中国野菜

登録日:2025/06/30 Mon 19:32:49
更新日:2025/07/01 Tue 01:34:07NEW!
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概要

元来、我が国で栽培される野菜や果物、穀物などの作物において、中国原産のものや、中国経由で渡来したものは多い。
一般に「中国野菜」と呼んでいるものは日中国交正常化(1972年)以降から食品専門商社の手により、中国から日本への輸入が始まり広まっていった野菜の総称である。
ただし、この一般的な「中国野菜」の定義には当てはまらないが、中国料理において欠かせない食材となっている野菜も存在する。
よって、本稿ではそうしたものも「中国野菜」として紹介する。「『中国野菜』ア・ラ・カルト」の項目にて特徴や食べ方を解説する。
名前の読みや漢字での表記はウィキペディア日本語版のそれぞれの野菜の該当ページや講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』(2013)、星川清親著『食用植物図説』(1970)、小学館編『FOOD'SFOOD 新版 食材図典』を参考にした。




「中国野菜」ア・ラ・カルト

青蘿蔔(チンルオボ)

我が国において「ビタミン大根」「(江都)青長大根」とよばれるダイコン(アブラナ科ダイコン属)の一種で、根(胚軸)は全長15㎝内外となり、直径は7㎝程度である。根の半分が地上に出て、日に当たることで緑色になる。この緑色は、内部にも及んでいる。
生のまま酢の物やサラダにしたり、我が国のダイコンのように漬物、煮物、切り干し大根にする。


紅心美(ホンシンメイ)

こちらもまたダイコンの一種で、わが国では「紅芯大根」という名称で呼ばれる。
いわゆる「丸大根」とよばれるもので、表面はうっすらと黄緑がかっているが、断面は鮮やかなピンク色である。
この鮮やかなピンク色は加熱すると色落ちしてしまい、見た目があまりよくない。サラダや浅漬け、大根おろしのように加熱しない調理法であると、内部のピンク色が映える。


大紅袍(ダーホンパオ)

我が国では「赤大根」の通称で知られるダイコンの一品種で、前述の青蘿蔔に似た形状であるが、そちらよりはややずんぐりむっくりしていて、表皮は鮮やかな紅色である。
本種の根は水分が多いので、漬物やサラダなどに向く。特に酢漬けにすると、表面の紅色が全体に回って真っ赤な漬物となる。

青梗菜(チンゴンツァイ)

我が国では普通「チンゲンサイ」と読まれるアブラナ科アブラナ属の青菜で、我が国で「中国野菜」と聞くと真っ先に思い浮かべられる野菜だが、今ではすっかりおなじみの青菜となった。
原産地の中国では「小白菜」、すなわち結球しない白菜の一品種とされる。複数の太い葉柄が根元でまとまり、上部が開くのが特徴である。葉柄も葉も黄緑色なので、「青」の字があてられているのである。
味は淡泊でアクがなく、炒め物、おひたし、煮物やスープの具材に使われる。中華風の味付けもよいが、近年は洋風の味付けをすることもある。


広東白菜(グァンドンパイツァイ)

我が国では「パクチョイ」という名称で知られる青菜の一種である。この名称は英語圏でのもので、広東語を英語読みしたのが我が国において広く知られているという状況である。
前述のチンゲンサイと同じく「小白菜」の一種とされるだけあって、形質はよく似ている。ただし、葉は濃い緑色で、葉柄は純白である。
それ故、原産地では「白梗菜(パイゴンツァイ)」と呼ぶ。
利用法は青梗菜と同じように炒め物やおひたし、煮物やスープの具材に用いる。


塌菜(タアツァイ)

前者二者同様、「小白菜」の一種とされる青菜である。わが国では2月が旬であることから「如月菜(きさらぎな)」と呼ばれる。
葉は深緑色で、ちりめん状のしわと厚みがある。冬になると地面を這うように葉を広げるのだが、これが上から押しつぶしたような形状になることから「押しつぶす」という意味の「塌」という字を使ってこのように呼ばれる。
これは寒さの厳しい冬をやり過ごすための手段で、気温が上がってくると株が立ち上がる。
炒め物、煮物、スープなどにする。


