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北斗の拳 審判の双蒼星 拳豪列伝 - (2013/04/29 (月) 10:46:50) の編集履歴(バックアップ)


北斗の拳/北斗の拳 ~審判の双蒼星 拳豪列伝~

【ほくとのけん/ほくとのけん しんぱんのそうそうせい けんごうれつでん】

注意:ここではAC『北斗の拳』(不安定/賛否両論)及びそのPS2移植版『北斗の拳 ~審判の双蒼星 拳豪列伝~』(劣化移植)の両方を扱います。
アーケード版のタイトルは『北斗の拳』だけであり、記事にある副題は移植の際に新たに付けられたものです。



アーケード版

ジャンル ×格闘ゲーム
○世紀末スポーツアクションゲーム
対応機種 アーケード(ATOMISWAVE)
販売元 セガ
開発元 アークシステムワークス
稼動開始日 2005年
分類 ゲームバランスが不安定
賛否両論
ポイント ゲームバランスまで世紀末
格ゲー? いいえ世紀末スポーツアクションゲームです
一人だけ格ゲーしているキャラがいる
変なところで原作愛が凄まじい
ジョインジョイントキィ
(クソゲーギリギリレベルの)バグだらけ
全てのキャラが無限コンボ可能
存在そのものがカオス
神ゲー(異論は認める)
北斗の拳シリーズリンク

概要

 「出たらクソゲー」で名高い『北斗の拳』を原作とする格闘ゲーム。  本作はパチスロ『北斗の拳』で大ヒットを飛ばしたサミーが、意欲的にアーケードゲームを出していた頃に調子に乗って(?)一発企画した代物である。さらに開発がゲームバランスが不安定なことに定評のある(?)アークシステムワークスである。制作中に経営統合したセガに移管したためか、本作の純正筐体であるイーグレット3(タイトー製)の在庫をセガが大量に抱えてしまう羽目になった。

  • ACのロケーションで発売される格闘ゲームとしては初めての北斗ゲー(家庭用には存在したが、出来はお察し)であり、極端すぎるゲームバランスのせいで世紀末ゲーと揶揄される。また、後述のテクニック「バスケ」から転じて世紀末スポーツアクションと呼ばれる事も。

