とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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大覇星祭 2



Sep.21_AM06:27

数日前とある事件に巻き込まれて絶対安静である白井黒子は先日凄まじいまでの回復を見せ既に常盤台寮に戻っていた。

そんな白井は愛するお姉様である御坂美琴の寝顔を見て悶えている。

「ウうぇっへっへ、久しぶりの純粋無垢なお姉様の寝顔。そそられますわ」

などと不穏な言葉を発しながら。

「昨日の夜は不覚にも病み上がりですぐ寝てしまいましたが、寝込みを襲う為に早く起きれてよかったですの」

うへうへへへと変態じみた笑いを上げながら美琴のそばへ忍び寄る白井。
美琴のベッドまで目の前に来たところで何やら寝言が聞こえてきた。

「…えへへ、約束だからねー…」

ぴたっと止まる。約束?と疑問に思う白井。
最近はずっと入院生活で約束など交わした覚えがない。
夢なので気にしないというのも手だが白井にも殆ど見せないその嬉しそうな顔にドス黒い感情が湧く。

(誰とどんな約束しているんですのー!?お姉様何故そんなにも嬉しそうに―ッ!)

白井は女の子であり美琴も女の子であるのだが生々しい女性特有の事情があるのだ。
あえてここでは言わないでおく。

つまるところその嬉しそうな笑顔を向けている相手が男性であろうと女性であろうと白井にとっては大問題だった。

「…あんた意外とダンス踊れるのねー…うにゅ」

(あいつか、あいつか!!一昨日の借り物競走のみならず夢でお姉様とダンスまで…!!殺す絶対殺す!!)

そんないつも通りの朝を迎えて、大覇星祭三日目が始まる。


Sep.21_AM09:31


美琴は常盤台指定の体操着を着て通りを歩いていた。

「今朝の黒子変だったわねぇ、起きてからずっとあの体勢だったけど」

今朝起きたら何故かベッドの上で正座している黒子がおり、その目に光がなく、何やら良く分からない事をぶつぶつ呟いていた。
経緯としては美琴が起きるまでずっと楽しそうに寝言を呟いていて、聞いてるうちに精神崩壊を起こしたというだけである。

「何かまた怪しいクスリかなんか買って使ったんじゃないでしょうね…」

想像して寒気が走ったのでとりあえずは気にしない事にした。

「とりあえず10時までに競技場向かわないと、今日はあいつと会えるかな…」

昨日の別れた時を思い出す。
今まであんな挨拶交わして別れた事無かったからか昨日は何故か気になって中々寝付けなかった。
あの笑顔がずっと脳裏に浮かんでは真っ赤にして顔を横に振る。

「ゆ、油断したからどきっとしただけよあんな…」

そしてまた思い浮かべては真っ赤になる。

「だ、だめ考えちゃだめ。とりあえず競技の事だけ考えよう」

誰に言うでもなく一人ぶつぶつ呟いて競技場に向かって行った。




Sep.21_AM9:42


「ふわああ…はぁ。眠い…」

美琴が考えている事など露知らず大欠伸をして体操着姿の上条当麻は先程までの出来事を思い出し呟く。

「インデックスがいないしのびのび出来ると思ったのに。習慣って怖いな」

インデックスはこの大覇星祭の間小萌先生の家に泊まっていていないのだが
朝ちょっとした物音で飛び上がり『ごめんなさい!すぐ朝飯作るから噛み付かないでーッ!?』と飛び起きた事態である。

「ベッドでゆったり眠れるかと思ったのに全然寝付けないから結局バスタブだし、俺の唯一のひとときはどこへ…」

はぁと朝から盛大な溜息をつく上条だった。

「午前はうちの高校が出る競技はっと、女子の綱取りだけか。とりあえず午前は出る競技ないし応援行かないとな」

軽くつま先でトントンと靴を鳴らして履くと綱取りが行われるであろう競技場に向かっていった。


Sep.21_AM10:11

競技場に入ると凄かった。何が凄いかってもう色々と。
中継の為のカメラも先日騎馬戦の数倍に、観客席も空いてる席が殆ど見当たらない位である。
クラス関係者として応援席は別なので空席を確認する必要はないのだが、騎馬戦と段違いの観客数に上条は驚く。

「これがエリート校と一般校の違いか。っとそろそろ始まりそうだしさっさといかねーと」

と階段を登ろうとしたところ、上から女の子と飲み物が降ってきた。

(階段から踏み外したんだろうなー。朝なんもなかったと思ったらこれか)

などと不自然な位冷静な自分にびっくりしながらもこの後起こる事を考え

(不幸だ…)

そう思った時目の前に落ちてきた女の子を受け止め、何故か蓋の空いたドリンクボトルも頭で受け止めた。

「っつ、大丈夫か?」

と飲み物をもろに頭からかぶった上条はびしょびしょになりながら受け止めた女の子に話しかける。

(あれ?この体操服何処かで見たような?)

