―――とある寮の一室
ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、今日は休日であるため、上条と美琴は昼食を一緒にとっていた。
今日のメニューはカルボナーラスパゲティ。
もちろん、『美琴さんお手製の』と頭につく代物だ。
ぽかぽか陽気のただよう午後、今日は休日であるため、上条と美琴は昼食を一緒にとっていた。
今日のメニューはカルボナーラスパゲティ。
もちろん、『美琴さんお手製の』と頭につく代物だ。
「ご馳走さま」
「お粗末さま」
「今日も美味しかったよ、美琴」
「ふふーん、当たり前じゃない。料理は愛情だもの」
「なるほど。そりゃ旨いわけですね、っと」
「お粗末さま」
「今日も美味しかったよ、美琴」
「ふふーん、当たり前じゃない。料理は愛情だもの」
「なるほど。そりゃ旨いわけですね、っと」
上条は立ち上がると、美琴の分の皿も重ね、台所へ運んでいった。
いつからか、美琴が料理、上条が片付け、というルールが二人の間で出来上がっていた。
美琴は、カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる台所の方を眺めながら、自然と二人だけのルールが決まっていくことに小さな幸せを感じていた。
こうしていつの間にか、自分たちの生活が築き上げられていくのだ。
二人の関係にどこか永遠めいたものを感じ、美琴はいつの間にか優しい笑みを浮かべていた。
いつからか、美琴が料理、上条が片付け、というルールが二人の間で出来上がっていた。
美琴は、カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる台所の方を眺めながら、自然と二人だけのルールが決まっていくことに小さな幸せを感じていた。
こうしていつの間にか、自分たちの生活が築き上げられていくのだ。
二人の関係にどこか永遠めいたものを感じ、美琴はいつの間にか優しい笑みを浮かべていた。
「どうした、美琴。何かいいことあったのか?」
洗い物を終えた上条が部屋に戻ってきた。
美琴のすぐ隣りに腰を下ろし、肩をぴと…っとくっつける。
美琴のすぐ隣りに腰を下ろし、肩をぴと…っとくっつける。
「うふふ、まぁね。ほんの小さなことよ」
「そうか?まぁ、美琴が幸せなら俺は嬉しいぞ」
「ふふっ、ありがと」
「そうか?まぁ、美琴が幸せなら俺は嬉しいぞ」
「ふふっ、ありがと」
にっこり、という表現がそのまま当てはまるような笑顔で、上条の肩に頭を乗せた。
触れ合った所から、お互いの熱を感じる。
体の、心の、芯からじんわりと暖まっていく感覚。
触れ合った所から、お互いの熱を感じる。
体の、心の、芯からじんわりと暖まっていく感覚。
―――と、
「ふ…にゃあ…」
「ん?どうした?」
「ん?どうした?」
ずるっと美琴の頭が肩を滑る感覚があり、上条は隣りに目を向けた。
「お前…眠いのか?」
「うー…昨日あんまりよく眠れなかったから…」
「そうだよな。夜中に起こしちゃったし、その後もあんまり寝付けなかったもんな」
「うー…昨日あんまりよく眠れなかったから…」
「そうだよな。夜中に起こしちゃったし、その後もあんまり寝付けなかったもんな」
言うと、上条もふわぁぁ、と大あくびをした。
「あ、うつったー」
「えぇ。日本人の特徴でございますよ」
「えぇ。日本人の特徴でございますよ」
そう言いつつ、また大きなあくびをする。
「当麻も眠くなっちゃったの?」
「そうだなぁ。お前が気持ちよさそうにしてるからうつったんだな」
「じゃあ、お昼寝しよっか?」
「今から?こんな昼間から寝るなんて贅沢な時間の使い方ですなぁ」
「そうだなぁ。お前が気持ちよさそうにしてるからうつったんだな」
「じゃあ、お昼寝しよっか?」
「今から?こんな昼間から寝るなんて贅沢な時間の使い方ですなぁ」
いたずらっぽく上条が言うと、美琴はあくびでうるんだ瞳を向け、上目遣い気味に上条を見た。
「ダメ?」
「いや、たまにはこんな贅沢も良いんじゃないか?」
「いや、たまにはこんな贅沢も良いんじゃないか?」
子猫のように、きらきらした目で見上げる美琴が、可愛らしくもおかしく思えて、上条は微笑みを浮かべる。
「やったぁ。あ、パジャマ着るー」
喜びの声を上げた美琴は、朝脱いで畳んでおいたパジャマを取り、脱衣所へノロノロと入って行った。
「お待たせしました」
淡いオレンジのパジャマに身を包み、美琴が戻ってきた。
着替えてる間に少し睡魔が遠のいたようで、足取りは割りとしっかりしている。
淡いオレンジのパジャマに身を包み、美琴が戻ってきた。
着替えてる間に少し睡魔が遠のいたようで、足取りは割りとしっかりしている。
