バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

その座標に黒を打て(後編)

最終更新:

kyogokurowa

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「「「「......」」」」

夾竹桃の書いたモノを見せられた四人に沈黙が流れる。

(意味が解らないわ...)
(同人だのなんだのとわからねえ奴だったが、まさか最後に遺していくのがポエムとはな...)

咲夜とリュージはただ呆れ。

(この文章...違和感がありすぎますね)
(なんかの暗号のつもりか?)

レインと垣根はなにか意味のある文章だと考えて。

「てめえら。こいつの意味を考えるぞ」
「いや、これただのポエムじゃねえの?」
「こいつがただのクソポエムだって思うならそれはそれでいい。それ自体に意味がある」
「解らないことに意味がある?」

咲夜の言葉に応じ、レインはさらさらと紙にペンを奔らせる。

『これがなにかしらの暗号であれば、それは主催側に悟られたくないことでしょうね』

レインの筆談に、リュージ・咲夜・ムネチカの三人は感心の情を抱き、垣根はレインと同じ意見だと不敵な笑みを零す。

「レイン、そいつを全員に配れ」

垣根の指示に従い、レインは紙を皆に配り、各々、予め支給されていたペンを手に取る。

———議論、開始(以降、:の前に各々の頭文字が付きます)


垣:こっからは筆談だ。口に出す言葉は全部関係ねえことにしろ

レ:まずはこの文章が何を示したいのかを考えましょう

タイトル【楽園からの逃亡】
私は幻惑の毒花 夾竹桃。私の香りは嘘の毒。鏡のように人を惑わす


貴女はこんな私でも手を引いてくれますか?
繋ぎ止められた私でも愛してくれますか?
この想いを鏡一枚で変えれるのなら、
「枷を外すのは一緒がいい」。


byクリスチーネ桃子

リ:この文を無理やり殺し合いに当てはめるなら楽園っつーのは殺し合いのことだな

レ:彼女は殺し合いを楽園と称するような戦闘狂なのですか?

リ:いや。俺たちが主催連中と会った時にμが言ってたんだ。これから俺たちに起こるのは素晴らしいことだってな

咲:その言葉が本当なら確かに長い目で見れば楽園に当てはまるわね

ム:楽園からの逃亡。即ち殺し合いからの脱出と見るべきか

レ:そうだと見ていいでしょう。でなければただのクソポエムです

垣:よし。タイトルの意味はそれでいい。次の文だ


私は幻惑の毒花 夾竹桃。私の香りは嘘味の毒。鏡のように人を惑わす


咲:これはポエムに先立っての自己紹介かしら

リ:にしても回りくどくねえか?私は幻惑の毒花、だけで済むことだろ

レ:そうですね。この文にはどうにも違和感があります。伝えたいことは自己紹介ではないのでは?

垣:強調したいのはむしろ【私の香りは嘘味の毒。鏡のように人を惑わす】っつー部分じゃねえのか

一 時 沈 黙

レ:これだけ見ていてもなんとも言えませんね。次に行きましょう


貴女はこんな私でも手を引いてくれますか?
繋ぎ止められた私でも愛してくれますか?
この想いを叶えてくれるなら
「枷を外すのは一緒がいい」。

リ:肝心のクソポエムだな

レ:全体の意味を翻訳してみますか

ム:そのまま繋げるなら、

毒塗れの私も許してくれるか
それだけじゃなく愛してくれるか
私の望みを叶えてくれるなら
枷を外すのはあなたといっしょがいい

ということか

リ:なんでわかるんだよ

ム:書いてあるものをそのまま読んだだけだが

咲:類は友を呼ぶ、といったところかしらね

垣:とにかくだ。タイトルと絡めるなら枷っつーのは首輪と考えていいだろ


レ:纏めると

タイトル【殺し合いからの脱出】
私は幻惑の毒花 夾竹桃。私の香りは嘘の毒。鏡のように人を惑わす


毒塗れの私も許してくれるか
それだけじゃなく愛してくれるか
私の望みを叶えてくれるなら
「首輪を外すのはあなたといっしょがいい」

レ:といった具合ですね

咲:...これ、主催から隠すようなことかしら

リ:首輪外せるならみんなで外した方がいいに決まってるからな。当たり前のこと言ってるだけだ。やっぱただクソポエム書いただけじゃねーの?

