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星をみるひと - (2013/04/06 (土) 15:43:50) の編集履歴(バックアップ)


星をみるひと

【ほしをみるひと】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ホット・ビィ
発売日 1987年10月27日
分類 クソゲー判定
ポイント クリア自体がやりこみという理不尽さ
ゆっくりしていってね!!!(移動的な意味で)
ひっと力下1ケタの消失
戦闘はほぼ運ゲー
場合によってはゲーム進行不可
世界観やBGMは意外と好評
FCにおける伝説のクソゲー
『伝説のクソゲーども』
トランスフォーマー コンボイの謎/たけしの挑戦状/燃えろ!!プロ野球/ 星をみるひと /爆伝 アンバランスゾーン/
ソード・オブ・ソダン/摩訶摩訶/デスクリムゾン/里見の謎/ファイナルファンタジーIVアドバンス

概要

ゲーム誌『週刊ファミ通』の「やりこみ大賞」(各種ゲームの凄腕プレイを募集・評価する企画で不定期に掲載されていた)で、「このゲームのクリア=やりこみ」として表彰されたことがあるという伝説のRPG。
それほど難易度が高く、理不尽な仕様の多いゲームなのである。

電源を入れると、宇宙を背景にした美しいタイトル画面(上の画像を参照)が現れる。期待に胸を膨らませてゲームを始めると…。

問題点

最初から不親切

何も無い野外フィールド画面に、主人公がポツネンと一人たっているところから始まる。
ドラクエの出来損ないのような汚いグラフィック、オブジェクトの配置も無茶苦茶で、タイトル画面の美しい宇宙のイメージは微塵も感じられない。
ただただ景色が広がるだけで、話しかけられそうな人がいるわけでもない。
オープニングもプロローグもなく、何をすればいいか全くわからない。

ちなみにあの有名なドラゴンクエストもプログラム完成直後は、本作同様スタート直後にフィールドのど真ん中に放り出されるという仕様だったらしい。だが子供たちにテストプレイをさせてみた所、「最初に何をしたらいいのか分からない」という苦情が殺到した事から、「このままでは不親切なゲームになる」として現在のラダトーム城の玉座から始まるという仕様に変更になったのだとの事。本作でもそれ位の気配りをしてくれれば…。

実はこのゲーム、主人公をとりまく状況や世界の現状が説明書にしか書かれていないのである。

  • ゲーム中ではストーリーの基本設定は語られない。本当にエンディングまで語られることはない。説明書なしだとストーリーが微塵も理解できないだろう。

ちなみに説明書によれば、
「主人公は超能力者だが全ての記憶を失っている。自分が何者なのか、ここはどこなのかも分からない」
要するに何もわからないこと自体が仕様なのである。

だが真の問題点は、説明書を読んでいてもこれから何をすればいいか全くわからないということである。

始めて5分で分かる凶悪な難易度

実は、主人公のスタート地点から左に一歩進んだところに最初の街が存在する
そこに辿り着けば様々な情報が手に入り、冒険の準備もできるのだが、この街は「超能力で隠れている」という設定でフィールド上には表示されない
最初からそれはないだろう…。

  • この設定も説明書に書いてあるが、中古を買ったなどで説明書が無い者にとって「ノーヒントの隠れ里を探す」なんて気づける人はリアル超能力者だけなので、結局できることは、あてもなく移動することしかない。
    運良く左方向のキーを押せば必ず街に入れるが、それ以外の方向のキーを押すともう街を見つけるのは至難の業。

とりあえず移動をはじめると、主人公の歩くスピードがやたらと遅い

  • その速度はドラクエなど一般的なRPGの約半分のスピードであり、1秒に1歩ペースとも言われる。
  • なお主人公が街中で足を止めると、その間にNPC(村人など)が何故かものすごい速さで移動する。プログラムのバグなのかどうかは知らないが、これだけ速く動かせるなら主人公の移動速度もなんとかしろと言いたくなる。

フィールドを移動していると、戦闘に突入。しばらく戦っても敵は一向に倒れず、そのまま全滅、ということがよく起こる。

  • 実はこのゲーム、エンカウントの設定がデタラメで、最初のフィールドでもLv1ではどうしようもない強敵が出ることがある
    • 一つ例を上げるなら、最初のフィールドで遭遇する可能性のある敵「ふっかつしゃ」は ゲーム中最強のESPを使ってくる 。分かりやすく例えるなら、 スライムベスがベギラマを使ってくるようなもんである
  • そして下記するように、戦闘システムがあまりに酷いことと相まって「最初の街に辿り着く前に死ぬだけのゲーム」という伝説が生まれたのである。

アンバランスすぎる戦闘システム

街に辿り着く前に即死というなら、運良く隠れ里につけたプレイヤーはそこからまともにプレイできるのだろうか?

