「......」
「......」
「......」
ヴァイオレットとオシュトル。
大いなる父の遺跡へと向かう二人の間に言葉はなく、ひたすらに黙々と足を進めていた。
大いなる父の遺跡へと向かう二人の間に言葉はなく、ひたすらに黙々と足を進めていた。
「......」
「.......」
「.......」
沈黙が支配する空気の中、オシュトル―――否、ハクはいたたまれない心境にいた。
(気を遣わせてるな、こりゃ)
彼は元来から人づきあいが苦手ではなく、むしろ得意な部類だ。それに加えてクオンや本物のオシュトルから押し付けられてきた雑用を通じて多くのヒト達と交流経験を重ねている。
そんな彼だからこそ、この沈黙がただの周囲への警戒ではないことは容易に察せたし、その原因も自分にあると理解もできた。
そんな彼だからこそ、この沈黙がただの周囲への警戒ではないことは容易に察せたし、その原因も自分にあると理解もできた。
ハクの『ロクロウにシグレを殺害させ首輪を調達する』という提案は、早苗に全面的に反発された。
これは彼女だけでなく、残る二人、ブチャラティとヴァイオレットもそうだ。
ブチャラティは「まあ仕方ない面もあるかな」といった具合に折り合いをつけていたが、ヴァイオレットはそうもいかないだろう。
なんせ彼女はこの狂乱の舞台においても人の想いを繋ぐ手紙を代筆することを忘れていない。
報酬もなく、ただ「想いを遺したい」「想いを届けられるようにしたい」。その善意のみだけでだ。
そんな心優しき彼女の前で兄弟での殺し合いを推奨するようなことを言えばとても良い眼では見られまい。
それでも彼女がこちらを警戒していないのは、こちらが自棄になっているのではないかと心配しているからだろう。
『最早、勝つためには手段は択ばぬ。如何な汚れ役でも買ってでよう』といった具合にだ。
これは彼女だけでなく、残る二人、ブチャラティとヴァイオレットもそうだ。
ブチャラティは「まあ仕方ない面もあるかな」といった具合に折り合いをつけていたが、ヴァイオレットはそうもいかないだろう。
なんせ彼女はこの狂乱の舞台においても人の想いを繋ぐ手紙を代筆することを忘れていない。
報酬もなく、ただ「想いを遺したい」「想いを届けられるようにしたい」。その善意のみだけでだ。
そんな心優しき彼女の前で兄弟での殺し合いを推奨するようなことを言えばとても良い眼では見られまい。
それでも彼女がこちらを警戒していないのは、こちらが自棄になっているのではないかと心配しているからだろう。
『最早、勝つためには手段は択ばぬ。如何な汚れ役でも買ってでよう』といった具合にだ。
(いやまあ、だいたいそんな感じではあるんだが、こればっかりは生きた時代が違うってもんだからなあ)
ハクとて元は一般人ではあるし、ヴライが戦士も民草も関係なく燃やし尽くしていた時には吐き気すら催すくらいには他人の死への忌避感は持ち合わせているが、それでも早苗たちよりは環境が戦場と隣り合わせになっている。
その分、敵よりも味方の命と割り切れるし、形成を逆転するためならば火を放ち敵を一網打尽にするという、傍目には残酷な方法を用いることもできる。
ただ、それを受け入れろと説得するのが難しいのは早苗が示しているし、ハク自身もそこまで強要するつもりはない。
とはいえ、この空気のままでいるのは互いに良くないことだとも思っている。上っ面の言葉だけで平気だと宣っても意味がないことも。
その分、敵よりも味方の命と割り切れるし、形成を逆転するためならば火を放ち敵を一網打尽にするという、傍目には残酷な方法を用いることもできる。
ただ、それを受け入れろと説得するのが難しいのは早苗が示しているし、ハク自身もそこまで強要するつもりはない。
とはいえ、この空気のままでいるのは互いに良くないことだとも思っている。上っ面の言葉だけで平気だと宣っても意味がないことも。
(自分がアトゥイくらいマイペースでいられたら随分と楽だったんだがなぁ。あいつなら『そう言われてもウチは我慢できへんえ~』でごねて終わりそうだし)
まかりまちがってもオシュトルはそんなこと言わないしなぁ、と内心でため息を吐く。
とにかく今はこの空気をうまく変える方法はないか―――そんな悩みを抱く彼に贈り物と言わんばかりに、状況に変化の兆しが訪れる。
とにかく今はこの空気をうまく変える方法はないか―――そんな悩みを抱く彼に贈り物と言わんばかりに、状況に変化の兆しが訪れる。
「オシュトル様、この音は...」
「うむ。何者かが近づいているようだ」
