*スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望 【すーぱーひーろーさくせん だいだるのやぼう】 |ジャンル|特撮ヒーローRPG|&amazon(B00005OVVM)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|バンプレスト|~| |開発元|日本メディアプログラミング(JAMP)|~| |発売日|2000年11月22日|~| |定価|7,140円|~| |分類|''クソゲー判定''|~| |ポイント|シナリオ・システムの全面的な見直し&br()しかし質そのものには大差なし|~| **概要 様々な番組の特撮ヒーローがコラボレーションするRPG『[[スーパーヒーロー作戦]]』の2作目。~ 前作から『超人機メタルダー』や若干名のウルトラ兄弟が離脱したが、『仮面ライダー』シリーズや『イナズマン』、そして知る人ぞ知る『星雲仮面マシンマン』が新たに参戦。~ 最新の参戦作品は、発売前年まで放送されていた『ウルトラマンガイア』である。 **前作からの改善点&変更点 前作の酷評は開発スタッフにとって相当なショックだったらしく、今作ではあらゆる面で徹底的な見直し、改良が図られた。 -参戦作品を純粋に実写特撮作品のみに絞り、ガンダムを排除。また、バンプレストオリジナルのキャラクターも登場しなくなった。 --前作では、特撮とアニメが共存しているということもあって登場人物の顔グラフィックは全員アニメ風の絵柄で描かれていたが、今作では写実的な絵柄に変更された。~ 顔グラフィックはオリジナルの俳優の特徴をよく捉えており、なかなか完成度が高い。 ---顔グラフィックの量そのものも前作に比べてかなり増えており、変身前や変身後などのバリエーションも用意されている。~ また、主役のみならず、戦闘に参加しない脇役キャラクターの一部にもグラフィックが付くようになった(前作ではそういったものは一切存在しなかった)。 -場所を選ばず、いつでもセーブをできるようになった。これにより、「セーブスポットの配置場所で盛り上がりどころがバレる」という前作での欠点が改善された。 --セーブ画面にはシナリオ内容にちなんだサブタイトルも付記されるようになった。文面は基本的に原作準拠である。 -前作はシナリオの節目節目がやや分かりづらかったが、今作では事態が解決すると原作準拠のエンディング・ミュージックが流れるようになり、オチが分かりやすくなった。~ 『ウルトラマンガイア』に至っては、前期EDと後期EDを使い分けるという念の入りようである。 -アイテムショップや売り物のシステムを簡略化。売買がしやすくなった。装備品はカテゴリー別ではなく、全キャラクター共通となっている。 --また、戦闘中でも装備の付け外しが可能になった。~ これにより、「新しく加わった仲間が丸腰のまま初戦闘を迎える」という前作の不安点が解消された。 -サウンドテストとムービー鑑賞モード、カード鑑賞モードを実装。~ トレーディングカードのシステムも簡略化され、オリジナルCGを手軽に見られるようになった。 --取りこぼしたカードを再び拾いに行けるような救済措置も徹底されており、カードをコンプリートする難易度も前作に比べ大幅に下がった。 -ヒーローたちの必殺技に「属性」の概念を導入。戦略の幅が広がった。 -ウルトラマンガイアに出てきたアイテム、「パーセル」をゲームシステムに取り入れ、一部を除く敵キャラを仲間に加えて戦わせることができるようになった。~ 洞窟系の寄り道ダンジョンでは''ボス級の敵キャラも仲間にすることができる''。 **問題点(シナリオ面) が、プレイヤーから特に熱望され、スタッフも相当慎重に取り組んだはずの''シナリオ''が、本作における最大の問題点となった。~ このゲームの取扱説明書には、「''あらゆる作品の世界観をミックスし、誰もが納得のいくシナリオに仕上がっています''」と書かれているのだが…。