バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

トラゴイディア-The beginning-(後編)

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kyogokurowa

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なぁ、お前は人間が『愛』だの『絆』だのって『理想』をほざく理由って何だと思う?
どうせこんなイカれてるーーあぁ、これは私も言えねぇか。キャハッ!
わざわざあのソーンからポンコツをぶん取ってこんなゲームをおっ始めた主催連中も、この殺し合いをどっかで見てるお前がどうかは知らねぇけどよ。
既に人殺しの茉莉絵ちゃんが思うに、だ。
人ってのは弱えから群れて『オトモダチ』を作んだよ。せっせこせっせこ仲良しごっこして、『愛』、『絆』ってもんを作った気になってんだ。私の友達はこうあって欲しいって『理想』を押し付け合ってんだよ。
なんでそんな『理想』を押し付け合ってるかって?そりゃあ、そいつがその人間を真っ正面から全部受け止めてられねぇくらい弱えからだ。
私のことを『信じてる』、だなんて言ってきた連中もそうさ。いざ、私の本性を目の当たりにした途端、『信じてたのに』って泣き喚くんだよ。そういう奴だって結局、物腰が柔らかく、模範的な優等生茉莉絵ちゃんって『理想』を押し付けてるだけだったんだよなぁ!
アハハハハハハハハハ!思い返すだけで笑えるてくるぜぇ!裏切られたアイツらの顔!お前だって見たろ?裏切られた『可哀想で勇敢で優しい魔理沙さん』の!アイツも滑稽だったよなぁ!私の事を守ってやろうとしてた癖にいざ裏切られたら殺意丸出しで襲いかかってきやがった!それまで人殺すかどうかさんざ悩んでた癖に!……アハァ!アッハハハハハハハハハハハハハハハ!!あー駄目だ!考えるだけで笑えてきちまう!!今度はそう、やっぱアイツの惨めなツラを見てぇなぁ!そう!折原臨也。
あいつな、アイツは弱えんだよ。多分アタシが出会った連中の中で誰より弱えよアイツは。
アイツはな、この世の人間全てに『理想』を押し付けてやがる。『人間』って『理想』をなぁ!
「俺の思う、愛する人間ならとても素晴らしい夢満ち溢れた可能性を見せてくれる。」
「俺の思う、愛する人間ならどんな悪辣な行為を思いつくのかって可能性を見せてくれる。」
「俺の思う、愛する人間なら俺の予想にもしないやり方で俺を殺すかもしれない。」
「俺の思う、愛する人間なら俺ですら考えも付かない方法で裏切るだろう。」
ってなぁ!
だからアイツにいつもみたいな潰し方は効かない。だってアイツの『理想』は人間そのものだからな。
どんな悪意も、どんな痛みも、どんな絶望も、アイツは『人間』って『理想』の範疇に入れてっから痛くも痒くもねぇんだよ。
でも、それと強い弱いは別だ。前に茉莉絵先生はこう言いましたね?『なんでそんな『理想』を押し付け合ってるかって?そりゃあ、そいつがその人間を真っ正面から全部受け止めてられねぇくらい弱えからだ。』ってなぁ!
だからアイツは純正100パー人間を受け止められてねぇわけだ!じゃあアイツのいう『愛』ってのは何かって?
受け流してんだよ、アイツは。
人間の生み出すすべてを。
可能性を、
愛情を、
友情を、
信念を、
努力を、
喜びも、
悲しみも、
希望も、
絶望も--
全部が全部、『愛』つって受け流してんだ。アイツはな。
だからアイツは弱えんだよ。人間のやる事なす事全部『理想』にして受け流してるだけで、ほんとは誰かに痛みを与えられることを誰よりもビビってやがんだ!
それをマジで『愛』だと思い切ってるアイツは滑稽でイカれててバカで弱えんだよ。だからアイツは人間に何されても受け流せるし他人の痛みも受け流しちまう。フツー愛してる人間が裏切られて殺されかけてるってのに観察を優先する奴がどこにいんだ!
ああいう奴はな、きっと自分の『理想』にそぐわない人間が嫌いなんだよ。自分の『理想』にそぐわないような奴はアイツの中では『人間』って認めてすらやらねぇんだろうな!そいつが本当に人間だとしても!……アハハハハハハハハハ!あのヘラヘラしたツラがムキになったらどうなんだろうな!
折原臨也を殺すか殺さないか?決まってんだろ!アイツを本当の意味で絶望させてぶっ殺してやるんだよ!