垣:本当にそうならもう一回ぶっ殺してえところだが、まだわからねえことは残ってる。少し考えさせろ



———議論 中断———

レインは口元に指を添えながら考える。

(そう、この文章はなにか違和感がある。どこだ。どこがおかしい?)

今まで筆談で纏めた文字を整理する。
ここまでの議論は全部自分たちから出たものだが、解読のヒントになり得そうなものがあるといいのだが、と読み返す。

全て。
俯瞰的に。
読み返す。

「———あ」

違和感の正体がわかった。

レインは再びペンを手に取った。

———議論 再開———

レ:違和感の正体がわかりました

「違和感だぁ?」

レ:リュージさん、筆談

リ:ワリィ、つい

レ:私の抱いた違和感はこれです。

「枷を外すのはあなたといっしょがいい」

レ:この文章だけが鍵括弧がついているんです。妙ですよね、私たちも筆談し出力している時にわざわざ鍵括弧なんて着けませんから

ム:言われてみれば。しかしこれがいったい何の意味が?

咲:この鍵括弧が無くても文は繋がるものね

レ:私たちはこれをポエムだと捉えていました。この一番下のByが猶更ややこしくさせていたんですね

咲:ポエムじゃなかったらなんなのかしら

垣:小説かあとがきみたいなもんか

レ:そうです。そう捉えれば鍵括弧の意味が解ります。

毒塗れの私も許してくれるか
それだけじゃなく愛してくれるか
私の望みを叶えてくれるなら

レ:この前半の鍵括弧のついていない文はあくまでも口に出していない彼女の心理描写で

「枷を外すのはあなたといっしょがいい」

レ:この鍵括弧の文は彼女が実際に口に出しているという描写であると考えられます。

ム:なるほど。しかしそれに何の意味が?

垣:そういうことか

リ:なにかわかったのか?

垣:自己紹介の文にあるだろ

私の香りは嘘味の毒。鏡のように人を惑わす

垣:花の香りってのは相手に伝えて意味があるもんだ。じゃなけりゃ匂いで獲物をおびき寄せることもできねえからな

レ:私は夾竹桃、つまり花だと例えるなら、香りは言葉の言い換えでしょう。つまり私の『言葉』は嘘である、ということです。

レ:ではどういう嘘かと言うと、それが

鏡のように人を惑わす

レ:鏡に写されたものは反転します。つまり、彼女の言葉だけを反転させるという意味でしょう

垣:要約するとだ


タイトル【殺し合いからの脱出】
私は幻惑の毒花 夾竹桃。私の言葉は嘘だから反転しなさい


毒塗れの私も許してくれるか
それだけじゃなく愛してくれるか
私の望みを叶えてくれるなら
首輪を外すのはあなたといっしょはイヤだ


垣:っつーかんじだ

レ:いっしょはイヤ、捉え方を変えれば別々に外して欲しい、という意味でしょうね。つまり結果は


タイトル【殺し合いからの脱出】
私は幻惑の毒花 夾竹桃。私の言葉は嘘だから反転しなさい


毒塗れの私も許してくれるか
それだけじゃなく愛してくれるか
私の望みを叶えてくれるなら
首輪を外すのは別々がいい


—— 議論 終了 ——


「———で、だ。答えが出たのはいいけどよ」
「ええ。問題は夾竹桃が何を掴んでいたか、です」

夾竹桃はムネチカに『みんなで相談したい』と言っていた。
その時はまだ魔王との戦いが始まっておらず、彼女もそれを乗り越えたあとで共有する手はずだったはずだ。
『首輪を外すのは別々がいい』
彼女が散った以上、その真意にまでは辿り着くことができないのは痛手だ。