「ご、ごめんなさい!」

と物凄いはやさで女の子は立ち上がった。

「いや、気にすんな。大丈夫そうで良かった」

その女の子は持ってた飲み物を上条に全部ぶっかけたという事に気付いたのか。

「す、すみません!飲み物がかかってしまって…変えのお洋服とかありますか?」

どうみても手ぶらなのだが受け止めて貰った事と助けてもらった人に飲み物をかけてしまったという焦りからかなのか抜けているからなのかそんな事を聞いてくる。

「いや、かかったのは幸いにもスポーツドリンクで無色だしすぐ乾くから」
(髪と顔は軽く水で流せばいいか。服の下は乾いても多少ベタつくだろうけど後で時間ある時に着替えに戻れば大丈夫かな)

などと考えていたら

「い、いけません。いくらすぐ乾くからといってもびしょびしょじゃ風邪を引いてしまいます!すぐ乾かしますのでこちらに」

と答えも聞かずに腕を引っ張られる。
身体能力系なのか細腕なのに上条をズルズルと難なく引きずっていく。

(この相手の都合を考慮しないで強引に物事を進めていく感じ誰かを彷彿させるなぁ)

とまるで他人事みたいに考えながら引きずられている上条。

(それにしても…このまま応援遅れるかいけなかったら間違いなく死ぬ…)

というのも一昨日の件と先日応援サボったのもあってその夜に大覇星祭運営委員である吹寄制理から。

『貴様、明日の応援来なかったらどうなるかわかっているわね?』

と死の宣告(ラブコール)がかかったからである。

(不幸だ…もはや死という道しか残されてないなんて…)



「あ、すみませんここの控室で待っていただけますか?」

とやはり答えを聞かずに控室に入れられる。
そこには常盤台のお嬢様方と何故こんなところにいるんだという視線を向けている美琴がいた。

「アンタ…朝っぱらから何堂々と覗きに来てるのかしら」
「え!?ちょ、ちょっと待て勝手に連れてこられて上条さんとしても何が何だかさっぱりわからないのですが!?」

と言い訳した所で無意味である。常盤台のお嬢様方も明らかに不審な目でこちらを見ていていつ攻撃しかけてもおかしくない状況。

(どうして…どうしてこうなった…)

考えても答えは出てくるはずもない。上条は不幸な人間なのだ。

(そ、そうだ!さっき連れてきた子に弁明を!―ッ!?いない!?)

後ろを見ても先程連れてきた女の子はおらず。無情にも閉められたドアだけだった。
後ろを向いていても殺気がわかる。だらだらと全身から汗が噴き出る、暑さからではない恐怖によるものだ。

「あ、あの。理由を聞いてもらってもよろしいでしょうか?あ、だめですかそうですよね」
(終わった。肉体的にも社会的にも。)

そう思ったところで一斉に能力が飛んできた。


Sep.21_AM10:19


常盤台はスタンバイに入ったからなのか控室から皆出て行った。ボロボロの上条当麻であるだろう物体を置いて。
上条であった物体は気がついたのか一言ぼそりと呟く。

「不幸だ…」
「アンタね覗いておいて不幸だはないんじゃないの?」
「ヒッ、ごめんなさいごめんなさい!!生きていてごめんなさい!!覗きなんてした下賤な人間めで御座います。どうか、どうか電撃だけはご勘弁ヲオオオオオ」
「はぁ…まぁいいわよ。そこの子から事情聞いたし」
「あ、あの。助けてもらったのに今度はこんな事になってしまってごめんなさい…」

と、自分のせいでこうなったと思って責任を感じているのかぽろっと目から涙が落ちる。

「い、いや。こういうのは日常茶飯事だし気にすんなって。俺の身を案じて連れてきてくれたんだろ?ありがとな」

女の子の頭にぽんっと手を乗せる。

(女の子の涙もあれだけどそれ以上に御坂の視線が痛い!っていうか怖い!)

ジト目で見られているのだが、泣かせた事というより女の子を誑し込んでる(ように見える)事が原因なのだが上条は気づかない。

「あ、あの。わ、私応援に行ってきます!」

頭をなでられたからか顔を真っ赤に染めて女の子は走り出していった。

「アンタねぇ…見境なく女の子に手出すのやめたら?」
「な、何で御坂さんは怒ってらっしゃるのでせうか。それにその発言は誤解だと思うんですが!?」

バチバチイと電撃の炸裂音が響く。

(まずい。これはまずい。何かこいつの意識をそらす手を考えろ上条当麻!)

「ま、待て。お前そろそろ競技出番じゃないのか?流石にそろそろ行った方がいいと思うぞーなんて思ったり。お前の活躍してるところも見たいしなーとかも思ったりしてるのですよ」
(我ながら全くもって電撃を止める理由にならない発言を叩きだした上条脳をたたき壊してやりたい)