油菜心(ヨウツァイシン)

中国版の「菜の花」というべき野菜(アブラナ科アブラナ属)で、単に「菜心(ツァイシン)」と呼ぶこともある。
本種は蕾と柔らかい葉先を食用にする点ではわが国の「菜の花」に似ているが、「菜の花」よりも早く蕾が収穫できることがウリである。また、中国漢方が原産なので高温にも耐えることができ、夏まで利用される。
油いためや煮物、あんかけやスープの具材とする。


芥藍(ジェラン)

アブラナ科アブラナ属の青菜で、系統上はキャベツやブロッコリーに近い品種である。つぼみのついた太い茎と葉を利用するので、「チャイニーズブロッコリー」や「チャイニーズケール」という英語圏での名称でも知られている。
我が国では「カイラン」という名称で知られているが、これは前述の広東白菜同様、広東語読みが英語読みに変化して我が国に入ってきたためである。
カロテン、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜で、炒め物や煮物にして食べる。


搾菜(ヂャ―ツァイ)

いわゆる「ザーサイ」。カラシナ(アブラナ科アブラナ属)の変種で、葉柄の基部が瘤のように膨らんで多肉質になったものである。
この部分はコリコリとした食感があり、生で食べるほか、この部分をトウガラシや塩とともに付け込み、漬け物にして食べる。このザーサイは塩抜きしたのち、単体でご飯のおかずや薬味とするほか、油でいためてスープやギョウザ、中華まんの具材にする。
我が国で流通するものは日本人向けに辛みが抑えられたもので、スーパーマーケットで売られているものはたいていこちらのタイプだが、中華料理向け食材専門店に行くと、本格的な見た目と風味の搾菜を購入することができる。


雪里蕻(セリフォン)

前述の搾菜同様、カラシナの一品種である。名前に「雪」という字が入っていることから、雪の降り積もる寒い中でもよく育ち、しかも霜に当たれば当たるほどうまみと甘味が出てくる青菜である。
葉はへら型で、縁にまばらな鋸歯がある。生ではピリッとした風味があるが、加熱すると甘みが出てくる。炒め物や煮物、漬け物にして食べる。


大芥菜(ダージェツァイ)

我が国では「大葉からし菜」という名称で知られ、カラシナの変種である「高菜(たかな)」の一種である。四川省、福建省、広東省で古くから栽培されてきた品種で、茎や葉の幅が広く、株全体の大きさが30㎝を超えることも珍しくはない。
普通塩漬けや浅漬けにするほか、スープや炒め物にすることもある。


紅菜苔(ホンツァイタイ)

中国湖北省が原産のアブラナの一種で、茎が赤紫色をした品種である。原産地では唐王朝の頃から栽培されてきたと伝わっている。
花が1個~3個開いた株を摘み取り、油いためや茹でておひたしやスープの具材として食す。花は4枚の黄色い十字型の花弁からなり、赤紫色の茎と相まって良いコントラストとなっている。
新野菜として知られる「オータム・ポエム」という野菜は本種と油菜心が交配されてできた野菜で、こちらはごく少数が農産物直売所でまれに出回るほか、たいていは家庭菜園用で、まだそれほど普及を見ていない。


荠菜(ジィツァイ)(薺菜)

アブラナ科ナズナ属の多年草・ナズナの中国名である。わが国では「春の七草」の一つとしてよく知られており、刻んで七草粥とするほか、野草として炒め物や汁の実にして食される。
そんなナズナだが、中国では人気な青菜として栽培化されている。我が国の道端に生えているナズナを二回り以上大きくしたような見た目となり、葉の色も濃くなる。
新年を祝う際にお粥に混ぜて食べる(七草粥の風習は中国発祥である)ほか、水餃子の具材とする。


莧菜(インチョイ)