「わざわざ『枷』に触れているんです。『枷』を回収した彼女だから気づけたことがあるのでしょうが...」
「実演してみりゃあわかりやすいんだろうが、そうもいかねえからな。ノーリスクで実演現場を再現できる状況なんざ...あ」

ふと、なにかを思い出したかのように垣根は言葉を漏らす。
その脳裏に過るのは、ジョルノ達と踏み込んだ山小屋の惨劇。
そこで抱いた違和感塗れの死体。
そうだ。もともとは、あの死体を見つけてから全てが始まったのだ。
そして幸運にも、垣根が犯した失態により、その現場再現も可能になっている。

「レイン、もうすぐ城に着くみてえだぞ」

屋根から聞こえてきた静雄の声に、ちょうどいいかと垣根はハンディカムを取り出す。

「垣根さん?」
「すっかり忘れてたぜ。こいつがあったのをな」

それは、参加者の一人・チョコラータの起こした惨劇の記録だった。




城に着き、ここに集った者たちがみな解散していたのを確認すると、自分たちは目立たぬ場所に集い、垣根の弄るハンディカムに皆が注目を集める。

「俺が病院に向かう前に首輪が外された女の死体があった。で、このカメラにはそいつを殺したチョコラータって奴のやったことが記録されてる———ああ、そいつはもう死んでるから安心しな。...よし、点いた」

映像が流れ始める。

『まずは右腕からいくか、累』
『あ、あああああッ!』

少女の絶叫が響き渡り、鼻歌交じりの男の笑い声が流れ始める。

「...なあ、こいつは俺も見なくちゃいけねえやつか?」

拷問が始まってしばらくしてからそんな言葉を漏らすのは平和島静雄。
先に見せた流竜馬への怒りとは違い、今回は声も微かに震え、明確な怒りと殺意を醸し出している。

静雄は画面で拷問されている妖夢を知っているわけではない。
しかし、見た目非力な少女を嬉々として甚振っているという事実だけで怒りが瞬間湯沸かし器のように吹きあがりかけており、既に下手人も死んでいるという事実が辛うじて彼の噴火を抑えていた。
理性と暴走の瀬戸際である。

「その調子じゃあ見ても無駄だろうな。見張りでもしておきな」
「わかった」
「あの、私もいいかしら」

カメラから遠ざかろうとする静雄に咲夜も便乗する。
彼女は別に静雄のように怒りを抱いているわけではない。
目の前の知らぬ少女が殺されても悼み悲しむようなことはしないだろう。
しかし、他者の死を許容しているからといって悪趣味且つ残酷な映像に耐性があるわけではない。
暗部の人間や基からデスゲームに参加している者、戦国時代育ちの武士とは価値観が違うのだ。
ただでさえ疲弊しきっている身体にこれ以上の負担をかけようとは思わなかった。

「おめーらはどうする?」

離れていく二人を止めることはせず、垣根は残る三人に問いかける。
実際、生きた人間の拷問シーンなど耐性が無くて当然であり、むしろそれを見ても平然としていられる自分の環境が特殊であるのは自覚している。
だから垣根はビデオの視聴を無理強いはせず、どうせ考えられないならば少しでも身体を休ませた方がいいと判断した。

「私は残りますよ。残酷な場面はある程度経験していますから大丈夫です」
「小生も問題はない。戦場では血肉臓腑を見るのは至極当然」
「...耐えれるとこまでは見ておくわ」

