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ライフスケイプ 生命40億年はるかな旅 - (2012/04/23 (月) 00:34:53) の編集履歴(バックアップ)


ライフスケイプ 生命40億年はるかな旅

【らいふすけいぷ せいめいよんじゅうおくねんはるかなたび】

ジャンル 知育?
対応機種 セガサターン、プレイステーション
発売・開発元 メディアクエスト
発売日 1996年05月24日
分類 完全にクソゲー判定
ポイント あの名作ドキュメンタリーに何故かゲーム要素を付与
取って付けた感の強い謎のゲーム部分
無駄な二枚組ディスク
内容を原作から大幅削減


ゲーム内容の前に・原作について

「生命 40億年はるかな旅」というNHKのドキュメンタリー番組を御存じだろうか。
このドキュメンタリーは1994年から1995年にかけて、NHKのシリーズ物のドキュメンタリーとして放送され、視聴者から大きな人気を博した、いわゆる「NHKの本気」を見ることのできる名作ドキュメンタリーのひとつである。
内容としては、生命の起源から始まった地球の生命の歴史、そして未来を、その分野に携わる研究者や専門家の考察や資料、そしてCGムービーなどを交えつつ追って行くものとなっており、毛利衛が進行役を務めている。
内容の科学的な正確さという点に関しては一部に批判の多い回もあるが*1、生命の誕生からカンブリア紀、恐竜時代、人の祖先の誕生そして現代と順を追いつつ、海から陸へと生活場所を開拓していく生物たちの過程や、大空を飛ぶ生き物に関する考察、昆虫たちの生態などにも細かくメスを入れており、退屈すること無く生命の歴史を学ぶことができる。
大島ミチルの奏でる数々のBGMや当時最先端のCGなども評価が高く、今でも多くの図書館のAVコーナーの常連を務めているほどの人気がある。
上記のように一部に問題点がある上、1994年当時の知識・学説に基づいた内容なので現在の説とはいささか異なる部分もあるが、大筋に関しては概ね間違いはないので、興味がある方は近くにあるNHKの番組公開ライブラリーや図書館などで探してみるのもいいかもしれない。

…ここから本題に入る。その名作ドキュメンタリーは、かつてゲーム化されたことがあることをご存知だろうか。
ドキュメンタリー原作のゲームという類を見ない作品になった本作品…この記事では、その前例のない試みに挑戦したゲームの内容を取り上げていく。

概要

  • DISCは2枚組で、それぞれのディスクは「海」「陸」をテーマにしている。
    • プレイヤーは架空のテーマパークをめぐり、その各アトラクションで、地球の生命の歴史をたどっていく。
    • 各アトラクションでは、原作の一部内容を視聴できるモードとアトラクションの取り扱う時代・生命にまつわるミニゲームを遊ぶことができる。

