とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part06

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― バレンタイン・空白の30分 ―


(どうしてこうなった…?)

 上条当麻は本日、バレンタインに御坂美琴と晴れて付き合うことなった。
 そこに至るまでには紆余曲折とした事情があったものの、全てはハッピーエンドで終わった。

 ……はずだった。

 今上条の腕の中には半分猫化、半分幼児退行した御坂美琴がいる。
 別に彼がそれが嫌というわけではない。
 むしろ嬉しいくらいだ。

「うにゃー。当麻の胸あったかーい…」

 こんな風にベタベタに甘えてこなければ…
 事の発端は先ほどの紆余曲折とした事情の中の上条が一度美琴をフッたことにある。
 美琴はそれで大変傷ついたらしく、それの"仕返し"を要求してきたことが始まりだった。
 今や彼女は上条の膝の上に横向きに座り、彼の胴体へ手をまわし、胸に頬をすり寄せている。
 そういう状況にあるので、上条は腕の位置に困り、始めはどことも知れぬ場所へと腕を漂わせてはいたのだが、腕の疲労もあり仕方なく彼女の体に手を置いているというのが今の図だ。

「御坂さん?流石にそこまでベタベタされるのは…」
「契約違反はプラス30分だからね」
「……はい」
「あとそれと……美琴って呼んで?」

 美琴は甘えた上目遣いでそう上条に懇願する。
 知らない、上条はこんな彼女を見たことがない。
 上条の知っている美琴はもっと元気で、凛々しく、ここまで人に甘えてくるような人間ではなかったはずだ。
 まして、これほどまでに甘ったるく色っぽい視線を送れる人間ではなかったはず。

「…………美琴」
「よくできましたー♪ご褒美に頬摺りしたげる」

 そう言うと美琴は胴体にまわしていた手を今度は首へまわす。
 そして一気に顔と顔の距離を縮め、頬摺りを始める。

(どわ――!!なんか美琴の色んなところが当たってるし、しかもなんか良い匂いがする―――!!!)

「私、ずっとこうしたかったの!」
「ってお前がしたかっただけかい!(時間は!?あと何分!?)」

 えらくご機嫌な美琴を横目に、上条は携帯の時計を横目でちらりと見る。
 時間はまだ始まってまだ10分といったところ。

(10分!?全体のまだ三分の一!?……不幸だ。どうか理性を保てますよう…!?)

 不意に何かが上条の目を覆った。
 そして次の瞬間、唇に何か柔らかいものがあたる。
 彼はこの感触を知っている。
 数分前に彼が身をもって体験したものだ。
 そう言わずもがな、美琴の唇だ。

(もがっ!!こ、こいつ…!さっきはあんな恥ずかしがってたのに…!!)

 そうしている時間はさほど長くはなく、比較的早くに熱は離れていく。
 視界がもどった上条の目にとびこんできたのは少し怒ったような、でも目には熱がこもっており、トロンとしている美琴だった。

「……私が目の前にいるのに、考え事するのは無粋なんじゃない?」

 美琴は上条が他の事を考えていることが気にくわないらしく、彼を睨みつける。
 対して上条は何も言えず、ただ大きく首を縦に振った。

「ん、わかればよろしい」

 そしてまた美琴は上条に抱きつき、上条の胸に顔を埋める。

「幸せだなぁ……こういうことできるのって…。前じゃ考えられなかったもん」
「まあそうだな。お前は何かにつけてビリビリしてああごめんなさい謝りますからその怖い目つきで睨むのは止めてください!!」

 今は上条の右手が美琴に触れているため、美琴は電撃を出せない。
 代わりに精一杯の怒気を放つ。

「ったく、今はそういう雰囲気じゃないでしょう?」
「知るかよ…」
「はあ……まあアンタにそういうことを求めるのは間違いだってのはわかってるけどさ。もうちょっと何とかできないの?」
「どうすりゃいいんだよ…」

 美琴はそれを聞いて、より大きなため息をついた。

「……もういいわ、とりあえず私はこうすることができるだけでも満足だし」

 美琴は今心底安心しきっている顔を見せている。
 この表情はいつも上条や他の人に見せるそれではない。
 思えば彼女がこういう顔をするのは極めて珍しい、というか、今まで上条は見たことない。

