バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

戦刃幻夢 ―君臨する白―

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kyogokurowa

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『滅セヨ、オシュトルゥウウウウウッ!!』

憤怒に染まりし黒の巨獣より、地上に降り注がれるは、日輪を彷彿させる巨大な炎塊。

「――な、に……?」

大陸の地表を根こそぎ焼き払わんばかりの質量で迫りくる、それを前に――ただのヒトの身に、何が出来ようか……。
オシュトルは驚愕を顔に張り付け、自身に迫る“滅び”を、ただただ為す術なく見上げていた。

「――ハクっ!!」
「……なっ!?」

しかし、終焉の炎がオシュトルを焼き焦がす寸前、疾風が吹き抜けたかと思うと、血相を変えたクオンが飛び込んできた。

(死なせない――、絶対に……!!)

あの瞬間―――。
巨獣化したヴライから豪炎が放たれた瞬間、クオンは、近くで呆然と見上げていた麗奈には目もくれず、猛然とオシュトルに向かって駆け出した。
そして、勢いそのまま、庇うようにしてオシュトルに抱きつくと、炎に背を向けたのであった。

「クオン殿、何を--」

オシュトルが、驚愕に目を見開いた、その瞬間。

ゴォオオオオッ!!

問答無用に、世界は紅蓮に染まった――。
凄まじい熱量と衝撃が、大地を焼き焦がし、吹き荒ぶ――。
黒緑で覆われていた一帯は、例外なく、一瞬で焼け野原へと変貌した――

「――クオン……、お前は……」

たった一点を除いて。

『ヌウゥ……!?』

上空より地上の行く末を見届けていたヴライは、その現象に、忌々しげに唸る。
爆心地付近は、巨大なクレーターが穿たれ、広範囲にわたり草木は根こそぎ吹き飛んでいたが、一塊の光の繭のようなものが、その中心に鎮座していた。
そして、その光の中で、オシュトルとクオンが何事もなかったかのように佇んでいたのである。

「――良かった……。まだ私の中に、残っていてくれたんだね……」

目を見開くオシュトルを他所に、金色の闘気(オーラ)を全身に纏ったクオンは、両の掌に視線を落としながら、自身の奥底より湧き上がる“力”の奔流を感じていた。

トゥスクル皇女に宿りし、その”力”は、超常の類。

嘗て、クオンの母は、不治の病に侵されて、若くして、その命を散らした。

クオンの母の命を奪ったのは、稀な血の病―――。
元来、大いなる父(オンヴィタイカヤン)こと旧人類により、創造された亜人(ヒト)は、六種の神の加護の内、いずれか一つのみの加護を躰に宿し、顕現させる神憑(カムナ)という特性がある。
しかし、極稀にそのどれもが強く顕現してしまう者が現れる。
もしも、これを制御することが出来れば、超常の力を得ることになるが、通常のヒトの身では、躰に宿る神憑(カムナ)の争いによる負荷には耐えきれず、内側から破壊されてしまう。

これが、クオンの母を死に追いやった病の正体。
そして、この類稀なる血の特性は、不幸なことに、娘であるクオンにも遺伝してしまった。
その為、クオンも幼少の頃、この病によって、死線を彷徨うことになるが、そこは選ばれし神の子―――先皇でもあり、父でもある、『うたわれるもの』より継承した、『願いの神』の血が、病を克服。
以後は、火、水、土、風、光、闇、全ての加護の力を制御するに至った。

しかし、先の破壊神との激闘で、クオンの中からウィツァルネミテアが消失したことで、この能力に纏わる状況は一変する
クオンの身体に宿っていたウィツアルネミテアの存在は、謂わば、超常の力を制御するために必要不可欠な歯車―――故に、このウィツァルネミテアという歯車が欠けてしまったが為、彼女は、超常の力を発動できなくなってしまったのである。

それでは何故、クオンは再びこの力を呼び覚ますに至ったのだろうか?
それは、彼女の躰の中に、僅かながら、願いの神の力が残留していたことに起因する。

ウィツァルネミテアは、確かに消滅した。
しかし、完全に消え去ったという訳ではなく、僅かながらの欠片を、置き土産として残していたのだ。
そんな中で、巨獣と化したヴライにより、必滅の炎が放たれた瞬間、オシュトルを護りたいという、クオン自身の強き願いに、願いの神の”残滓”は呼応―――結果として、歯車は起動し、超常の力の再覚醒に至ると、即席の障壁を以って、オシュトルと自身を災厄から護ったのである。