システム

  • 出場キャラクターは物語開始からラオウの昇天までに登場した10人が選ばれた。
+ 登場キャラ
  • ケンシロウ
    • 使いやすい通常技に飛び道具・無敵対空・突進技などを備え、主人公らしくあらゆる状況に対応できるスタンダードキャラ。一方、相手の動きを読んで裏に回る「無想転生」や相手を3秒後(と謳っているが実際にはリアル20秒後)に即死させる「北斗残悔拳」といった一風変わった技も持っている。
  • シン
    • ケンシロウ同様、使いやすい技が多く扱いやすいキャラクター。ほぼ全キャラに対してガードクラッシュを狙えるが、その代わり全ての通常技がジャンプキャンセルできないという特徴がある。
  • レイ
    • 素早い動きに加え、3回まで空中ジャンプが出来る、空中必殺技を数多く持つなどスピードキャラに位置するキャラクター。
  • ユダ
    • 2人の部下(コマク、ダガール)を駆使して戦うテクニカルキャラ。設置系の技が多く、それらを絡めたセットプレイで相手を詰ませて封殺する。
  • サウザー
    • 作中の「制圧前進あるのみ」の言葉通り、攻めに特化した性能のキャラクター。反面、切り返し手段に乏しかったり、全キャラからガードクラッシュをされるなど、守りに入ると非常に脆い。
  • ハート様*1
    • 見た目どおり「機動力が無い代わりに火力が高い」という典型的なパワーキャラ。「ブーストが特定条件以外では使用不可」という非常に大きな制限がかかっているが、専用のガードキャンセルや究極奥義の必殺投げなど非常に強力な技もまた多い。
  • マミヤ
    • ボウガンや爆弾、ヨーヨーなどの飛び道具を使って戦う遠距離キャラ。原作準拠なら正直どう頑張っても他のキャラに勝てるとは思えないキャラであり、攻撃力・防御力ともに全キャラ最低など、それ相応の調整がされている。
  • ラオウ
    • 他のキャラに比べ体力が多いのが特徴。大柄な見た目通りのパワーキャラだが、ケンシロウ同様「無想転生」を持っていたり、ほとんどの技を出した後の硬直をキャンセルして出せる必殺技「無想陰殺」、相手を拘束する「釵(さい)」、必殺技をパワーアップさせる「北斗呑龍呼法」など特殊な必殺技が数多い。一方、移動速度が遅い、バックステップがない、技の発生が遅く硬直も長めと機動力は低い。
  • トキ
    • 本作が「クソゲー」と呼ばれてしまう元凶となったキャラ。癖の強い通常技や当て身といった相手への対応を機軸にした必殺技など、一見癖のあるキャラであるが……詳細は後述。
  • ジャギ
    • ガソリンを撒いて相手の動きを止めたり引火したりといった変わった技を数多く持つが、全体的に技が大振り、ガードゲージと関係なく強制的にガードクラッシュする性質があるなど、意図的に弱く作られたキャラクターと見られている。
  • 操作はレバー+5ボタン(パンチ、キックの弱、強とブースト)という、ある程度オーソドックスなものになっている。ただボタン同時押しによる特殊な行動が多く、まずはそれを覚えないと勝負にならない。
  • 画面には「体力ゲージ」と「オーラゲージ(いわゆるパワーゲージ)」に加え、本作独特のものとして「ブーストゲージ」と「北斗七星ゲージ」がある。さらに対戦する組み合わせによっては「ガードゲージ(ガードによって減少し、なくなるとガードクラッシュして無防備になる)」も出現し、画面情報はやや多め。
  • 本作の最大の特徴といえるのが「ブースト」と「北斗七星ゲージ」である。
    • ブーストは通常技と必殺技をキャンセルして前方に高速で移動する技。ブースト使用にはゲージを有するため乱発はできないが、固め、連続技の発展、技の隙の軽減など汎用性が高い。本作の自由度の高さに寄与しており、その使いこなしは勝敗に直結する。
    • 北斗七星ゲージ(通称「星」)は初期状態では7つあるが、必殺技のカウンターヒットや「究極奥義(超必殺技に相当)」のヒットで一つずつ減少していき、相手のものをゼロにすると原作でお馴染みの死兆星が輝いて「一撃必殺奥義*2」が使用可能になる。ただし一部の例外を除いては1回の連続技中で星は3つまでしか奪えないようになっているため、ワンコンボでいきなり星が削り切られることはない。
  • 全キャラで空中ダッシュが可能であり、空中必殺技を持っているものも多いが、その最低高度に制限がなく、低空空中ダッシュ攻撃や昇り必殺技が強力な中段攻撃として機能する。
  • 本作のレバー入力はやや特殊で「コマンドをきちんと入力しおえてからボタンを押さないと技が出ない」*3という仕様になっている。他ゲーに慣れていると、なかなか技が出ないことも。
    • その代わり、ダウン中に技コマンドを完成させてボタンを押しっぱなしにすると、起き上がる(リバーサル)と同時に技を出してくれるので、俗にいう「リバーサル無敵技」による切り替えしがやりやすくなっている。
  • またガードにも通常ガードのほかアジリティガード(直前ガード)、オーラガード(ゲージを消費して行う強化版ガード)があり、状況による使い分けが必要な場合もある。ガードキャンセル技も搭載されているが、本作のガードキャンセル技は他格ゲーに比べかなり低性能に抑えられており、迂闊に使うと待ってましたとばかりに狩られてそのまま永久コンボに御招待ということにもなりかねない。
    このようにシステムは昨今の格闘ゲームと比較しても複雑であり、人を選ぶものになったことは否めない。「気軽に触れるキャラゲー」といった感じではない。

