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賭博黙示録カイジ - (2012/07/24 (火) 14:10:09) の1つ前との変更点

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*賭博黙示録カイジ 【とばくもくしろくかいじ】 |ジャンル|バラエティ?|~| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|講談社|~| |開発元|ウィル|~| |発売日|2000年5月25日|~| |定価|6,090円|~| |分類|''ゲームバランスが不安定''|~| |ポイント|徹底した原作再現(が仇に)&br意外に練られたストーリー&br全てはプレイヤー次第&br|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -人気漫画『賭博黙示録カイジ』のゲーム版で、原作第1部「希望の船」の''限定ジャンケン''をほぼ完全再現している。 -プレイヤーは原作の主人公であるカイジではなく、オリジナルのキャラとして参加する。 --カイジは船の対戦者のひとりとして登場。いろいろアドバイスをしてくれる。どうやら、このカイジはリピーターのようである。 -基本ルールは以下の通りで、特に原作から大幅に変更された部分は無い。 --参加者それぞれに、星3つと、グー、チョキ、パーの3種4枚ずつ、計12枚のカードが配られる。 --カードを1回につき1枚使用して、他の参加者とジャンケン勝負をし、勝つと相手の星を1つ貰える(あいこは星の移動は無し)。 --まず自力で対戦相手を探し、承諾を得たら船内にあるボックスを挟んで向かい合う。断られれば当然勝負はできない。 --次に「チェック」で自分が出すカードを確かめ、「セット」で伏せて提出し、「オープン」で同時にカードを公開。 --使ったカードは結果に関係なくボックスに開いている穴に投入、即座に集計される。船内の電光掲示板には「残り時間」と、「それぞれあと何枚ずつ残っているか」がリアルタイムで表示される。 --全てのカードを使い切った時点で、初参加者は星を3つ、リピーター(過去に限定ジャンケンに参加した人物)は4つ維持できれば勝ちとなる。 --星がなくなる、制限時間終了時にカードを使いきれていなかった時、制限時間終了後の星の売買タイムが終わっても星が規定未満の時、その他禁止行為(カードを食べるなどして廃棄するなど)を行った時は負けとなり、別室送り(本作ではバッドエンド)にされる。 ---本作では参加者の中に女性がいる、カジノがあるといった点が異なっている。 -「''人生にやり直しなどない''」「''勝負に後戻りはない''」という原作の言葉通り、リセットすると強制労働(という名のミニゲーム)を受けさせられ、''断った場合はセーブデータを抹消され、一からやり直しとなる''。 //セーブが限られていたりリセット不可能なゲームは珍しくないが、「''リセットすると最悪データ抹消される''」ゲームは恐らくこれが唯一だろう。 //↑パワプロもそうなるよ・・・ -対戦キャラクターたちは、船井・カイジなど一部の例外を除いて本作オリジナル。しかし、明らかに他の福本漫画から顔のデザインを流用している者が多い(特に『銀と金』キャラの登場頻度が高い。他に『天』や『アカギ』のキャラも。ある意味、福本オールスターゲーム?)。 -主人公には運、勘、精神状態のステータスがある。運は運否天賦の勝負に作用し、勘は高い状態だと相手の策に対して「待てよ…」等のヒントがでて看破しやすくなる。精神状態は負けがこむとと焦った状態になり、時間が早く進むようになる。これらのステータスはガムやタバコといったアイテムを使うことで変動が可能。 -主人公は他キャラとの対戦を通じて、さまざまな「理論」を習得していく。これを用いて対戦を優位に進めることができる。 --相手の手持ちカードの偏りから次に出す手を予測する「バランス理論」、アイコ引き分けでのカード消費を提案する「引き分け戦術」など。しかし「引き分け戦術」を提案しておきながら裏切ってそれに勝ってしまう鬼畜プレイも可能。原作にあった理論の他、覗き見している相手の裏をかくカード二枚重ねなどオリジナルの理論もある。 -他にも「集団に参加しないかと勧誘される」「ルールに違反して自分を助けてくれと懇願される」など、原作にないイベントが次々と発生。従うか、拒否するか、あるいは従うふりをして裏切るか、すべてプレイヤーの自由である(裏切っても特にペナルティはなく、普通にゲームを続行できる)。 **難点 -やはり原作通り、かなり難易度が高い。使うと減っていくカードの使い方を状況に応じて考えたり、ゲーム中手に入る現金でカードや星を買ったり、相手の裏をかく心理戦が必要とされるなど、こういったものが苦手なプレイヤーには絶対向いていない。会話の最中でも時間が進むため迂闊に長考もできない。 --先述の「理論」を習得しても、それを実行可能なカードを持ってないとどうしようもない。このあたりは原作同様シビア。 -難易度の高さについて。明らかにプレイヤーを殺しにくる罠が多い。((原作再現なので当然と言えば当然と言えるが。一応原作のように運否天賦に命を預ける愚か者もいればあいこ引き分けで引っ掛けることができるカモもいるのも原作再現と言える。)) --例を挙げると船井が原作同様にゲーム開始と同時にあいこ引き分けによるカード消費を持ちかけてくるイベントが必ず発生するのだが、これは原作を読んでいるプレイヤーに対しての罠。タチの悪い初見殺しである。 --他の例は、前述の通り主人公は理論(戦術)を習得できるのだが理論を使用すると必ず負けてしまう場合がある。ネタバレを避けて説明すると、ある技を覚えるとその技を使うことによって有効に戦える敵が出現する、というチュートリアルのような展開が他のゲームではあるが、このゲームでは覚えた理論を試しに使うと''待ってましたとばかりにハメられることがある。''序盤で発生する場合もあるため、負けると一気に追い込まれる。 -原作を再現した甘えが許されない仕様だという解釈もできるが、いきなり後が無い状況に陥ってしまう。 //修正依頼にあった難易度の高さについて例を挙げて追記してみました。ネタバレは避けているつもりです。 --かといってこの罠を見破って勝利すると星が一気に増えすぎてしまう。 -一度攻略法を見抜いてしまえば確実に勝つことができる。手の内の読み合い、頭脳戦ができるのは初見のときのみ。ゲームの性質上仕方ないことではあるが、相手にハメられてゲームオーバーになり、もう一度勝負を挑んであっさり勝利…というパターンになってしまいがち。 -主人公のステータスは勝てば勝つほど良くなり負ければ負けるほど悪くなる。この仕様によって、勝ち続ければ高ステータスによって勝負が楽になってしまい、負ければ低ステータスで苦しくなるという悪循環。この点でもバランスが悪いといえる。''これも原作再現、というか現実のギャンブルを再現した''といえなくはないのだが…。 --やはり原作を再現したバランス故の難点だといえるが、上記の仕様が組み合わさり、実際にやってみると''ハメられてすぐにゲームオーバーになるか、連勝して星を手に入れすぎて、星が多いせいで負けてもいいやという緊張感のない戦いになるかという極端なプレイ''になりやすい。((「カードを使いきらないとあがれないのでいくら星を持っていたところで安心できない」という点も原作通りなので、序盤や中盤で星を稼いでも終盤で連敗して一気に追いつめられることもある。だが、やはり星が多い状況だと緊張感に欠ける。))極端なバランスによって心理戦の楽しみが半減している。 -開始時に借りた軍資金にあまり使い道がなく、役に立たない。しかも''原作よりもさらに暴利にであり''、軍資金はほとんど重しにしかならない。 -追加要素であるカジノが、微妙に船内の雰囲気に合っていない。 -「限定ジャンケン」のみしか再現されておらず、原作にあった他のギャンブルはプレイできない。 --ただ原作終了が本作発売の前年ということもあり、盛り込むのは厳しかったのではないか(無理して入れてもかえって中途半端になった可能性も否定できない)。 -作中である人物の頼みを聞くと、エンディングが微妙に変化する。が、変化したエンディングは一部のプレイヤーに殺意と後悔を抱かせる((とはいえ「カイジ」の世界観を考えるとだいたい予想はつくのだが。))。 #region(ネタバレ) -ある人物とは「桑島涼子」という、ゲームオリジナルの人物。アイドルなのだが色々あってエスポワール号に乗せられ、限定ジャンケンをする羽目になってしまった。 -実力も高くなく、プレイヤーが話しかけたときの状況は「''星1つ、カード1枚''」という悲惨さだった。 -涼子はプレイヤーに「''負けた際には星2つと現金を渡す代わりに、自分の身体を売り渡す''」という約束を取り付け、プレイヤーが要求通りにわざと負けると無事生還を果たす。 -が、その後涼子は約束を守る気もなく男と共に何処かへトンズラしてしまう。 --ちなみに、助けずに別室送りにすることも可能である。 #endregion -キャラのボイスはなくテキストのみ。BGMやグラフィックも、PSというハードの性能を考えてもチープ。雰囲気はあっているのだが…。 -原作の名場面が、惜しいところで台無しになっている箇所がある。例えば利根川のルール説明は「これで説明を終わります」で本当に終わってしまい、その後豹変して「Fxxx You ブチ殺すぞ・・・ゴミめら・・・!」と参加者を脅しつけるシーンが再現されていない((恐らく伏せている部分がアウツだったのもあったのだろうが…後年のアニメ版ではFxxx Youの部分は「黙れ!」と改変されたものの、紳士的な態度から豹変する利根川とその後の説教いう部分はちゃんと表現されている))。 -周回ごとに異なる展開を楽しめるのだが、逆に言えば原作の名場面・名展開・名台詞のほとんどを体験できない((そもそも主人公がカイジではないのだから、カイジが主人公である原作と同じ展開になるわけはないのだが。))。登場すらしない原作キャラも多数。キャラゲーとしては残念である。 -読心術(超能力)を使うと自称する相手に勝つ方法が「シャッフルして自分で自分のカードがわからない状態で出す」というもの。つまり超能力が実在することは肯定されている。それどころか主人公と超能力者が実際に超能力で会話する場面まである。原作の世界観にそぐわない。 --この他もある人物が突然気がおかしくなってカードを燃やして別室送りになったり、主人公が暴力によって星を奪われる等、ストーリーを作るために不自然なイベントがいくつか発生する。 -原作では、非情なギャンブルの中にあっても情を捨てられないカイジの人間らしい姿が丁寧に描かれ、大きな魅力となっていたが、本作にはそのような要素はない。人道的にふるまっても鬼畜に徹しても、ゲームは淡々と進んでいく。主人公は相手を罠に嵌めたり、徹底的に金を絞りとって「ここは戦場、騙されるほうが悪いんだ」と言い出したり、「ククク………」と笑いだしたりすることもあれば、「こいつを騙すのは気が引けるな…」と躊躇したりと場面ごとに性格が変わってしまう。これも原作らしくない点である。 --主人公の性格はどちらかというと''悪人より''。ゲームが進むにつれて非情で打算的な性格になっていくのが前提でストーリーが作られている感じがある。借金をチャラにして船を降りるには他者を堕とさなければならないので当然とも言えるが…。無論、原作のカイジのように情を捨てず、利を蹴飛ばした結果、生き残りはできたものの多額の借金を背負うという展開にすることも可能だが。 -主人公の方から自由に行動することがあまりできない。他者へ話しかけたり、勝負を挑んだりすることはできても、カードの売買等を持ちかけることはできない。((もし可能なら序盤で星を稼いで後はカードを売却、譲渡してすぐにあがってゲーム終了というやり方が可能になってしまうので仕方ないと言えば仕方ないのだが。))イベントが発生しても主人公は基本的に受け身で、行動が強制されてしまう。 -操作性に癖があり、馴れないと参加者に中々話しかけられない。その他にもシステム等について不親切な点が結構ある。これも原作通りと言えなくもないがこのせいで初見のプレイが楽しめるゲームなのに初見でわけがわからないままゲームが進んでしまい、売買タイムを逃したりするようなことがある。 **評価点 -ストーリーはかなり練られている。伏線の張り方や回収等はきちんとできており、共闘した相手が裏切る等ありがちな展開でも、裏切りを予測するための材料、裏切りを見抜いて出し抜くためのトリックがちゃんと作られている。相手の策や罠にハマった際には悔しさに唸らせられるし、見事に策を看破し相手の裏をかいて勝利した際にはさながら『カイジ』や『銀と金』のような爽快感、ヒリつき、勝負の熱、''悪い喜び''が味わえる。 -参加者も原作でいう北見やバランス理論の男のようにしっかりとした戦略を持って勝負に臨む者もいれば、戦場にいるという自覚がない能天気でカモになる奴、そのようなフリをして虎視眈々と罠を張る者等、個性がある。