とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part4

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―――とある寮の一室

ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、今日は休日であるため、上条と美琴は昼食を一緒にとっていた。
今日のメニューはカルボナーラスパゲティ。
もちろん、『美琴さんお手製の』と頭につく代物だ。

「ご馳走さま」
「お粗末さま」
「今日も美味しかったよ、美琴」
「ふふーん、当たり前じゃない。料理は愛情だもの」
「なるほど。そりゃ旨いわけですね、っと」

上条は立ち上がると、美琴の分の皿も重ね、台所へ運んでいった。
いつからか、美琴が料理、上条が片付け、というルールが二人の間で出来上がっていた。
美琴は、カチャカチャと洗い物の音が聞こえてくる台所の方を眺めながら、自然と二人だけのルールが決まっていくことに小さな幸せを感じていた。
こうしていつの間にか、自分たちの生活が築き上げられていくのだ。
二人の関係にどこか永遠めいたものを感じ、美琴はいつの間にか優しい笑みを浮かべていた。

「どうした、美琴。何かいいことあったのか?」

洗い物を終えた上条が部屋に戻ってきた。
美琴のすぐ隣りに腰を下ろし、肩をぴと…っとくっつける。

「うふふ、まぁね。ほんの小さなことよ」
「そうか?まぁ、美琴が幸せなら俺は嬉しいぞ」
「ふふっ、ありがと」

にっこり、という表現がそのまま当てはまるような笑顔で、上条の肩に頭を乗せた。
触れ合った所から、お互いの熱を感じる。
体の、心の、芯からじんわりと暖まっていく感覚。

―――と、

「ふ…にゃあ…」
「ん?どうした?」

ずるっと美琴の頭が肩を滑る感覚があり、上条は隣りに目を向けた。

「お前…眠いのか?」
「うー…昨日あんまりよく眠れなかったから…」
「そうだよな。夜中に起こしちゃったし、その後もあんまり寝付けなかったもんな」

言うと、上条もふわぁぁ、と大あくびをした。

「あ、うつったー」
「えぇ。日本人の特徴でございますよ」

そう言いつつ、また大きなあくびをする。

「当麻も眠くなっちゃったの?」
「そうだなぁ。お前が気持ちよさそうにしてるからうつったんだな」
「じゃあ、お昼寝しよっか?」
「今から?こんな昼間から寝るなんて贅沢な時間の使い方ですなぁ」

いたずらっぽく上条が言うと、美琴はあくびでうるんだ瞳を向け、上目遣い気味に上条を見た。

「ダメ?」
「いや、たまにはこんな贅沢も良いんじゃないか?」

子猫のように、きらきらした目で見上げる美琴が、可愛らしくもおかしく思えて、上条は微笑みを浮かべる。

「やったぁ。あ、パジャマ着るー」

喜びの声を上げた美琴は、朝脱いで畳んでおいたパジャマを取り、脱衣所へノロノロと入って行った。



「お待たせしました」
淡いオレンジのパジャマに身を包み、美琴が戻ってきた。
着替えてる間に少し睡魔が遠のいたようで、足取りは割りとしっかりしている。

「本日2回目のパジャマ姿か。早くも気に入って下さったようで、上条さんは嬉しいですよ」
「うふふ、このパジャマを着てると、当麻に包まれてる気がするの」

満面の笑みで自分の身体を抱き締める。
その表情を見て上条は、心底プレゼントをして良かったと思った。
この少女の笑顔のためなら、どんなことだってしよう、という決意が湧き上がる。

「さて、寝ますか!贅沢な時間をたっぷり楽しみませう」

自分の中で生じた気恥ずかしさを誤魔化すように、上条は早速その場にごろんと横たわった。
もちろんベッドは美琴のために空けてある。
まさか自分がベッドに寝て、大切な彼女を床に寝かせるわけにはいかない。
さて惰眠を貪るとしようと思ったそのとき、自分の服がぴくぴくと引っ張られる感触がした。

「美琴さん?どうしました?」
「あの…ね…一緒がいいな」
「え?あの…?」
「当麻が側にいてくれたら、きっと怖い夢も見ないと思うし…ダメ…かな…?」

昨晩の悪夢を思い返したのか、美琴はやや伏し目がちになっている。
その表情に、上条はついさっき自らに湧き上がった決意を思い返す。
大切な恋人の、笑顔を守る。

「ごめんね、困らせること言って…昨日ダメって言われたばっかりなのに――」
「まったく…仕方ねぇな」

美琴の恐れを含んだ言葉を遮り、上条は立ち上がり、少女の首に左手を回し、右手で膝を抱え上げた。
簡単に言うならば、俗に言う『お姫様だっこ』である。

「え、と、当麻!?」

驚きと照れの混じった声を聞き流し、上条は美琴をそのままベッドへ横たえた。
そして自分もすぐ隣りに体を沈める。
右手は離し、左手はそのまま。
簡単に言うならば、俗に言う『腕枕』である。