「うむ。何者かが近づいているようだ」
聞いたのはいつ以来か、二人の耳に届くはエンジン音。
そして音の鳴る先からは白バイとそれに跨る人間が確認できた。
そして音の鳴る先からは白バイとそれに跨る人間が確認できた。
「オシュトル様、お下がりを」
オシュトルが臨戦態勢を取る前にヴァイオレットが前に進み出る。
その手に斧は持っていない。
その手に斧は持っていない。
「ヴァイオレット殿。相手の出方がわからぬ以上はこちらも備えをしなければ」
「余計な諍いを誘発するべきではありません」
「余計な諍いを誘発するべきではありません」
オシュトルの進言にも耳を貸さずヴァイオレットは来訪者を武装無しで迎え入れる。
自衛のための戦闘すら拒んでいるのか、あるいは武器を持ち迎え撃つことによりオシュトルが首輪を回収する名分ができてしまうのを避けているのか。
その心がどちらにあるかを知る前に、来訪者は二人の前に白バイを停めた。
自衛のための戦闘すら拒んでいるのか、あるいは武器を持ち迎え撃つことによりオシュトルが首輪を回収する名分ができてしまうのを避けているのか。
その心がどちらにあるかを知る前に、来訪者は二人の前に白バイを停めた。
男はバイクから降りるなり、二人を、いやオシュトルをギロリと睨みつける。
(...なんだ?やけに自分を敵視してないか?)
オシュトルとして合戦を繰り返している以上、敵対兵士やその遺族から恨まれることがあるのは百も承知している。
しかし、彼は自分たちの住んでいる世界とは別の世界の住人の存在を把握しており、眼前の男の服装はまかり間違ってもヤマト含むオシュトルの世界ではありえないものだ。
そんな異世界の人間に恨まれるとは考えにくいが...
しかし、彼は自分たちの住んでいる世界とは別の世界の住人の存在を把握しており、眼前の男の服装はまかり間違ってもヤマト含むオシュトルの世界ではありえないものだ。
そんな異世界の人間に恨まれるとは考えにくいが...
「お初にお目にかかります。お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
そんなオシュトルの困惑を他所に、ヴァイオレットは研究所でも見せた、スカートの裾を手で引きつつ懇切丁寧で上品な会釈を披露する。
そんなお嬢様然とした彼女の挨拶に男はポカンと口を開けていた。
そんなお嬢様然とした彼女の挨拶に男はポカンと口を開けていた。
「...堅苦しいやっちゃなぁ~。俺ァ流竜馬ってもんだ」
ヴァイオレットとは対照的に、竜馬が親指を己に向けて品のない名乗りを上げる。
「んで?そっちの仮面野郎は?」
「ああ、某はオシュトルと申す」
「ああ、某はオシュトルと申す」
簡易的な名乗りを交わした三人だが、しかし竜馬の目つきは依然としてオシュトルへの警戒を解いていない。
「あー...某がなにか?」
「さっきまで一緒にいたガキが仮面つけた野郎に襲われたって言ってたんだよ。ちょうどオメェみたいなな」
「さっきまで一緒にいたガキが仮面つけた野郎に襲われたって言ってたんだよ。ちょうどオメェみたいなな」
オシュトルの目が見開かれる。
『自分のような仮面を着けた者に襲われた』。
それは、自分以外の仮面を着けた者。単純に考えれば残る三人のアクルトゥルカ、即ちミカヅチ・ムネチカ・ヴライの何れかと遭遇し襲撃されたということ。
そして、竜馬が野郎と言っていたということは女であるムネチカが除かれ、残る二人に絞られる。
『自分のような仮面を着けた者に襲われた』。
それは、自分以外の仮面を着けた者。単純に考えれば残る三人のアクルトゥルカ、即ちミカヅチ・ムネチカ・ヴライの何れかと遭遇し襲撃されたということ。
そして、竜馬が野郎と言っていたということは女であるムネチカが除かれ、残る二人に絞られる。
「竜馬様。お言葉ですが、オシュトル様はそのような蛮行を致しておりません。証拠としては、ここに至るまでに同行していた早苗様とロクロウ様が証人となりましょう」
「んなこと言っても、俺ァそいつらを知らねーぞ」
「竜馬殿。その童が襲われたという男の特徴は他には?」
「あ?なんだっけな...確か、デケェ剣を使ってたとかなんとか言ってたか」
「...そうか」
「んなこと言っても、俺ァそいつらを知らねーぞ」
「竜馬殿。その童が襲われたという男の特徴は他には?」
「あ?なんだっけな...確か、デケェ剣を使ってたとかなんとか言ってたか」
「...そうか」
オシュトルは目を瞑り、子供を襲ったという下手人の姿を瞼の裏に思い浮かべる。
(ミカヅチ...お前はそこまで覚悟を決めているのか)