仕掛けてくる罠も十人十色でしっかり作りこまれていて、実はこれらの人物がグルだった等の仕掛けはそうだったのかと唸らされる。参加者から得られる情報もかなり細かく設定されている。 -オリジナルの主人公がいる作品では元々の主人公の存在感が薄くなるというケースがあるが、この作品ではちゃんとカイジがストーリーに絡む。カイジと共闘することもできれば、敵対することもできる。共闘ルートにも複数のパターンがあり、カイジが自分の失態をカバーしてくれる展開になることもあれば、カイジを助ける展開にもなる。カイジが裏切っているのではと主人公が疑う展開にもなりうる。仲間に裏切られて絶望的な状況に陥ったカイジが主人公と手を組み、裏切った相手、そして裏で糸を引いていた船井に最後の戦いを挑むという燃えるルートに進むこともできる。 -クリアしてもリピーターとして船に乗ることができる。周回プレイによってイベントが変化することもあり、元々のストーリーも主人公の行動によって大きく変化するため、飽きさせない作りになっている。遊べるのが限定ジャンケンのみとはいえボリュームがないわけではなく全てのイベントやルートを見ようと思うのなら一種のやり込みにもなる。 -ムービーがやたらと入るが、その出来は当時としてはかなり頑張っている。「電流走る……!」が再現されるなど演出として使いどころもいい。 -イベント時の自由度は縛られてしまうが、プレイを通しての自由度は高い。船でのカイジのように情を捨てきれないプレイでも生き残りは可能だし、徹底して実利に拘って''釜の底を浅ましく醜く這いまわるプレイ''も可能。''星を20個近く手に入れるような神域の如きプレイ''も可能だし、''自らが大勝しつつも売買タイムで星を売り人を救ってさらに儲ける巨悪に駆け上がる''ことも可能。全てはプレイヤーの腕と性格次第。 **その他 -ゲームを始めるとDQⅢのような性格診断が始まる。選択肢を選んでいくだけなのだが異様な程にホラーのような演出になっており、本当にカイジのゲーム?と思ってしまう。 -クリア、もしくはゲームオーバーになると最終評価が下される。項目は不運度、ギャンブル度、不真面目度、破滅度と総合評価の五つ。たいていは低か高だがプレイによっては''無、悪、極''といった評価になる。 -アイテムとして使用できる他、主人公はムービーの中でもタバコを吸う。タバコを吸えるゲームは結構珍しい。他にタバコがアイテムとして使用できるゲームと言えば[[これ>ジョジョの奇妙な冒険]]とか[[これ>新宿の狼]]とか…どこかしら変なゲームが多いのは気のせいだろうか? -ゲームオーバーになると別室送りになるのだが、別室の内容が原作とは大きく異なる。 #region(別室のネタバレ) 別室に連行された先に見えるのは''手術台''。抵抗するも主人公は台に磔にされ手足を拘束され、医者らしき人物が表れて…そこで暗転というムービーが入る。ちなみにこのゲームでは売買タイムはあっても別室の救済については一切言及されていない。 #endregion **総評 -良くも悪くも原作をしっかり再現している。高難易度のゲームや心理戦が好きなプレイヤーなら楽しめるが、苦手な人はまったく楽しめないであろうプレイヤーを選ぶゲーム。 -楽しむには攻略情報を見ず、常に気を抜かず、相手との駆け引きに熟考してプレイしよう。 -別室送りのムービーやあらゆる福本作品から流用されたキャラクター等、バカゲーとしての要素もある。 -練られたストーリーや作り込みの細かさ等の評価点も十分にある。カイジのキャラゲーとして見ると残念な点が多いが、少なくとも凡百のキャラゲーとは一線を画している。 -バランスの悪さ、不親切なシステム、人を選ぶ点によって原作のような高度な心理戦や、能動的に頭を使う頭脳ゲームとしての要素を楽しめるプレイヤーは少数であろう。ゲームの本質としては「人と話して戦術を集め、また人と話してフラグを立て物語を進めていく」というADVに近い内容である。そういうものと割りきって、原作の世界観・雰囲気に浸ることを楽しむべきゲームだろう。 -原作読者なら誰もが考えるであろう「もし自分があの船に乗ったら……?」を体験できる(ような気分になれる)という意味で、原作ファンならそこそこ楽しめるかも知れない。 -その後カイジのゲームはなかなか出なかったが、2008年に新たに『[[逆境無頼カイジ Death or Survival]]』が発売された。しかしその出来は……。
