君は、この殺し合いについてはどう思う?
もしもこれが見世物だとしよう。
殺し合いという、生と死が色濃く見れる総勢75名による群像劇。
それを見ている観客として、君はこう思うはずだ。
それを娯楽として彼らの様子を『観察』している君はこう思うはずだ。
この殺し合いにいるこの参加者とあの参加者が出会ったら果たしてどんなドラマが生まれることだろう?ってね!
もしもこれが見世物だとしよう。
殺し合いという、生と死が色濃く見れる総勢75名による群像劇。
それを見ている観客として、君はこう思うはずだ。
それを娯楽として彼らの様子を『観察』している君はこう思うはずだ。
この殺し合いにいるこの参加者とあの参加者が出会ったら果たしてどんなドラマが生まれることだろう?ってね!
例えば。
その内の一人は正義漢としよう。
この殺し合いが始まって早々に知り合いが殺されても、その殺した相手が彼にとっては知己のような存在だとしても、彼は殺したその存在を信じている。
俺にとっては至極どうでもいいことなのだけれど、彼の言うには主催一派であるアレは操られているのだとか。
それを正気に戻す為に彼は勇気を以てこの殺し合いに立ち向かうだろうね。実に素晴らしい!
でも、最初に俺に出会った時のようにただの人間にさえ怯えてしまうような、そんな臆病さもある。
でも、ちょっと魔が指して覗きを犯してしまうような、そんな醜さもある。
その面を目の当たりにした人間はもしかしたら、『醜い男』と罵るかもしれないけれど。
けれど、それこそが彼の魅力じゃあないか、と俺はその一面も愛そう。
何せ、彼は覗きという行為を通して、この殺し合いに立ち向かっているんだからね。
俺も情報屋として様々な秘密や裏を覗いていたけれど、
こと『覗く』という行為だけで見るならば、もしかしたら俺じゃあ足元にも及ばないかも知れないね。
その内の一人は正義漢としよう。
この殺し合いが始まって早々に知り合いが殺されても、その殺した相手が彼にとっては知己のような存在だとしても、彼は殺したその存在を信じている。
俺にとっては至極どうでもいいことなのだけれど、彼の言うには主催一派であるアレは操られているのだとか。
それを正気に戻す為に彼は勇気を以てこの殺し合いに立ち向かうだろうね。実に素晴らしい!
でも、最初に俺に出会った時のようにただの人間にさえ怯えてしまうような、そんな臆病さもある。
でも、ちょっと魔が指して覗きを犯してしまうような、そんな醜さもある。
その面を目の当たりにした人間はもしかしたら、『醜い男』と罵るかもしれないけれど。
けれど、それこそが彼の魅力じゃあないか、と俺はその一面も愛そう。
何せ、彼は覗きという行為を通して、この殺し合いに立ち向かっているんだからね。
俺も情報屋として様々な秘密や裏を覗いていたけれど、
こと『覗く』という行為だけで見るならば、もしかしたら俺じゃあ足元にも及ばないかも知れないね。
もう一人の参加者は、そうだね....殺人鬼としよう。
俺が見た限りでは一人だけれど、確かに人を殺している。
それどころか、人の苦悶に笑みを浮かべる狂人と言っても差し支えない。そんな彼女だけれど、底には底がある、って言うのかな。人殺しである彼女はただ人を殺すことに快楽を感じてるんじゃあない。人間を裏切ることを喜んでいる性質なのさ。これは、俺みたいな人間が言うべきセリフじゃないんだろうけど、いわゆる、ロクデナシってやつだろうね。ま、そんな所もまた、人間であるからね。俺は、俺だけは愛してあげよう。
だけど、人殺しで、ロクデナシの彼女だけど。
確かに、魅力的な一面は存在するんだ。
それは彼女の奥深くにあって、俺が触れることができたのはそんな深淵の一端さ。
俺が見た限りでは一人だけれど、確かに人を殺している。
それどころか、人の苦悶に笑みを浮かべる狂人と言っても差し支えない。そんな彼女だけれど、底には底がある、って言うのかな。人殺しである彼女はただ人を殺すことに快楽を感じてるんじゃあない。人間を裏切ることを喜んでいる性質なのさ。これは、俺みたいな人間が言うべきセリフじゃないんだろうけど、いわゆる、ロクデナシってやつだろうね。ま、そんな所もまた、人間であるからね。俺は、俺だけは愛してあげよう。
だけど、人殺しで、ロクデナシの彼女だけど。
確かに、魅力的な一面は存在するんだ。
それは彼女の奥深くにあって、俺が触れることができたのはそんな深淵の一端さ。
もしも、もしもだ。
覗き魔の正義漢と、深い深い闇を孕んだ殺人鬼。
そんな二人が出会ったら?