「―――!?」

美琴は最早声にならないと言わんばかりに、顔を真っ赤に染めている。

「これでいいんだろ、美琴。お前が安心して眠れるまで、俺が側にいてやるよ」
「当麻…」
「お前が俺のことを大切にしてくれてるように、俺も大切なお前のことを守りたいんだよ」
「―――!!」

美琴の瞳から、雫がこぼれた。
上条はただただ純粋に、あぁ綺麗だな、と思う。

「私…毎日泣いてばかり…」
「ごめんな…?」
「ううん…この涙は、嬉しい涙よ…安心して一緒にいられるのが…幸せ」
「良かった…。お前が幸せなら、俺は幸せだ」
「もう…またそんな恥ずかしいこと言って」

くすっと笑うと、美琴は目を軽く拭い、枕にしている上条の左腕に頬をすり寄せた。

「あったかい…当麻、こうしてて痺れないの?」
「いや、俺もちょっと気になったけど、これがまた全然」
「そっか、良かった」

そう言うと、美琴は腕枕のまま、ぴったりと体を寄せた。
ほんの少し、自分の足を上条のそれと絡めるようにして、全身をくっつけた。
伝わる熱に、上条は一瞬、気恥ずかしさを覚えるが、それよりも少女への愛らしさが上回り、空いていた右腕で美琴の頭をなでる。
美琴は気持ち良さそうに目をつぶり、甘えるような声で口を開いた。

「こうしてると、ぴったり一つになった気分」
「そうだな。頭の位置も丁度良いし、元からこうなるために生まれてきたみたいだな」
「運命の赤い糸ってやつ?」
「一応、幻想殺しのおかげで上条さんに赤い糸は無いと聞いてましたがね」
「そうなの?」
「初めてインデックスに会った頃にな。そんときは、なかなかショックだったんだぜ」

初めて聞く話に、恋する乙女である御坂美琴は、一瞬、寂しそうな表情をした。
しかし、直後に何か閃いたとばかりにその顔を上条の方へ向けた。

「ねぇ、当麻」
「ん?」
「アンタに赤い糸が無いなんて…そんな幻想、私がぶち殺してやるわよ」

少しの照れを含みながら、それでもまっすぐ上条を見つめて言ってのけた。
しかし、当人は何を言われたのか脳内処理に時間がかかったようで、二人きりの部屋に数秒の沈黙が生まれ―――

「ぷっ…あっはっはっはっは―――」
「な、なななな、何よ!私だってたまには気の利いたこと言いたかったのよ!笑うなー笑うなー!」

突然大きな笑い声で沈黙を破った上条に、美琴は真っ赤な顔で叫ぶ。
恥ずかしさで頭の中はいっぱいで、雷撃を出す余裕もないようだ。

「あはははは、ごめんな美琴、ちょっとあまりに予想外すぎて」
「ばかー!ばかー!当麻のばかー!」

ますます顔を赤く染め上げた美琴は、腕枕状態から体を起こし、ぽかぽかと両手で上条の胸を叩き出した。

「私だって恥ずかしかったけど、当麻のこと心配なんだからー!大切なんだからー!」
「すまんすまん、ちょっと衝撃的だっただけだよ」
「知らない知らない!もう当麻のことなんて知らないもん!」

ぷくーっとふくれた顔をそっぽに向ける美琴。
興奮状態だったためか、目には軽く涙が浮かんでいる。

「美琴」
「ふん、何よ。今さら謝っても許してあげないんだからね」

まだ顔は背けたまま、言葉を返す。
そこで上条は、美琴の視界に入らないように手をのばし、美琴の肩を一気に抱き寄せた。

「きゃっ―――」
「美琴、ありがとう。お前はいっつも、俺のことを見ていてくれるんだよな」
「………当たり前じゃない」

上条は再び腕枕をして、美琴を抱き締めた。
二人の心音がとけて混ざっていく感覚。
それが、たまらなく愛しい。

「美琴、ここはお前だけの特等席だよ」

抱き締めている右手で美琴の頭をなでる。
再び美琴は目をつぶり、その幸せな感触に浸ろうとするが、パッと顔を上げ、上条へ向けた。

「だーめ。そんなことじゃ許しません」

心なしか、その顔が赤みを帯びているように見える。
しかし、その目はまっすぐに上条を見つめている。
そのまま顔を寄せ、愛の言葉を囁く。


「ここも―――」

腕枕をしている手に頬を寄せ―――

「ここも―――」

上条の頭に両腕を回し―――

「ここも―――」

唇を重ねた―――

「みんな、私だけの居場所なの」



ある晴れた昼下がり。
ぽかぽか陽気のただよう午後、恋人たちは想いを重ねる。





とある少女のういういdays4―つづく?―


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