とか思っていたのだが。

「え!?あ、アンタがそこまで言うなら頑張らなくもないけど。で、でも競技に勝つためなんだからね!」

と予想外の答えが返ってきた。

(あ、あれ?上手くいった?よくわかんないけど何とかなりそうだ)
「お、おう。御坂さんの応援しなきゃいけないし俺もそろそろ応援席イカナイトー」

緊張のあまり最後の方はかなりカタコトになってしまっている。

「じゃ、じゃあ私も行くわね」

そう言ってお互いギクシャクしながら別れた。
上条は生き延びられるかもしれないという緊張で美琴は応援してくれるという緊張であるからなのだが。



控室を出て応援席に向かっている間生き延びられた事で安堵するものの

「あれ?そういえば俺なんで常盤台の控室に行ったんだっけ?」

不幸の連続から当初の目的を忘れていた上条だった。


Sep.21_AM10:34

何とか生き延びた上条はこっそり応援席に着いた。
どうやら吹寄は次の作戦の話し合いに必死のようでどうやら遅れてきた事に気づいてなさそうだ。

「とりあえず俺の命はなんとかなった」
「にゃー。カミやん吹寄が呼んでたぜい」
「なんとかならなかった俺の命」

何の事かわからないからか?を浮かべている土御門。上条も目の前の現実に打ちひしがれていたが競技場から聞こえる騒音に二人はそちらを向いた。
どうやら常盤台の競技中らしい。

「すげ。棒倒しの時も凄かったけどこれは凄いってレベルじゃねーな…」
「制限の意味ない気がするにゃー…」

凄いとしか言いようがなかった。高速で迫る能力者を一瞬で封じ、相手の発火能力、風力能力等を全て倍返し、そして確実に勝利を拾っていく様はとてもお嬢様には見えなかった。

(あれは御坂かな?何で勝ってんのにつまらなそうな顔してんだ?)

とじーっと観察していたら目が合った。
一回瞬きしたと思ったら真っ赤になってぷいっとそっぽ向いてしまう。

「あいつまだ怒ってんのかなー。またあとでビリビリ制裁きそうだ…」

やだなーと思っていると開始前のアナウンスが入る。どうやら吹寄達が出番のようだ。
吹寄を中心に女子が半円と作って囲む、指揮官を相手側からの攻撃から守る為だろう。

(てか吹寄の場合指揮取るより前出て敵を蹴散らした方が強いんじゃないのか?)

と失礼な事を考えている最中にどうやら始まったようだ。


Sep.21_AM11:23

吹寄達は八位だった。
能力差を埋めるための作戦が上手くいき勝ち進んでいったところで常盤台と勝負になる。
奇策で相手を攻めていたものの相手に指揮官の存在がばれ念話を妨害されて統率が乱されたのが敗因だった。
やはりというべきか学園都市五本指が一位から五位を占めているが毎回の事であるので珍しくもない。
八位とはいえ能力差というハンデがある中善戦した方だろう。

応援も終わり午後も競技があるため一度別れてはやめに昼飯を食べる事にした上条は両親を探す。
皆と別れる前吹寄に思いっきり頭突きされたのはまた別のお話。

「おっかしいな。確かこのあたりで待ち合わせしたはずなんだけど」

先程頭突きされた所をさすりながら周りを見渡すが先日の管制がなくなったのもあって人が多くて見つける事が出来ない。

「はやめに食べられる場所確保したいんだけどなぁ」

どうしようかなぁと考えていると後ろから声がかかった。

「おー当麻ここにいたか」
「父さん?母さんはどうしたんだよ」
「母さんならちょっと約束をしていてね、先に待ってもらっているんだよ」

約束ってなんだよ?と聞くも待っているからはやく行こうという返事しか返ってこなかった。


Sep.21_AM11:25

美琴は競技が終わった後母親である御坂美鈴と待ち合わせていた。

「ところで」
「なーに美琴ちゃん。気になるあの馬鹿の事の相談?」
「ち、ちちち違うわよ!だから何であの馬鹿を気にしなくちゃいけないわけ!?そうじゃなくって」

美琴は美鈴の隣にいるお嬢様然の上条の母親である詩菜を見やる。
それを見て美琴が何を聞こうとしたのか理解した美鈴は

「昨日上条さんとお話しにいって息合っちゃってねー。それで時間に余裕があれば今後一緒に食べようって話になっちゃったわけなのよん♪」
「わけなのよん♪じゃないわよ!昨日いなかったのってそんな理由だったの?」
「えー。だから美琴ちゃんの為に仲良くなったんじゃないー」

と美鈴は美琴の耳でこそっと喋りかける

「(ここで上条さんと仲良くなっておけば後々美琴ちゃんの気になる気になる『あの馬鹿』と何かあってもスムーズに事が進むじゃない?娘のためを思っての事よー)」
「な、ななななな何かあるって何もあるわけないじゃない!!」

いきなり真っ赤になって大声を出したため隣にいる詩菜は頬に手をあて?を浮かべている。

「詩菜さん。そちらは合流出来そうですか?」
「ええ。今しがた刀夜さんが当麻さんと合流したみたいです」
「じゃあ席が埋まる前に早めに適当な所行きましょう。美琴ちゃんも早く合流したいみたいですし」

と美鈴は嫌らしい笑みを浮かべて美琴を見る。

「だ、黙れバカ母!違うっていってんでしょうが!!」

もはや羞恥で完全に顔を真っ赤にしてバチバチと帯電している。

「あらあら。当麻さんったらいてもいなくても女の子を困らせるなんてまるでどこかの誰かさんみたい」

その詩菜の一言で更に赤みが増す美琴だった。


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