問題点・賛否両論点

  • キャラが10人しかいない。昨今の格闘ゲームとしてはかなり少ない。
    • そのキャラ選択も、サウザーがいるにも拘らずライバルのシュウを切る(ちなみに南斗六聖拳の中で一人だけ省かれた)、ファン人気の高いジュウザやフドウ、及び人気悪役のアミバやウイグル獄長がいない、その割にマミヤがいる(格闘ゲームの紅一点は嬉しいものだが、『北斗の拳』に限って言えばそんな需要は無きに等しい)など謎が多い。
      • 一応マミヤの名誉のために言っておくと、彼女の人気がないわけでは決して無い。ただ、上記のキャラたちを押しのけて格闘ゲームで使いたいかといえば否なのである…。
      • ちなみにシュウはサウザーステージの背景にちょこっといるだけ。クソゲーと名高い『北斗の拳7』には出演できているだけに、余計に謎である。
      • そして、なぜかハート様がプレイヤーキャラとして使用可能。…ある意味では「解っている」のだが。
    • アーケードモードでは誰を選んでもラスボスは拳王で固定、かつEDも全キャラ共通デモと、どこか物足りない。
  • 『北斗の拳』の世界観にそぐわないスタイリッシュ感
    • 英語によるラウンドコール*4、相手を壁まで吹き飛ばす「バニシングストライク」や相手を浮かせる「グレイヴシュート」などのシステム名は妙にスタイリッシュなものになっている。「他のゲームからシステムを流用したのでは?」という疑惑も。
    • ただし体力ゲージだけは「世紀末体力ゲージ」という若干はっちゃけた正式名称になっている。何故。
  • 激烈なコンボゲー
    • 普通にやっても3割~5割コンボは当たり前、即死、永久コンボも盛りだくさん。一撃必殺技は基本仕様として「連続技に組み込める」ようになっているため、最終ラウンドの決着は非常に速い。当然難易度も高く、インストに基本コンボが記載されるほど。とてもじゃないが、格ゲー経験のない原作ファンが気軽に手を出せるゲームではない。
    • 某所の言葉を借りるなら「ギルティギア(同社の代表作)ツクールで作られている」。それもそのはず、メインプログラマーは初代『GUILTY GEAR』製作に参加したメンバーなのだ。
    • 壁バウンド時と地面に叩きつけられた時に一定の追加ダメージが発生する仕様となっている為、壁を利用したコンボの火力が異様に高い。
    • 「決して地に膝など付かぬ!」と言っていたはずの拳王(ラオウ)様がしゃがみながら小パンをペチペチと入れる(主力コンボ)姿は原作ファンの笑いと涙を誘った*5
      • 実戦においてもラオウは拘束技や小技を中心に立ち回り、長いコンボを地道に決めていくキャラとなってしまっており、キャライメージとは真逆の戦い方をしている(しなければ勝てない)。元より「北斗の拳」は一撃必殺を信条とした必殺技が魅力的な作品なのだが、その他のキャラもコンボ数2桁はザラにあり、このゲームでは 見事に正反対となっている。 もっとも即死・永久コンや一撃コンが多数存在し「先に触れたほうが勝ち」となるゲーム性はある意味原作再現なのだが、格ゲーとしてはどうか。
  • トキの異常な性能の高さ。
    • トキを選んだだけで捨てゲーされたりリアルファイトになったりするほどであり、あまりの強さに一時は使用禁止キャラにしていたゲーセンもあったとか。そして、「ジョインジョイントキィ*6」や「命は投げ捨てるもの*7」といった名(迷?)フレーズが生まれた。
    • その結果、トキは『MVC2』の4強、『KOF2001』のフォクシー、『ジョジョ』のペットショップに並んで「格闘ゲーム史上最強の壊れプレイヤーキャラの一人」と称されることになり、この作品以降に壊れたバランスのキャラが出てきたとき(『戦国BASARA X』のオクラや無印ガンガンのフリーダムガンダムなど)ネタとしてこの作品のトキが引き合いに出されることがある。