もしもどこかで見ている君がそれを楽しみにしているとしたら、おめでとう。俺と同じさ。
俺も、彼らが出会ったその先でどんなドラマが展開されてゆくのか、楽しみで楽しみで仕方ない!
だったら、引き合わせるしかないよね?
覗き魔の正義漢と、深い深い闇を孕んだ殺人鬼。
そんな二人が出会ったら?
もしもどこかで見ている君がそれを楽しみにしているとしたら、おめでとう。俺と同じさ。
俺も、彼らが出会ったその先でどんなドラマが展開されてゆくのか、楽しみで楽しみで仕方ない!
だったら、引き合わせるしかないよね?
俺はね、人間に興味があるし当然愛している。
それは生物学的に興味があるというわけではなくて。
それは人間の心ではあるけれど、厳密に言うと違うかもしれない。何せ、俺は人の心が読めるほど万能ってわけじゃあないからね。
だから、俺が興味があって、俺でも伺い知る事ができるのは。
人間の『理想』とも呼べるものなのかもしれないね。
それは生物学的に興味があるというわけではなくて。
それは人間の心ではあるけれど、厳密に言うと違うかもしれない。何せ、俺は人の心が読めるほど万能ってわけじゃあないからね。
だから、俺が興味があって、俺でも伺い知る事ができるのは。
人間の『理想』とも呼べるものなのかもしれないね。
『覗き』という確固たる理想を持った彼。
彼は果たして、殺人鬼の底にある理想までたどり着けるのか。
彼は果たして、殺人鬼の底にある理想までたどり着けるのか。
俺はそれが見たいんだ。
だから彼の元に殺人鬼という危険極まりない爆弾を連れて行くことになっても俺は構わないし。
それによって起こりうることが避けようのない悲劇であろうとも、俺は見たい。
それによって起こりうることが避けようのない悲劇であろうとも、俺は見たい。
だから。
これは俺が一方的に思っていることだけれど。
俺は彼と彼女を引き合わせたくて。
彼女は誰も彼も殺してしまいたいとして。
これは俺が一方的に思っていることだけれど。
俺は彼と彼女を引き合わせたくて。
彼女は誰も彼も殺してしまいたいとして。
最終的なものこそ違えど、同じ目的に向かって行動する俺達は、間違いなく『共犯者』と言っても良いかもしれないね。
◆◆◆
殺し合いの会場に再現された森は、本物のそれに酷似していた。
代わり映えの無い茶色と緑色の羅列。
それに彩りを加えるかの如く差し込まれた朝焼けがそれらに明暗を加えている。
エリアF-6。
そこには元の主の高貴さを表すような荘厳さを兼ね備え、屹立する館--紅魔館。その周辺には鬱屈とした森林で覆われている。
早朝を迎えた殺し合いの会場に降り注いだ日光は紅魔館をキラキラと輝かせ、その存在感をさらに誇示していた。
そんな華やかな光の裏には直視することも憚られる闇が必ず潜んでいるものだ。
人々の目には決して移らぬその闇の中に、二人はいた。
代わり映えの無い茶色と緑色の羅列。
それに彩りを加えるかの如く差し込まれた朝焼けがそれらに明暗を加えている。
エリアF-6。
そこには元の主の高貴さを表すような荘厳さを兼ね備え、屹立する館--紅魔館。その周辺には鬱屈とした森林で覆われている。
早朝を迎えた殺し合いの会場に降り注いだ日光は紅魔館をキラキラと輝かせ、その存在感をさらに誇示していた。
そんな華やかな光の裏には直視することも憚られる闇が必ず潜んでいるものだ。
人々の目には決して移らぬその闇の中に、二人はいた。
差し込んだ光がコウノトリの選択を祝福するかのように輝かしく彼らを照らすならば。
魔女の悪意に曝され無惨に焼け焦げた少女の亡骸は。
それを起点に出会った暗躍する男女は。
光を当てられる謂れの無い、闇そのものだ。
魔女の悪意に曝され無惨に焼け焦げた少女の亡骸は。
それを起点に出会った暗躍する男女は。
光を当てられる謂れの無い、闇そのものだ。
日陰と化した森林はまだ時刻が早朝であることも相まって、夜の闇とさほど変わりない暗さだ。
