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クロックタワー3 - (2012/11/08 (木) 18:09:57) の編集履歴(バックアップ)
クロックタワー3
【くろっくたわーすりー】
ジャンル
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ホラーアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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カプコン
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開発元
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カプコン、サンソフト、フラグシップ
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発売日
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2002年12月12日
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定価
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6,800円
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分類
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クソゲー判定
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ポイント
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完全に別ゲーム ホラーゲーから変身ヒロイン特撮ゲーへ 深作欣二の遺作にして最大の黒歴史 魔法少女 ホラー? いいえ、ミュージカルです モーションアクターェ… 一番の被害者はシザーマン
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クロックタワーシリーズリンク
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概要
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5歳の誕生日の前、不可解な手紙を残して音信不通となった母を心配し実家へと帰ってきた主人公の少女アリッサ・ハミルトンは、そこで謎の老人と出会ったのをきっかけに恐ろしい怪奇へと巻き込まれる。やがてアリッサは自分が「魔のモノ」と戦う力を持つ「ルーダーの家系」の末裔である事を知り、魔のモノの王となる為自身の命を狙う老人とその配下の魔のモノ達との戦いへと身を投じる事となる。
…と過去作経験者なら分かるだろうが、とてもこれまでのクロックタワーとは似ても似つかないシナリオ。過去作に比べファンタジー的な要素が強い。
これまでのクロックタワーシリーズを手掛けていたヒューマンの倒産後に版権を引き継いだサンソフトが、カプコン及びカプコンの子会社フラグシップとの共同開発によって制作した作品で、カプコン側が中心となって開発された。
イベントCGムービーを『仁義なき戦い』や『バトル・ロワイアル』で有名な深作欣二が監督している。氏が発売の1ヶ月後に亡くなったので、この作品が事実上の遺作となったのだが、その出来はと言うと…
批判点
システム
前作に当たる『CLOCK TOWER GHOST HEAD』も敵を銃で撃退可能だったりとそれまでと比べ異色で賛否両論だったが、本作は開発が変わったとはいえあまりにも従来のクロックタワーとはかけ離れていてほぼ別ゲーと言ってよい。あまりの変わりように旧来のファンからは批判が続出した。
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過去作プレイヤーにとっての最大の違和感はステージ最後に待ち受けている「怪人との直接対決」であろう。この状態ではお互いに体力が存在し、アリッサが魔法の弓を用いて相手の攻撃を避けながら魔力で相手を拘束し派手な演出の一撃で相手に大ダメージを与えて倒す…というまるでファンタジーアクションのような内容。最終決戦後半ではギリシャ戦士のような衣装に変身して戦うため「変身魔法少女」と揶揄されたりも。
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体力ゲージが設定される為、凶器攻撃や必殺技が直撃しても力尽きるまで何度でも立ち上がるという構図に。ゲームとしては間違っていないが、殺人鬼から逃げるホラーゲームはどこに行った?
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従来の追跡者は決して倒せない不死身の存在だった為、ゴーストヘッドでも指摘された「不死身の殺人鬼から逃げる事しかできない恐怖」から更にかけ離れたと非難された。多くのレビューサイトでは、どんなに頑張っても硫酸男までが恐怖の及第点。
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通常の探索時は前作までと同じ「隠れるか一時的に撃退する」のみだが、RSIシステムの廃止とその代わりに聖水を使っての撃退、攻撃を受けてもパニックゲージがMAXにならない限りハンマーで殴られても硫酸を浴びても死なない…となったのも賛否が分かれた。システムもそれまでのクリック探索型からスティックでの移動・ボタンで調べる一般的なアドベンチャーシステムとなり、字体ややたら光るアイテムなど、アリッサの操作以外はバイオハザードに近い。
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ゲームバランスとしては「敵の出現率がやたら高い割に回避ポイントが少ない」のが問題に。
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過去作のシザーマンは特定ポイントを調べたり一定時間経つとランダムで出現したりはするものの出現頻度はそう高くなかった。しかし今回の敵は出現条件が多く、特定ポイントを通る事で強制出現したりもするためかなりの頻度で遭遇する事となる。特に斧男以降はそれがかなり顕著で「撃退して1分経ったか経たないかの内にまた襲ってくる」なんてことも多々。それに比べて回避ポイントはせいぜい数個とかなり少なく、撃退ポイントは1度使うともう使用不可なので結局ステージに何個もない隠れポイントに一々戻らなければならない。この極端な出現頻度がゲーム(特に後半の)を面倒にしてしまっている。
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アクション的な操作を要求される部分もあるが、これも微妙。ステージ2の正しい板の上を進む場面では、間違えた板に乗ると割れて落下し、いちいちスタート地点に流される。正解は固定だが、見た目ではどれが正しい板なのか判らないので、何回も落ちまくってクリアしろと言わんばかり。しかも割れた板は何故か毎回復活する。その上ペナルティなどは無く、ただ戻されるだけなので只管グダグダな演出になっている(上記の仕様で更にペナルティがあったらそれはそれでシビア過ぎるかもしれないが)。
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ステージ4では城の外壁を伝って通ると言う冷や汗を搔きそうなシチュエーションがあるのだが、絶対に落ちる事は無い。足元が危ういような演出があるだけで、何をしようが絶対安全だし、追跡者や幽霊が襲ってくる事も無い。ただタルい移動をさせられるだけである。