「剛腕のヴライ……、汝は、幾度となく、我が朋友に手を掛けんとした―――」

呆然とするオシュトルを背にして、トゥスクルの天子は、己を見下ろすヴライを睨みつける。
全身に纏う金色の闘気は、徐々にその色を濃くしていき、揺らぎを増していく。

「その蛮行、実に許し難い……。万死を以て贖って貰おうぞ!!」
「クオンっ!?」

言うが早いか、クオンは大地を蹴りあげると、弾丸の如き勢いで、ヴライに向かって飛翔。
大地にオシュトルを置き去りとしたまま、瞬く間にヴライの眼前に迫ると、勢いそのまま、右の拳を振りかぶる。

『―――ッ!?』

まさか、自身の頭蓋まで跳び上がってくるとは、微塵も考えていなかったのだろう。
ヤマト最強を誇る巨獣は、驚愕に目を見開きながら、咄嗟に左拳に炎を宿し、クオンの拳を迎え撃たんとするも―――

「遅い!!」

クオンの拳が振り抜かれる方が、速い。
そして、ズドンッ!!と顔面から強烈な打撃音が響き渡ったかと思うと、城砦を彷彿させる巨体は、数十メートルほど後方に弾け飛んだ。

『ヌォオオオオオッ!?』

衝撃波が大気を震わせ、轟音が周囲に木霊した。
生身の少女(ヒト)が、自身の百倍以上もの質量を有する巨獣を吹き飛ばすという、物理学に矛盾する光景が展開された。

『貴様……何者―――』

クオンは尚も、追撃の手を緩めない。
吹き飛んだヴライの元へと、一息に飛躍すると、そのまま空中で体勢を整えて、右脚を振りかぶり、叩き込まんとする。

「沈めよ、仮面の者(アクルトゥルカ)!!」
『女ァアアアアアアッーーー!!』

しかし、ヤマト最強も驚愕したままでは終わらない。
要塞のような巨躯に似合わぬ俊敏さで、空中で身を翻すと、飛来してくるクオン目掛けて、巨腕を振るうと、直径十メートル以上はあろう巨大な炎球を放出。
砲弾の如く射出された高熱火球は、クオンの小さな躰を、瞬く間に呑み込もうとする。

「無駄だぁっ!!」

クオンは勢い殺すことなく、火球を真っ正面から突き破り、ヴライの顔面に強烈な回し蹴りを炸裂させた。

『――ッ!?』

大地を振るわす凄まじい殴打音とともに、再度、巨躯が水平方向へと浮いた。
しかし、怪物は、直ぐに地に脚を突き立てると、ブレーキをかけて、その勢いを殺す。
間髪入れず、今度は両の手から、灼熱の火球を連射。追撃にくる神の子を消し炭にせんとする。
しかし、神々しい輝きを宿したトゥスクルの天子が、臆することはない。
そもそも、仮面で極限にまで火力を増大させたとはいえど、火神(ヒムカミ)の加護をベースとしたヴライの投擲では、あらゆる神憑を超越した神の子を、屠ることは叶わないのだ。
クオンは顔色一つ変えずに、殺到するそれらをただひたすらに突き破り、時には弾き飛ばしながら、ヴライとの間合いを一気に詰める。

「はあああああああっ!!」

目標を蒸発させるに至らなかった火球が、あちらこちらに着弾し、火柱が天に昇り、熱波が大地を焼く中、クオンの拳撃と蹴撃が、ヴライの巨躯を穿いていく。

『ガァアアアッ!?』

怒涛の連撃が叩き込まれるたびに、苦悶の咆哮と共に、黒の巨躯は大きく揺れ動き、大地が踏みしめられる都度に鳴動する。

真なる力を解放するも、それを凌駕する存在の出現によって、忽ち劣勢に立たされることとなったヤマト最強―――。
しかし、このような状況下に陥っても、彼の闘志は不撓不屈―――決して折れることはない。

『図ニ乗ルナ、女ァアア!!』

巨躯を素早く翻し、打撃を重ねんとしていたクオンの間合いから逃れたヴライは、両脚を踏みしめると、気合一閃。
尚も追撃に迫るクオン目掛けて、カウンター気味に巨腕を振り抜く。