光の当たらない暗闇の中、二人の参加者は睨み合っていた。
光の当たらない暗闇の中、二人の参加者は睨み合っていた。
ウィキッド。
闇の中でも己の存在を力いっぱい主張する白色の魔女は眼前の男を射殺さんとばかりに睨み付け。
闇の中でも己の存在を力いっぱい主張する白色の魔女は眼前の男を射殺さんとばかりに睨み付け。
折原臨也。
闇に紛れるかのごとき黒色はただ笑う。そんな顔が見たかったとばかりに笑う。
闇に紛れるかのごとき黒色はただ笑う。そんな顔が見たかったとばかりに笑う。
闇の中、一組の男女は対峙する。
外見からその思考まで反対の二人。
これは序章。
此れより催される悲劇の序章。
その始まりを告げたのは。
外見からその思考まで反対の二人。
これは序章。
此れより催される悲劇の序章。
その始まりを告げたのは。
「--イイぜぇ?出血大サービス!この茉莉絵ちゃんが知りたがりの臨也おじさまに何でも教えてしんぜよう!」
ただ、その前に、と前置きした上で。
それを知って、どうするんだってんだ。
先程までのおちゃらけた態度から一転して、静かにそう問いかけた、ウィキッドの言葉。
◆◆◆
ウィキッドから、水口茉莉絵から折原臨也への第一印象としては。
間違いなく、一分の迷いも無く最悪だと断言できるくらいには悪かった。
間違いなく、一分の迷いも無く最悪だと断言できるくらいには悪かった。
『色々と知りたいんだよ…君のことを』
臨也の眼前に立っている自分が殺し合いに乗っている可能性が高い人間だということも理解できぬ訳でもなかろうに。
まるでこちらの一歩二歩先を行っていると思わせるウザったい余裕綽々のその面がウィキッドの苛立ちを誘い。
まるでこちらの一歩二歩先を行っていると思わせるウザったい余裕綽々のその面がウィキッドの苛立ちを誘い。
それでいて、わざわざ今、それも自身が霧雨魔理沙の殺害を敢行したすぐ後に。『金髪の大将』との共謀について見ていた、と話したことが不可解で、不気味だった。
そこまで情報を握っているなら、尚更ウィキッドが殺人を犯したと言う事を知っているぞと暗に示すその行為を折原臨也が行うことが不可解だった。
確かにそれは脅しとしても機能するだろう。しかし、それと同時に口封じの為にウィキッドに殺害されるという可能性も孕んでいる。
そのことを知ってか知らずか、ニタニタ笑いを浮かべているその姿が、やけに気味悪く写った。
腹の中の読めないこの男は、ウィキッドにとっては理解しがたく、最悪だと断言できる存在だった。
そこまで情報を握っているなら、尚更ウィキッドが殺人を犯したと言う事を知っているぞと暗に示すその行為を折原臨也が行うことが不可解だった。
確かにそれは脅しとしても機能するだろう。しかし、それと同時に口封じの為にウィキッドに殺害されるという可能性も孕んでいる。
そのことを知ってか知らずか、ニタニタ笑いを浮かべているその姿が、やけに気味悪く写った。
腹の中の読めないこの男は、ウィキッドにとっては理解しがたく、最悪だと断言できる存在だった。
「君について知ってどうするか、ねぇ。まぁ確かに、こんな場所で初対面の人物にそんなことを聞かれて身構えちゃうのは当然だったね。配慮が足らなかったよ。」
不愉快な面を崩さず、折原臨也は自らの否を認めた。
尤も、謝意を表明したのはその言葉だけだというのは前述した通りのしたり顔が証明しているが。
尤も、謝意を表明したのはその言葉だけだというのは前述した通りのしたり顔が証明しているが。
「悪いと思ってんなら謝るよりさっさと何考えてるか教えろよ。あんまり焦らされると手が滑って臨也のおじさんもあんなんなっちまうかもよ?」
ウィキッドは後方に放置された霧雨魔理沙の死体を顎でしゃくり、臨也に続きを促す。