三人の同意を経て、ビデオは続きを再生させられる。


『累、次は首輪が欲しいのだが頼めるかい』
『……分かったよ、父さん』


その言葉と共に、妖夢の首に糸が食い込み、肉を割き首が斬り落とされた。
ぶつり、と首が切り離されると共に、彼女の首輪が地面に落ちた。

ここまでは概ね彼らの予想通りだ。
だが、次の瞬間、彼らは信じられぬ光景を目にする。

『グリーン・デイ』
「!!」

一同が息を呑むのも束の間だった。
チョコラータの言葉と共に、妖夢の首の切断面にカビが生い茂り、神がかり的な縫合技術と速度により妖夢の首が繋ぎ合わせられた。
そしてあろうことか、彼女は死なず、苦しみの嗚咽を漏らし生き延びたのだ。

「...おい」

思わず垣根は一時停止ボタンを押す。

「ええ。確かに、形はどうあれ、彼女は生きたまま首輪を外すことに成功しました」

その要因は妖夢自身ではなく、チョコラータの能力と技術によるものであるのは窺い知れる。
だが、奴はいとも簡単に、妖夢にゲーム脱出への切符を渡すことができた。
それはつまり、チョコラータと同じことができれば、垣根たちも首輪を外すことができることになる。


「だが、小生にはこのような行為はできぬ」
「俺もだ。つか、こんなことできるのは医者でも限られたやつだけだろ」
「...続けるぞ」

再生ボタンが押される。

『その子をどうするの?』
『なあに、ちょっとした実験でもしようか』
『………い……ゃ”』

そこからしばらくはゲス医者による少女の解体ショーが続いた。
なにか後に繫がるものがないか、集中して見られたのも最初だけ。
弟の殺害現場を連想させられたリュージはすぐに吐き気と共に顔を逸らし、ムネチカも肋骨から開かれた内臓までが限界で。
残るレインも顔色は優れず、不快気に眉を潜めながらも平然としていたのは垣根だけだった。


そして記録された範囲までを終え、一同は大きく息を吐く。

「...ま、あれだ。首輪を外せる事例が視れたのは収穫だった」
「仇を取ってやりたかったが...せめて、彼女の魂に安らぎがあらんことを願おう」
「あれが本人じゃねえかもってことだけが唯一の救いかもな」

ふと零した、各々の感想。

「———え?」

だがレインはそれを聞き逃さなかった。

「リュージさん、いま、なんて言いました?」
「ん?いや、お前も言ってたじゃねえか。この世界にいる俺たちは本物じゃなくて、参加者のデータかなにかをおっ被せられてる偽物かもって。で、首輪がそれを管理する代物だって証拠も夾竹桃が見つけたんだろ?」

そう、リュージの言っていることはおかしなことじゃない。
だからこそ、なにかが妙なのだ。

「垣根さん。カメラを貸してくれますか」
「壊すなよ」

垣根からカメラを受け取り、再び再生ボタンを押すと再び解体ショーが始まる。
レインは己の求める場所まで早送りで飛ばし、該当シーンで止める。
そのシーンは、妖夢が首輪を外され、縫合された場面だ。

もう一度、スロー再生でそこから再開する。

首を繋げられ困惑する妖夢。そしてそのまま、その顔は絶望に染まり———

「———!!」

違和感の正体が解けた。
そして連鎖的にレインの『情報』の解析が始まる。

妖夢はなぜすぐに絶望したのか。
首輪が問題なく外せたのはなぜか。
首輪を回収した夾竹桃が気づいたこととは。
夾竹桃が暗号を残した意味。
外すのは別々がいい、この真意とは。

繫がる。
情報同士が点と化し、引かれた線が座標を描いていく。
繋ぐ。
繋ぐ。
繋ぐ。

そして繋ぎ終えた彼女は

『みなさん、ここからはまた筆談を』

答えを導いた。


—— 筆談 開始 ——

レ:夾竹桃の気づいたことが解りました

「あ?なんでだよ」

レ:リュージさん

リ:すまん。で、なんでわかったんだよ

レ:先ほどリュージさんは言いましたよね。首輪が私たちを私たちたらしめる為に着けられている装置だと

リ:いや、そうなんだろ?証拠もあったんだからよ

レ:ええ。だからこそおかしいんです。なぜあの被害者の少女は、首輪が外れたにも関わらず、誰の目を通してもあの姿のままだったのでしょうか?