    • その強さを支えたのが必殺技「北斗無想流舞*8」。攻撃判定の発生しない移動技だが、「移動速度が瞬間移動に近い速さ」「あらゆる状態からキャンセルで出せる」「足元以外無敵」「動作後の隙はほとんど無し」「相手の裏に回れる」「バリエーション豊富で、地上から空中、空中から地上にも移動できる」など至れり尽くせりの性能で、全キャラ中トキのみが実質「共通システムであるブーストをゲージ消費なしで何度でも使える」というおかしなことに。これを駆使すると、コンボの火力や攻めの継続力、ガード揺さぶり能力がすさまじいことになり、中には一回守勢に回ったら脱出不能というキャラも。
      • 一応トキ自身はこの技がなければ弱キャラとも言われてしまう*9のだが、それが最強になってしまうほどこの無想流舞は強力なのである。トキは他にも高性能な技をいくつも備えているのにもかかわらず、である*10
    • また、究極奥義の一つ「秘孔・刹活孔(相手)」の性能もぶっ壊れている。
      • 元々原作における刹活孔は「一時的に剛力を得るが、代償として自身の命をも削る非情の秘孔」である。つまり、相手のそれを突くのだから、相手の体力と引き替えに相手を強化する実質自爆技…な訳が無く、「発生が早く、暗転を見てからガードがまず間に合わない」「通常ヒットで星を2つ、カウンターで3つ奪い、更にカウンターヒット時は壁バウンドするので追撃可能」「発生時に無敵判定がある上、判定が強力で潰されにくい」「ガードされてなおトキ有利、外しても硬直が少ないので反撃を受けにくい」「空中ガード不能」というぶっ飛んだ性能故に、ぶっ放し*11で使われることが多く、ぶっ放しの刹活孔を「ブッパッコー*12」と呼ぶのが定着した。ちなみに、申し訳程度に本来の刹活孔の効果である「命を削る」部分の再現か、相手の体力の自動回復を一定時間停止する効果もあるが…もはやその効果がどうでもよくなるほどの超高性能技である。
      • 技名に「(相手)」とあるように、刹活孔には自分に突くものもあり、こちらは体力自動回復が一定時間停止する代わりに、攻撃力がアップし、一部の技に星取り効果が付与されるという、原作のそれに近いものとなっているが、相手版が強力すぎて使われることが少ない。
      • 相手版は上に書いたような有様で、刹活孔本来の強化効果を持たずデメリットだらけで、しかも相手版のトキのモーションが本来刹活孔があるとされる左右の大腿の内側では無く、相手の肩の部分を突くかのようなモーションとなっている*13ため、アミバが開発した肩にあるという秘孔「激振孔*14」とも揶揄される。
    • おまけに一撃必殺技「北斗有情破顔拳」の性能も非常に高く、色々な状況から確定する為、一時期は 「北斗の死因の七割はスマイルビーム」 と揶揄された。
    • 前述の北斗無想流舞はロケテスト版にも有ったらしいが、トキの異常さが目立たないほどに他のキャラが壊れていたため*15、大半のプレイヤーはその危険性に気付く事はなかった。とあるプレイヤーが指摘して修正を訴えたもののスタッフに黙殺された、という噂*16もある。
    • 誤解のないように言っておくと「トキを使えば誰でも(格ゲー初心者でも)ほとんどの相手に圧勝できる」というような強さではない。その強さを支えるのは使いこなすのが難しい移動技*17であるので、強さを発揮するにはそれなりのプレイヤースキルが必要になる。実際、このゲームが稼働し始めた最初期ではシンやサウザーが強キャラとされていた。
  • トキ抜きで考えても酷いゲームバランス
    • トキに次ぐ強キャラであるレイとユダも格ゲーの範疇を超えた性能を持っており、トキに並べるほど強い。他のキャラとは五分以上~大幅有利。下位4キャラ相手には6:4~9:1のダイヤをつけている。
      • レイはバランスのとれた能力でありながらあらゆる面で強い器用万能キャラであり、ユダはストライカーを駆使する性能で癖は強いもののやはり強力。
      • 「仮にトキが弱くてもレイ一強(orレイユダ二強)でクソバランスなのは変わらない」とも言われている。対トキ対策が進み過ぎたせいか、トキよりレイの方が強いというガチな意見もちらほら聞かれるようになった。
      • この二人もトキと同様に「使っただけで勝てる」というような性能ではない。特にユダは扱いが難しく強さを発揮するには熟練が必要。
  • 裏を返せばこれらの「三強」に位置するキャラは使いこなせるようになれば本当に手のつけられない強さを発揮するということでもあるのだが。