剣を扱うアクルトゥルカはこの会場においてミカヅチただ一人である。
本物のオシュトルほどの付き合いの長さはないが、彼がどういう漢かはわかっているつもりだ。
強面ではあるが、悪人のみを裁き、弱きには優しさを見せ、戦場以外では割と愉快な面も見せる。
まさしくオシュトルの戦友たる義侠の漢だ。
そんな漢が童を襲うなど、理由は一つしかない。
本物のオシュトルほどの付き合いの長さはないが、彼がどういう漢かはわかっているつもりだ。
強面ではあるが、悪人のみを裁き、弱きには優しさを見せ、戦場以外では割と愉快な面も見せる。
まさしくオシュトルの戦友たる義侠の漢だ。
そんな漢が童を襲うなど、理由は一つしかない。
勝ち残るため。
私欲ではない。
最後の一人となりヤマトへの忠義を果たすため。
その為に眼前の障害を全て切り払う悪鬼羅刹の道を進もうというのか。
最後の一人となりヤマトへの忠義を果たすため。
その為に眼前の障害を全て切り払う悪鬼羅刹の道を進もうというのか。
(...やはり自分も、手段を選んでいる余裕はないのかもしれんな)
「んで、言い訳は終めぇか?」
「...その漢は剣を持っていたのだろう?某に配られた武器はこの扇のみだ」
「んぁ?...あー、人違いかよ。悪かったな」
「んで、言い訳は終めぇか?」
「...その漢は剣を持っていたのだろう?某に配られた武器はこの扇のみだ」
「んぁ?...あー、人違いかよ。悪かったな」
先ほどまでの敵意はどこへやら、竜馬は一気に毒気の抜けた表情になる。
誤解が解けたオシュトルとヴァイオレットはふぅ、と安堵の息を吐いた。
誤解が解けたオシュトルとヴァイオレットはふぅ、と安堵の息を吐いた。
「フレンダという殺し合いに乗った少女に悪評を撒かれて苛立っている、とな」
「ま、これ以上好き勝手するなら容赦しねえってだけだからいいんだけどな。それよりおめぇら、隼人ってキザヤローと弁慶って坊主を見てねえか?」
「いや。某が知るのはブチャラティ・早苗・ロクロウ・そしてヴァイオレット殿の四人のみだ」
「私はオシュトル様と同じく、加えて高坂麗奈様と冨岡義勇様と遭遇いたしました」
「そうか...チッ、あいつらどこほっつき歩いてやがる」
「ま、これ以上好き勝手するなら容赦しねえってだけだからいいんだけどな。それよりおめぇら、隼人ってキザヤローと弁慶って坊主を見てねえか?」
「いや。某が知るのはブチャラティ・早苗・ロクロウ・そしてヴァイオレット殿の四人のみだ」
「私はオシュトル様と同じく、加えて高坂麗奈様と冨岡義勇様と遭遇いたしました」
「そうか...チッ、あいつらどこほっつき歩いてやがる」
情報交換を始めれば、最初の剣呑とした空気が嘘のようにスムーズに進んでいた。
警戒していたのは竜馬一人であり、その彼が敵意を解けば自然な流れである。
警戒していたのは竜馬一人であり、その彼が敵意を解けば自然な流れである。
「やっぱ研究所に向かうしかねえか」
「ッ、待て竜馬殿。研究所とは早乙女研究所のことか?」
「ッ、待て竜馬殿。研究所とは早乙女研究所のことか?」
なんとなしに呟いた研究所という単語にオシュトルは徐に反応をする。
保留しておくと決めたゲッターロボの足掛かりになりえる者と早々に遭遇できたものだから、つい食いついてしまった。
保留しておくと決めたゲッターロボの足掛かりになりえる者と早々に遭遇できたものだから、つい食いついてしまった。
「それがどうした?」
「その口ぶり、かねてよりあの研究所を知っているようだが」
「あぁ...ま、腐れ縁ってやつよ。それがどうした?」
「某たちも先ほどまで研究所にいてな。もしや竜馬殿はゲッターロボのパイロットでは?」
「ゲッターがあんのか!?」
「あくまでもサンプル、だがな」
「その口ぶり、かねてよりあの研究所を知っているようだが」
「あぁ...ま、腐れ縁ってやつよ。それがどうした?」
「某たちも先ほどまで研究所にいてな。もしや竜馬殿はゲッターロボのパイロットでは?」
「ゲッターがあんのか!?」
「あくまでもサンプル、だがな」
オシュトルはゲッターロボシュミレータの件を簡易的に説明する。
「随分親切なことやってんなぁ」
それを聞いた竜馬の感想がそれだった。
「親切...ということは竜馬殿は如何にして操縦を?」
「んなもんぶっつけ本番だ。こまけーことは後からやってたぜ」
「えぇ...」
「んなもんぶっつけ本番だ。こまけーことは後からやってたぜ」
「えぇ...」
さらりと言ってのける竜馬にオシュトルは引き気味な感情を抱く。