リ:なぜって、どういう意味だよ

垣:そういうことかよ

ム:垣根殿?

垣:考えてみりゃ当然の話だ。この首輪があるから俺たちは俺たちでいられる。だが外れたあいつはそれでもあいつのままだった。本来なら、首輪を外された瞬間にあいつのデータを写された誰かにならなきゃおかしいだろうよ

レ:けれどビデオ越しに見た私たちからしても下手人のチョコラータからしてみても彼女は彼女のままだった。つまりこの首輪を着けている間は私たちの他の参加者への認識はブレないんですよ

垣:つまり、夾竹桃が気づいたことってのは、首輪を回収した後もその死体がそのまま見えていた違和感ってことか

レ:ですがここまでわかった上で更なる疑問が湧いてきました。首輪を外された彼女です。

レ:この首輪が参加者間の相互の認識を保持しているならば、首輪を外された彼女はチョコラータたちを『別の何者か』と見えていなければいけません。ですが、彼女はそんな素振りもなくただチョコラータに怯えていた。変ですよね?いくら混乱していもチョコラータが別人に見えていたらまずはそこに驚くはずですし言及するはずです。それが無かったということは、彼女もまたチョコラータはそのまま見えていたことになります

リ:じゃあ結局、首輪は情報を管理している装置なんかじゃなくて、ただの起爆装置だったってことか?

レ:その可能性もなくはないです。ですがそれでは垣根さんと夾竹桃が分解と解析をしてみつけた証拠と噛み合いません。そこで気になったのが、首輪を外せたという事実そのものです。

レ:チョコラータの能力と縫合技術さえあれば首輪を外すことが出来るのは解りました。ですが、アレが個人の能力でできることならば、なぜ主催側はそれへの対策をしなかったのでしょう。チョコラータがその気になれば全員の首輪を外して一気に主催に反旗を翻すのも可能だというのに。

レ:彼の下衆な精神を信用していた?しかし彼は二回目の放送までで命を落としました。決して無敵の存在ではない証左です。もしもこの件が漏れていたら先に彼を脅して首輪を解除させる協力も取り付けられたでしょうね。そんな人の精神の在りようなどという不確定要素を信頼できるはずがありません。しかし主催はこれをそのまま通しました。つまり、外されること自体はさほど深刻ではないと取れます。

レ:首輪の保持による参加者の姿の相互認識と、外された後も問題なく参加者でいられる環境。これを両立させられるとすれば、それは首輪が個々で独立して機能しているのではなく。

レ:『首輪は連動して機能しており、首輪の機能が全て、あるいはただ一人を残して機能を停止させたその時、初めて私たちの本当の姿が表れる』ということです


———筆談 終了——


「...勘弁してほしいぜ」

リュージは大きく息を吐く。

「なあ、レイン。もしもお前の考えが合ってるならよ」
「ええ。外せる当てができても、最低でも二人、『枷』を外すことなく留まらなければなりませんね。でないときっと私たちの保持はできません」
「夾竹桃が言いたかったのもそういうことか」
「まあ、彼女はこのビデオを知らないので、あくまでも試験的に順番に外すべきかもと提案したかったんでしょうがね。思いのほか、真相に迫っていたようですが」
「...誰が残るにせよ、どのみち『枷』を外さぬわけにはいかぬか」
「せっかく外す方法もわかったんです。有効活用していきたいですが...」