◆◆◆


「君のことをもっと知って、君のことをもっと『観察』して、もっと『人間』を愛したいんだ。だから、是非とも君のことを教えて欲しい。ーー俺の狙いは、それだけさ。」

つい、話しすぎた。
本当は自分が彼女について知るつもりで接触したのだが。逆に自分について話しすぎてしまった。
それでも、まぁいいか、と。折原臨也はそう考えていた。
ウィキッドーー水口茉莉絵を知って、『観察』する為の必要経費と割り切ることにした。
臨也の掲げる人間賛歌の理念を聞いて果たして何を考えているのだろうか、ウィキッドはそれから何一つ言葉を発することはなかった。
臨也はまた、その様子も興味深く『観察』していた。
紅魔館の影に隠れたこの場所では早朝の微かな光さえも届かず、未だ暗い。その中でウィキッドの纏う白色は、彼女の異様な出立ちと、その凶暴で狡猾な本性を知った今、毒々しくすら感じる。
ーーそうとすら感じさせられる苛烈な一面もまた、彼女の魅力であるんだけどね。

そも。何故『あの』折原臨也が、わざわざ危険であることを承知でウィキッドら『殺し合いに乗っている人物』に接触を試みたか?
義務感か。正義感か。
いいや。そんなもので折原臨也が他人の為に動こうはずがない。それは折原臨也の行動原理足りえない。ならば何か。
興味本位。
この一言に尽きる。この殺し合いというシチュエーションに於いて必ず一人はあるであろう存在。ゲームに乗っている人間がいなければ殺し合いそのものが破綻してしまう。故に必ずと言っていい程この場に似つかわしい存在である思考をした彼らとは未だに接触していなかった臨也にとって僥倖だった。
詰まる所。折原臨也という男はどこまでも人間の起こす騒ぎに、事件に、騒乱に。首を突っ込まずにはいられない性分であった。

折原臨也は思い返す。
ウィキッドが起こした殺人を。
かつて彼女と同行していた霧雨魔理沙は、何を思うか押し黙っているウィキッドの少し後方で無惨な焼死体として転がっている。
臨也は彼女がウィキッドに裏切られ、殺されてゆくその『一部始終』を全て見ていた。
それこそ、端から端まで。最初から最後まで魔理沙を襲った悲劇を『観察』していた。

ーーいやぁ、恐ろしいねぇ。それにしても、その下手人は?彼女と同行していると聞いたもう一人はどうしているのかな?……まさか、ね?
折原臨也は、霧雨魔理沙が右脚から下を喪失する過程を、いつも通り観察していた。

ーー水口茉莉絵さん……ウィキッド……容姿はStork君から聞いたものにそっくりだ。右脚を失った彼女がカナメ君から聞いた魔理沙ちゃん……彼女が『茉莉絵』と言っていたから、彼女が水口茉莉絵さんであり、楽士ウィキッド。なるほど、面白くなってきたね……!
折原臨也は、霧雨魔理沙が裏切られたその瞬間も予想外の展開に胸を躍らせていた。

ーーなるほど、金髪の彼とウィキッドは同じ殺し合いに乗った人物。果たして彼らはどんな理由で殺し合いに乗ったんだろうね?俺は気になって気になって堪らない!……果たして、どうやって『観察』しようか?このまま飛び出して行っても、魔理沙ちゃんのように殺されては堪らない。接触するなら、どちらか片方だけになった時か……
折原臨也は、霧雨魔理沙と殺し合いに乗ったウィキッド、ジオルド・スティアートとの会話を聞いて、如何にして彼ら『殺し合いに乗った人間』を観察しようか、思考を巡らせていた。

ーーウィキッド、茉莉絵さんは殺人ではなくその過程になんらかのこだわりがあるのかな?どうしてメビウスに?どうして楽士になったんだろうね?あぁ、彼女は実に面白い観察対象だよ!
折原臨也は、霧雨魔理沙のことなど頭に無く、ウィキッドの動機を聞いて、彼女の過去に何があったか、思考を馳せていた。

ーーあぁ、これで彼女は脱落か。ご愁傷様。君の苦しみも慟哭も悲劇も…最後に見せた反抗の意志も全て確かに『観察』させてもらったよ。霧雨魔理沙さん。確かに君は『人間』だった!アイツとは違ってね。さて、どこかで彼らが分かれてくれたらウィキッドに接触できるだけどなぁ。どう動くかな…?
折原臨也は、霧雨魔理沙の死をもって終わった裏切りと血に塗れた活劇を未終え。その結末の満足感と共にその先について行動し始めた。
そうしてその後は、この通り。
ジオルドが離れた隙に、臨也はウィキッドとの接触を果たして、会話をして。
彼の掲げる人間讃歌を語りに語って。
ふと、支給された時計を見て。
ああ。そろそろ放送の時間だなあ、と考えた。