ぶっつけ本番なのを平然と受け入れている竜馬もだが、仮にも有望なパイロットを死の危険が伴う合体も操縦も演習無しにやらせるという研究所自体が異常だ。
鬼という未知なる脅威に対抗するため仕方ない面があるのかもしれないが、それにしてもである。
ぶっつけ本番なのを平然と受け入れている竜馬もだが、仮にも有望なパイロットを死の危険が伴う合体も操縦も演習無しにやらせるという研究所自体が異常だ。
鬼という未知なる脅威に対抗するため仕方ない面があるのかもしれないが、それにしてもである。
(なんにせよこれはゲッターロボに関しての大きな足掛かりとなりそうだ)
ゲッターロボシュミレーターは死の危険が付きまとう為に後に保留としておいた。
しかし、竜馬は合体も操縦も難なくこなせるようであり、主催に従う漢でもないときた。
他の二人もそうであると考えるなら、一足早くゲッターシュミレーターの謎を解き明かせるかもしれない。
これは是非とも協力関係を結んでおきたいと思いながらオシュトルは竜馬との会話を続ける。
しかし、竜馬は合体も操縦も難なくこなせるようであり、主催に従う漢でもないときた。
他の二人もそうであると考えるなら、一足早くゲッターシュミレーターの謎を解き明かせるかもしれない。
これは是非とも協力関係を結んでおきたいと思いながらオシュトルは竜馬との会話を続ける。
「しかし、オメーラが研究所にいて知らねえってことはあいつらもまだ着いてねえってことか...どうすっかな」
「竜馬殿。其方がよければ頼みたいことがあるのだが、よいかな?」
「あ?なんだ?」
「ここから南の方角に北宇治高等学校なる施設がある。そこに我らが同胞の早苗殿とブチャラティ殿、加えてヴァイオレット殿の同胞の冨岡義勇殿と高坂麗奈殿が合流する手はずになっている」
「そいつらを護れってか?」
「できれば頼みたいが、無理にとは言わぬ。ただ面通しだけでもしておいてもらえると助かる。聞けば其方は悪評を撒かれている身なのであろう」
「そういうことかよ。ま、いいぜ。あのメスガキにこれ以上好きにやられるのも癪だからな」
「竜馬殿。其方がよければ頼みたいことがあるのだが、よいかな?」
「あ?なんだ?」
「ここから南の方角に北宇治高等学校なる施設がある。そこに我らが同胞の早苗殿とブチャラティ殿、加えてヴァイオレット殿の同胞の冨岡義勇殿と高坂麗奈殿が合流する手はずになっている」
「そいつらを護れってか?」
「できれば頼みたいが、無理にとは言わぬ。ただ面通しだけでもしておいてもらえると助かる。聞けば其方は悪評を撒かれている身なのであろう」
「そういうことかよ。ま、いいぜ。あのメスガキにこれ以上好きにやられるのも癪だからな」
竜馬の快諾に、オシュトルは『わかりやすくて助かる』と内心でほくそ笑む。
竜馬は見た目こそはガラが悪いし言動も横暴寄りではあるが、ロクロウほど周りが見えなくなることはなく見境がないわけでもない。
加えて、ミカヅチやムネチカのように國に対する絶対的な大義や正義もなく、ただひたむきに己の感情のままに動く漢だ。
見方を変えれば、感情がどう向くかを考えれば御しやすい漢ということでもある。
一人の人間を飼い殺しにするつもりは毛頭ないが、協力を取り付けやすい相手というのはこの殺し合いを打破するためには非常に都合がいいのも確かだ。
竜馬は見た目こそはガラが悪いし言動も横暴寄りではあるが、ロクロウほど周りが見えなくなることはなく見境がないわけでもない。
加えて、ミカヅチやムネチカのように國に対する絶対的な大義や正義もなく、ただひたむきに己の感情のままに動く漢だ。
見方を変えれば、感情がどう向くかを考えれば御しやすい漢ということでもある。
一人の人間を飼い殺しにするつもりは毛頭ないが、協力を取り付けやすい相手というのはこの殺し合いを打破するためには非常に都合がいいのも確かだ。
「んじゃま、行ってくるぜ」
「お待ちください」
「お待ちください」
早々に去っていこうとする竜馬を、ここまで控えめだったヴァイオレットが呼び止める。
「竜馬様。一つお聞かせください」
彼女は真っすぐに竜馬を見据えて問いを口に出す。
「竜馬様はフレンダ・セイヴェルン様を見つけた時...どうなさるおつもりですか?」
「言っただろうが、これ以上邪魔するなら容赦はしねえって」
「それはつまり...」
「言っただろうが、これ以上邪魔するなら容赦はしねえって」
「それはつまり...」
ヴァイオレットはそこで言葉を切り、俯き目を伏せ、耐えるように下唇を噛む。
詳しく言わずとも察する。竜馬はフレンダを見つければ殺すだろう。