「……っ!?」

咄嗟に回避行動を取るクオンであったが、巨獣の拳は今度こそ彼女を捉え、その小さな躰はピンボールのように弾き飛ばされ、勢いよくクレーターとともに地面へと叩きつけられる。
一呼吸置く間も無く、ヴライは大地に沈んだクオンに向けて、巨大な掌に収束させた炎球を容赦なく連続射出。

凄まじい爆炎が秒間十発近くも炸裂していき、クオンが沈んでいたクレーターを中心に、半径数十メートル規模で、盛大に火柱を噴き上げていく。
これでもかとばかりに、炎熱地獄を創出していくヴライ。だが爆心地から、金色の光が飛翔したのを視認するや否や、前傾姿勢となり、地を思い切り蹴って、そちらに向けて跳躍する。

『ムゥンッ!!』
「てぇあっ!!」

裂帛の気合いと共に、両雄の拳が激突し、大気が割れんばかりの衝撃が、辺り一帯に伝播する。
地上から数十メートル上空で、列車を彷彿させる質量の黒の剛腕と、その数百分の一にも満たない白く小さな拳が、互いを押し切らんと全力せめぎ合う。
両者一歩も引かぬ均衡状態は三十秒ほど続いたが、やがて、その均衡は崩れ去ることとなる。

『ヌゥオォオオッ!!』
「くっ……!?」

ヴライが雄叫びを上げながら、更にその巨大な拳に力を込めていくと、クオンの拳が徐々に押し返されていく。
顔を苦悶の表情に染め上げながらも、なおも懸命に抗わんとするクオンであったが、ヴライの剛腕は、徐々にその小さな躰を圧していき――

「っ……!?」

やがて、完全に拮抗が崩れ去ると、トゥスクル皇女の躰は勢いそのままに弾き飛ばされ、豪快な衝突音と共に大地に叩きつけられた。
間髪入れずに、ヴライはクオンの元に急降下。
地面に張り付いた、敵の躰を圧殺せんと、大筒のような巨拳を地面に向けて、振り落とす。
瞬間、ドゴン!!という轟音が響き渡り、地震かと錯覚させる振動が、一帯に伝播する。
大地に巨大なクレーターが穿たれ、クオンの躰はその中に埋没したはず。

『ヌゥ……!!』
「―――はぁ……はぁ……」

しかし、己が手応えに違和感を憶え、ヴライが拳を引き抜くと、そこにはクオンが健在しており、両の手を交錯させ、防御の構えを取っていた。
心なしか、彼女を覆う金色の闘気は、薄くなっているようにも映り、苦しそうな呼吸を繰り返してはいるものの、その眼光から闘志の輝きは失われていない。

「――っ!」

刹那、カッと目を見開くと、クオンは自らの全身に力を込め、そのまま一気に上空へと飛翔。
拳を引き抜いたばかりで隙だらけのヴライの顎を目掛けて、弾丸を彷彿させる渾身のアッパーカットを炸裂させる。

『ッ!?』

ヴライの巨躯が大きく仰け反り、浮き上がった。
その隙を突き、クオンは続けざまに左右の拳を振り上げ、神速を伴った連撃を繰り出さんとする。
しかし、仰け反ったヴライはその全身から炎の渦を生み出し、放出。
爆風熱波は、瞬く間にクオンの躰を圧し飛ばして、その拳撃を不発に終わらせた。

『消エ失セイッ!!』

ヴライは再び、両の掌から火球を乱射。
未だ宙にいるクオンに、怒涛の勢いで、火球が殺到していき、着弾と同時に、爆発が連鎖していく。

「っ……!!」

だがそれでも、地に堕ちていくクオンの華奢な肢体が爆散することはなく、金色の膜が彼女の躰を護っていく。
超常の加護のため、外的損傷を負うことはないのだが、その身に纏う闘気は薄く揺らいでいき、息は荒く、苦悶の表情を浮かべたまま、着地する。
ヤマト最強は尚も、執拗に、徹底的に、クオンの生命を狩り取ろうと、次々と火球を放ち続ける。

「くっ……!! ――はぁ……はぁ……」

猛然と襲い来る火球の連撃。
クオンは時には、爆撃を縫うようにして回避し、回避が間に合わない場合は、金色の膜の障壁を以てして、その悉くを弾いていく。
未だ無傷を保ってはいるが、いよいよもって、クオンの動きは覚醒当初のそれと比べて、精彩を欠き始めていた。