~ 詳細は追って説明する。 -ストーリーは、ウルトラマンガイアの章→仮面ライダーの章→キカイダーの章…と進む、いわゆるオムニバス形式をとっているが、~ それぞれの舞台の時間軸や地域はチグハグで関連性は無きに等しい。~ その3つの章が終わってはじめて、全てのヒーローが終結しラスボスに向かう「帝国決戦の章」が始まる。 --取扱説明書でのストーリー紹介には、''ウルトラマンガイアのこと以外何も書かれていない''。 -まず、最初に始まる「ウルトラマンガイアの章」は、ウルトラマンガイアこと高山我夢を主人公とし、怪獣がらみのクエストを攻略していく。 --基本的にウルトラマンガイアだけで怪獣と戦うため、仲間を集めてパーティーを編成したりするような楽しみ方はできない。~ 一応、ウルトラマンアグルや宇宙刑事たちが仲間に加わることもあるが、あくまでスポット参戦でしかない。~ 最もパーティーへの加入期間が長いギャバンですら、「ダイダル兵の足止めをする」という名目で破滅天使ゾグとの最終決戦には参加せず、~ あくまでも『ガイア』に登場したユニットだけで『ガイア』のボスキャラと戦うという、コラボゲーとしては面白みに欠ける展開となった。 --シナリオ内容も殆どが『ウルトラマンガイア』の話。~ 原作の再現度はかなり高いのだが、コラボRPG『スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望』ではなく、RPG版『ウルトラマンガイア』をやっているような錯覚におちいる。 ---宇宙刑事シリーズのキャラクター(一条寺烈など)に焦点をおいた独自のシナリオへと寄り道することも何度かあるが、これらの敵キャラは『ガイア』の本筋ともいうべき根源的破滅招来体に絡んだ話にはまるで姿を見せない。~ ………根源的破滅招来体にビビッていたのだろうか? ---ちなみに、これらの宇宙刑事シリーズのキャラクター(一条寺烈など)は、前作のような強引なキャラ付けこそなされていないものの、それゆえに個性に乏しく存在感に欠ける。~ 穿った見方をすれば、「(前作で)宇宙刑事をストーリーの根幹に絡めたら批判を受けたので、今回は脇役に留めて本筋に絡めないことにした」という風にも受け取れる。~ そんな消極的な路線変更をするよりも、''新たな活躍のさせ方を模索したほうが良くはなかったか''。 -次に始まる「仮面ライダーの章」では、『仮面ライダー』(1~79話)、『仮面ライダーV3』、『仮面ライダーBLACK』の話を順々に進める。 --本章では3つの敵対勢力、ショッカー、デストロン、ゴルゴムと1つずつ戦っていく。~ 「敵対勢力は常に1つ」というシチュによってストーリーが分かりやすいが、~ スパロボや前作にて「敵対勢力が複数あり、お互いに結託あるいは衝突する」というシチュに慣れたプレイヤーからすれば悪い意味で単純なストーリーでしかなく、~ 「デストロンとゴルゴムの結託or衝突」を期待したプレイヤーを落胆させることとなった。 --仮面ライダーのシナリオは「''ウルトラマンガイアが活躍した1年後''」という設定のもとスタートする。~ 前章では近未来風の世界観で話を進めてきたのに、''昭和の日本人を主人公''とするのは不自然である。~ もっとも、オンラインでの銀行預金が出てくるなど、生活様式は平成10年代=2000年代のものに近くなっているが。 --「仮面ライダーの章」では、原作後半の敵・ゲルショッカーは登場せず、その役回り…ライダーと地獄大使の戦いにて暗躍し、ショッカー壊滅後に新組織として名乗りを上げるのは、デストロンとなっている。~ 問題は、ショッカー日本支部所属の怪人として登場するショッカーライダーたち(本来はゲルショッカー所属)が割りを食っている、ことにある。 ---本作でも、ショッカーライダーたちは精鋭扱いされている。