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ロマンシア - (2013/04/25 (木) 07:12:56) の編集履歴(バックアップ)


ロマンシア

【ろまんしあ】

ジャンル アクションADV
対応機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9800F以降、X1、MSX/MSX2、
ファミリーコンピュータ、Windows
発売・開発元【各種PC】 日本ファルコム
発売元【FC】 東京書籍
開発元【FC】 コンパイル
発売日 1986年10月6日
定価 6,800円
分類 クソゲー
ポイント 「高難易度」「バランスが不安定」では済まない
全てが壊れてしまっている超絶難易度(しかも意図的)
もちろんセーブデータ類なし
プレイヤーをハメる事に執念すら感じるトラップの数々
『こんなのアリか!?』
ドラゴンスレイヤーシリーズリンク


概要

木屋善夫氏プロデュースのドラゴンスレイヤーシリーズの三作目。
発売当初は『ドラゴンスレイヤーJr.』という肩書きだったが、後に『ドラゴンスレイヤー3』と改められた。

ザナドゥ・シナリオ2開発後、わずか一ヶ月で作成された作品。一ヶ月で作られた割には、大したバグもなく、スタッフが考えていた通りのものがほぼ出来上がったのだろう。だが、問題なのはその考えていた事だった。
当時のPCゲーム、特にADVやRPGは高難易度の傾向を見せていた。だがそんな状況下でも、本作の難易度は常軌を逸していたのだ。
とにかくすぐ詰む。しかもその原因が分かりにくい。クリアを阻止する気が満々のゲームであった。

ストーリー

昔々、北の森に二つの小さな国がありました。その国々は兄弟で治められており、兄が治めた国はロマンシア、弟が治めた国はアゾルバといいました。そして、二つの国は何事もない平和な日々を送っていたのです。
そんなある日、ロマンシアのセリナ王女が何者かによってアゾルバにさらわれてしまいました。ロマンシアの兵たちが王女を救出に向かいましたが、戻ってくるものは一人もいません。さらに王国内に病気が流行りだし、様々な異変まで起こり始めたのです。
そんな暗い空気が覆うロマンシアに、一人の若者が訪れました。名をファン=フレディ。ある国の王子で、各地を旅して回っていました。彼はアゾルバ王国でモンスターに襲われ、なんとか戦いながらロマンシアにたどり着いたのです。
ですが訪れたそのロマンシアにあったのは、苦しむ人々でした。それを見かねたファンは王宮へ向かいます。そして王からセリナ姫探索の要請を受けたのでした。

システムと特徴

  • サイドビューのアクションADV。一見するとRPGのようだが、RPGのような成長要素はない*1。会話したりアイテムを使ったりして謎を解きながらストーリーを進めていく。
    • 移動は上下左右とジャンプ。ジャンプは二段ジャンプが可能。攻撃は剣による打撃。また剣のストックがある場合は、飛び道具として投げる事もできる。
    • アイテムは様々なものがあり、謎解き用と移動の補助となるものが多い。一度に持てる数はそう多くはない。
    • 魔法はあるが、アイテムの効果で、MPはそれに消費される。
  • 重要なカルマ。
    • 本作にはカルマというシステムがある。良い事をすると増え、悪い事をすると減る。要は徳のようなもの。これを増やす事が謎解きに大きく影響する。
  • 制限時間制のADV。
    • 本作はクリアまでの制限時間がある。その時間はそれほど余裕はない。
      • もっとも、王に会うことで一定の時間に戻す事ができる。ただ序盤は1500にされるので、1500を切るまでは会わない方がいい。

