バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

オープニングーーー《地獄へようこそ》

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kyogokurowa

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「――づら……」

誰かの声が微かに聴こえる。
と同時に、身体を揺さぶられている。

「はまづら、起きてーーはまづら……。」
「――たき、つぼ……?」

揺さぶる力を強く感じーー
その声の主が、滝壺理后のものであると認識した瞬間――
俺、浜面仕上の意識は覚醒した。


「ここは、どこだーー?」
「分からない……私も、今目を醒ましたばかり」


起き上がって、辺りを見渡すが周囲はーー闇、闇、闇。
暗がりの中、傍らにいる滝壺の顔を視認できるのがやっとの状況だ。
しかし、自分達以外にも複数の人間がいるらしく、様々な声が耳に入ってくる。
どいつもこいつも、俺たちと同じように今の状況に困惑しているようだった。


「はまづら、私たちの首に何か付いている」
「っ!? 何だよ、これっ!?」

滝壺の首筋には、銀色に輝く金属の輪が装着されていた。
慌てて自分の首筋に手を当てると、冷たい金属の感触がある。
手探りで首輪を探ってみるが、どうやら自力で外すことは出来ないらしい。

「畜生、どうなってやがる……。」

思い返してみるとーー
滝壺と一緒に、超高速旅客機の上からパラシュートを使って、ロシアの大地へと飛び降りたところまでは覚えている。
しかし、そこからの記憶が一切合切ない。


まさか学園都市の追手かーーと、身震いし、
滝壺の手を強く握りしめたその瞬間。


「参加者の皆様方、地獄へようこそぉ♡」

女性の声が周囲へと響き渡った。
俺たちは、声のする方向へと視線を向ける。
周辺の喧騒も鎮まっている。
どうやらこの場にいる誰もが、声の方向へと注目しているようだ。

やがて、バチンという照明の音とともに、二人の女の姿がステージ上に照らし出された。

「一部の方を除き、ほとんどの方とは初対面かと存じますので、まずは自己紹介を…。
私、今回のゲームの支配人を務めさせていただきます、テミスと申します。
どうぞ、お見知りおきを」

色っぽい姉ちゃんだ、というのが第一印象だった。
ラベンダー色の美しい髪をツインテールに束ね、露出度の高いドレスを身に纏った女は、微笑みを顔に張り付けていた。
その開けた胸元に思わず視線を移してしまいそうになるがーー
滝壺のいる手前、そんなことは出来るかと、どうにか自制する。

「それと、もう一人紹介するわ。私の隣にいるこの子は、μ。
彼女には、今回の戦場となるゲーム会場を用意して貰ったわ」
「……。」

テミスから紹介を受けるμという白い少女に反応はない。
華やかなアイドルのような衣装を身に纏っているその姿は、どこぞの歌姫を彷彿させるが、
その目は死んでおり、一切の生気を感じさせなかった。


「私たちの自己紹介はここまでとして…。 ここからは何故皆様がこの場に呼ばれたのか、ご説明いたしますね。
端的に申し上げますと、ここに集まっている皆様方に最後の一人になるまで殺し合いをやってもらいますわ」

はぁ?と思わず声が出た。
周囲も一気に騒めく。
しかし、テミスという女はそんな反応などお構いなしに、淡々と説明を続けていく。

「基本ルールの説明を行うわね、まず皆様にはーー」
「ふざけるなッ!」

顔は良く見えないが、声色からして、未成年の少年だろうか。
ステージの上に登壇したフードを被ったその少年の一声で、テミスの言葉は遮られた。

「何が殺し合いだ、馬鹿にしやがって! おいμ、どういうことだよ、これはっ! 早く僕をメビウスへ戻せ!」
「……。」

会話から察するに、少年とμは知り合いのようだが、μに特に反応はない。
ただ虚ろ目で少年を見つめていた。

「申し訳ございませんが、司会進行の邪魔をしないで頂けます?
貴方は確かーー少年ドールさんでしたっけ?
如何にμと旧知の仲とは言えど、この蛮行は許せませんわね。
μ、この方を排除していただけるかしら?」
「――それが、テミスの『幸せ』なの?」
「ええ、そうよ。 このゲームを円滑に進めることーーそれが私の幸せに繋がるの」
「――わかった……。」

μはゆっくりと少年に向けて、指をさした。
そうすると、少年の身体はふわりと宙に浮き始める。

「μ、何をッ!? うごッ!!!? うごがお“お”お“お”お“ぁあ”あ“あ”ぁ―――――――!!!」

ジタバタと暴れる少年の四肢は、何か見えない力に、あらぬ方向へと捻じ曲げられていく。
この世のものとは思えない絶叫が辺り一帯に木霊する。
まさに地獄絵図とはこのことだ。

「がぐぉ”お”ぅ……。」

最後にその首が360度回転させられたのを皮切りに、宙に浮いていた身体はベチャリと地面へと落下していった。

絶命した少年の成れの果てを目の当たりにし、周囲には悲鳴や怒声が飛び交っている。

何人かの人間が少年のようにステージに上がろうとしていたが、透明な壁のようなものが彼らの行く手を阻んでいた。


何だ、あれは……?
能力か何か、か?
さっきまで、あんなものなかったのに。


「はいはい、静粛に! とんだ邪魔が入りましたけど、ルール説明を続けさせて頂きますね」

テミスは尚も余裕たっぷりな表情を浮かべていた。

「これからμの力を使って、皆様を殺し合いの会場へと転移させますわ。
と同時に、皆様には各自デイパックを支給します。
その中には食料や水、地図、名簿、このゲームのルールブックの一式と、ランダムで殺し合いに役立つかもしれない支給品が、三つまで入っています。
ふふっ…、何が入っているかは開けてからのお楽しみね」