そしてそれは大局を見れば正しい。
オシュトルも自分も竜馬も、この会場で会った殺し合いに賛同しない参加者たちにとって主催の次に厄介なのは殺し合いに乗り害を加えてくる者だ。
そういった者たちを放置しておけば自分たちだけでなくまわりも被害にまきこまれてしまう。
彼女も理屈の上ではわかっている。
詳しく言わずとも察する。竜馬はフレンダを見つければ殺すだろう。
そしてそれは大局を見れば正しい。
オシュトルも自分も竜馬も、この会場で会った殺し合いに賛同しない参加者たちにとって主催の次に厄介なのは殺し合いに乗り害を加えてくる者だ。
そういった者たちを放置しておけば自分たちだけでなくまわりも被害にまきこまれてしまう。
彼女も理屈の上ではわかっている。
それでも彼女は受け入れがたかった。
人が死ぬのは悲しいことであり、人を殺すのは多くの悲しみを産む罪深いことであるのを嫌というほど思い知らされてきたから。
人が死ぬのは悲しいことであり、人を殺すのは多くの悲しみを産む罪深いことであるのを嫌というほど思い知らされてきたから。
そんな彼女の様子に竜馬は気づいていたが、しかし、彼女を気遣うような言葉を吐かなかった。
竜馬は闘争心の塊のような男と言えど、根は善良な人間である。
弱者や覚悟のない者が理不尽に蹂躙されるのを嫌い、彼らの代わりに戦場へ臨むことも辞さない男だ。
しかし、それを馬鹿正直に「彼らの為に俺は戦う」といった愛や正義のヒーロー然とした言葉は決して口に出すことはない。
故に、彼を知らぬ者には誤解を受けやすいし、竜馬も別に構わないと思っている。
だから、ヴァイオレットが自身の判断に不満を持っているのをなんとなく察しつつも、彼女が必要以上に干渉してこないならば下手に出て妥協することも慰めるようなこともしない。
下手な同情や温い感傷こそがフレンダに付け入る隙を与え、ヴァイオレットのような者の首を絞めることも直感的に理解しているからだ。
竜馬は闘争心の塊のような男と言えど、根は善良な人間である。
弱者や覚悟のない者が理不尽に蹂躙されるのを嫌い、彼らの代わりに戦場へ臨むことも辞さない男だ。
しかし、それを馬鹿正直に「彼らの為に俺は戦う」といった愛や正義のヒーロー然とした言葉は決して口に出すことはない。
故に、彼を知らぬ者には誤解を受けやすいし、竜馬も別に構わないと思っている。
だから、ヴァイオレットが自身の判断に不満を持っているのをなんとなく察しつつも、彼女が必要以上に干渉してこないならば下手に出て妥協することも慰めるようなこともしない。
下手な同情や温い感傷こそがフレンダに付け入る隙を与え、ヴァイオレットのような者の首を絞めることも直感的に理解しているからだ。
「ま、精々頑張りな。オメエはオメエのやりたいことをやりゃいいんだからよ」
だから、竜馬はそれだけ告げ、白バイに跨り去っていく。
かけられた意外な言葉にキョトンとしながらも、遠ざかっていく背中を見送る二人。
かけられた意外な言葉にキョトンとしながらも、遠ざかっていく背中を見送る二人。
「では、某たちも行くとしよう」
「かしこまりました」
「かしこまりました」
進路を戻しその足を進める二人の間に再び沈黙が流れ始める。
ヴァイオレットは考える。
別れ際に言われた、『やりたいことをやればいい』という言葉。
ヴィオレットがこの殺し合いにおいてやりたいことは決まっている。
ヴィオレットがこの殺し合いにおいてやりたいことは決まっている。
(たとえ罪人だとしても、私は"いつか、きっと"を喪わせたくはない)
これ以上の『いつか』と『きっと』を喪わせない―――命を握られている中での不殺の覚悟。
(オシュトル様、やはり私は命を割り切ることはできません)
早苗がロクロウとオシュトルの『シグレの首輪を回収する』という案に反対したように、ヴァイオレットもまた、大切な繋がりを断つのを推奨するような真似は受け入れがたい。
もしもオシュトルが自分の危惧通りに非道な手段にも出ようとするならば、その時は力づくでも抑えなければならない。
想いを繋ぐために。温もりを喪わせないために。
それがきっと『愛している』を教えてくれた少佐の想いに繋がることだから。
もしもオシュトルが自分の危惧通りに非道な手段にも出ようとするならば、その時は力づくでも抑えなければならない。
想いを繋ぐために。温もりを喪わせないために。
それがきっと『愛している』を教えてくれた少佐の想いに繋がることだから。
一方のオシュトルはといえば。
(悪いな...あんたの気持ちはわかるつもりだが、こればかりは譲れんよ)