残念ながら答えはNOである。
装備を整えたとしてもある程度のレベルに達するまでは戦闘が凶悪な難易度を誇り、このゲームで最も有名なクソ要素の1つとなっている。

  1. 通常攻撃の威力は「素手の場合は敵の強弱に関係なく0-3のダメージ」「武器を持っていた場合は味方の攻撃力-相手の防御力」と設定されているため、攻撃力の弱い武器を装備してしまうと通常攻撃でダメージを与えることができなくなる
    後半の敵は、最強武器の「じゃいろSP」か「素手」(与えられるダメージは0-3しかないが)以外通じない。
    • 「じゃいろSP」は、本来はゲーム中で2番目に強力な武器。
      最強武器の「ぷらずまほう」は、攻撃力が一定の値以上になると「じゃいろSP」より強くなるはずなのだが、何かの手違いなのか、システム上攻撃力がその一定の値以上になることは不可能
    • なお、上の説明ではずっと「攻撃力」という言葉を使っているがこのゲームでは攻撃力を「じゅくれんど」というパラメータで表しているので注意。
      また、装備の変更は新しい武器を購入したときのみ自動で行われ、購入時に古い武器は売却されてしまうことも留意しておきたい。
  2. 「逃げる」というコマンドが存在しないため、どんなに強い敵が現れても逃げられない
    • 一応、「てれぽーと」というESP(呪文)を使えば逃げられるのだが、最初はもちろん使えないし、一定確率で失敗することもある(失敗した場合は、戦闘に入った場所に応じて特定の地点に飛ばされる)。
  3. コマンドのキャンセルができないため、一度の入力ミスが致命傷になることがある。
  4. 自分のひっと力(HP)の下1ケタが表示されない。例えばHPが「50」のときは「5」と表示される。
  5. 必ず先制攻撃ができて攻撃の順番も選択できるため、「すばやさ」のパラメーターの意味がない。
  6. 「攻撃をかわす」「はずす」という概念もない模様。
    • この点については、「じゅくれんど」が命中のしやすさとダメージの与えやすさを総合的に扱ったパラメータとして解釈されてるのだと思われる。要するにこのゲームで頻出する「0ダメージを与えた」という状況は、攻撃をかわされたという状況なのである
  7. レベルアップしても、SEが鳴るだけでメッセージは表示されない。どんなパラメーターがどのくらい上がったのかも、説明されない。 上記の仕様を頭に入れた上で、弱い敵をなんとか倒していけばレベルアップはできる。
    このゲームはレベルアップの能力上昇が極端で、1レベル上がるごとにHPが倍々ペースで増えていくので、序盤を乗り切れば以降の冒険はだいぶ楽になる。
    ただし、HP以外の能力はさっぱり上がらないため、終盤でも通常攻撃はほとんど効かない。万が一ESPを切らしてしまうと攻撃もできず逃げる方法もなくなる*1
    わざと全滅しようにも向こうの攻撃でも10程度しかダメージを食らわないため、このころには4~5桁に達するHPが仇となって、全滅するだけでとてつもない時間がかかるという無間地獄に陥る。
  • パーティが全滅すると、以下のように叱られる。
    • この みじゅくもの!
      ぜんいん、しぼうしてしまうとは…
      もういちど でなおしてこい!

また、このゲームには「かりう」という最凶の技がある。

  • 「かりう」とはときどき敵が投げてくる薬の名前で、これを食らうと「びょうき」(いわゆるマヒ状態)になり、行動できなくなる。
    • 「にゅうえあ」というESPがあれば回復できるが、使えるキャラクターは1人だけで、当然序盤は使えない。と言うか覚えるのは割と後半。
      にもかかわらず、ゲーム開始直後に出てくる敵も「かりう」を使ってくる。攻撃をかわすという概念がないので100%食らってしまう。
  • しかし、本当に恐ろしいのは「びょうき」状態は戦闘中に自然回復できないということである。
    • 特に後半で「びょうき」状態になってしまった場合、全滅するまで敵の攻撃を受け続けるしかない。
      しかし前述のとおり最終的なHPが5桁にもなるこのゲームでは、そんなことをやっていたら下手をすると1時間超えもありえる。
      潔くリセットボタンを押しましょう。
      • 他のゲームでは、こうした「全員がマヒ・石化等して自然回復不可能」な場合には即座に全滅扱いとなり、少なくともやり直す手間だけは省けている。
  • ちなみに、物語が進むとある方法で「かりう」を入手することができ、戦闘中に使用することもできるが…。
    • 「かりうをのむと からだじゅうに さむけが おそった。」と出て自分が「びょうき」になる。投げろ。