*賭博黙示録カイジ 【とばくもくしろくかいじ】 |ジャンル|バラエティ?|~| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|講談社|~| |開発元|ウィル|~| |発売日|2000年5月25日|~| |定価|6,090円|~| |分類|''ゲームバランスが不安定''|~| |ポイント|徹底した原作再現(が仇に)&br意外に練られたストーリー&br全てはプレイヤー次第&br|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -人気漫画『賭博黙示録カイジ』のゲーム版で、原作第1部「希望の船」の''限定ジャンケン''をほぼ完全再現している。 -プレイヤーは原作の主人公であるカイジではなく、オリジナルのキャラとして参加する。 --カイジは船の対戦者のひとりとして登場。いろいろアドバイスをしてくれる。どうやら、このカイジはリピーターのようである。 -基本ルールは以下の通りで、特に原作から大幅に変更された部分は無い。 --参加者それぞれに、星3つと、グー、チョキ、パーの3種4枚ずつ、計12枚のカードが配られる。 --カードを1回につき1枚使用して、他の参加者とジャンケン勝負をし、勝つと相手の星を1つ貰える(あいこは星の移動は無し)。 --まず自力で対戦相手を探し、承諾を得たら船内にあるボックスを挟んで向かい合う。断られれば当然勝負はできない。 --次に「チェック」で自分が出すカードを確かめ、「セット」で伏せて提出し、「オープン」で同時にカードを公開。 --使ったカードは結果に関係なくボックスに開いている穴に投入、即座に集計される。船内の電光掲示板には「残り時間」と、「それぞれあと何枚ずつ残っているか」がリアルタイムで表示される。 --全てのカードを使い切った時点で、初参加者は星を3つ、リピーター(過去に限定ジャンケンに参加した人物)は4つ維持できれば勝ちとなる。 --星がなくなる、制限時間終了時にカードを使いきれていなかった時、制限時間終了後の星の売買タイムが終わっても星が規定未満の時、その他禁止行為(カードを食べるなどして廃棄するなど)を行った時は負けとなり、別室送り(本作ではバッドエンド)にされる。 ---本作では参加者の中に女性がいる、カジノがあるといった点が異なっている。 -「''人生にやり直しなどない''」「''勝負に後戻りはない''」という原作の言葉通り、リセットすると強制労働(という名のミニゲーム)を受けさせられ、''断った場合はセーブデータを抹消され、一からやり直しとなる''。 //セーブが限られていたりリセット不可能なゲームは珍しくないが、「''リセットすると最悪データ抹消される''」ゲームは恐らくこれが唯一だろう。 //↑パワプロもそうなるよ・・・ -対戦キャラクターたちは、船井・カイジなど一部の例外を除いて本作オリジナル。しかし、明らかに他の福本漫画から顔のデザインを流用している者が多い(特に『銀と金』キャラの登場頻度が高い。他に『天』や『アカギ』のキャラも。ある意味、福本オールスターゲーム?)。 -主人公には運、勘、精神状態のステータスがある。運は運否天賦の勝負に作用し、勘は高い状態だと相手の策に対して「待てよ…」等のヒントがでて看破しやすくなる。精神状態は負けがこむとと焦った状態になり、時間が早く進むようになる。これらのステータスはガムやタバコといったアイテムを使うことで変動が可能。 -主人公は他キャラとの対戦を通じて、さまざまな「理論」を習得していく。これを用いて対戦を優位に進めることができる。 --相手の手持ちカードの偏りから次に出す手を予測する「バランス理論」、アイコ引き分けでのカード消費を提案する「引き分け戦術」など。しかし「引き分け戦術」を提案しておきながら裏切ってそれに勝ってしまう鬼畜プレイも可能。原作にあった理論の他、覗き見している相手の裏をかくカード二枚重ねなどオリジナルの理論もある。 -他にも「集団に参加しないかと勧誘される」「ルールに違反して自分を助けてくれと懇願される」など、原作にないイベントが次々と発生。従うか、拒否するか、あるいは従うふりをして裏切るか、すべてプレイヤーの自由である(裏切っても特にペナルティはなく、普通にゲームを続行できる)。 **難点 -やはり原作通り、かなり難易度が高い。