ヒユ科ヒユ属の多年草で、ハゲイトウ(葉鶏頭)という葉を観賞用にする植物のうち、葉が食用になる系統である。わが国には江戸時代には渡来し、観賞用のハゲイトウとともに、食用のヒユナも栽培されてきたようで、江戸時代後期の薩摩藩主・島津重豪が臣下の曽槃・白尾国柱らに編纂させた図入りの農書『成形図説』にはヒユナの図がみられる。
このハゲイトウの食用品種はほかに、種実を穀物として食用にするセンニンコク(仙人穀、ラテン語属名のカタカナ読みである「アマランサス」という名称でも有名である)が知られている。
葉はくすんだ緑色で、表面には紫色の線状の模様が入る。独特のえぐ味と濃い風味があり、茹でておひたしや煮物とする。


芹菜(チンツァイ)

セリ科オランダミツバ属の一年草で、西洋野菜のセロリの原種に最も近い品種とされる。セロリよりも病気に強いので、家庭菜園でセロリを栽培する際に、こちらの栽培に慣れてからセロリの栽培を始めることもある。西洋料理でも「スープセロリ」という名称で知られており、大型のスーパーマーケットやデパートで見かけることがある。
若い茎を炒め物、和え物にしたり、生の葉をスープに入れたりする。


香菜(シャンツァイ)

地中海沿岸が原産のセリ科コエンドロ属の多年草・コリアンダーの中国での呼び名である。タイ語由来のパクチーとしても有名。
葉は切れ込みの深い羽状複葉で、特有のカメムシのような香りがある。この香りには、鎮静作用や血圧降下作用をもたらす成分が含まれているという。
生の葉を刻み、肉料理や魚料理の薬味とするほか、スープの香りづけとして用いる。

蕹菜(ウォンツァイ)(空心菜)

ヒルガオ科サツマイモ属の一年草で、青菜の少なくなる夏に多く利用される品種である。中国南部や台湾、東南アジアなどの年間平均気温の高い地域で栽培される。
サツマイモに近い品種であるが、地下に芋は生成しない。茎が中空なので、「空心菜」の名称で呼ばれることもある。また、気温などの条件がそろえば夏の終わりごろにアサガオに似た花を咲かせることもあるので、「朝顔菜」という名称で呼ばれることもある。
若い茎葉はやわらかくてクセがなく、「ホウレンソウに似た風味」と評される。炒め物、おひたし、天ぷらなどさまざまに調理される。

豆苗(ドウミャオ)

マメ科エンドウ属の多年草・エンドウの若い蔓先またはもやし(・・・)である。
旬は春だが、水耕栽培の技術が発展した現在は通年流通する。見た目が竜の髭を思わせるので、「龍髭菜」と呼ばれることもある。炒め物やおひたし、スープの具材にして食べる。
育ちすぎると硬くなって味が落ちるが、この「豆苗」を多く収穫すると、本来豆を収穫するために栽培するエンドウの成長が止まってしまう。それを懸念して、近年は豆苗の収穫専用のエンドウも作出されている。


冬瓜(ドウグヮ)節瓜(チックヮ)

ウリ科トウガン属の野菜で、生態や食べ方についてはそれぞれウリ(植物)個別項目で述べることとするが、ここでは中国特有の調理方法について紹介したい。
まずトウガンを横半分に切り、種子とワタを取り除く。そこにスープを張り、キノコや肉、野菜などの食材を入れ、蒸すのである。これが「冬瓜盅(トンクワチョン)」という料理である。
また中国や台湾では「節瓜」というウリ類を食する。これは細長い形状をつけるトウガンの受粉後数日の若い果実の呼び名で、ズッキーニのように炒め物や煮物で食する。表面に産毛が無数に生えていることから、「毛瓜」の名称でも呼ばれる。

木耳菜(ムーアルツァイ)