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一応、落下したら死亡するポイントや、即死トラップを避けながら進む場面と言った緊張感のあるシーンも存在する。
ストーリー・演出
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ストーリーは前述の通り、魔のモノだとか魔法が使えたり霊的な物も存在したりとファンタジー要素が多い。今まで殆ど「現実世界で突如正体不明の不死身の怪物が襲ってくる」というような恐怖を演出したストーリーだった為、その辺も「クロックタワーとは呼べない」という意見に繋がっている。
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一応話の中でダン・バロウズやクロックタワーなどは登場するのだが、過去作とは何の関係もなくただ名前が同じなだけの物を取って付けただけ。
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構成も単純に粗い。設定の矛盾に始まり、場面転換・展開・演出は悉く唐突で見ていて不快になってくる。単純なホラー演出一つとっても滑り気味。
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主人公のアリッサはかなり早いうちから自身の使命を自覚し、戦う決意をする。従って中盤からは追跡者達を「倒すべき敵」と認識し、恐怖を抱くことも少なくなる。勇ましい限りだが、このゲームのコンセプトとしては大問題である。パニックホラーなのに序盤で主人公に恐怖を克服させてどうするのか。
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ルーダーにしても、前述したもの以外に「10代の女のみで15、6で力は最大に高まり、以後衰え20で消失する」という設定がある。要するにルーダーは絶対に少女でなくてはならない。スタッフは魔法少女になにかこだわりでもあったのだろうか?
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ムービーでのキャラクターの動きや喋りがやたら不自然。異様なまでのオーバーアクションとともに淀みなく早口で台詞をまくし立てたりと喋り方が劇やミュージカルのような感じに。イベントも舞台での劇のような演出が多く、特に物語後半の歴代ルーダーの魂の語りは劇そのもの。ホラーなのにその不自然さに思わず笑ってしまう「ミュージカルゲー」の名を欲しいままにした。
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ゲームの画面を見るのはプレイヤーであり、画面との距離はせいぜい1~2メートル。そこにオーバーな身振りは必要ない。一方、舞台では劇場内は広大で、後方の観客にもわかりやすいよう大きな動作が必要である。分野に応じて異なる演出方法があるのに、それを無視した結果誕生したのが思わず笑ってしまう苦笑ムービーの数々である。
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追跡者となる魔のモノの配下は総じて饒舌で煩わしい位よく喋る。特に終盤ではシザーマンが現れるのだが、これはクロックタワー2までのシザーマンとは似ても似つかない完全な別人。いでたちはさながら京劇の役者のようであり、性格はやたらハイで「アクション!」だとか「カモンアリッサ!」と言いながら追いかけてくる特撮怪人っぷり。武器も鋏というよりか片刃の双剣を時折交差させて鋏のようなモーションをとってみたりするだけという徹底してシザーマンのイメージとは程遠いキャラクター像に、旧来ファンは怒るやら呆れるやら。過去作のシザーマンを考慮せずとも狂気的というよりただうるさいだけでホラー性をますます希薄にさせている。
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彼の最期はと言うと、拷問器具が突き刺さると言うエグいものなのだが、何故か傷口から紙吹雪のようなものが噴出すと言う何を狙ったのかさっぱりな演出(そもそもルーダーの力でしか倒せない不死身の怪人ではなかったのか)。しかもその後は兄妹の霊が振り子に乗ってはしゃいでそのまま消滅するという、最後まで何を狙っているのか判らない演出であった。
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妹のシザーウーマンとの2人の笑い声は林家ペー&パー子を彷彿とさせる。もはやギャグの域。その妹も外見が全盛期のシノラーにしか見えない。
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この様にゲーム作品のムービーとしては問題だらけであるにも関わらず、桜井政博氏はファミ通コラムで絶賛していた。亡くなった深作監督に配慮した結果、提灯記事になってしまったと思われる。
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味方キャラであるデニスも著しく不評。
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一言でいうとヘタレキャラ。加えて狂っているようにしか見えないオーバーなリアクションに嫌悪を抱くユーザーも。
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因みにCVとモーションキャプチャーを担当したのは程嶋しづマ。程嶋しづマは後にDS版の『ファイナルファンタジーIV』でセシル・ハーヴィのCVを当てたが…。
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ゲーム中の回避ポイント(撃退ポイント)の演出がどれもおかしい。何故かハンマー投げの要領でバイオリンケースを投げるアリッサ、それが偶然当たって崩れてきた荷物で埋まるハンマー男、勢い良く開け放たれたドアにぶつかって気を失う硫酸男、自分で投げた斧が原因で漏れたガソリンが引火して燃える斧男、飛び掛ったら勢い余って落下するシザーマンと、最早ギャグとしか思えないようなものが少なく無い。
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全体的に単なる偶然で回避に成功するポイントや、不死身の怪人でありながら簡単に気絶するシーンが多く、突っ込みどころが満載である。
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エンディングが一種類しかない。従来はマルチエンドであり、大量のバッドエンドを回避して最後まで辿り着いた時に初めて真のエンディングに到達出来る、と言う構成だったのだが、本作は完全に一本道なので普通にクリアすればそれで終わりである。無論、他のエンディングを探す楽しみなど無い。そして唯一のエンディングは前述の有様である。
その他
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魔の配下全体のデザインも特撮ヒーローの怪人を思わせる様な風貌の配下が目立つ。それもそのはず、キャラデザインを担当しているのは『仮面ライダーZO』や『人造人間ハカイダー』、『牙狼-GARO-』などで有名な雨宮慶太。多くのファンが「人選ミスじゃないのか?」と首をかしげた。
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余談だが雨宮慶太氏は、本作より前に発売された同メーカーのゲーム『鬼武者2』でもキャラクターデザインを担当していたので「人選が面倒だから引き続き担当してもらったのでは?」という疑念もある。
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なお魔の配下のCVだがほとんどが特撮の俳優を起用している。スタッフは特撮になにかこだわりでもあったのだろうか?