使うと減っていくカードの使い方を状況に応じて考えたり、ゲーム中手に入る現金でカードや星を買ったり、相手の裏をかく心理戦が必要とされるなど、こういったものが苦手なプレイヤーには絶対向いていない。会話の最中でも時間が進むため迂闊に長考もできない。 --先述の「理論」を習得しても、それを実行可能なカードを持ってないとどうしようもない。このあたりは原作同様シビア。 -難易度の高さについて。明らかにプレイヤーを殺しにくる罠が多い。((原作再現なので当然と言えば当然と言えるが。一応原作のように運否天賦に命を預ける愚か者もいればあいこ引き分けで引っ掛けることができるカモもいるのも原作再現と言える。)) --例を挙げると船井が原作同様にゲーム開始と同時にあいこ引き分けによるカード消費を持ちかけてくるイベントが必ず発生するのだが、これは原作を読んでいるプレイヤーに対しての罠。タチの悪い初見殺しである。 --他の例は、前述の通り主人公は理論(戦術)を習得できるのだが理論を使用すると必ず負けてしまう場合がある。ネタバレを避けて説明すると、ある技を覚えるとその技を使うことによって有効に戦える敵が出現する、というチュートリアルのような展開が他のゲームではあるが、このゲームでは覚えた理論を試しに使うと''待ってましたとばかりにハメられることがある。''序盤で発生する場合もあるため、負けると一気に追い込まれる。 -原作を再現した甘えが許されない仕様だという解釈もできるが、いきなり後が無い状況に陥ってしまう。 //修正依頼にあった難易度の高さについて例を挙げて追記してみました。ネタバレは避けているつもりです。 --かといってこの罠を見破って勝利すると星が一気に増えすぎてしまう。 -一度攻略法を見抜いてしまえば確実に勝つことができる。手の内の読み合い、頭脳戦ができるのは初見のときのみ。ゲームの性質上仕方ないことではあるが、相手にハメられてゲームオーバーになり、もう一度勝負を挑んであっさり勝利…というパターンになってしまいがち。 -主人公のステータスは勝てば勝つほど良くなり負ければ負けるほど悪くなる。この仕様によって、勝ち続ければ高ステータスによって勝負が楽になってしまい、負ければ低ステータスで苦しくなるという悪循環。この点でもバランスが悪いといえる。''これも原作再現、というか現実のギャンブルを再現した''といえなくはないのだが…。 --やはり原作を再現したバランス故の難点だといえるが、上記の仕様が組み合わさり、実際にやってみると''ハメられてすぐにゲームオーバーになるか、連勝して星を手に入れすぎて、星が多いせいで負けてもいいやという緊張感のない戦いになるかという極端なプレイ''になりやすい。((「カードを使いきらないとあがれないのでいくら星を持っていたところで安心できない」という点も原作通りなので、序盤や中盤で星を稼いでも終盤で連敗して一気に追いつめられることもある。だが、やはり星が多い状況だと緊張感に欠ける。))極端なバランスによって心理戦の楽しみが半減している。 -開始時に借りた軍資金にあまり使い道がなく、役に立たない。しかも''原作よりもさらに暴利にであり''、軍資金はほとんど重しにしかならない。 -追加要素であるカジノが、微妙に船内の雰囲気に合っていない。 -「限定ジャンケン」のみしか再現されておらず、原作にあった他のギャンブルはプレイできない。 --ただ原作終了が本作発売の前年ということもあり、盛り込むのは厳しかったのではないか(無理して入れてもかえって中途半端になった可能性も否定できない)。 -作中である人物の頼みを聞くと、エンディングが微妙に変化する。が、変化したエンディングは一部のプレイヤーに殺意と後悔を抱かせる((とはいえ「カイジ」の世界観を考えるとだいたい予想はつくのだが。))。 #region(ネタバレ) -ある人物とは「桑島涼子」という、ゲームオリジナルの人物。アイドルなのだが色々あってエスポワール号に乗せられ、限定ジャンケンをする羽目になってしまった。 -実力も高くなく、プレイヤーが話しかけたときの状況は「''星1つ、カード1枚''」という悲惨さだった。 -涼子はプレイヤーに「''負けた際には星2つと現金を渡す代わりに、自分の身体を売り渡す''」という約束を取り付け、プレイヤーが要求通りにわざと負けると無事生還を果たす。 -が、その後涼子は約束を守る気もなく男と共に何処かへトンズラしてしまう。 --ちなみに、助けずに別室送りにすることも可能である。 #endregion -キャラのボイスはなくテキストのみ。BGMやグラフィックも、PSというハードの性能を考えてもチープ。雰囲気はあっているのだが…。 -原作の名場面が、惜しいところで台無しになっている箇所がある。例えば利根川のルール説明は「これで説明を終わります」で本当に終わってしまい、その後豹変して「Fxxx You ブチ殺すぞ・・・ゴミめら・・・!」と参加者を脅しつけるシーンが再現されていない((恐らく伏せている部分がアウツだったのもあったのだろうが…。またある参加者に「利根川の演説に感動したクチか?」という台詞があるため元々あったが削除したのかと窺える。後年のアニメ版ではFxxx Youの部分は「黙れ!」と改変されたものの、紳士的な態度から豹変する利根川とその後の説教いう部分はちゃんと表現されている))。 -周回ごとに異なる展開を楽しめるのだが、逆に言えば原作の名場面・名展開・名台詞のほとんどを体験できない((そもそも主人公がカイジではないのだから、カイジが主人公である原作と同じ展開になるわけはないのだが。))。登場すらしない原作キャラも多数。キャラゲーとしては残念である。 -読心術(超能力)を使うと自称する相手に勝つ方法が「シャッフルして自分で自分のカードがわからない状態で出す」というもの。つまり超能力が実在することは肯定されている。それどころか主人公と超能力者が実際に超能力で会話する場面まである。原作の世界観にそぐわない。 --この他もある人物が突然気がおかしくなってカードを燃やして別室送りになったり、主人公が暴力によって星を奪われる等、ストーリーを作るために不自然なイベントがいくつか発生する。 -原作では、非情なギャンブルの中にあっても情を捨てられないカイジの人間らしい姿が丁寧に描かれ、大きな魅力となっていたが、本作にはそのような要素はない。人道的にふるまっても鬼畜に徹しても、ゲームは淡々と進んでいく。主人公は相手を罠に嵌めたり、徹底的に金を絞りとって「ここは戦場、騙されるほうが悪いんだ」と言い出したり、「ククク………」と笑いだしたりすることもあれば、「こいつを騙すのは気が引けるな…」と躊躇したりと場面ごとに性格が変わってしまう。これも原作らしくない点である。 --主人公の性格はどちらかというと''悪人より''。ゲームが進むにつれて非情で打算的な性格になっていくのが前提でストーリーが作られている感じがある。借金をチャラにして船を降りるには他者を堕とさなければならないので当然とも言えるが…。無論、原作のカイジのように情を捨てず、利を蹴飛ばした結果、生き残りはできたものの多額の借金を背負うという展開にすることも可能だが。 -主人公の方から自由に行動することがあまりできない。他者へ話しかけたり、勝負を挑んだりすることはできても、カードの売買等を持ちかけることはできない。((もし可能なら序盤で星を稼いで後はカードを売却、譲渡してすぐにあがってゲーム終了というやり方が可能になってしまうので仕方ないと言えば仕方ないのだが。))イベントが発生しても主人公は基本的に受け身で、行動が強制されてしまう。 -操作性に癖があり、馴れないと参加者に中々話しかけられない。その他にもシステム等について不親切な点が結構ある。これも原作通りと言えなくもないがこのせいで初見のプレイが楽しめるゲームなのに初見でわけがわからないままゲームが進んでしまい、売買タイムを逃したりするようなことがある。 **評価点 -ストーリーはかなり練られている。伏線の張り方や回収等はきちんとできており、共闘した相手が裏切る等ありがちな展開でも、裏切りを予測するための材料、裏切りを見抜いて出し抜くためのトリックがちゃんと作られている。相手の策や罠にハマった際には悔しさに唸らせられるし、見事に策を看破し相手の裏をかいて勝利した際にはさながら『カイジ』や『銀と金』のような爽快感、ヒリつき、勝負の熱、''悪い喜び''が味わえる。 -参加者も原作でいう北見やバランス理論の男のようにしっかりとした戦略を持って勝負に臨む者もいれば、戦場にいるという自覚がない能天気でカモになる奴、そのようなフリをして虎視眈々と罠を張る者等、個性がある。仕掛けてくる罠も十人十色でしっかり作りこまれていて、実はこれらの人物がグルだった等の仕掛けはそうだったのかと唸らされる。