ヴァイオレットの気持ちを感じ取りつつも、竜馬からミカヅチやフレンダのことを聞き、更なる覚悟を固めていた。
『ハク』としてはヴァイオレットのように争いごとなんて極端に避けるべきものだという考えに同意したいところだ。
しかし、『オシュトル』としてはそうもいかない。
アンジュが逝った上に『オシュトル』までもが散れば、帝の愛したヤマトは確実に滅びの一途を辿りアンジュや自分を信じてついてきてくれた仲間たちまで被害が及ぶ。
如何な手段をもってしても戦いに勝利し勝ち残る。
その為にはフレンダやミカヅチら、ゲームに乗ってしまった存在は障害にしかならない。
そして、武士としての戦よりも確実に勝利を手にする選択肢を取る必要がある。
脱出に首輪が必要とあらば、彼らを優先して切り捨てる、くらいの覚悟を伴ってだ。
『ハク』としてはヴァイオレットのように争いごとなんて極端に避けるべきものだという考えに同意したいところだ。
しかし、『オシュトル』としてはそうもいかない。
アンジュが逝った上に『オシュトル』までもが散れば、帝の愛したヤマトは確実に滅びの一途を辿りアンジュや自分を信じてついてきてくれた仲間たちまで被害が及ぶ。
如何な手段をもってしても戦いに勝利し勝ち残る。
その為にはフレンダやミカヅチら、ゲームに乗ってしまった存在は障害にしかならない。
そして、武士としての戦よりも確実に勝利を手にする選択肢を取る必要がある。
脱出に首輪が必要とあらば、彼らを優先して切り捨てる、くらいの覚悟を伴ってだ。
先ほどまでの互いに気遣いしかなかった沈黙は、今はほんの少しだけ変わっている。
けれど。
その変化が彼らにとって如何な作用を齎すかは、まだわからない。
けれど。
その変化が彼らにとって如何な作用を齎すかは、まだわからない。
【D-7南部/午前/一日目】
【オシュトル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康、疲労(小)、強い覚悟
[服装]:普段の服装
[装備]:オシュトルの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、童磨の双扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、工具一式(現地調達)
[思考]
基本:『オシュトル』として行動し、主催者に接触。力づくでもアンジュを蘇生させ、帰還する
1:『大いなる父の遺跡』へと向かう
2:首輪解除に向けて、首輪のサンプルを入手する
3:クオン、ムネチカとも合流しておきたい
4:ミカヅチ、マロロ、ヴライを警戒
5:ゲッターロボのシミュレータについては、対応保留。流竜馬とその仲間を筆頭に適性がありそうな参加者も探しておきたい。
6:殺し合いに乗るのはあくまでも最終手段。しかし、必要であれば殺人も辞さない
[備考]
※ 帝都決戦前からの参戦となります
【オシュトル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康、疲労(小)、強い覚悟
[服装]:普段の服装
[装備]:オシュトルの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、童磨の双扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、工具一式(現地調達)
[思考]
基本:『オシュトル』として行動し、主催者に接触。力づくでもアンジュを蘇生させ、帰還する
1:『大いなる父の遺跡』へと向かう
2:首輪解除に向けて、首輪のサンプルを入手する
3:クオン、ムネチカとも合流しておきたい
4:ミカヅチ、マロロ、ヴライを警戒
5:ゲッターロボのシミュレータについては、対応保留。流竜馬とその仲間を筆頭に適性がありそうな参加者も探しておきたい。
6:殺し合いに乗るのはあくまでも最終手段。しかし、必要であれば殺人も辞さない
[備考]
※ 帝都決戦前からの参戦となります
【ヴァイオレット・エヴァーガーデン@ヴァイオレット・エヴァーガーデン】
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:手斧@現地調達品
[道具]:不明支給品0~2、タイプライター@ヴァイオレット・エヴァーガーデン、高坂麗奈の手紙(完成間近)
[思考]
基本:いつか、きっとを失わせない
1:オシュトルに同行し、『大いなる父の遺跡』へと向かう