◆◆◆

男は、睥睨する魔女を尻目に、遥か上空を見据えていた。
苛烈なる魔女を眼前に控えている現状はこれでも危険である。
突如黙りこくった彼女に対して普段感情表現をなるべく抑え、刺激を与えないようにする。
これから行われる主催の放送による情報は『観察』の大前提、自らの生存に大きく関わるものだ。
故に、彼女に妨害されるわけにはいかない。
自らを照らし出した朝焼けを心地良く感じながら、来たる放送に想いを馳せる。
果たして、どれくらいの人数が死んだのか。
共に手と手を合わせてこれまで行動してきたStorkは無事だろうか。
優秀な『観察対象』である彼を失うのは男としても悲しい。
分かれていたのは僅かな間ではあるが、少し気には留めておく。
後は、まあ。
あの新羅のことも、ほんの少し気に留めてやってもいいかも知れない。
それこそ、宇宙の塵程、ほんのちっぽけにも満たないそれではあったが。
それこそ、男の心に少し纏わりついた、埃程度でしかないそれであったが。
静雄のことについては、まだ、良い。
この期に平和島静雄を殺す気でいる彼ではあるのだが。
それには、あの『化け物』を殺すには。
兵力が足りない。武器が足りない。力が足りない。
故に、今はまだ。
それに、彼を殺しうるものがあるとすれば。
それこそ、男の理想ではあるのだが。
『人間』の生み出す可能性の前に、破れて欲しい。
怪物を倒しうる人間の持つものによって。
別に一人じゃなくていい。
人間とは、その数によって。
手と手を取り合う、人間同士によって。
いつも、先へと歩みを進めているのだから。
人間の歴史を辿れば、そこには必ず、誰かが手と手を取り合う、と言う事実がある。
だから。化け物を殺すなどと言う偉業を人間が成し遂げてくれるならば。
それは力を合わせた人間達であって欲しい。
だから。
ーーほら、いつものやつを見せてよ。美しい絆を。

空は透き通るようにして、まさしくその様を表現するなら、澄み渡る。とでも言うべきか。
朝日は昇る。
水平線の向こうから、少しずつ、少しずつ、顔を出し始めている。
今は無口の魔女はそこにいる。
少々、湿気を孕みつつも未だ瑞々しさが残る森林の空気。
少女を焼いた熱気は既に四散しているにも関わらず、どうにも蒸せる。
少し前までこの熱気に当てられていた魔女は、やっかいに絡みつく汗を拭う。
朝日は昇る。
その光は、ついに一人の男を捉えた。
まだ微かな橙色の朝焼けが、闇に溶け込む黒色を照らす。
それを睨む魔女の瞳には何が見えているのだろう。
その胸中の知れぬまま。
ーー朝日は昇る。

そして。

『参加者の皆様方--』

放送が、始まった。

◆◆◆



『さてさて、次は、皆様お待ちかねのーー』

禁止エリア。
大破した電車。
放送の大部分の情報が提示され終わった時だった。
死亡者の発表を控えた、その時のことだった。
折原臨也が、特に集中して聴こうとした、その時のことだった。

「……なあ。」

ウィキッドが、口を開いた。

「なんだい?わかってると思うけど、今はまだ放送中だ。何か情報があるかもーー」

『皆様、やる気があって大いにーー』

ひゅん。
一瞬、鋭い風切り音が鳴って。

『弓原紗季、シュカ、傘木希美--』

どかん。
大音量で爆発音が、木霊した。

折原臨也は隠していたナイフを片手に。
ウィキッドは手榴弾の次弾を手に取った。

ーーそして。

「ははははははははははははははははははははははははは!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

笑った。
互いに。同時に。
笑って笑って、笑い転げた。
片方は。
まるで期待以上だと、心から歓喜を表して。
片方は。
そうこなくては、と狙い定めた獲物への期待を込めて。

互いの間に、炎が隔たっていた。
ウィキッドが放った手榴弾のもので。
お互い傷一つなく、互いの距離の中間に位置したその場所に炎があるのは折原臨也の手腕によるものだった。
彼に支給され、護身用に隠し持っていた大量のナイフの一本が、ウィキッドの手榴弾を互いに傷の付かない所で撃ち落とし、起爆させた。