評価点

  • バランスは凄まじく酷いが、一方でゲーム的な部分で評価できる点も多く持っている。
    • 一撃必殺技を実用的かつバランスを崩さないレベルに調整して実装したことや、ブーストによる自由な立ち回り、ワンチャンスからの番狂わせなど、「クソゲー」と切り捨てるには惜しい点が多々存在する。
  • 原作再現度が非常に高い。
    • 各種モーションやボイスは原作漫画及びアニメ版で描写されたものをとにかく細かく拾って来ており、丁寧に再現している。アニメ版からのモーションも原作のモーションと併せても違和感無く仕上がっており、原作愛が感じられる*18
      • 原作には無かった、また不発で描写が無かった技のモーションに関しても、ほぼキャラクターのイメージに合ったものに仕上がっている。
      • 原作再現のためだけに作られたようなドット絵のパターンやモーションのバリエーションも妙に豊富に作りこまれている。
      • ボイスの使いどころも適切である。
    • 豊富かつ原作を意識したものとなっているキャラクターの別カラー、特殊な掛け合い、特殊なやられ、地味ながらも細かく原作を意識したステータス調整*19など、キャラは少ないながらも原作愛のあるゲームとして認知されている。
    • ジャギの対シン専用技「今は悪魔が微笑む時代なんだ!」や実際に三択問題をさせる「俺の名を言ってみろ」、シンの自殺技「おまえの拳では、死なん」など、原作再現かつロマン溢れる技も魅力。
    • 絵も非常に気合が入っており、ハイクオリティなグラフィックのケンシロウ達を操作できる事も嬉しい。ただし原作準拠ではなく東映アニメ版準拠である点は賛否両論。
      • ラオウ*20とジャギ*21はデフォルトで原作カラーが設定されており、アニメ版のカラーは別カラー扱い。他のキャラクターも、別カラーで原作準拠のカラーが用意されている。
    • 声優陣もほぼオリジナルキャストを起用し、非常に気合の入った掛け声でゲームを盛り上げてくれる。
      • ケンシロウとレイのみ都合により代役となっているが、ケンシロウは一聴しただけでは分からないほど神谷明氏の声質に良く似ており、故・塩沢兼人氏に代わってレイを演じる千葉一伸氏も、キャラクターをよく理解した名演技を披露している。なお、ジャギ役の戸谷公次氏はこのゲームの稼動開始から程なくして逝去。ジャギを担当した最後の作品となった。
  • BGMも好評。ただしサントラは未発売。
    • 余談だが、トキのステージである「始まりの地」のBGM*22は、様々な意味で原作におけるトキらしさが出ていて曲自体は高評価なのだが、稼働初期にトキが暴虐を振った事もあって一種のトラウマBGMになってしまっているプレイヤーも少なくないとか。
      • このゲームでは対戦ステージは後からキャラクターを決定した側のキャラクターのステージになるため、トキで乱入されると否応なしに「始まりの地」ステージの曲を聴かされることとなる仕様によりトラウマBGMになってしまった…ということである。

世紀末到来に至るまで

 稼働直後は原作再現部分は評価されたものの「トキ一強の糞バランス」とゲーム面では酷評された。
 格闘ゲームのチャンピオンシップである「闘劇」の2006年度の種目にも選ばれたが、出場者の半分近くがトキ、そして優勝者もトキ。決勝戦は劣勢の状況から「リバーサル刹活孔→北斗有情破顔拳」という美しいまでのテンプレ決着であり、トキ敗退を願っていた観客たちが静まり返ったのは言うまでもない。
 こんな有様であるため大半のプレイヤーからはそっぽを向かれてしまい、インカムも振るわずロケーションからは次々と撤去。そしてそのまま数あるクソゲーの一つとして忘れ去られるものと思われていた…。

 しかし逆境の中でもやりこみを続けたプレイヤー達により、「バスケ*23」と呼ばれるテクニックが開発されたことで状況が変化。バスケの研究で全キャラが永久・即死コンボを持つようになり、さらにバグ技や細かい仕様などが発見されたことで、ほぼ全キャラクターにどこかしらおかしな強さがある*24事が明らかに。その結果「トキ一強のクソゲー」から「壊れたレベルで均整が取れているゲーム」として評価し直され、「ワンチャンスを活かせるプレイヤースキルさえあればキャラを選ばず勝てるゲーム」として認知されるようになった*25
 そして再評価の追い風を受け、闘劇'08の種目に再び選ばれるという異例の事態に。
 ルールも「筐体に影響のあるバグ(バグ昇竜など)以外は全部使用してよし」という準世紀末なもの。キャラ差が圧倒的に大きいゲームであるにもかかわらず全キャラが予選を突破し*26、「やり込みは裏切らない」を体現した大会となった。決勝は「06大会優勝者のトキVS現全一プレイヤーのレイ」というドラマティックな組み合わせとなり、激戦の末レイが勝利。優勝者はもちろん「'06大会は運勝ち」と揶揄されながらも再び決勝まで登りつめたトキ側にも惜しみない称賛が贈られた。
また、ジャギがこのゲーム随一の不利な組み合わせ(ダイヤグラム1:9とも0.5:9.5とも)であるユダ戦で1ラウンドをもぎ取る、ハート様がベスト8に2人も残るなど、色々と熱い戦いを残した大会となった。ちなみにこの2人のハート様使いのうち1人は、全国で最初に予選が開催された場所であり、動画投稿などにより恐らく最も北斗に関して有名であろうゲーセンでの予選突破者である。最初の切符獲得者はトキでもレイでもなくハート様だった。
 闘劇'08終了から数年経った現在でも、現役プレイヤー達の間では今なお非常にレベルの高い戦いが繰り広げられており、リバイバル稼働させているゲーセンもぽつぽつ見られる。


