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輝く季節へ - (2013/05/09 (木) 14:17:38) の編集履歴(バックアップ)


輝く季節へ

【かがやくきせつへ】

ジャンル 恋愛アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 KID
発売日 1999年4月1日
定価 6,800円(税別)
分類 微妙リメイク
ポイント どこか蛇足な追加CG
半ば黒歴史の追加ヒロイン
元シナリオの改変はほぼない

概要

アダルトゲームブランド、Tacticsが発売したゲーム『ONE 輝く季節へ』のPS移植版である。
原作のスタッフは、後に泣きゲーブランドとして一世を風靡した「Key」を設立したことで知られており、ONEも時折Key作品と同列に扱われることがある。

実は原作スタッフのうち、当時Tacticsに残っていたのはプロデューサーのYET11(吉沢務)氏のみであり、他のスタッフはほぼKeyに移っていた。
元のタイトルは商標(PSにおいて既に『ONE』というゲームが発売されていた)の影響で使えなかった模様。

レビュー

良移植かダメ移植か、と二択で言えばダメなほうである。
原作も元々絵の巧いゲームじゃないが、移植に当たって追加されたCGが原作以上の微妙さであったり、追加CG自体蛇足の要素が強かったり、元は画面下にメッセージウィンドウが表示されるのを、画面全体にテキストの貼られるビジュアルノベル風にしたところだったり、後のKeyに通じる美しいBGMがPSの内蔵音源にコンバートしたことで若干劣化した点だったり、飯塚雅弓や横山智佐などの有名どころを呼んでいたわりに声優の演技に違和感があることだったり(声が付いたことを評価されている部分もあるが)、などの点で不満が上がるものの、些細といえば些細なレベルではある。
元がエロゲーなのでそういうシーンは当然省かれており、いわゆる「事後」すら匂わせないものにすり替えられているものの、それ以外の原作部分に手は加えられていないため、代替品としては実用に耐えるものとなっている。

+ だが…

7人目のヒロインとして追加された「清水なつき」の存在が、原作のファンから過剰に叩かれ、結果本作の存在が一種の黒歴史にされた、と言えるところもあるのである。

元々『ONE』が受けた理由は、幼い頃に妹と死別したトラウマからか、次第に「えいえんのせかい」と呼ばれるものに引きずられていく中、ヒロインとの絆を見つけそれを頼りにえいえんから帰還する、というシナリオの流れであるとされ、いわゆる「泣きゲー」「感動系」の先駆けといわれたことにあった。

翻ってなつきシナリオの場合は、他のヒロインと比べて極端に登場が遅く、関係の進展が駆け足だったこと、結局主人公が元の世界に戻ってこない結末だったことなどのため「解釈の仕方がおかしい」と原作ファンから憎まれることになってしまった。
とは言え、なつきが失った兄の代わりを主人公に求めたという描写に重きを置き、えいえんから脱出したのは実はなつきで、シナリオの重点は「なつきとその兄=主人公との決別」にあると見た、踏み込んだレビューをする者もいるところにはおり、一概に否定出来るものでもない。

ただ、やはりなつきの存在が煙たがられているのも事実である。賛否両論というより、拒絶反応の声が大きい。

システム面/ウィンドウの使い方

  • 『輝く季節へ』ではノベルゲームに特有の、全画面を薄暗く表示し、その上へテキストを表示していくスタイルを採用している。
  • ところが原作『ONE』の画面表示は典型的なギャルゲースタイルであり、メッセージは画面下の狭いウィンドウ上へ全て押し込められていた。ただし、書く側もそれを意識して執筆していた気配があり、表示領域の狭さが気にならないどころか、むしろ効果的に働くような演出となっている。
  • つまりウィンドウ全域に文字をかぶせるノベルゲースタイルへ変更した結果、本来の演出意図が損なわれてしまったといえなくもない。
    • はじめからこちらでプレイする分には気にならないであろうし、もちろんこの方が読みやすくていいという意見もあるはず。問題点というには大げさであり、変更点のひとつと表現しておくべきとは思われる。

難易度

  • こちらはリメイクによるものでなく、原作『ONE』からそのまま継承してしまった難点。
  • 選択肢式のアドベンチャーとしてはやや難易度が高く、こと『ギャルゲー』として評価するなら理不尽に近い側面もある。
    • もっとも顕著なのは特定のヒロインへ最初だけ好意的な対応をし、後はひたすら悪意的な選択肢を選ばなければならないルートの存在。
    • また序盤の何気ない連続する選択肢で「正しいひとつ」を選べているかが、最後の最後で明暗を分けるシナリオも存在する。どこで何を間違えていたのかヒントはなく、展開そのものもギリギリまではほぼ同じ。
    • 序盤の特につながりもない別のヒロインへの応答が、こちらのルートでは中盤以降の行き止まりを打破するキーになってるなんてのも茶飯事。
    • そもそもバッドエンド自体、後味こそ悪いものの、お話としては一応完結してしまっている。なまじ「どのヒロインとも仲良くなれなかったルート」が存在することもあり、プレイヤーがトゥルーエンドの存在に気づかない可能性すら……
  • 端的に言うと、攻略情報を参照しない限り、かなりの苦行。
    • 更に困ったことに、おそらくはその苦行自体が演出も兼ねている。
    • 「正解の選択肢」を機械的に選んでいく遊び方では、この作品を味わいきれない危険性あり。それを踏まえた上でもなお、詰まったら大人しく攻略サイトに頼ることを勧めたいが。

総評

劣化していることは確かだが、シナリオの根幹部分が改悪されているわけではないのでひとことで「劣化移植」と呼んで良いのかは難しいところである。
追加ヒロインである清水なつきの存在を受け入れられない原作ファンにとっては蛇蝎の如くに嫌われる物で、PS版から入った人やなつきシナリオをありだと捉えた人にとってはそこまで酷いと思えないもの、と言える。