皆が思わず首をひねる。
方法はわかった。しかし、実現する術がない。
ただ、ここまでわかっただけでも前進か———否。

「いや、待て。もしかしたら行けるかもしれねえ」

リュージは思い出したように紙にその名前を書きなぐる。

『ブローノ・ブチャラティ。あいつのジッパーの能力なら俺たちを殺さず首輪だけ取ることができるかもしれねえ』
『なるほど。試してみる価値はありますね。ただ、能力での解除ができるかは半々といったところですね』
『最初から自力で脱出できる技を持つ奴には流石に対策してるだろうからな。ただ、後付けに関しては別だ』

妖夢は再生能力を持たないただの人間であることはチョコラータの実験を通して判明している。
そんな彼女が首を斬られても止血と縫合さえすれば生きられるのを許されているのは、首輪がそれに適応しきれていなかったのではないかと垣根は考える。
もしも適応していたら、チョコラータが妖夢の首の切断面にカビを生やした時になにかしらのアクションが起きるはずだからだ。

『データってのは複雑なもんだ。どんなに優れた数式でも一つ崩れりゃあ機能しなくなる。俺たちの存在をデータだとすりゃあ、余計なモンが入った時に首輪も効果を無くしちまうだろうよ。まあ計算が終われば適応するんだろうがな』
『それはつまり、首を斬られても生きていられる環境・あるいは体質になればその隙を突いて首輪を外すことができるかもしれないということですね』
『首を斬らなくても、変化した体質に適応する前に首輪を解除しちまえば、理論上は外せるだろうな。あのクソ医者が遊びで使った人魚の肉とかいう奴がありゃあ話は早かったんだがな。そう何個も配っているとは思えねえ』
『人の体質を変化させられる、そんな参加者や支給品があればいいのですが』

流石にそんな都合よくいかないだろうと予想しているが、彼らは知らない。
彼らの求める【他者の体質を変えることができる者】がこの会場に存在していること。
その者こそ、垣根が狙っている鬼舞辻無惨であることは、いまの彼女たちにはたどり着けなかった。


『では行動指針を纏めましょう』

離れていた静雄と咲夜を呼び戻し、レインは考察し導き出した情報を基に指針を打ち出す。


1:首輪の解析を進める。正攻法で解除できるならそれに越したことは無い。

2:他者の首を斬っても相手を殺さなくて済む可能性を持つ参加者を探す。(現状の候補はブローノ・ブチャラティ)

3:人魚の肉のような肉体の性質を変化させられる道具あるいは参加者の捜索。

4:首輪を解除する時は一斉にではなく順番に解除する。そして必ず二名以上は残す。

「この指針に沿って、これからのことを考えるなら、ひとまずはここにいた面々と合流したいところですね」
「おっ、もう声出してもいいのか。えーっと、隼人と九朗ってやつは病院に行ってから研究所で、ブチャラティとライフィセットと梔子が遺跡に、クオンと早苗ってやつも遅れて遺跡か」
「より安全を考慮するなら纏まってどちらかに絞りたいところですが、なにぶん時間は有限です。無難に二組に別れましょうか」


首輪についての情報解析は進んだ。
そう、彼らは認識している。
正誤はどうあれ、なにも見えない中を進むよりは方向性を確立させられるだけ前進だ。
あとはどう人員を割り振るか。
ここが彼らの運命の分岐点となる。


【一日目/夜/C-5/ムーンブルク城跡】


【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身火傷(大・処置済み)、出血(小~中、止血済み)、全身に複数の切り傷(小)、精神的ダメージ、全身に複数の打撃痕、レインの仮説による精神的躊躇(小)
[服装]:いつものバーテン服(ボロボロ)
[装備]:なし
[道具]:見回り用の自転車@現地調達品、コシュタ・バワー@デュラララ!!
[状態・思考]
基本行動方針:主催者を殺す。
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。黄前久美子、高坂麗奈も探したい。
1:竜馬を見つけたらぶん殴る。
2:仮面野郎共(ミカヅチ、ヴライ)は絶対殺す。
3:やっぱりノミ蟲(臨也)は見つけ次第殺す
4:竜馬の知り合いに遭ったら一応伝えておいてやる。
5:彩声との約束を守るため、梔子を護る。
6:仮面をつけている参加者を警戒。
7:久美子と会ってセルティの話を聞きたい。
8:新羅の死の真相が知りたい。
[備考]
※参戦時期は少なくともセルティが罪歌と関わって以降です。
※静雄とミカヅチの戦闘により、公園が荒れ放題となっております。
 仮面アクルカによる閃光は周辺地域から視認できたかもしれません。
※彩声の遺体は喫茶店に運び込まれています。
※梔子と情報交換しました。
 ただウィキッドは仲間の義理として細かくは説明してません。