総評

 これまでの記事を読んでわかるように、このゲームは非常に複雑な経緯を持つ作品である。
 複雑なシステムや操作性のなすハードルの高さ*27、前述の圧倒的なゲームバランスの悪さにより初心者同士or修羅*28同士でないと対戦を楽しめない仕様などから、人によって合う合わないが激しく分かれるゲームであり、決して万人向けのゲームとはいえない。
 だがハマればとても面白いという声も少なからずあり、現状では「面白いクソゲー」という評価が一般的である。 「破綻しきったゲームバランスは酷すぎるorクソゲーすぎるの一言に尽きるが、万遍なく酷いせいで逆にバランスが取れている」という希有な事例であり、「やりこみを重ねに重ねたプレイヤー達によって、クソゲーから良ゲーに生まれ変わった(?)タイトル」の一つと言えるであろう。「本当に良作なのか?」という問いに対し断言するのは誰にもできないが…。

  • 一撃必殺奥義やワンチャンスからの即死コンボによる一発逆転、バグによる奇妙な挙動、原作の再現性など、ゲーム単体としても見ている分にはとても面白いが、動画サイトにアップロードされている動画にはまた別の面白さがある。ゲームセンターでの大会などを動画にしているのだが、実況つきであること、そのマイクがプレイヤーやギャラリーの声まで拾う事により、プレイ・実況・観戦している修羅たちのぶっとんだ言動がまるで漫才やコントのような面白さを生み出す事もある。そうでなくてもゲームの性質上、ラウンド開始直後に小パンが刺さった時点で「勝ったのは○○」などとアナウンスされる事もあるなど*29、他の格ゲーとは一線を画す。
    • また、いわゆる「対戦の実況解説」を広く認知させたことも大きな功績であり、何だかんだで格ゲー界に新風を吹き込んだゲームとして語られることも多い。これを受けてか、闘劇'08では大会動画の実況で有名だったプレイヤーにオファーを出し、実況を行わせている。

余談

  • 闘劇'08の参戦作品において、唯一試合内容を収めたDVDが発売されなかった*30。後に『アルカディア』の付属DVDに収録された試合でも最後の「テーレッテー」がカットされて無音になっている*31など、版権問題に泣かされた作品としても知られている。
  • このチームは後に『戦国BASARA X』という格ゲーを作る。だが北斗の反省はまったくされていなかったようであり、悪い意味でさらにぶっ壊れたバランスになってしまった。トキをも上回る最強の緑黄色野菜、オクラ(毛利元就)や北斗以上に永久コンボが跳梁跋扈する対戦風景は数々のプレイヤーたちを戦慄させ、北斗同様格ゲーの枠を超えたスポーツアクションゲーム(通称戦国陸上)として認知されている。
  • 下記移植の事情も相まって、稼働開始から6年たっているものの、業者向け専門雑誌アミューズメントジャーナルの「ビデオゲーム店舗貢献度ランキング」で今なお20位以内の常連タイトルになっている。
    • 常連タイトルでは『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』『ハイパーストリートファイターII』に次いで古い。
  • 「GAME SUMMER FESTIVAL2012」のエクストラステージにてこの北斗がエキシビジョンの実施タイトルとして選ばれた。実質的に闘劇'12エキシビジョンと言っていい。その名も「世紀末救世主再臨エキシビジョンマッチ」。'前述の闘劇'08の優勝者レイや、ユダからラウンドを取り返したジャギ、ベスト8に残ったハート様などの闘劇本戦出場者が参加。当日参加枠を決めるプチ選抜試合も開かれ、そちらも大会参加者が数十名、中には遠方より訪れた者もいたほどであった。ちなみに本選の参加キャラはトキがいないという意外な展開で*32、決勝戦は闘劇覇者のレイとハート様という組み合わせでレイが勝利。やはり非常にレベルの高い戦いが繰り広げられ、相当の盛り上がりを見せた。もしかしたら正式な闘劇の種目に三度選ばれることもありえるのかもしれない。
  • さらに名古屋で行われる『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』の大会「夜万博」にて北斗の拳のエキシビジョン大会が開催された。今回は全キャラが本選に出場、ベスト4に残ったのがトキ、レイ、シン ジャギ という弱キャラ強キャラが並び立つ結果になった。決勝はトキとレイという組み合わせになり、バスケの応酬という試合展開の末、レイが勝利した。全キャラが出場したことに加え、当日参加枠を決める予選大会では新規のプレイヤーも見られ、このゲームの層の厚さが見える大会となった。