「――ごほっ!!」

遂には、回避行動の最中に、小さな血の塊を吐き出すクオン。
額には、夥しい量の脂汗が滲んでおり、整った面貌は青ざめ、苦痛で歪んでいる。

(――身体が、もたない……)

『仮面の者』の猛撃を捌いているにもかかわらず、何故クオンはここまで、追い詰められているのか。
その答えは、至極単純明快である――『力』の使い過ぎによる消耗だ。
『超常の力』は、願いの神をその身に宿していたからこそ、本来はヒトを絶命に追いやるほどの負荷を軽減させたうえで、行使することが可能だった。
しかし、その神は既にクオンの内になく、今は僅かながらの残滓を代用しているに過ぎない。
故に、『力』の行使による身体への負荷は、かつてとは比べ物にならず、クオンは徐々に、その肉体を内側から蝕まれていく―――言うなれば、諸刃の剣だ。

このまま、『力』を行使し続ければ、間違いなく斃れることになるだろう。
だが、今の状況では『力』を解除することが出来ない。
そんなことをしてしまえば、ヴライの猛撃によって、一瞬で灰燼と化すのは目に見えているからだ。

『コレ以上、汝ニ付キ合ウ道理ハ無イ―――』

無論、そんなクオンの事情など、ヴライは知ったことではなく。
黒の獣は、無慈悲且つ徹底的に、己が敵を屠らんとして、攻勢を強めていく。
クオンは、俊足の脚力を以ってして、回避に徹してはいたが、段々とその足取りは重りを付けられたように鈍くなり、遂には盛大に吐血の上、片膝をついてしまう。
彼女を包んでいた金色は、靄のように消えかかっていた。

『塵トカセィッ!!』

そのような好機を、ヴライが見逃す筈もなく、その巨体を疾駆させると、紅蓮の炎を宿した剛腕を振りかざし、クオン目掛けて一気に振り下ろした。

「――クオンさんっ!!」

刹那、一陣の疾風が、ヴライとクオンとの間に割り込むと、その巨大な拳撃の勢いを、真っ向から受け止めた。

『ヌッ!?』
「っ……!? 早苗!?」

クオンの目の前には、風の障壁を展開させ、ヴライの剛腕を正面から受け止める早苗の姿があった。

『オノレェ……、マダ、蟲ガ沸クカッ…!!』

突然の乱入者に、巨獣はほんの一瞬だけ、驚愕の表情を浮かべる。
しかし、すぐさま、邪魔立てする早苗への怒りを剝き出しにし、その剛腕に更なる力を籠めていく。

「うっ……ぐっ……」

あらゆる理を塗り替えるような圧倒的な剛力によって、風の障壁は軋むような音を奏でる。
それに伴い、障壁越しの早苗の華奢な体躯に、圧し掛かる重圧が、徐々に増していく。
早苗は、歯を食いしばり、耐え続けるも、いよいよもって抑えきれなくなる。

だが、しかし―――

「てぇあああああああっ!!」
『――ッ!?』

気合と共に、再び『力』を解放したクオンが、ミサイルのようにヴライの顔面に飛翔。
勢いそのままに、回転蹴りを叩き込むと、黒く蠢く山は、水平方向へと大きく弾き飛ばされる。

「はぁ、はぁ……、早苗、ありがとう……。
助かった、かな……」

苦悶の表情を張り付けたまま、クオンは口元の血を拭い、早苗に向き合う。

「いえ……。それよりクオンさんは大丈夫なんですか?
その『力』……、それに、あの怪獣みたいなのは―――」

瞬間、二人の会話を遮るかのように、大火球が飛来。
クオンは、咄嗟に早苗を抱えると、そのまま横っ飛びで回避する。

『ヌゥウンンンンッ……』

大火球が地面に着弾し、凄まじい爆炎が生じる。
その向こう側では、漆黒の怪獣が、憤怒の形相で二人を睨み据えている。

「詳しい話は後……。今は、この状況を切り抜くのが先、かな……」

クオンの言葉に、早苗が無言で頷く。
刹那―――地を震わす咆哮と共に、ヴライは爆炎を突っ切ると、猛進。
神の血を継承する天子と、現人神たる巫女は、互いに顔を見合わせると、これを迎撃するのであった。