その隔たりの中。二人は対話を始めた。

「アンタ、私がこうするって読んでたよなぁ?臨也おじさんよぉ?」

「いいや。これでも読み違えた方さ。金髪の彼と即興で手を結び、魔理沙ちゃんを孤立させてから殺害するその立ち回りから君が聡明で狡猾な人間だとは思っていたからね。放送なんて重要な情報源、君が逃すはずがない。そう考えていたよ。でもなるほど。君には共に手を組んだ仲間なんていない。全てが殺害対象だ。故に死亡者発表は聞く必要がない。ということになるのかな?まさかこのタイミングで襲ってくるとは思わなかった。一歩俺の動きが遅れていたら、間違いなく死んでいただろうね。認めよう。俺は君に裏をかかれてしまった。君にとっては最高のタイミングで。俺にとっては最悪のタイミングで。それを見抜いた君は大したものだよ。」

「ーーだから余計に気になって仕方がない。君が果たして何を考えているのか、俺にはてんでわからないからね。」

「何がだよ?」

「君は、何の為に人を殺す?テミスの言う『ご褒美』とやらを信じてここまで殺人を犯したのか。そうだとするなら、そこまでして叶えたい願いは何なのか、殺し合いというものを踏み台にして願いを叶えた君は果たして明日に何を描くのかーーうん。とても興味をそそられる!是非とも教えて欲しいものだね!」

その言葉に。
折原臨也の、そんな言葉にウィキッドはただ。

「ーーいいぜ。『聴かせて』やるよ。」

にぃ、と邪悪な笑みを浮かべて。

『でも、ここまではあくまでもゲームの序章…、本番はこれからよ。もっともっと苛烈に戦って、我々を愉しませてーー』

「μ!聞いてんだろ!そこでヘラヘラしてるテメェもだ!テミス!お前らの言う通り殺し合いを盛り上げてやるよ!だから歌え、とんでもなく不幸な私の為に!」

その言葉を聞いて、それこそ、だったの一拍だが。
放送が途切れて。
そして。
折原臨也は、この段になってもまだ、期待に胸を躍らせていた。
そして彼は今、願うのだ。

『ーー今回の放送はここまでとしますが、最後に皆様にサプライズがございます。何となんと、μが頑張る皆様を激励すべく、これから生歌を披露してくれるそうよ!』

さあ、見せてくれ。

「何もかもグッチャグチャにしてやるよ……!聞け!」

さあ、聴かせてくれ。

『歌ってくれるのはーー』

君の心の叫びも、俺が愛そう。
だからーー

『「コスモダンサーー!」』

そして、爆発音が、鳴り響いた。


【F-6/西部/朝/一日目】
【ウィキッド@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:疲労(小)、健康、王への怒り、カナメへの悪戯心。
[服装]:いつもの制服(楽士モード)
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:自らの欲望にしたがい、この殺し合いを楽しむ
0:折原臨也を、絶望させたうえで殺す。
1:王への報復を手伝うフリをしていつかカナメを裏切る。どうやって壊そうかなあ...♪
2:壊しがいのある参加者を探す。特に『愛』やら『仲間』といった絆を信じる連中。
3:参加者と出会った場合の立ち回りは臨機応変に。 最終的には蹂躙して殺す。
4:金髪のお坊ちゃん君(ジオルド)は暫く泳がすつもりだが、最終的には殺す。
5:さっきの爬虫類野郎(王)は見つけ次第殺す。
[備考]
※ 王の空間転移能力と空間切断能力に有効範囲があることを理解しました。
※ 森林地帯に紗季の支給品のデイパックと首輪が転がっております。
※ 王とウィキッドの戦闘により、大量の爆発音が響きました。


【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:人間を観察する。
0:ウィキッドを『観察』しつつ、この局面に対処
1:Stork君は本当に面白い『人間』だなぁ。
2:平和島静雄はこの機に殺す。
3:新羅はまあ、気が向いたら探してやろう。セルティは別に...
4:佐々木志乃の映像を見た本人と、他の参加者の反応が楽しみ。
5:主催者連中をどのように引きずり下ろすか、考える。
6:『帰宅部』、『オスティナートの楽士』、佐々木志乃に興味。
[備考]
※ 少なくともアニメ一期以降の参戦。
※ 志乃のあかりちゃん行為を覗きました。
※ Storkと知り合いについて情報交換しました。
※ Storkの擬態能力について把握しました
※ ジオルドとウィキッドの会話の内容を全て聞いていました。

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ささやかな揺らめき 投下順 From the edge -Scarlet Ballet-

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トラゴイディア-The beginning-(前編) 折原臨也 絶対絶望少女
トラゴイディア-The beginning-(前編) ウィキッド 絶対絶望少女
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