(そういえば、そうだよな……なんでもできるすげーお嬢様かと思ってたけど、こいつだって年頃の女の子だもんな…)

 彼女は常盤台のエース、学園都市でも七人しかいない超能力者の第三位という立場上、なかなか人に甘えることができないはずだ。
 故に本来甘えたい年頃でも他人に甘えることもできずに育ってきた。
 だがようやく、上条という拠り所を見つけ、そして手に入れた。
 今のベタベタな甘えはそこから来ているのだろう。
 上条は美琴をそう考えると、なぜだか彼女がより愛らしく見えてきた。

「な、なんて目で見てんのよ」
「ん…?」
「……別に……何でもない」
「??」

 美琴は少し頬を赤らめ、目を逸らす。
 上条には何が起きたかわけがわからなかった。
 実を言うと、彼は無意識の内に先ほどの思考から美琴をできうる限りの優しさに満ちた目で彼女を見ていた。
 それを彼女が見て、どぎまぎしてしまったわけなのだが…
 美琴はそれを隠すように、抱きしめる力を強くした。




 ―――――気づけば時間は残り五分程となっていた。
 上条にとって途中は普段時間よりもはるかに遅く感じられた時間も、終わりにさしかかってみると、案外あっけなく思えてくる。
 先程の謎のやりとり(上条にとってだが)の後も美琴の態度はあまり変わらず、ひたすらベタベタしてきていた。
 だが、残り五分程になると名残惜しいのか、美琴は上条にひっついてはいるものの、どこか始め程の勢いはない。
 今も彼女は上条の腕の中でしおらしくしている。

「ねえ……もう30分追加しても……」
「流石に止めてくれ…上条さんの理性が保ちません。……今でも結構きてるんだぞ」
「そっか…」

 それを聞いてか、やはり美琴は寂しそうにする。
 上条としてはこれ以上ベタベタされるのもよろしくないが、こんな寂しそうにされるのもよろしくない。
 どんな形であれ、美琴が素をだせるような人間は少ない。
 そんな彼女が 上条を拠り所として選んだのだ。
 それは彼女は決死の告白をし、今もこうして上条に甘えていることにも表れている。
 それなのに、彼女がやっと手に入れた安心して素を出せる人間が上条なのに、彼女の素をだせる居場所を壊してはならない。

「美琴、別にこれからはずっと一緒なんだ。だからそんな顔すんな」

 だから、上条は一つ提案をした。

「お前が望むなら、偶になら別にいいから…な?」
「えっ…いいの?」
「ああいいぞ。…ただし、偶にだからな!」
「うん…!」

 始めまでとはいかずとも美琴は少し元気を取り戻す。
 そしてこの時間の最後のお願いと言わんばかりに、今までにないくらいの甘えた上目遣いで、

「ねえ、当麻……目瞑って」

 と上条を見つめつつお願いする。
 無論これで落ちない男がいるだろうか、いやいないだろう。
 上条は始めは少しためらいつつも、言うとおりゆったりと瞼を閉じてゆく。
 数秒間は何も変化は訪れなかった。
 それに多少の疑問は覚えながらも上条は瞼を固く閉じ続ける。
 そして十秒程が経った頃、変化は訪れた。
 胴体へ回されていた腕を首へ回され、そして

 ―――本日三度目のキスをした。

 しかし、それは雰囲気に後押しされた一回目のような短く、優しいものでも、何気なくされた二回目のようなあっさりしたものでもなかった。

「ッ!!」
「ん……」

 それはほぼ限界値を迎えていた上条にとっては残酷な程甘く、熱いものだった。
 当然何をされるかはなんとなくわかっていた彼でも、予想しえなかった展開である。
 始めは戸惑いを隠せない彼ではあったが、次第に彼女を受け入れ自身もその熱に身を任せた。

 ―――美琴は上条から離れ、しばらくの間、まだ熱のこもったお互いの瞳を見つめ合う。
 そして約束の30分。

「―――えへへ……んじゃ名残惜しいけど、今日は流石にもう帰るね。今日はありがと」


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