、美鈴の酔っ払った姿を見た事のある上条には、ある意味では納得だが、
しかしそれにしても、まさか―――

「にゃふふふふ~…当麻当麻当麻ぁ~♡」
「まさか美琴センセーがカクテル一口飲んだだけで、
 ヘベレケになってしまうくらいお酒に弱いなんて、流石の上条さんも予想外でござんす…」

美琴は上条への好意+アルコール摂取によって顔を真っ赤にしながら、
その赤くなった顔で、まるで無邪気な子供の様に笑顔を作る。
しかし中学生の頃に比べて色んな意味で成長した体…と言うよりも肉付き(特にお胸)は、
全く子供の様でも無邪気でもなく、しかもその体で惜しげもなく抱きついてくるのだ。
THE・泥酔である。カシスオレンジはアルコール初心者でも飲める、ライトなお酒の筈なのだが。

「ちょ、ちょっと美琴さん!? お願いだから少し離れて!」

上条とて、恋人に猫なで声で擦り寄られて悪い気がする訳がない。
だが飲み会は今しがた始まったばかりであり、『そういう雰囲気』になるには早すぎる。
鍋だって、まだろくに箸をつけてもいないのに。
けれども美琴には、そんな上条の気持ちなど関係ないと言わんばかりに、
酔った事により脳のリミッターを解除して、自分の本能の赴くままに行動する。

「やぁ~だ! 離れたくないもーん!」
「い、いやでも、このままじゃご飯も食べられないじゃないですか!」
「じゃあ私が食べさせてあっげりゅ~」

そう言うと美琴は上条に抱きついたまま(本当に離れる気はないらしい)、
箸で鍋の中から肉と白菜を摘み上げる。これはアレだ。「あ~ん」してイチャイチャするコースだ。

「はい、あ~ん♡」

そしてそのまま、上条の口に入れようとした…のだが。

「熱っちゃちゃちゃちゃ!!!」

酔って手元が狂ったのか、鍋の具は上条の口内ではなく、ほっぺに直撃する。
上条はリアクション芸人のように叫びを上げた。イチャイチャとは程遠いシチュエーションである。
対して美琴は、さほど悪びれた様子もなく、「ごめーん」と謝りつつもカラカラと笑っている。

「きゃはははは、ごめんごめん! 熱いんだから、ちゃんとフーフーしなきゃよね!?」

そういう問題ではない。
が、美琴は上条にツッコミを入れる間も与えず、自分で言った通りにフーフーする。
しかし美琴も酔っているとは言え、学園都市で第三位の演算能力を持つレベル5だ。
同じ過ちを繰り返さない程度には、学習できる脳構造を保っているらしく、
再び「あ~ん」で食べさせようとはしなかった。
とは言っても、上条に鍋の具を食べさせる事を諦めた訳ではない。
美琴は箸で摘んだ肉と白菜を、自分自身の口の中に放り込むと、

「ぁん…っむ♡」
「うぶっ!!?」

そのまま上条にキスをした。
器用に舌と舌を絡ませて、上条の口内に唾液と共に鍋の具が流し込まれる。

「っぷぁ! どう? 美味し?」
「……………」

醤油ベースのキスをされた上条は、租借しながら美琴を軽く睨む。
正直、抱きつかれただけでもヤバかったのに、そんなエロいキスをされてしまったら、
何と言うかもうムラムラしてしまうのだ。血液が下半身に集まってくるのが分かるくらいに。
しかし忘れてはいけない。ここはお店の中なのだ。
個室とは言っても薄い壁の向こうには他の客もいるし、
その壁ですら上は隙間があいているので、喋り声もダダ漏れなのである。
ここがもしホテルや寮の自室だったのなら、上条も躊躇する事なくルパンダイブしているのだが、
今そんな事をしたら、不幸体質である上条は間違いなく面倒な事になる。
なので溢れ出る性欲の捌け口が無く、ただただ我慢するしかない。
上条は「ゴホン!」とわざとらしく咳払いをして、美琴を諭す。


「ゴホン! あ、あーよろしいですか美琴さん?
 とりあえずお料理を食べてしまいましょう。お店の迷惑にもなりますから。
 ……後で思いっきり甘えさせてやるから、今はまず―――って、おうわっ!!?」

上条さんお得意のお説教の最中だったが、美琴がそれをキャンセルさせた。
上条の我慢【くろう】など知ったこっちゃないと嘲笑うかのように、
美琴は新たなる攻めで上条を追い込むのである。

「あ~…何かあっついわね~」

気付けば美琴は、むかし学園都市を(一部で)騒がせた都市伝説「脱ぎ女」の如く、
下着姿となっていた。鍋料理、アルコール、酔い、ハグ、ベロチュー口移し…
体温を上昇させる条件は、揃いすぎるくらいに揃っていたのである。
しかもその下着たるや、中学生の頃の美琴からは想像出来ないくらいに大人っぽい。
何と、まさかの上下揃えた黒のレースである。その上、薄っすらと透けている。
ここでゲコ太パンツとかお披露目してくれたのなら、非常にガッカリする反面、
性欲も激減出来たのだが、『不幸』な事にそうはならなかった。
このムチムチな体にフィットしたエロすぎる下着姿に、
上条はバキバキのガチガチのギンギン(何が?)になってしまう。
これで何も手を出す事が出来ないなんて、生殺しにも程がある。

