転移初期における帝國は、まるで夜盗か強盗か、とでもいう様な強引な手法で
大内海沿岸の資源地帯を獲得していった。
時間が無いのはわかるが、いきなりやって来て大上段に『領地を寄越せ』などと言っても通用する筈も無い。必然的に各地で血の雨が降ることになった。
……このため、多くの原住民が国ごと滅ぼされたという。
この余りに強引な手法は政府内部、そして軍内部からも大きな批判の声が上がった。
―これは戦争ではない、只の虐殺だ!
―皇軍は何時から押し込み強盗になった!?
―このままで行けば、帝國はこの世界全てを敵に回すことになるぞ!?
批判に加え、現地でも問題が山積みだ。
、原住民を労働力として使用する所か、生き残った原住民の残党がゲリラ活動をする始末で、これが開発の大きな不安要因となっていたのだ。
加えて、資材だけでなく労働力から食料まで全てを本国から送らねばならなくなった為、兵站にも重い負担がかかっている。
このため、軌道修正を求める圧力が日増しに強くなっていた。
が、『この非常にそんな悠長な真似が出来るか』という、ある意味御尤もな意見も未だ少なくない。
両者の意見は平行線を辿り、
シュヴェリン王国を含む
フランケル攻略作戦に至るまで結論が出ていなかった。
…そんな状況で実施されたフランケル攻略作戦は、実はその両者の妥協の産物だったのだ。
その気になれば、
フランケル文明圏の住民全てを殲滅出来るほどの大戦力、にも関わらず、穏健派の筆頭と目される今村中将の起用、今までには見られない、この世界に合わせた入念な裏工作、 が、その内容は悪辣非道、加えて最終目標はフランケル地方の住民浄化としか思えぬ様な大量移民計画。
…それでいて、『皇軍の名誉を汚さぬよう行動せよ』である。
まるで鵺の様な得体の知れぬ、支離滅裂な行動に一貫性の無い計画だ。
「一体、最終目的は何か? 帝國は我が軍に何を期待しているのか?」
派遣直前、
今村均中将は何度もなく上層部に問い質した。
が、返ってきた答えは『石油の安定確保』の言葉のみである。
とはいえ、この計画では行動基準が定まらない。
これでは予想外のことが起きた時、対応に困ってしまう。
第一六軍司令部は現地に赴くまで、いや赴いてからもほとほと困り果てていた。
その中で起きた
バレンバン地方割譲を取り決める
フーズム会談?は参加人数の少なさや、会談国の国力差などに大きな開きがあるものの、帝國の今後の行く末を決めた意義をもつ会談とされ、歴史的に少なからずその名を残す事になる。
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最終更新:2007年01月19日 10:22