理不尽&謎だらけな展開

命からがら最初の街に到着した後も、何をやっていいのか、むしろ何をやっているのか分からないことが多い。

  • マップ間の繋がりがおかしい場所が多く、入った場所と出てくる場所が一致しない場所(例:2番目の町から外に出ると、なぜかスタート地点にいる)が複数ある。
    また、出入り箇所は合致しているのだが、なぜそこに繋がっているのかが理解できない場所(例えて言うなら、トイレのドアと学校のドアが繋がったような不一致感)もある。
    • なおこれについては一応法則性があり、「MAPの外周から外に出て別MAPに移動した場合、その時いるエリアに応じた特定の場所に飛ばされる」と言う仕様によるもの。最初の世界における「特定の場所」とはスタート地点なので、2つ目の町やら途中の洞窟やらで外に出るとここに戻される。~町やダンジョンから外に出る場合、最初の世界の「発電所」を除いてMAPの端から外に出るものばかりなので必ず変なところに出る一方、階段などの特定の移動マスに入って別のフロアに直接飛ぶ移動についてはこういったチグハグは無い。
  • 特定のドアをくぐるには「IDかーど」というアイテムが必要なのだが、この「IDかーど」はどんなアイテムよりも遥かに値段が高く設定されており、しかも片道ぶんの効果しかない
    つまりドアを往復するには「かーど」が2枚必要であり、1枚しかなかった場合はドアの中に閉じ込められてゲームの進行は不可能になってしまう
    • 「かーど」を何枚も駆使し、幾つかのフラグを立てることによってようやく仲間になるキャラクターがいるのだが、手順の煩雑さから仲間にする方法が分からず、仕方ないので結局仲間にしなかったというプレイヤーも多かった(しかもこのキャラ、仲間にしなくてもさほど問題なくクリア可能)。
    • そのキャラクターはパーティで3人目のポジションを占めているのだが、普通にゲームを進めている限り4人目のほうが先に仲間になる
      そのため、プレイヤーは不自然な空欄を抱えたままゲームを進めていくことになる。
      • このことについてはさすがにメーカー側も重く受けとめていたらしく、「あのキャラクターはどうやったら仲間になるのかとメーカーに質問してみたところ、親切に攻略の手順を記した手紙を返信してきてくれた」という当時の体験談がいくつか報告されている。
  • クリアに必須な「さんそぱいぷ」の入手が非常に困難。
    • ある地点から先に進むのに「さんそぱいぷ」が必要である事自体はゲーム内で知る事が出来る(さんそぱいぷを持たない状態で先に進もうとするとメッセージ表示される)が、それがどこにあるのかは完全なノーヒント。落ちている場所に行ってもアイテムのグラフィックが何もないので、偶然真上を通過して拾うまでどこに落ちているのかを知る手段が無い
      運良く拾っても入手時に小さなSEが鳴るだけなので、いつ手に入れたのかも分からない。と言うか拾った事に気づかない場合さえある。落ちている場所が目で見えないと言うのは他のアイテムでも同様だが、入手時のメッセージはただの小銭ですらちゃんとある。
  • ダメージ床(ダメージゾーン)が存在するのだが、特にエフェクトがなく、気がつかないうちにHPがガンガン減り、気づいたころには死んでいるということが多い。
  • 当時はまだ珍しかったと思われるマルチエンディングシステムを採用しているが、最後に出てくる選択肢の決定のみでルートが決まるという味気ないもの。
    選択肢にはボスとの戦闘を匂わせるようなものもあるが、それを選んでも実際に戦闘になるわけではなく、主人公たちが戦いには勝てなかったことが簡潔に説明されて物語は幕を閉じる。スタッフロールも無い
    必ずしもクソ要素とはいえないが、ラスボスと戦わないRPGというのは珍しいかもしれない。
    • これはバッドエンドなのだが、グッドエンドもあまり後味はよくない*2
    • 本来ならもうひとつエンディングを用意するつもりだったのか、本編に使用されていないエンディングメッセージ(ボスとの戦いに勝った際のものと思われるイベントデータ?)がロムに残っているという話も。ただし、これさえもバッドエンド扱いになっていて後味が良くない。
      このことについては、こちらのサイトで言及されている。
  • 「けさ の ちょうしょく の けろっぐ は、 なっとう の あじ で、 うまかった。」に代表されるように、とてつもなく謎な台詞が多い。
    • ネタであれば、ある意味かなりいいセンスといえるが、いかんせんゲームのできがこれなので…。
  • 後述するようにBGMはいいのだが、街のBGMが前衛的でカオスさを醸し出している。それに対してフィールドの曲は穏やかでBGMの設定を逆に間違えている可能性もある。