「ちょっ!? み、みみ、みこ、美琴っ!!?」
「んふっ♡ いつでも当麻に『されてもいいように』、最近は毎日こういうの着けてるの。
 ねぇ、どう…? 似合う…?」

似合うか似合わないかと問われれば、似合いすぎていて困っているくらいである。
美琴は酔い始めのキャッキャウフフなイチャイチャモードから、
ジットリネットリなヌレヌレモードに移行している。完全にスイッチが入ってしまったようだ。
だが何度も説明したように、お店の中で『事を済ませる』訳にはいかない。
上条は慌てて美琴を振り切り、まずはこのゼロ距離状態から脱却しようと試みる。
しかしその瞬間、美琴が上条の左を掴んだ。
美琴も上条と出会ってから6年弱になる。いい加減、上条の弱点くらい熟知している。
能力が通用しないのは右手のみ。つまり、左手からならば。

「おがががががががっ!!?」
「ダメ…逃がしてなんか、あげないから」

美琴は上条の左手を掴んだまま、弱めのスタンガン程度の電気を流す。
その目的は、上条を痺れさせて動きを封じる為だ。

「み…美琴…! これ以上は、ほ、本当にダメだ!」
「ヤダ…もう、我慢なんて出来ないもん……
 ほら、心臓だってこんなにドキドキしちゃってるのよ…?」
「ちょっ!!?」

掴んだままの上条の左手を、今度はグッと引き寄せて、美琴はそのまま自分の左胸を触らせる。
ブラ越しとは言え、そのボリュームは布切れ一枚ではガード出来ない程の弾力と柔らかさで、
ぶっちゃけ「こんなにドキドキしちゃってる」とか言われても、
それ以上にこっちがドキドキしてしまっているので、どれだけなのか分かる訳がない。
上条は一瞬、「もうこのままヤっちゃってもいいかな」なんて頭に過ぎったが、しかし。

「いやいやいやいやダメだ!!! やっぱダメだ、どう考えても!!!
 み、美琴! まずは一旦落ち着こう、な!? ほら、せっかくの料理が冷めちまうしさ!」

この状況下でもまだ理性的な上条に少しムッとしながら、
それでも上条をその気にさせようと、トドメを刺しにくる美琴。
美琴の右手が、上条のズボンのファスナーに伸びてくる。

「っっっっっ!!!!?!??!?!?!??!!!?
 うおおおおおーい美琴、いや美琴様!!! そ、それだけはマジでヤバイって!!!
 ちょ、ねぇ!!! 俺の話聞いてる!!? お願いだから止めてって!!!」

すると美琴は、クスッと艶っぽい笑みを見せて一言。

「ヤダ、するもん…♡」

そしてそのままファスナーを下ろし、そして―――


 ◇


一方その頃、上に隙間があいている薄い壁で隔てた隣の個室では、
二人の風紀委員が、本日の治安維持活動が無事終了した事を祝して、打ち上げをしていた。

「ではまずは、何かお飲み物でも注文しましょうか」
「そうですわね。とは言っても、わたくしも貴方もまだ未成年ですので、お酒はNGですけれども」
「あはは、分かってますよ~。それにしても、
 まさか大学生になってもまた風紀委員でコンビを組む事になるなんて思いませんでしたね」
「腐れ縁という奴ですわね。今日だって本当はお姉様のお誕生日だと言うのに、
 こうして貴方と二人きりで鍋を突かなくてはなりませんし…」
「まぁまぁ。御坂さんからメールで、
 『外せない用事があるから、誕生日とか祝わなくてもいい』って送られてきたんですから、
 潔く諦めてくださいよ。それにどちらにしても、私達は風紀委員のお仕事で忙しくて、
 誕生日パーティーを準備する時間なんてなかったんですから」
「それはそうですけども……あら?」
「…? どうかいたしましたか?」
「いえ…お隣の部屋から、妙な物音とお声が聞こえてきたものですから…」
「もう! お隣のお客さんの会話を盗み聞きするなんて、あまりいい趣味じゃありませんよ!?」
「そうなのですが…けれどもこの声、もの凄く聞き覚えがあるような気がいたしまして…
 しかもまるで、酔った女性が男性を押し倒して、
 その男性のファスナーを下ろそうとしているかのような物音まで聞こえておりますわよ…?」
「ぬっふぇっ!!? そ、それは流石に気のせいなんじゃないですか!?
 お店の中で、そ、その…じょ、じょじょじょ情事だなんていくら何でも…!」
「わたくしもそうだとは思いますが、しかし世の中には色んな性癖をお持ちの方がおりますの。
 万が一の事があったら……」
「貴方もその『色んな性癖の持ち主』の中のお一人ですけどね!?」
「ああ、もう! 今はそんな漫才している場合ではないのかも知れませんわよ!?
 念の為、隣の部屋の様子を見てきますの! 初春も一応、本部に連絡する準備を!」
「あっ、ちょ!? 白井さん!」

さぁ、地獄の始まりだ。










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