【レイン@ダーウィンズゲーム】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[服装]:普段の服
[装備]:ベレッタM92@現実、レミントンM700@現実
[道具]:天本彩声の支給品(基本支給品、ランダム支給品×0~2)
[状態・思考]
基本行動方針:会場から脱出する
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。黄前久美子、高坂麗奈も探したい。
1:竜馬が心配。それにイヤに執着するリュージも不安視。
2:『アリア』に対し、疑念。確証はないが、彼女に関しての情報は集めておきたい。
3:情報は適切に扱わなければ……
4:サンセットレーベンズメンバーとの合流を目指す。
5:μについての情報を収集したい。
6:琵琶坂、ウィキッド、無惨に警戒。
7:竜馬の知り合いに遭ったら協力を仰いでみる。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後、カナメ達とクランを結成した頃からとなります。
※ヒイラギが名簿にいることから、主催者に死者の蘇生なども可能と認識しております。
※彩声の支給品はレインが回収しました。
※『参加者は赤の他人がキャラクターになりきってる』と言う説と、
 『それが参加者が折れ殺し合いをするしかない結論をさせる為の罠』説を立ててます。
 どちらも確証はありません。(前者の方は辻褄が合い、後者の方は発想の逆転のようなもの)
※梔子と情報交換しました。
 ただしウィキッドには仲間であるため細かく説明してません。




【ムネチカ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:疲労(極大)、全身に火傷や打撲ダメージ(極大)、強い決意、出血(大、火傷による止血済)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ムネチカの仮面@うたわれるもの
[道具]:基本支給品一色、大きなゲコ太のぬいぐるみ@とある魔術の禁書目録(現地調達)、夾竹桃の支給品一式(分解済みのシュカの首輪、素養格付、クリスチーネ桃子作の同人誌、夾竹桃のNETANOTE、薬草及び毒草)
[思考]
基本:アンジュとの絆を嘘にしない。
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。黄前久美子、高坂麗奈、ライフィセットも探したい。
1:小生はもう迷わない。
2:志乃乃富士、夾竹桃、麦野沈利、感謝する。
3:ライフィセットや『あかりちゃん』を護る。
4:魔王や流竜馬に最大限の警戒を。

[備考]
※参戦時期はフミルィルによって仮面を取り戻した後からとなります
※女同士の友情行為にも理解を示しました。
※画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※アンジュとの友情に目覚め、崩壊していた精神が戻りました。

【リュージ@ダーウィンズゲーム】
[状態]:片腕・片目損失。精神的疲労(中)、『ゲッター』への強い忌避感。
[服装]:軍服
[装備]:イケPの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-
[道具]:ポルナレフの双眼鏡@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風、上やくそうの束@ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島(一部消費)、悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃(暴走時に竜馬が捨てたのを拾った)
[思考]
基本:『ゲッター』を止める。
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。殺し合い云々以上に、なにを置いても『ゲッター』を止める。隼人には悪いが、竜馬の殺害も辞さない
1:垣根たちと共に『ゲッター』を止めたい。
2:ひとまずは殺し合い反対派の連中に合流したい。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後です。
※この世界をメビウスのような「フィクション」だと思っています。
※夾竹桃・ビルド・琴子・隼人・アリアと共に【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。
※『今の自分が本物ではない』という琴子の考察を聞きました。
※カタリナとあかりのこれまでの経緯を聞きました。
※琵琶坂のこれまでの経緯を聞きました。
※気絶中に『ゲッター』の一部を垣間見せられた影響で、『ゲッター』に対して強い忌避感を抱いています。