問題点

『こんなのアリか!?』が本作のキャッチフレーズの一つだが、「なしだ」と答えざるを得ない代物であった*2

  • ほぼノーヒントのプレイ。
    • あちこちで会う人々は、攻略のためのヒントをまずくれない。自分たちの要求や、「○○をあげましょう」というたぐいの会話ばかり。謎は手探りで解かざる得ない。
  • 待ち構える凶悪なトラップの数々。ADVらしいお使い要素は最初だけで、謎を解くというより、どうトラップを回避していくかといった要素が多数。その超絶トラップの例を以下に挙げる。
    • 毒の温泉。トラブルが解決する前に入っても何も起こらない。そこで安心して奥まで行って帰ると一瞬で毒に変わっており、HPが1にされてしまう。
    • 殺しちゃいけないモンスター。モンスターは実はアゾルバ国民が変身させられたもの。殺してしまうとカルマがガンガン減っていく。
    • 呪いがかかっていたり、聖なる力が抜けていたりで使えないキーアイテムが多い。しかもそうである事を教えてくれないものもある。使ってみて効果がないので、「アレ?おかしい」という具合に気づくのだ。そして、もちろんどこで使えるようになるかなどというヒントはない。
    • ダミーアイテム。いくつかのダミーが用意され、それを取ってしまうと正しいものが入手できなくなる。
      • しかもそれが判明するのはずっと後のことであり、原因も明示されない。「何か失敗したようで話が進まなくなった」というレベル。原因に気づくには直観力とマメな調査が必要。そしてこのパターンは一つではない。
    • 分からない出入り口。一部の場所の出入り口が完全に伏せられてる場合がある。バタバタともがいてる内にたまたま入れた、なんて偶然が起こらないと気づかないだろう。
    • 触ってはいけない木。それまで触れてもなんともなかったのに、あるタイミングで触れると詰んでしまう。しかもそれが他の背景の木と区別がつかない。
    • 重要アイテム薬は有限。
      • 教会からもらえる薬がある。様々な用途で使え、話を進める上での重要なアイテム。何回行ってももらえるので多用したくなるが、実は有限。切れれば詰む。そしてそれが有限である事は教えてくれない。
    • 希少アイテムをなくしてしまうトラップが、各所に用意された迷宮もある。
    • 発想の転換を迫られる展開がある。気づかないとかなり難易度が上がり、その苦労した先で待っているものは、詰んでしまった事に気づくだけなのだ。
    • そんな本作中でも最凶のトラップが、制限時間が表示され、下二桁がある数字の時だけ通れる場所である。それ以外の時間で通ると、ほぼ脱出不可能な地獄というダンジョンへ直行。さらキッチリ秒単位の正確さを要求してくる場所もある(しかも例の如くノーヒント)。どうやって気づけというのだろうか。
  • そしてこれだけのトラップがありながら、本作はセーブ不能。どんなに話が進んでいようが、もう詰まったら最初からやり直すしかないのである。試しながら謎解きしていく訳にもいかない。
    • 当時、ACTやSTGなどの一部のゲームを除けば、セーブは当たり前にできていた。にも関わらずこの仕様。本作にスキはない。
  • 謎解き以外は問題ない、という訳ではない。
    • 二段ジャンプのタイミングが難しく、しかもそれが必須な場所もある。さらにジャンプや落下に妙な慣性が効き、操作しづらい。
    • モンスターを倒す訳にはいかないので、アクションゲームとしての爽快感は残念なもの。
    • と言っても、いざ倒そうにもリーチが短く、これまた当てづらい。さらに剣を飛ばしてもタイミングによって相手がすり抜けて来る事がある。また攻撃を受けたときもヒットバックが大きく、思わぬ被害を受ける事も。
    • ラスボスがかなり凶悪で、長期戦を強いられる。もちろん負ければ最初からやり直し。

評価点

  • 本作はわずか一ヶ月で作られただけではなく、プログラムサイズも非常にコンパクトにできている。その技術力はさすが日本ファルコム。
    • FD版は起動後にディスケットを抜いても遊び続けることが出来た。つまりソフト本体の容量が64KBを下回るということである。手抜きという意味ではなく、たったこれだけのデータ量でここまでのものを作ったしまったのが凄いのだ。
  • 都築和彦氏によるイメージイラストや、(当時の技術水準での)ファルコムらしい美しいグラフィックや高速スクロール等は評価が高い。

総評

クソゲーと評されてしまうものの多くは、様々な理由から開発者の最初の意図から外れてしまったものだ。だがその中でもわずかだが、あえて意図的にそれを狙ったものがある。いや、クソゲーを狙ったわけではなくとも、そう評されても仕方がない要素をワザと仕込んだものが。本作もそんな稀有な存在の一つである。
そのいかにも親しみやすいファンタジーな見た目、Jr.とついたシリーズ名からは、想像も付かない極悪難易度。攻略本や他人のアドバイスなしにクリアできたプレイヤーは存在したのだろうか?というレベル。ザナドゥという大ヒット作品の後、しかも同じドラゴンスレイヤーシリーズを冠したものだけに、本作の前で呆然としたプレイヤーは数知れず。
Windows以前のPCゲームの代表的クソゲーとして、外す事のできない一本である。

余談

  • 当時の広告にはファン=フレディ王子が本作クリア後に人間不信になってしまったイラストが掲載されていた。こんな極悪難易度ではこうなるのも仕方ないともいえるが。
  • JICC出版局から本作のゲームブック版が発売されている。挿絵を担当したのは星里もちる氏。
  • ソーサリアン』にて本作を非常に簡単にした同名のシナリオが収録されている。「ソーサリアンのロマンシアで初めてクリアした」という人も多数。
  • パソコン雑誌『コンプティーク』で漫画が連載された。ストーリーは初期FFのシナリオ担当である寺田憲司氏、作画担当は円英智氏。
    • ストーリーは「セリナ王女が、ファン=フレディ王子を助けに行く」というゲームとはまったく逆のものになっている。
    • その他オリジナルキャラクターが多く登場するなど、ゲームとはほとんど関係ない『ロマンシア』の名前だけ借りたオリジナルといってもいい内容になっているが、ファンタジー冒険ものとしては名作といってもいい作品である。
    • ちなみにMSX版では本当にセリナ王女を操作する隠しモードがあったりする。