「本日2回目のパジャマ姿か。早くも気に入って下さったようで、上条さんは嬉しいですよ」
「うふふ、このパジャマを着てると、当麻に包まれてる気がするの」
「うふふ、このパジャマを着てると、当麻に包まれてる気がするの」
満面の笑みで自分の身体を抱き締める。
その表情を見て上条は、心底プレゼントをして良かったと思った。
この少女の笑顔のためなら、どんなことだってしよう、という決意が湧き上がる。
その表情を見て上条は、心底プレゼントをして良かったと思った。
この少女の笑顔のためなら、どんなことだってしよう、という決意が湧き上がる。
「さて、寝ますか!贅沢な時間をたっぷり楽しみませう」
自分の中で生じた気恥ずかしさを誤魔化すように、上条は早速その場にごろんと横たわった。
もちろんベッドは美琴のために空けてある。
まさか自分がベッドに寝て、大切な彼女を床に寝かせるわけにはいかない。
さて惰眠を貪るとしようと思ったそのとき、自分の服がぴくぴくと引っ張られる感触がした。
もちろんベッドは美琴のために空けてある。
まさか自分がベッドに寝て、大切な彼女を床に寝かせるわけにはいかない。
さて惰眠を貪るとしようと思ったそのとき、自分の服がぴくぴくと引っ張られる感触がした。
「美琴さん?どうしました?」
「あの…ね…一緒がいいな」
「え?あの…?」
「当麻が側にいてくれたら、きっと怖い夢も見ないと思うし…ダメ…かな…?」
「あの…ね…一緒がいいな」
「え?あの…?」
「当麻が側にいてくれたら、きっと怖い夢も見ないと思うし…ダメ…かな…?」
昨晩の悪夢を思い返したのか、美琴はやや伏し目がちになっている。
その表情に、上条はついさっき自らに湧き上がった決意を思い返す。
大切な恋人の、笑顔を守る。
その表情に、上条はついさっき自らに湧き上がった決意を思い返す。
大切な恋人の、笑顔を守る。
「ごめんね、困らせること言って…昨日ダメって言われたばっかりなのに――」
「まったく…仕方ねぇな」
「まったく…仕方ねぇな」
美琴の恐れを含んだ言葉を遮り、上条は立ち上がり、少女の首に左手を回し、右手で膝を抱え上げた。
簡単に言うならば、俗に言う『お姫様だっこ』である。
簡単に言うならば、俗に言う『お姫様だっこ』である。
「え、と、当麻!?」
驚きと照れの混じった声を聞き流し、上条は美琴をそのままベッドへ横たえた。
そして自分もすぐ隣りに体を沈める。
右手は離し、左手はそのまま。
簡単に言うならば、俗に言う『腕枕』である。
そして自分もすぐ隣りに体を沈める。
右手は離し、左手はそのまま。
簡単に言うならば、俗に言う『腕枕』である。
「―――!?」
美琴は最早声にならないと言わんばかりに、顔を真っ赤に染めている。
「これでいいんだろ、美琴。お前が安心して眠れるまで、俺が側にいてやるよ」
「当麻…」
「お前が俺のことを大切にしてくれてるように、俺も大切なお前のことを守りたいんだよ」
「―――!!」
「当麻…」
「お前が俺のことを大切にしてくれてるように、俺も大切なお前のことを守りたいんだよ」
「―――!!」
美琴の瞳から、雫がこぼれた。
上条はただただ純粋に、あぁ綺麗だな、と思う。
上条はただただ純粋に、あぁ綺麗だな、と思う。
「私…毎日泣いてばかり…」
「ごめんな…?」
「ううん…この涙は、嬉しい涙よ…安心して一緒にいられるのが…幸せ」
「良かった…。お前が幸せなら、俺は幸せだ」
「もう…またそんな恥ずかしいこと言って」
「ごめんな…?」
「ううん…この涙は、嬉しい涙よ…安心して一緒にいられるのが…幸せ」
「良かった…。お前が幸せなら、俺は幸せだ」
「もう…またそんな恥ずかしいこと言って」
くすっと笑うと、美琴は目を軽く拭い、枕にしている上条の左腕に頬をすり寄せた。
「あったかい…当麻、こうしてて痺れないの?」
「いや、俺もちょっと気になったけど、これがまた全然」
「そっか、良かった」
「いや、俺もちょっと気になったけど、これがまた全然」
「そっか、良かった」
そう言うと、美琴は腕枕のまま、ぴったりと体を寄せた。
ほんの少し、自分の足を上条のそれと絡めるようにして、全身をくっつけた。
伝わる熱に、上条は一瞬、気恥ずかしさを覚えるが、それよりも少女への愛らしさが上回り、空いていた右腕で美琴の頭をなでる。
美琴は気持ち良さそうに目をつぶり、甘えるような声で口を開いた。
ほんの少し、自分の足を上条のそれと絡めるようにして、全身をくっつけた。
伝わる熱に、上条は一瞬、気恥ずかしさを覚えるが、それよりも少女への愛らしさが上回り、空いていた右腕で美琴の頭をなでる。
美琴は気持ち良さそうに目をつぶり、甘えるような声で口を開いた。