折原臨也に魔理沙の殺害を仄めかせてしまうような発言だが構うものか。この場の主導権をこの男に握られる訳にはいかない。明確な敵意こそ感じられないものの、未だウィキッドの中で折原臨也は『クロ』だ。自身に口封じされる程のリスクを飲み込んだ上でこの場に姿を表したことから何らかの狙いがあるものだとウィキッドはアタリを付けていた。それがどんなものであれ、自らの身を省みずに賭けに出なければならないものであると確信しているし、ウィキッドの勘を交えての考察になるが、折原臨也は間違いなく目的を達成する為ならば手段を選ばないであろう人間だ。故に今は敵意が無くともいずれ牙を剥く可能性は十二分にある。
だから自身の殺人が公になってもここは臨也に主張しておく必要がある。
『その気になればお前なんぞいつでも殺せるぞ』と。
折原臨也に魔理沙の殺害を仄めかせてしまうような発言だが構うものか。この場の主導権をこの男に握られる訳にはいかない。明確な敵意こそ感じられないものの、未だウィキッドの中で折原臨也は『クロ』だ。自身に口封じされる程のリスクを飲み込んだ上でこの場に姿を表したことから何らかの狙いがあるものだとウィキッドはアタリを付けていた。それがどんなものであれ、自らの身を省みずに賭けに出なければならないものであると確信しているし、ウィキッドの勘を交えての考察になるが、折原臨也は間違いなく目的を達成する為ならば手段を選ばないであろう人間だ。故に今は敵意が無くともいずれ牙を剥く可能性は十二分にある。
だから自身の殺人が公になってもここは臨也に主張しておく必要がある。
『その気になればお前なんぞいつでも殺せるぞ』と。
「ああ、ごめんこめん--とはいえ、これから俺は世にも恐ろしい殺人鬼と話をしなきゃいけないんだ。さらには焼死体まであるわけだし、日が出てきたとはいえ、辺りはまだ暗い。話し合いの場の空気としては最悪だよ。そんな状況であんまり長話はしたくないわけで、スムーズに話を進めたいから最初に本題を提示しただけさ。このくらい多目に見て欲しいな。」
その脅しの効果も、見ての通りだが。
「だからその本題とやらの意図を教えろって言ってんだろが、なんなら話し合いじゃなくて殺し合いにチェンジしたってこっちは全然大丈夫なんだぜ?」
へらへらと笑う臨也を睨み、隠しごとはさせぬと再び催促する。
「わかった。わかったよ。白状するとしよう。さすがに命には換えられないからね。」
本当に自らの命が大事なのであれば流石にこんなマネはしないだろう、という突っ込みを抑えて、漸く進展した話を聞く。
このイカレたサイコ野郎は果たして何が目的なのか、ウィキッドでは検討がつかない。
もしも候補として挙げるとするならば。
帰宅部か他の楽士の連中から聞いたあのポンコツのことか。
それの情報目当てならばまだ分からなくもない。
危険を承知で、主催共に対抗する術を見つけて、皆で仲良く、なるべく人を殺さないように脱出でも--と。
そこまで考えて。ウィキッドはその推測を打ち切った。
愛だの絆だのほざいてる連中がみんな笑顔でハッピーエンドなんて結末、想像するだけでも反吐が出る。
なにより、目の前の男がそんな、ありきたりなハッピーエンドを求めているなど、ウィキッドには思えなかった。
だけど。
このイカレたサイコ野郎は果たして何が目的なのか、ウィキッドでは検討がつかない。
もしも候補として挙げるとするならば。
帰宅部か他の楽士の連中から聞いたあのポンコツのことか。
それの情報目当てならばまだ分からなくもない。
危険を承知で、主催共に対抗する術を見つけて、皆で仲良く、なるべく人を殺さないように脱出でも--と。
そこまで考えて。ウィキッドはその推測を打ち切った。
愛だの絆だのほざいてる連中がみんな笑顔でハッピーエンドなんて結末、想像するだけでも反吐が出る。
なにより、目の前の男がそんな、ありきたりなハッピーエンドを求めているなど、ウィキッドには思えなかった。
だけど。
「--俺はね、君を『観察』したいんだよ。」
そんな答えがこの男から飛び出して、思わず、
「はぁ?」
と、口に出してしまった。
観察。
眼前の男はこともなげにそう言った。
--コイツ、イカレてんのか?