【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(極大)、全身に火傷や打撲ダメージ(極大)、強い決意、精神的疲労(極大)、出血(大、火傷による止血済)、右腕切断(止血済み)。
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、ジョルノの心臓から生まれた蛇から取り出した無惨の毒に対するワクチン、ジョルノの首輪、マギルゥの首輪、妖夢の首輪、リゾットの首輪、、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録、マギルゥの支給品0~1、ジョルノの支給品0~3、顔写真付き参加者名簿、リゾットの支給品2つ
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。ついでにこの悪趣味なゲームを眺めている奴らも軒並みブッ殺す。
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。ライフィセットも探したいが、首輪の解析も進めたい。
1:あの化け物(無惨)は殺す。
2:リゾットの標的だったボスも正体を突き止めていずれ殺す。
3:未元物質と聖隷術を組み合わせた独自戦法を確立する。道中で試しながら行きたい。
4:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
5:魔王及び流竜馬には最大限の警戒。
6:麦野の最期に複雑な感情。

[備考]
VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
※ジョルノ、リゾット、マギルゥの支給品も垣根が持っています。
※未元物質を代用した聖隷術を試しました。未元物質を代用すると、聖隷力に影響を及ぼし威力が上がりますが、制御の難易度が跳ね上がります。制御中は行動が制限されます。
※首輪の説明文により、自分たちが作られた存在なのではないかと勘繰っています。
※ブチャラティ達と情報交換をしました。


【十六夜咲夜@東方Projectシリーズ】
[状態]:体力消耗(極大)、全身火傷及び切り傷、全身にダメージ(極大)、右目破壊(治療不可能)腹部打撲(再発)
[役職]:ビルダー
[服装]:いつものメイド服(所々が焦げている)
[装備]:懐中時計@東方Projectシリーズ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1つ 、
[思考]
基本:早くお嬢様の元へ帰る、場合によっては邪魔者は殺害
0:病院方面に向かうか遺跡方面に向かうかを決める。
1:ひとまずは脱出の方で動くべきか。
2:今後のことを見据え、遭遇する参加者については殺せる機会があれば殺すが、あまり無茶はしない。
3:取り逃がした獲物(カタリナ、琵琶坂)は次出会えば必ず仕留める
4:余裕があれば完全版チケットとやらも探す。
5:ヴライや魔王、流竜馬に最大限の警戒。
6:紅魔館...
[備考]
※紅霧異変前からの参戦です
※所持ナイフの最大本数は後続の書き手におまかせします
※オスカー達と情報交換を行いました
※『ジョジョ』世界の情報を把握しました。ドッピオの顔も知りましたが、ディアボロとの関係は完全には分かっておりません。
※映画を通じて、『響け!ユーフォニアム』世界の情報を把握しました。映画で上映されたものは久美子たちが1年生だった頃の内容となり、『リズと青い鳥』時系列の出来事等については、把握しておりません。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※ビエンフーからこれまでの経緯を聞きました。

前話 次話
その座標に黒を打て(前編) 投下順 偽りの枷

前話 キャラクター 次話
その座標に黒を打て(前編) 垣根帝督 眼光紙背に徹す
その座標に黒を打て(前編) ムネチカ 眼光紙背に徹す
その座標に黒を打て(前編) リュージ 眼光紙背に徹す
その座標に黒を打て(前編) 十六夜咲夜 眼光紙背に徹す
その座標に黒を打て(前編) 平和島静雄 眼光紙背に徹す
その座標に黒を打て(前編) レイン 眼光紙背に徹す
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