問題点

結論から言うと、このゲームの「名作ドキュメンタリーとゲームの融合」という目論見は 見事に失敗している。

  • 原作映像は中途半端
    • 原作の映像を収録しているのだが収録内容が中途半端で、大幅に内容が削れている。特に各ジャンルの専門家たちの解説などは大幅にカットされている。映像そのものも高画質とは言い難く、ガタガタしている。
  • ゲーム部分もことごとくクソ
    • というより、そもそもゲームとしての体を成していないものも多い。基本的にスコアやクリアといったものは存在せず、放っておけばミニゲームは永遠に続く
    • 「DNAジェネレーター」はランダムで4個のDNAが出現し、配列によって違うカンブリア紀の生物(のポリゴンモデル)が水槽の内部に現れると言うもの。水槽に現れた生物は観察して楽しむことができる…それなら最初からリストアップした中から見たい生物を選ばせろ
      • ポリゴンモデルも、放っておいても特に何をするでもなく泳ぎ回っているだけ。プレイヤーが干渉することも出来ない。それはゲームとは言わない
    • 「オペラ・ド・バクテリア」では、バクテリアによる 『酸素生産→軟体バクテリアの合体→硬体・軟体バクテリアの融合』 という細胞誕生のプロセスを体験できる…だけ。それ以上でも以下でもない。
      • ゲーム開始時に登場する「実験水槽にバクテリアを投下する、取ってつけたような機械の腕を装備したミロのヴィーナス」は見物。
    • 「カンブリアン・サバイバル」…ネクトカリス(カンブリア紀の生物の一種)となって、襲い来るアノマロカリスから逃げ延びる…それだけ。「クリア」も「スコア」も存在しない。アノマロカリスが襲ってきたら逃げるだけの作業で、ゲーム性もへったくれもない
    • 「フィッシュ・エボリューション」では水槽を泳いでいる好きな古代の魚を選び、レントゲンを見ることができる。ミニゲームとは言ったものの、ゲーム性は全く付与されていない。骨格構造を知りたいならムービーで十分。それはゲームとは言わない。
    • 「アイル・オブ・バロサウルス」では孤島に住む生物たち(バロサウルス・亀・鳥)を観察することができる。おもしろいのはこの時「視点を選ぶことができる」という点で、基本は神様の視点とでもいうべき第三者視点だが各動物の目線に切り替えることで「鳥から見たバロサウルス」「亀から見た鳥」など、様々なアングルを選ぶことができる。凝った作りではあるもののすぐ飽きてしまう。それはゲームとは(ry どうでもいいけど、バロサウルスと鳥類が同じ場所に生息していたことは無い。
    • 「プテラノドン・シミュレーター」では文字通り、プテラノドンとなって空を縦横無尽に飛び回ることができる。島に着陸したり、他の仲間と編隊を組むことができ、無心でプレイするには丁度いいかもしれない…が、これもすぐ飽きてしまう
      • と言うか、端的に言えば目的もなくふらふらと飛び回るだけのミニゲームである。
    • 「マウス・イン・ザ・フォレスト」は食物連鎖を表したゲームで、プレイヤーはねずみとなり、木ノ実を食べて糞を排泄し、その糞が樹木となって成長していく様を見ることができる。とどのつまりは、「木の実を食べてフンをして、新しい木が生えて実がなって、その実を食べてフンをして、新しい木が生えて実がなって、その実を食(ry…」を繰り返す、かのエンドレスエイトも真っ青な正真正銘の作業ゲーなのである。もちろん終わりなど無い。
      • 時折プレイヤーはフクロウに食われることがある。イレギュラー要素はそれだけ
    • 最後を飾る「モンキー・エヴォリューション」では、プレイヤーはサルとなり、木の実や箱といった道具を駆使して頭上にあるバナナを手に入れることで「サルの進化の過程」を味わうことができる……ってそりゃあ「進化」じゃなくて「学習」だろう
      • 獲得形質や獲得知識は基本的に遺伝しない、という進化学の初歩知識がわかっていない。
      • 唯一ゲームらしいといえばゲームらしいミニゲームではあるものの、少し頭をひねればクリアできる上にステージも片手で数えられる程度しかなく、全ステージが終わったらループする。この程度のゲームを繰り返し遊べとでも?
  • アトラクション間を移動するためにはジェットコースターのような謎の乗り物を使用して移動するのだが、いちいち安いCGムービーと読み込みが挿入され、非常にテンポが悪い。アトラクションに入ったら入ったでフルCGのマップを自力で移動してモードを選択するための部屋までたどり着かねばならない。その行程は必要なのか?
    • ディスクをチェンジする際にもムービーが入るのだが、そのジェットコースターもどきは何故かレールを飛び出して宇宙に飛んでいく。最早理解不能。

総評

…ここまで読んでくれたあなたならもう分かると思うが、完全にクソゲーである
しかもクソ度が?突き抜けすぎて逆に笑いがこみ上げてくる類のものではなく、性質としてはあれこれそれに近い「何を狙ったのか分からないクソゲー」「誰得ゲー」なので、いよいよもって救いが無い。

素材となる原作は最高だったが、調理を完全にミスしたためにそびえ立つクソの山になってしまったいい例。
「ゲーム部分はどうでもいいから、映像が見たい」というプレイヤーもこれを買うくらいなら、 今すぐ最寄りのNHKの番組公開ライブラリーか図書館で原作を試聴するか、原作を買い揃えた方が絶対にいい。

「映像資料よりも生命進化を題材としたゲームを楽しみたい」というプレイヤーもこれを買うくらいなら、『46億年物語』(PC98版,SFC版どちらでも可)か『シムアース』でもやっているほうがはるかに楽しめる。

余談

  • 上記にもあるように、本作品で解説されている生物史の知識のかなりの部分は、現在から見ると過去の学説になってしまっている*2。まあ古生物学は年単位で定説が変わる分野なので仕方ないのだが。
  • なんとこのゲーム、『ライフスケイプ2 ボディバイオニクス』という続編がある。こちらのモチーフは同じくNHKスペシャルの「驚異の小宇宙人体」。ゲーム部分以外にCGを使った臓器の解説映像があるのも一緒*3だが、ゲーム部分は本作とはうって変わって「ナノマシンを操縦して体内に侵入したウイルスを撃破する」というシューティングゲームになってしまった*4
    • こちらも「映像の質が悪い」「弾の挙動が変」「操作性が最悪」「3D酔いしやすい」という欠点を抱えたクソゲーであるが、本作よりは遥かに遊べる部類ではある。いや本作がひどすぎるだけなんだけど。
    • なお臓器についての定説はそう簡単には変わらないため、臓器の解説については、概ね現在でも十分通用する知識を得ることができる。