ウィキッドから折原臨也への第一印象は最悪であったが、どうやら底には底というものがあるらしい。
ただでさえ0に等しいこの男への株がさらに下に突き抜けていった。
コイツは人殺しが目の前にいるってのに、今は、それこそ少し前まで殺し合いがあったってのに。
平然と、折原臨也はそんなことを抜かしていた。
ウィキッドが思わず見せた困惑の表情を、文字通り『観察』しているのであろう男の未だ崩れぬ気色悪いニヤケ顔に不快感がさらに募ってゆく。
観察。
眼前の男はこともなげにそう言った。
--コイツ、イカレてんのか?
ウィキッドから折原臨也への第一印象は最悪であったが、どうやら底には底というものがあるらしい。
ただでさえ0に等しいこの男への株がさらに下に突き抜けていった。
コイツは人殺しが目の前にいるってのに、今は、それこそ少し前まで殺し合いがあったってのに。
平然と、折原臨也はそんなことを抜かしていた。
ウィキッドが思わず見せた困惑の表情を、文字通り『観察』しているのであろう男の未だ崩れぬ気色悪いニヤケ顔に不快感がさらに募ってゆく。
「そこまで驚かなくてもいいじゃないか。人間、人それぞれ趣味ってのはあるものだろ?」
「--あっははは!趣味で人殺しだとわかってて姿晒すヤツが今更何言ってんだ!バカを通り越してイカれてるよ、あんたさ!」
「ははっ!それを言うなら、殺人の過程を楽しそうにしていた君もイカれてるって言えるんじゃないかな?右脚を失った彼女を見た君のさぞご機嫌な態度はなかなか興味深かったよ。」
「--っハハ!それもそうか、そうじゃん!臨也おじさん冴えてるねぇ!ますますその余裕そうなツラを爆破したくなっちゃう!」
「そんな野蛮な事を言わないでくれよ、俺は別に死にに来たんじゃないんだからさ。前にも言った通り、ただ君の事を知りたいだけだからね。君だって、目につく人間全て殺すわけじゃないでしょ?もしも君の機嫌を本当に俺が損ねていたとすればすぐさまその手榴弾が飛ぶはずさ。さらに言うなら君みたいな人間が未だに素性も目的も探れない、実に腹の内の読めない手合を殺せるという確信がないまま事に及ぶとは考えにくい。そういう手合いは保険に何をかけているかわからないし自分に不利益しかない厄介事に首を突っ込んで『趣味』ができなくなりでもしたら大変だしね。」
「別に私としてはここで殺してもいいんだぜぇ?アンタと私はそもそも無関係だろ?」
「無関係......ね。確かにその通りだよ。俺と君は無関係だ。例え君がここで人を殺したとしても、
君がここで死んでしまったとしても、
俺が君をここで殺してしまったとしても、
今はまだ23歳の俺をおじさまやらおじさんと呼ぼうが、君と俺の無関係は、永遠だ。」
君がここで死んでしまったとしても、
俺が君をここで殺してしまったとしても、
今はまだ23歳の俺をおじさまやらおじさんと呼ぼうが、君と俺の無関係は、永遠だ。」
「ああ、そうだよなぁ?」
今度はウィキッドがへらへらと笑いながら、手に持った手榴弾を弄ぶ。
ウザい。不愉快だ。
それは初めて言葉を交わした時から全く以て変わりはしなくて。
ウザい。不愉快だ。
それは初めて言葉を交わした時から全く以て変わりはしなくて。
「--それで?そんな無関係な人間に、観察なんぞに命懸けて何がしたいんだ?あたしには全くわからないなぁ?」
ウィキッドは。
それこそ、初対面の印象は悪かったが。
今となってどこか、折原臨也のことを、『悪くない』とでも思っていたのかも知れない。
確かに、コイツは不快だ。不愉快だ。
まだ言葉を交わしてから短い時間であるが。
終始絶やすことのなかったその笑みを張り付けたツラを爆破してやりたいとどれ程思ったことか。
折原臨也が果たして何を企んでいて、どこまでこちらの行動を読んで来るのかわからないその掴み所の無さにどれだけ苛立たされたか。
いつもそうだ。
顔色の読めない奴が相手だと、調子が狂う。
それでも、コイツは『悪くない』。使える奴だ。
そう思った。
この男は、きっと。
弓原紗季とも。
霧雨魔理沙とも。
カナメとも。
違くて。
例えるならば。
あの、透明な奴の。
Lucidのような、そんな奴かもしれないと思ったから。
まさか。
まさか、なあ?