参加者から得られる情報もかなり細かく設定されている。 -オリジナルの主人公がいる作品では元々の主人公の存在感が薄くなるというケースがあるが、この作品ではちゃんとカイジがストーリーに絡む。カイジと共闘することもできれば、敵対することもできる。共闘ルートにも複数のパターンがあり、カイジが自分の失態をカバーしてくれる展開になることもあれば、カイジを助ける展開にもなる。カイジが裏切っているのではと主人公が疑う展開にもなりうる。仲間に裏切られて絶望的な状況に陥ったカイジが主人公と手を組み、裏切った相手、そして裏で糸を引いていた船井に最後の戦いを挑むという燃えるルートに進むこともできる。 -クリアしてもリピーターとして船に乗ることができる。周回プレイによってイベントが変化することもあり、元々のストーリーも主人公の行動によって大きく変化するため、飽きさせない作りになっている。遊べるのが限定ジャンケンのみとはいえボリュームがないわけではなく全てのイベントやルートを見ようと思うのなら一種のやり込みにもなる。 -ムービーがやたらと入るが、その出来は当時としてはかなり頑張っている。「電流走る……!」が再現されるなど演出として使いどころもいい。 -イベント時の自由度は縛られてしまうが、プレイを通しての自由度は高い。船でのカイジのように情を捨てきれないプレイでも生き残りは可能だし、徹底して実利に拘って''釜の底を浅ましく醜く這いまわるプレイ''も可能。''星を20個近く手に入れるような神域の如きプレイ''も可能だし、''自らが大勝しつつも売買タイムで星を売り人を救ってさらに儲ける巨悪に駆け上がる''ことも可能。全てはプレイヤーの腕と性格次第。 **その他 -ゲームを始めるとDQⅢのような性格診断が始まる。選択肢を選んでいくだけなのだが異様な程にホラーのような演出になっており、本当にカイジのゲーム?と思ってしまう。 -クリア、もしくはゲームオーバーになると最終評価が下される。項目は不運度、ギャンブル度、不真面目度、破滅度と総合評価の五つ。たいていは低か高だがプレイによっては''無、悪、極''といった評価になる。 -アイテムとして使用できる他、主人公はムービーの中でもタバコを吸う。タバコを吸えるゲームは結構珍しい。他にタバコがアイテムとして使用できるゲームと言えば[[これ>ジョジョの奇妙な冒険]]とか[[これ>新宿の狼]]とか…どこかしら変なゲームが多いのは気のせいだろうか? -ゲームオーバーになると別室送りになるのだが、別室の内容が原作とは大きく異なる。 #region(別室のネタバレ) 別室に連行された先に見えるのは''手術台''。抵抗するも主人公は台に磔にされ手足を拘束され、医者らしき人物が表れて…そこで暗転というムービーが入る。ちなみにこのゲームでは売買タイムはあっても別室の救済については一切言及されていない。 #endregion **総評 -良くも悪くも原作をしっかり再現している。高難易度のゲームや心理戦が好きなプレイヤーなら楽しめるが、苦手な人はまったく楽しめないであろうプレイヤーを選ぶゲーム。 -楽しむには攻略情報を見ず、常に気を抜かず、相手との駆け引きに熟考してプレイしよう。 -別室送りのムービーやあらゆる福本作品から流用されたキャラクター等、バカゲーとしての要素もある。 -練られたストーリーや作り込みの細かさ等の評価点も十分にある。カイジのキャラゲーとして見ると残念な点が多いが、少なくとも凡百のキャラゲーとは一線を画している。 -バランスの悪さ、不親切なシステム、人を選ぶ点によって原作のような高度な心理戦や、能動的に頭を使う頭脳ゲームとしての要素を楽しめるプレイヤーは少数であろう。ゲームの本質としては「人と話して戦術を集め、また人と話してフラグを立て物語を進めていく」というADVに近い内容である。そういうものと割りきって、原作の世界観・雰囲気に浸ることを楽しむべきゲームだろう。 -原作読者なら誰もが考えるであろう「もし自分があの船に乗ったら……?」を体験できる(ような気分になれる)という意味で、原作ファンならそこそこ楽しめるかも知れない。 -その後カイジのゲームはなかなか出なかったが、2008年に新たに『[[逆境無頼カイジ Death or Survival]]』が発売された。しかしその出来は……。

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