表面上は女神のような微笑みを浮かべはているが、決して惹かれることはなかった。
学園都市の暗部で、たくさんの腐った人間を見てきた、俺には分かる。
あれは、こちら側を見下し嘲笑っている…そんな、下衆な笑みだ。

「それと6時間ごとに放送を行います。 放送では、それまでの間に何人の方が脱落したのか、と侵入禁止エリアを発表していきますので、決して聞き逃さないように注意してくださいね。
そしてそして、何とーー!」

テミスはわざとらしく、大きく手を広げる。
その仕草には、底なしの悪意を感じた。

「殺し合いを勝ち残った最後の一人には、ご褒美として、どんな願いも叶えてあげます。
巨万の富に、死者の蘇生――。何でも良いわ…。何でも叶えてあげる!
あはぁ♡ どうですか、皆さま。少しはやる気が出てきたのではないでしょうか?」

ああそうだ、とテミスは何かを思い出し、手をポンとたたいた。

「私としたことがうっかりしておりました。
最後に、皆様に装着された首輪ですが、禁止エリアに侵入したり、ゲーム会場から脱出や我々運営に危害を及ぼすような行動をしたら、爆発するように設定してありますのでご注意を…。
まあ、これに関しては実際に見てもらったほうが早いかしら。」

と、テミスは此方側を見渡してきた。
品定めをするようなネットリとした視線は、やがて、俺たちを捉えーー
えい、とリモコンのようなものを押した。

ピィー――というけたたましいアラーム音が滝壺の首元から聴こえた。

「「――えっ?」」

呆然とする俺たち二人に、眩いスポットライトが照らされている。

「さぁさぁ、皆様。ご照覧ください、この首輪の威力を!
カウントダウンを始めますよー!
10――9――8――……。」

嘘だろ。
何だよこれーー
何なんだよ、これ!

「はま、づら……。」
「ふざっけんじゃねえぞぉおおおお!!!!」


俺は、懸命に滝壺の首輪をガチャガチャと弄り外そうとする。
――だが、外れない。


「――6――5――……。」

「はまづら、逃げて……。このままじゃ、はまづらも、巻き込まれる……。」
「馬鹿野郎! 約束したじゃねぇか! 絶対に放さねえってよ!」

畜生っ! 何でだよ!
何でよりによって、滝壺なんだよ!

「――ッ!―――――!」

外野から何か声が聴こえる。
どうやら俺を諫めているようだが、関係ねえ。

「――4――3――……」

クソがっ!
諦めてたまるかよっ!
俺は絶対に滝壺をっーー

「っ!?」

突如身体に浮遊感を感じたかと思うと、俺と滝壺は引き剥がされていた。
いつの間にか、俺の手足には黒いモノが纏わりついている。
視線を背後に向けると、そこには黒い異形がそこに佇んでいた。

ヒトの形をしているが、それは人ではなかった。
それには首がないからだ。

だが、そんなことはどうだっていい。

「おいコラッ、化け物ッ! 邪魔するんじゃねえぞ!
俺はーー滝壺をっ! 滝壺がっーー!」


「――2――1――……」

滝壺に視線を向けると、少し困ったような表情を浮かべていた。

「はまづらーー」

滝壺は、俺と視線を合わせると寂しそうな笑顔を浮かべた
そして、その目からは涙が零れていた。

俺は懸命に手を伸ばした。
今すぐにでも、独りぼっちの滝壺を抱きしめてやりたかった。

――だがその手は届かない。

「ごめんね……。」

「やめろぉおおおおおおおッーー!」
「――0!」

ボンッという破裂音とともに、鮮血が噴き上がった。
俺が命を懸けて護ろうとしていた女の身体は、二つに分断された。

「た、滝壺ぉおおおおおおおッーー!!!!!」

纏わりついていた黒いモノから解放された俺は、胴体から分断された滝壺の首に駆け寄り,抱きしめた。
だがそこに以前の彼女の温もりはなかった。


「首輪の威力はお判りいただけましたでしょうか? 首輪がある限り、皆様の生殺与奪の権利は我々が握っていることをお忘れないように……。
それでは皆様、これより順次会場へと転送させていただきますね。」

滝壺を殺した女が、何かを言っているが頭に入ってこない。

「それでは皆様、御機嫌よう…。 心行くまで殺し合いを愉しんでくださいね」

激しい喪失感と絶望の渦の中、俺の意識は闇の中へと墜ちていった。



【ゲームスタート】

【少年ドール@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ- 死亡】
【滝壺理后@とある魔術の禁書目録 死亡】



【主催】
【テミス@ダーウィンズゲーム】
【μ@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】

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GAME START 投下順 SAGA

前話 キャラクター 次話
GAME START 浜面仕上 ほんとのきもちはひみつだよ
GAME START セルティ・ストゥルルソン ドワワワォ!~ようこそイクストローディネリィ~
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