変なパスワードのシステム

  • パスワードの入力が不便で、区別のつきにくい文字がいくつもある(例:数字の1と英語のIがほぼ同じフォント)
    • ドラクエのように文字表から文字を選んでいくのでなく、十字キーを上下することでA,B,C,D…と順番に表示されていくシステム。しかもこのゲーム、パスワードに使われる文字があ~ん・ア~ン・A~Z・0~1・特殊記号類、と150種類近くあるため、文字を探すのに非常に時間がかかる。
  • パスワードにはカタカナが使えるのに、本編ではすべてひらがなとアルファベット。
    • その割には、ゲーム中でのメッセージに誤字・脱字が非常に多い。「ちょし(調子)」「おおじさま(王子様)」など思わず笑ってしまうような文言のオンパレード。
      挙句の果てには、エンディングのメッセージにさえ誤字・脱字が存在する。
  • パスワードを入力しても前回のデータを完全に再現できない。パスワードの文字数を減らすための工夫と思われるが、反面お金を個別管理するなどの無駄も見られる。
    • 説明書によると、「ごーるどは多くて255ごーるど引かれます。けいけんちは多くて3引かれます。」とのこと。
    • ゲームの再開時に(悪いものだとポーズからの再開時でも)機微な情報が切り捨てられ、プレイデータが完全に再現できないゲームは他にもあるが、ここまで切り捨てられるものは珍しい。
    • 逆に言えば、パスワードの法則さえ分かればしょっぱなから最高LVでプレイできたりもする。というか、こうでもしないとツライ

評価点

  • BGMは全体的に出来が良く、特にパスワード入力画面のBGMは現在でもファンの間では神曲として語り継がれている。おまけに結構、長い。このBGMおかげで上記のパスワード入力時の苦痛がどれほど軽減された事だろうか…
  • SF的な独自の世界観・ストーリーは実はしっかりと構築されている(ゲーム内での描写がそれに追い付いて行っていない感は否めないが)。ドラクエを始めとする代表的なRPGとは一線を画するSF的な世界観を持ったRPGは当時の家庭用ゲーム機においては珍しく、それに魅力を感じるユーザーは少なくない。
  • 敵キャラのデザインもSF世界をしっかり表現した秀逸な物が多く、さらにドット絵の書き込みもファミコンとしては高水準(一部良く分からない敵もいるが)。

総評

以上のように非常にクソ要素の多いゲームではあるものの、SFチックな世界観のストーリーやシュールさと美しさを兼ね備えた音楽、ドラクエのパクリに見えながらもオリジナリティに溢れたゲームシステムなどは一部から支持されており、今でも熱狂的なファンが存在する。

最後までプレイして世界観やストーリーを完全に理解できれば、このおかしなゲームバランスや鬼畜難易度が世界観に即した表現の一種であることに気づけるため、そういう意味では手抜きで狂ったバランスになったゲームとは一線を画する*3。惜しむらくはゲームを通じて世界観を伝える演出が致命的に下手なことと(英語モチーフの固有名詞が全部がひらがなって時点でまずわかりにくい)、世界観に即したバランスが別にゲームとしての面白味につながってないことである。

余談

  • 「もしかしたらクソゲーにはならなかったかもしれない」、若しくは「クソゲーではなくなった『星をみるひと』を見たい」という声は多く、そんな意見を現実にしたのが、フリーゲーム『STARGAZER』である。
    これは原作を元に有志がリメイクした作品であり、『魔界塔士Sa・Ga』を参考にしたゲームシステムに作り直されている。
    興味を持った人は、まずはこれをプレイしてみよう。
    • 作者が独自に追加した要素は多いものの、おおまかなストーリーラインや主要キャラクターはオリジナルと同じ。
      もちろん、バランスや操作性、グラフィックなどは改善されている。
      • それでも難易度は高めだがせいぜい死んで覚えるレベル。添付のヘルプを見れば序盤詰まることはないのでかなり遊びやすくなったといえる。
        オリジナルでもむしろ好評だった部分はそのままで、独特の世界観からプレイヤーを選ぶものの、全般に遊べるゲームになったといえる。
  • その難易度の高さやクソ要素から話題になりやすく、ネット上にたくさんのプレイ日記や動画がある。Hackロム(ソフトのROMデータを改変したもの)なんかもあったりする。
  • 本作は同社が1984年にPC-8801及びFM-7で発売したRPG『サイキックシティ』と世界観が共有されていることを示唆する部分が見受けられる*4
  • Lvが上がると戦闘中のキャラグラフィックが変わる(成長する)など微妙に芸の細かいところがある。まあ、「その労力を他の方面に使ってくれ」と言わざるをえないが…。