「こうしてると、ぴったり一つになった気分」
「そうだな。頭の位置も丁度良いし、元からこうなるために生まれてきたみたいだな」
「運命の赤い糸ってやつ?」
「一応、幻想殺しのおかげで上条さんに赤い糸は無いと聞いてましたがね」
「そうなの?」
「初めてインデックスに会った頃にな。そんときは、なかなかショックだったんだぜ」
「そうだな。頭の位置も丁度良いし、元からこうなるために生まれてきたみたいだな」
「運命の赤い糸ってやつ?」
「一応、幻想殺しのおかげで上条さんに赤い糸は無いと聞いてましたがね」
「そうなの?」
「初めてインデックスに会った頃にな。そんときは、なかなかショックだったんだぜ」
初めて聞く話に、恋する乙女である御坂美琴は、一瞬、寂しそうな表情をした。
しかし、直後に何か閃いたとばかりにその顔を上条の方へ向けた。
しかし、直後に何か閃いたとばかりにその顔を上条の方へ向けた。
「ねぇ、当麻」
「ん?」
「アンタに赤い糸が無いなんて…そんな幻想、私がぶち殺してやるわよ」
「ん?」
「アンタに赤い糸が無いなんて…そんな幻想、私がぶち殺してやるわよ」
少しの照れを含みながら、それでもまっすぐ上条を見つめて言ってのけた。
しかし、当人は何を言われたのか脳内処理に時間がかかったようで、二人きりの部屋に数秒の沈黙が生まれ―――
しかし、当人は何を言われたのか脳内処理に時間がかかったようで、二人きりの部屋に数秒の沈黙が生まれ―――
「ぷっ…あっはっはっはっは―――」
「な、なななな、何よ!私だってたまには気の利いたこと言いたかったのよ!笑うなー笑うなー!」
「な、なななな、何よ!私だってたまには気の利いたこと言いたかったのよ!笑うなー笑うなー!」
突然大きな笑い声で沈黙を破った上条に、美琴は真っ赤な顔で叫ぶ。
恥ずかしさで頭の中はいっぱいで、雷撃を出す余裕もないようだ。
恥ずかしさで頭の中はいっぱいで、雷撃を出す余裕もないようだ。
「あはははは、ごめんな美琴、ちょっとあまりに予想外すぎて」
「ばかー!ばかー!当麻のばかー!」
「ばかー!ばかー!当麻のばかー!」
ますます顔を赤く染め上げた美琴は、腕枕状態から体を起こし、ぽかぽかと両手で上条の胸を叩き出した。
「私だって恥ずかしかったけど、当麻のこと心配なんだからー!大切なんだからー!」
「すまんすまん、ちょっと衝撃的だっただけだよ」
「知らない知らない!もう当麻のことなんて知らないもん!」
「すまんすまん、ちょっと衝撃的だっただけだよ」
「知らない知らない!もう当麻のことなんて知らないもん!」
ぷくーっとふくれた顔をそっぽに向ける美琴。
興奮状態だったためか、目には軽く涙が浮かんでいる。
興奮状態だったためか、目には軽く涙が浮かんでいる。
「美琴」
「ふん、何よ。今さら謝っても許してあげないんだからね」
「ふん、何よ。今さら謝っても許してあげないんだからね」
まだ顔は背けたまま、言葉を返す。
そこで上条は、美琴の視界に入らないように手をのばし、美琴の肩を一気に抱き寄せた。
そこで上条は、美琴の視界に入らないように手をのばし、美琴の肩を一気に抱き寄せた。
「きゃっ―――」
「美琴、ありがとう。お前はいっつも、俺のことを見ていてくれるんだよな」
「………当たり前じゃない」
「美琴、ありがとう。お前はいっつも、俺のことを見ていてくれるんだよな」
「………当たり前じゃない」
上条は再び腕枕をして、美琴を抱き締めた。
二人の心音がとけて混ざっていく感覚。
それが、たまらなく愛しい。
二人の心音がとけて混ざっていく感覚。
それが、たまらなく愛しい。
「美琴、ここはお前だけの特等席だよ」
抱き締めている右手で美琴の頭をなでる。
再び美琴は目をつぶり、その幸せな感触に浸ろうとするが、パッと顔を上げ、上条へ向けた。
再び美琴は目をつぶり、その幸せな感触に浸ろうとするが、パッと顔を上げ、上条へ向けた。
「だーめ。そんなことじゃ許しません」
心なしか、その顔が赤みを帯びているように見える。
しかし、その目はまっすぐに上条を見つめている。
そのまま顔を寄せ、愛の言葉を囁く。
しかし、その目はまっすぐに上条を見つめている。
そのまま顔を寄せ、愛の言葉を囁く。
「ここも―――」
腕枕をしている手に頬を寄せ―――
「ここも―――」
上条の頭に両腕を回し―――
「ここも―――」
唇を重ねた―――
「みんな、私だけの居場所なの」
ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、恋人たちは想いを重ねる。
ぽかぽか陽気のただよう午後、恋人たちは想いを重ねる。
とある少女のういういdays4―つづく?―