~ …が、やっているとこは「仮面ライダーそっくりの外見で各地を荒らし、仮面ライダー達の信用を失墜させる」という、単純な作戦でしかない。~ とんだ汚れ仕事である。 --『BLACK』編では重要なシナリオだけで占められており、『V3』編のガマボイラー戦のような「寄り道シナリオ」がないため、窮屈な感じが否めない。 --ちなみに、前作で仮面ライダーが参戦しなかったのは、~ 「ウルトラマン、ガンダム、仮面ライダーは、あまりにメジャーな作品なので、3作揃うと他のヒーローにスポットが当たりづらくなる。ゆえに、ウルトラマンとガンダムを2本柱として、仮面ライダーだけあえて参戦させなかった」というスタッフの意向があったからである。~ このことから、「ガンダムを出せなくなったので、仕方なく仮面ライダーを出して2本柱とした」と邪推もできる。 -3つ目に始まるのは「キカイダーの章」。「仮面ライダーの章」と同じ時期、違う地域で繰り広げられたシナリオらしい。 --前作で『人造人間キカイダー』にまつわるシナリオはひと通りやり尽くされているため、~ 今回は『キカイダー01』を主役に据えたシナリオ展開となっている。~ 再現されているのは原作の序盤までであり、中盤以降に登場した「大犯罪組織シャドウ」は、『イナズマン』の新人類帝国に置き換えられている。~ ここにきてようやく、複数の作品の世界観がミックスされた。 --ナレーションによると、これらの話は「ダークの壊滅から3年後」という原作どおりの設定である。~ つまり、ガイアの章が始まった時点で、ダークは壊滅済みということになる。~ …だったら「ガイアの章」に、ダークを滅ぼした後のキカイダーことジローが出てきても良かったのでは。 -帝国決戦の章にて、昭和ウルトラマンと、怪獣が出現する。~ これがきっかけで、各地からヒーローが集結し、拡大パーティー「ガイアセイバーズ」が結成される。 --驚くべきことに、この段階になって初めて、''前作と世界観を共有していたことが判明する''((一応厳密に言うと、前作ラスボスがやった「創造」を、本作ラスボスが真似しただけで、純粋な続編というわけではない。))。~ このゲームは前作とあまりにも作風が違ううえに、あいまいな伏線しか貼られていなかったため、唐突に思ったプレイヤーも少なくない。 --そして、以後は前作から続投した初代ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャックがパーティーの指揮を取る。~ つまり、''ウルトラマンガイアや仮面ライダー、キカイダー01のシナリオは、単なる前フリでしかなかったのだ''。 ---おまけに、これらウルトラマントリオは、ゲームもかなり終盤まで差しかかっているというのに加入時のレベルが低く、''わざわざレベル上げをして育ててやらなくてはいけない''。 -ここまで読めばお分かりになるかと思うが、つまり、スタッフは「誰もが納得のいくシナリオ」を書くために、''あらゆる作品の世界観をミックス『しない』''という手段をとったのである。~ これでは、「看板に偽りあり」と思われても仕方が無い。 **問題点(システム面) また、せっかく改良を加えたはずのゲームシステムにも、不満点が少なからず存在する。 -戦闘のテンポが非常に悪く、前作に比べて明らかに劣化している。 --このゲームでは、通常攻撃の1発1発ですら固有の技名が付いた「ゲージ無消費の必殺技」として扱われており、~ ''普通のパンチをするだけでいちいち決め台詞を叫ぶ''ようなキャラもいるため、1回1回の戦闘に非常に時間がかかる。 ---かと思いきや、キカイダー系の通常攻撃はただの「パンチ」であり、しかもそれゆえに''攻撃モーションが最もスピーディである''。~ どうせなら全部のキャラをこういう風にしろ。 --全体的にザコキャラが打たれ強い。本来であれば中ボスクラスの敵がザコキャラとして登場することも多く、事態に拍車をかける。 ---このゲームでは、パーティーキャラの平均レベルに応じてザコキャラの強さが変動していくシステムが取られている。~ つまり、その差は永遠に縮まらず、''最後までザコ戦に労力を割かれる羽目になる''。 --おまけにエンカウント率も高い。 ---しかも、戦闘に切り替わる際の画面エフェクトでさえも''前作に比べてテンポが非常に遅くなっている''。 -これだけテンポが遅いにもかかわらず、''あらゆる場面においてレベル上げが必須''のバランス。 --メインのシナリオが終わり、パーティーから離脱したキャラは再び加入するまでレベルが低いまま取り残されることになる。~ また、先述のウルトラマントリオも含め、あらゆるキャラを新しい章が始まるたびに1から育てるので、ゲームを進めた気がしない((もちろん、戦いの経験の無い者がいきなりレベル10や20で登場するのは現実味に欠けるが。))。 ---前章主人公が蓄積した資金やアイテムは、そのまま次期主人公に引き継がれるので、そこから「進んだ気」を見出すこともできる。~ …が、前章主人公が必死になって貯めたものを、無関係な次期主人公がいきなり引き継ぐというのも釈然としない。 --一応、レベル上げがしやすいように、''あらゆる味方キャラと敵キャラが全部ごちゃまぜになって登場する特殊なダンジョン''も用意されているのだが…。~ こんな不自然な形でしか救済措置が取れなかったのだろうか。せっかくのオムニバスシナリオが台無しである。 -デモムービーや特殊な演出が''前作に比べて大幅に劣化''。本作における最大のガッカリ要素と言っていい。 --前作で評価されていた、原作からの引用(実写映像)によるデモムービーがなくなり、~ キャラクターの変身シーンはデモムービーを用いず操作キャラがその場で変身ポーズをとるだけの簡素なものになった。 ---このため、快傑ズバットの「日本じゃ2番目云々…」というやり取りも前作に比べて非常に味気なくなっている。~ 「ヒュウ、チッチッチッ……この俺!」なんて''わざわざ口に出して言う''もんだから魅力激減である。 --戦闘シーンにおいても、大技を使った際のカットインが前作に比べて大幅に簡略化された。 ---しかも紛らわしいことに、このゲームはカットインが挿入される技が最強の必殺技だとは限らない。~ なので、''せっかく最強技を繰り出しても地味な演出で済まされる''キャラが何人かいる。 -ダンジョンフィールド(街も含む)は同じ背景の使い回しが多く、無限ループかと勘違いする。 -マシンマンは仮面ライダーの章で条件を満たさないと登場しない隠しキャラ扱い。さらに帝国決戦の章で合流するためにも条件がある。 -仮面ライダー1号と2号はなぜか''最後まで旧タイプ''のまま。~ ちなみにパッケージでは''新サイクロン号にまたがった新1号''のイラストが描かれている。~ 当然ながら出るだろうと思っていたファンの期待は裏切られた。 --そのため、旧タイプのままショッカーライダーと戦うという、原作ファンならば違和感を感じる現象も起きている。 **総評 登場作品、シナリオ、戦闘システムと改良が施されたが、前作と同じ轍を踏まないように配慮した結果、全体的に地味さがにじみ出てしまった。~ 前作と比較しても悪い部分は改善されたが、また新たにほかの部分に問題が出たという感が否めない。~ 一番組のキャラゲーとして見ると無難な出来であるが、クロスオーバーを売りにした作品であり看板倒れと思われても仕方がない。 **余談 -TVCMでは宮内洋が演じる「仮面ライダーV3/風見志郎」と「快傑ズバット/早川健」の共演というファン待望のクロスオーバーが行われた。 -快傑ズバットだけはキカイダー編以外のの章で登場し、他のヒーローより贔屓された扱いとも思える。 -ヒーローチームの名前は前作と同じ「ガイアセイバーズ」という名称。"『[[ガイアセイバー>ガイアセイバー ヒーロー最大の作戦]]』"との直接的な関係はない。