その中でも斧男は、あの伝説のクソゲーの主人公を髣髴とさせるほど異常に甲高い声であり、完全にミスマッチである。
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主役のアリッサの顔が外国人っぽくない。日本人がモデルと言うが、「イギリスが舞台なのに、何故?」と疑問視するユーザーも少なくない。余談だが『1』『2』の主人公であるジェニファーは、ゲームのモデルとなったホラー映画『フェノミナ』の主演女優ジェニファー・コネリーがモデルである。
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ゲームクリア後の特典が少なすぎる。コスチュームチェンジとムービー、イラスト鑑賞しかない。しかも2周目は強制的に難易度が上昇した状態でスタートする。
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余談だが、コスチュームは日本版と海外版で異なる。海外版ではカウガール、レザースーツ、鎧と言ったものに対し、日本版はセーラー服の夏服と冬服、サンタ衣装である。リージョン毎のプレイヤー層に合わせたのだろうが、サンタ衣装はともかくセーラー服二種類は殆ど色違いなだけであり(何故か冬服は眼鏡が付属)、靴もデフォルトのものと同じなので、全種類が全く別の海外版に比べると手抜きに見えなくも無い(さすがにその辺りまで突っ込むのは野暮だが)。
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前述の通りキャラの声は日本人があてているのだが、キャラが日本語を喋っていることに違和感を感じる人もいる。
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字幕が無い。そう言った作品は珍しくは無いが、本作は聞き取り難い台詞や上記の通り早口でまくし立てる部分が少なく無いので困る。
評価点
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グラフィックは綺麗。特にCGムービーの美麗さは抜きん出ている。
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硫酸男はかつてイギリスに実在した殺人鬼、ジョン・ヘイグがモデルとなっているので恐怖が増す。とは言っても最初からこの設定がわかっている人はいないだろうし、言動がアレなので……。
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もっともジョン・ヘイグの場合、殺害方法は硫酸ではなく、銃を使った射殺である。硫酸は死体を消すための手段であった。
余談
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キャプチャの撮影は相当苛烈だったらしく、OPの手紙読んで立ち上がるシーンだけで丸一日費やしたらしい。
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大した拘りようだが、作品の評価を見る限り完全な空回りに終わっているのが非常にむなしい。
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公式サイトでも実際のムービーと撮影現場の両方が公開されているなど、熱の入れっぷりだけは伝わってくる。
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説明書も前半は深作欣二監督を初めとするスタッフのインタビューであり、マニュアルは後半から。載せるとしても逆が妥当だろう。
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難易度の上がった2周目では魔のモノの配下たちの武器グラフィックが変更されるのだが…。
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斧男の武器はなぜか鎌。斧男を名乗っているのに鎌が武器というのはいかがなものか。
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シザーマンの武器はまさかの日本刀。外見もあってもはやなんのゲームのキャラか分からない。
総評
過去作からのあまりの変わりっぷりに加え、『粗あり・幼稚すぎ・消化不良』の雑なシナリオ、単体として見てもミュージカル調の台詞や別の意味で異常な敵、やたら高い出現頻度などゲーム的にも今一な点が多く、ホラーとしての評価はシリーズファン・新規共に高いとは言えない。特に旧来のファンには「どこがクロックタワーなんだ?」と怒りに満ちた意見で殆どが酷評。
深作欣二監督の遺作という点でも完全に黒歴史扱い。だが、逆にぶっとんだギャグゲーとしてそれなりの評価があったり、戦闘も新規プレイヤーには悪くなかったりと「こういうものだと思えば」いけるクチではある。まあ「ある種面白い」の域を出ていないが。
数年後、同メーカーより本作のいくつかのシステムを継承した『DEMENTO』が発売された。こちらはクロックタワーシリーズのファンから「クロックタワー3よりもクロックタワーらしい」と言われている程、好評である。