それこそ、初対面の印象は悪かったが。
今となってどこか、折原臨也のことを、『悪くない』とでも思っていたのかも知れない。
確かに、コイツは不快だ。不愉快だ。
まだ言葉を交わしてから短い時間であるが。
終始絶やすことのなかったその笑みを張り付けたツラを爆破してやりたいとどれ程思ったことか。
折原臨也が果たして何を企んでいて、どこまでこちらの行動を読んで来るのかわからないその掴み所の無さにどれだけ苛立たされたか。
いつもそうだ。
顔色の読めない奴が相手だと、調子が狂う。
それでも、コイツは『悪くない』。使える奴だ。
そう思った。
この男は、きっと。
弓原紗季とも。
霧雨魔理沙とも。
カナメとも。
違くて。
例えるならば。
あの、透明な奴の。
Lucidのような、そんな奴かもしれないと思ったから。
まさか。
まさか、なあ?
「そうだね。俺は、『人間』を愛してるんだ。文字通りね。」
そんなことを、言うもんだから。
「--ハ。アンタ、今まで自分が言ってた事思い出せよ。私の記憶が確かなら、こう言ってたよな?
『俺とお前は無関係は、永遠だ』ってな?さらに言おうか?臨也おじさまぁ、こう言ってたよなぁ?」
『俺とお前は無関係は、永遠だ』ってな?さらに言おうか?臨也おじさまぁ、こう言ってたよなぁ?」
『右脚を失った彼女を見た君のさぞご機嫌な態度はなかなか興味深かったよ。』
覚えてるか?ウィキッドが尋ねた。
覚えてるさ。臨也はすぐ肯定した。
どこから見てた?ウィキッドが尋ねた。
最初からかな。臨也はまたすぐ答えた。
覚えてるさ。臨也はすぐ肯定した。
どこから見てた?ウィキッドが尋ねた。
最初からかな。臨也はまたすぐ答えた。
その時に今みたいに飛び込んでりゃアイツは助かったかもなぁ?ウィキッドが笑った。
確かにそうだろうね。でもそれじゃあ俺が観察できないだろ?臨也もくつくつと笑う。
確かにそうだろうね。でもそれじゃあ俺が観察できないだろ?臨也もくつくつと笑う。
結局、愛より趣味じゃんか!笑えてくるぜぇ!ウィキッドも笑った。
いやだなぁ。俺はあくまで人間を愛してるのさ。彼女自身を愛してる訳じゃない。そう言って。折原臨也は、演説を始めた。
いやだなぁ。俺はあくまで人間を愛してるのさ。彼女自身を愛してる訳じゃない。そう言って。折原臨也は、演説を始めた。
そして。
「俺はね。殺された彼女の。殺人鬼の君の。まだ見ぬ誰かの生み出す、
可能性を、
愛情を、
友情を、
信念を、
努力を、
喜びも、
悲しみも、
希望も、
絶望も--
その『全て』を愛しているのさ。そしてそれは、特定の誰かに対して向けられるものじゃあない。
さらに言おうか。」
可能性を、
愛情を、
友情を、
信念を、
努力を、
喜びも、
悲しみも、
希望も、
絶望も--
その『全て』を愛しているのさ。そしてそれは、特定の誰かに対して向けられるものじゃあない。
さらに言おうか。」
滑稽だ、と。ウィキッドは思った。
「俺は、君の狂気を愛している。」
やっぱり、イカれてる。とも思った。
「俺は、君の悪意も愛している。」
やっぱり、バカだとも思った。
「俺は、君の殺人そのものも愛している。」
そして何より。
「俺は、彼女の悲劇も愛している。」
『弱い』奴だと、そう思った。
「俺は、彼女の慟哭も愛している。」
『殺せる』奴だと、そう思った。
「俺は、彼女の断末魔さえも愛しているのさ。」
だから。
折原臨也を殺しますか?
>はい いいえ
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混沌への導火線 | 投下順 | ささやかな揺らめき |
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裏切りの朝焼け | 折原臨也 | トラゴイディア-The beginning-(後編) |
裏切りの朝焼け | ウィキッド | トラゴイディア-The beginning-(後編) |