PS2移植版

ジャンル ×格闘ゲーム
○世紀末スポーツアクションゲーム

対応機種 プレイステーション2
発売元 セガ
開発元 アークシステムワークス
発売日 2007年3月29日
定価 7,140円
分類 劣化移植
ポイント 修正したら劣化移植に

そんな紆余曲折の末、一周して高い評価を得ることになったAC版『北斗の拳』だが、その家庭用は移植度が低く、評判は悪い。

AC版からの追加点、変更点など

  • 家庭用追加モード
    • 「ヒストリーモード」と呼ばれる、原作でのシチュエーションを再現するモードが追加された。ゲーム中に原作のシーンを再現すると、その画像が見られるようになる。が、この再現シーンの画像がゲーム内の画像の使いまわしで構成されており、原作の絵や書き下ろしの絵を期待していたプレイヤーから不満があった。
  • AC版との差異が多い。
    • ユダの仕様が変わっており、AC版とプレイ感覚が違ってしまう。AC版のユダ使いが少ない一因。
      • ユダは部下を召喚して戦うキャラクターなのだが、その部下の召喚される位置がAC版と違う*33ため、同じような感覚で技を使えない。そのため家で練習してもいざACでやると仕様が違うため、練習にならないどころかそのせいで感覚が狂うことになる。
    • ユダだけでなく、サウザーの「鳳凰呼闘塊天」(サウザーのスピードを一定時間上げる技)も効果時間が異常に短くなるといった地味な変更がされている。
    • ステージの横幅が狭くなっているため、運び距離が長い一部のコンボで繋ぎのタイミングが変わる。
    • AC版にあったバグをいくつか取り除いてしまっている。おかしな話だが、本作ではバグ利用も立派な戦術なのである。筐体をKOしてしまいかねず、闘劇でも禁止行為に指定されたレイの「バグ昇竜」はともかくとして、汚い(褒め言葉)などと言われつつもシンの戦術の一つになっており闘劇でも使用が認められていた「ムテキング」の修正は残念だとする声も多い(一応練習は出来るが、成功したかの確認ができない)。
    • また、AC版に存在したラグや処理落ちが無いので、AC版とプレイ感覚が異なることがある(特にラオウ)。
    • しかしトキのナギッからの即死やレイの嫌らしい強さは家庭用でも健在。トキ使いやレイ使いが多いのもこれが関係しているかもしれない。
    • 原作再現要素が一部カット(ハート様の象徴「ひでぶっ」が「いてぇよ~」に変更*34など。
  • BGM、音声の不具合。
    • 一部効果音の音量が変更されていたり、削除されていたりする。
    • SEが鳴らないことがある。これまたユダに顕著。
    • FATAL KO時のBGMがたまに音飛びする。
    • これらの現象のうち、一部はPS2でのみで発生する。

これらの不具合はベスト版でも修正されていないため「完全移植版を出して欲しい」という声が根強い。

総評

 AC版がでてから2年以上経過した後の移植なので、元々移植する予定がなかったようだ*35
 仮にAC版がつまらないクソゲーだったとしても劣化移植には変わりないのだが、その場合は「(バグも含めて)完全移植して欲しい」という声は出なかっただろう。そういう意味でも奇異なゲームである。バグの修正ありなしモードを切り替え可能だったりしたら、もう少し評価は上がっていたかもしれない。