ツルムラサキ科ツルムラサキ属の多年草・ツルムラサキの中国での呼び名である。青菜類の収穫が少なくなる夏に重宝する葉物野菜の一つで、蔓や葉を野菜として食するが、特に若い蔓が美味であるという。
蔓の色は鮮やかな黄緑色のものと、赤紫色のもの(こちらは特に「シンツルムラサキ(新蔓紫)」と呼ばれる)があるが、どちらかというと黄緑色のものの方が美味とされる。
我が国においても江戸時代にはすでに栽培されていたが、それは果実から紫色の染料をとるためで、野菜としての栽培と利用は、戦後になってからの事である。


折耳根(ジェアールゲン)

ドクダミ科ドクダミ属の多年草・ドクダミの中国語での呼び名である。
わが国ではドクダミのハート形の葉を乾燥させてお茶にするか、若い葉を摘んで天ぷらにするくらいしか利用法が知られていないが、貴州省、四川省、湖南省などでは地下茎を炒め物やあえ物、鍋の際の味変アイテムにして食すという。


蒜苗(スァンミャオ)

ヒガンバナ科ネギ属の多年草・ニンニクの成長過程で伸びてきた若い葉のこと。わが国では「ニンニクの芽」「葉ニンニク」と呼ばれる。ただし、「ニンニクの芽」という日本語名は後述の蒜苔(スァンタイ)にも充てられることがあり、混乱を招いている。というのも、中国南部において、「蒜苗」を「蒜苔」、「蒜苔」を「蒜苗」と呼ぶ地域があるからである。
鱗茎に対して香りは穏やかであり、料理の薬味や彩を添える素材として用いる。また、現在は麻婆豆腐に用いる野菜としてはネギが用いられているが、元々はこの


蒜苔(スァンタイ)

いわゆる「ニンニクの芽」として売られているものである。「苔」という字からわかるように、この部分は実際はニンニクの芽ではなく、花茎である。食する際にはつぼみはおいしくないので取り去り、花茎部分のみを食するというわけである。
シャキシャキとした歯ごたえと特有の甘味、そしてかすかな「ニンニク臭」という独特のにおいがある。ネギのように刻み、炒め物やスープの具材として用いる。


荸薺(ビィチィ)

カヤツリグサ科ハリイ属の水生多年草・オオクログワイの中国名である。
「クワイ」と名にあるが、いわゆるクワイ(オモダカ科オモダカ属)とは別種である。
地下にできる黒味の強い褐色をした偏球形の塊茎を茹でて表皮を剥き、茹でてからあるいは生で食す。本格的な中華料理屋に行くとシャリシャリとした食感のサトイモのような見た目をした野菜が入っていることがあるが、これが荸薺である。
我が国では塊茎を水煮にしたものの缶詰が輸入食材店や中華料理専用の食材店で出回る。


茭白(ジャオパオ)

イネ科マコモ属の水生多年草・マコモの若い芽に黒穂菌が寄生し、タケノコのような見た目になったいわゆる「マコモタケ」のことである。
この部分はトウモロコシを思わせるようなうっすらとした甘みと、タケノコのようなコリコリとした食感があり、中華料理において欠かせない食材の一つとなっている。現在は春~夏にかけてデパートで出回ることがある。
我が国においても黒保菌が寄生したマコモは用いられてきたが、それは若い芽ではなく、黒穂菌が寄生しながらも成長した個体である。
こうなると黒ずんで食用には向かないのだが、この黒穂菌による黒の色素を「まこもずみ」と呼び、鎌倉彫の模様の濃淡を出すために用いられた。


金針菜(キンシンツァイ)(黄花菜)

ススキノキ科ワスレグサ属の多年草であるヤブカンゾウ・ノカンゾウ・ホンカンゾウの蕾のことである。「黄花菜」という名称で四八珍の一つとしても知られている。
わが国ではこれまでは干したものしか流通していなかったが、近年は輸送技術の発達により、生のつぼみも流通するようになった。いずれも山吹色の6枚の花弁からなる、ユリの花のような美しい花を咲かせる。そのため、食材店では「ユリの花」言う名称で出回ることがある。
生のものを炒め物や煮込み料理、スープの具材やデザートの彩りとする。





追記・修正は中国野菜で作った何かしらの一品料理を食べてからにするよろし。





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最終更新:2025年07月01日 01:34