2:主を失ってしまったオシュトルが心配。力になってあげたい。
3:麗奈と再合流後、代筆の続きを行う
4:手紙を望む者がいれば代筆する。
5:ゲッターロボ、ですか...なんだか嫌な気配がします。
[備考]
※参戦時期は11話以降です。
※麗奈からの依頼で、滝先生への手紙を書きました。但し、まだ書きかけです。あと数行で完成します。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:手斧@現地調達品
[道具]:不明支給品0~2、タイプライター@ヴァイオレット・エヴァーガーデン、高坂麗奈の手紙(完成間近)
[思考]
基本:いつか、きっとを失わせない
1:オシュトルに同行し、『大いなる父の遺跡』へと向かう
2:主を失ってしまったオシュトルが心配。力になってあげたい。
3:麗奈と再合流後、代筆の続きを行う
4:手紙を望む者がいれば代筆する。
5:ゲッターロボ、ですか...なんだか嫌な気配がします。
[備考]
※参戦時期は11話以降です。
※麗奈からの依頼で、滝先生への手紙を書きました。但し、まだ書きかけです。あと数行で完成します。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
【流竜馬@新ゲッターロボ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、出血(小~中)、身体に軽い火傷。
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品、白バイ@現地調達品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
0:オシュトルの頼み通りに一度北宇治高等学校に向かい、そこの面子と顔を合わせておく。研究所はその後。
1:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
2:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
3:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
4:煉獄があいつに殺されたとは思えないが、これ以上好き勝手やるつもりならあの金髪チビ(フレンダ)は殺す。
5:面倒だが彩声と会ったら誤解を解く。
6:レインや静雄の知り合いに遭ったら一応伝えておいてやる。
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、出血(小~中)、身体に軽い火傷。
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品、白バイ@現地調達品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
0:オシュトルの頼み通りに一度北宇治高等学校に向かい、そこの面子と顔を合わせておく。研究所はその後。
1:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
2:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
3:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
4:煉獄があいつに殺されたとは思えないが、これ以上好き勝手やるつもりならあの金髪チビ(フレンダ)は殺す。
5:面倒だが彩声と会ったら誤解を解く。
6:レインや静雄の知り合いに遭ったら一応伝えておいてやる。
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
前話 | 次話 | |
トラゴイディア-The beginning-(前編) | 投下順 | トラゴイディア-The beginning-(後編) |
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散りゆく者へ | オシュトル | 例えようのない、この想いは |
散りゆく者へ | ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン | 例えようのない、この想いは |
resonance | 流竜馬 | 崩れてゆく、音も立てずに |