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冬のロンド - (2012/12/05 (水) 19:34:55) の編集履歴(バックアップ)


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冬のロンド

【ふゆのろんど】

ジャンル 恋愛アドベンチャー
対応機種 Windows 2000/XP/Vista
発売元 DIVA
販売元 ホビボックス
発売日 2008年10月31日
価格 9,240円(税込)
レーティング CSA:18歳未満禁止
ポイント 良い素材が手抜き調理の所為で台無しに
魅力的だがツッコミどころも満載な世界観

WARNING!!!!!!!
本作は18歳以上のみ対象のアダルトゲームです。

概要

父親の再婚によって雪降るヨーロッパの小国ルミアウラで暮らすことになった主人公
そこで待っていたのは再婚相手の子である美少女で優しくてなおかつ姫君という新しい姉妹たちと*1、貧しいけれど純朴な人々
水道も電気もネットもないけれど満ち足りた日々を過ごしていくうちに、彼女たちに姉妹以上の感情を覚える主人公だったが知らなかったのである
姫君という立場故に課せられた定めを
という内容の物語。

評価点

質の高いテキスト

  • 見た目はちびっこだけどきちんと姉している長女。優等生だけどヤキモチな次女、寡黙な読書家だけど気配りの効く三女、見た目は美女だけど中身は甘えんぼな四女といった具合に定番を抑えつつも変化を加える形で、テキストだけでも魅力的に書けている。
  • 異郷の描写もしっかり書けていて、居心地のいい魅力的な世界に仕上がっている。
  • まとめると表現力は水準以上にある。それだけにシナリオの構成が残念でならない。

問題点

  • ここがヘンだよルミアウラ
    • 日本から飛行機と鉄道を乗り継いで40時間もかかる、北極圏にほど近いヨーロッパの小国。主産業が林業だけで水産業が入っていないところを見ると内陸国らしい。
    • 主人公の家は上流階級なのだが、慢性的な電力不足なので電気は無し。冬場は凍ることから水道や井戸水も使えず、片道徒歩一時間以上もかかる山奥まで歩いていって水を確保する。移動手段は徒歩もしくは馬。学校に通えているのは国民の4割ほどで、なおかつ学校も半日だけで午後は子供たちも労働に勤しむという国。過去や異世界なら問題はなかったのだが、この話は現代のヨーロッパでの話なのである。人によって感想は様々だが、無理がありすぎると感じてもおかしくはないだろう。
    • ゲームだから世に出せたわけで、仮にこの設定で文学賞に応募するのであれば初期の段階で落選。応募先によっては編集者の辛辣なコメントが返ってきたかも知れない。
  • 既に色々とツッコまれてしまっているが、改めてまずは設定について。
    • 凍るから井戸が使えないと劇中であるのだが、地下水の方が凍結に強いのではないのだろうか?
      • 基本的に北極に近づけば近づくほど日照時間の変動が激しくなる。夏は日照時間が長い代わりに冬場は短くなる。ルミアウラは圏内ではないが北極に近い。しかし、このゲームのタイトルは……。
      • つまり、日本よりも日の出が遅く、日の入りが早くなければ不自然になるのだが、ゲーム中では日本と変わらないような感じである*2。少なくとも主人公が言及している箇所もない。また、時差に苦しんでいる様子もないが、40時間もかかる道のり*3で慣れてしまったのではないのだろうか。
  • 次に、物語展開について。
    + ネタバレ
  • 林業だけでは生活できず、王家の姫を世界各地の王家や有力者、金持ちに嫁として売り飛ばすこと*4によって国を運営してきたというのがこのゲームの骨子なのだが、「数世代も繰り返して変わらないとはどういう事だ」「円借款やODAといった言葉を知らないのか?」「DACからの援助はないのか?」とツッコミを禁じえない。
  • そのような重たい運命を課せられた姫と結婚するためには、姫を売り飛ばさなくても生きていけるだけの道筋 (はっきり言って上述の通り) を主人公が提示しなければならないのに出来ていない。そして、エンディング間近になってもなあなあで済まされている……というより無かったことになっている疑いがある。
  • 仮に提示できていたらとしたら「そのようなアイデアを思いつけなかった今までの君主はいったい?」ということになってしまう……のだが、正にその通りとしか言えないのが困りどころ。
  • エロゲ板のKOTYeスレなどでは主人公の評判が悪いが、主人公自体が悪いのではなく、設定の無茶苦茶さの犠牲になっている感が強い。悪い人物ではないが有能な為政者とも思えない国王も同様。
  • 最後に、最大の問題点である「ゲームとしてのシナリオ構成」について。
    + ネタバレ
    • なんと、個別シナリオがない。
    • おかげでシナリオの90%が共通という有様。
    • このゲームの場合、それぞれの姫の許嫁が現れて様々な形で勝負して勝利する、という展開が想像できるのであるが、メインヒロインである次女の許嫁しか登場しない。長女や三女らの攻略を目指しても、それらの許嫁とまったく関係のない次女の許嫁と戦うことになる。つまりそれ以外の長女や三女の攻略を目指しても次女のルートにいってしまう事になる。
    • 次女を攻略するのであれば問題はないのだが、それ以外のヒロインの場合では「オレは次女を攻略しているはずだったのに、気がついたら別の女の子と結ばれていた」と訳の分からない超展開に。
      • しかも、その場合「許嫁を無くしてしまった次女はどうなるんだ」という事になってしまう。

総評

  • グラフィック・文章力・音楽はいずれも申し分なく、世界観もツッコミどころは山ほどあるが魅力的。しかし料理の仕方を間違えた、というより必要な手順を抜いてしまったがために駄作になってしまった。名作になれる要素はあったにもかかわらず、非常にもったいないゲーム。
  • 現代のヨーロッパでありながら、現代文明とは無縁の中世ファンタジー的な風景を描写することは不可能ではないが、難易度が高いのは言うまでもない。そしてこのゲームの場合は、決してそれができているとは言えない。逆にいえばツッコミどころを探して突っ込むという楽しみもあるかもしれない。*5
  • 2008年のKOTYeにはエントリーしたものの次点にすら及ばなかった。……例の魔物と呼ぶのも生温いもっとおぞましい何かに敵う筈がない。*6
  • 「現実に妥協せず、やりたいことをやったらこうなった」という作例としては参考になるかも知れない。