「――あれは、早苗か……」

荒廃した大地で、たった独り、ポツリと取り残されたオシュトル。
爆撃絶えぬ戦場の中、爆炎に照らされるは、夜の色よりも濃い黒を彩る怪獣と化したヤマト八柱将ヴライ。
遠目ながら、その巨躯の周囲を高速で飛び駆け巡る、二つの影も視認できる。
金色の光を身に纏いつつ、ヴライに突貫しているのが、クオン。
そして、宙を飛び回りつつ、煌めく光弾を放ち、クオンに加勢しているのが、早苗なのだろう。
二人の少女は、次々に放出される巨大な火球の合間を搔い潜りつつ、勇猛果敢に応戦している。

傍から見れば、二対一という構図ではあるが、旗色は芳しくない
当初こそ、クオンがヴライを圧倒していたようにも見えたが、時間の経過とともに、彼女の動きのキレは鈍っていき、今では早苗の援護ありきでも、ヴライに圧されている始末だ。

「――止しな、あんたが出る幕じゃねえ」

傷む身体を引き摺って、戦いの場へ赴こうとしたオシュトルを呼び止める声。
振り向けば、そこには遺跡にて離別した隻腕の剣士が佇んでいた。

「ロクロウか……」
「そんな歩くのもやっとな状態で行ったところで、足手まといにしかならん」
「……。」

淡々と、しかし、有無を言わさぬ口調で忠告するロクロウ。
紡がれるのは全くの正論。オシュトルは押し黙るしかない。

「それに、早苗の奴は、未だにあんたには疑念を抱いているようだった。
余計な混乱を招かないためにも、ここで大人しくしておいた方がいいぜ」

ロクロウの忠告は続く――。
早苗とのわだかまりを解消した後、二人は共に行動していた。
その道中のやり取りにて、彼女の中から、ロクロウとヴァイオレットに対する敵意はたち消えていたことは伺えた。
しかし、オシュトルに対する敵意及び恐怖は未だに拭いきれてはいないように感じたのであった。

オシュトルもまた、先に彼女に執拗に追いかけ回された記憶も手伝って、ロクロウの忠告に異を唱えることは出来ない。

「しかし、早苗の奴を追いかけてきてみりゃ……一体何なんだあのデカいのは?
あれも参加者なのか?」

視界に映し出される、神話さながらの激闘――。
それを前にして、刀を肩に担ぎ上げながら、訝しんだ顔で呟くロクロウ。

早苗との同行の道中、激しい轟音と、獣のような咆哮を耳にすると、彼女は、その正体を探るべく、空高く飛び上がった。
そして、遠方にて何かを発見すると、「クオンさん!?」と血相を一変させて、そちらへと急行した。
取り残されたロクロウも、急いでこれを追うことになったのだが、その果てで、ドラゴンにも勝るとも劣らぬ巨躯で暴れ回る異形の怪物と、それと交戦する早苗達、そして、その戦場に向かわんとしていたオシュトルを見つけて、今に至っている。

「――奴は、ヤマト八柱将、ヴライ……。我らが宿敵よ」
「……あいつが……?」
「然り……。そして、奴のあの姿こそが、ヤマトに伝わりし『うたわれるもの』……。
我ら、仮面の者(アクルトゥルカ)が、仮面(アクルカ)の力を解放した姿だ」

オシュトルの言葉を受け、改めて暴れ回る巨獣に目を向けるロクロウ。
ヴライという漢の危険性については、オシュトルやあかりから聞き及んでいた。
実際に、猛々しく拳を振るっていた姿を目の当たりもしていて、その奮戦ぶりに、己が夜叉の業魔としての血が奮い立たされた記憶も新しかった。
まさかそんな猛者が、このような怪物に成り果てるとは想像の埒外であった。

「やれやれ、こいつは骨が折れそうなこった……」

溜息を漏らしつつ、ロクロウは歩を進めていき、オシュトルの横を通り過ぎていく。

「行くのか……?」
「ああ、恩人に死んでもらっちゃ困るからな。
あんたは、巻き添え喰らわないように、離れときな。
全て片付いたら、早苗を交えて、話をしようや。
色々と誤解を正しといた方がいいだろうしな」
「――すまぬ……」

頭を下げるオシュトルに、ロクロウは背中越しに手を振りながら、戦場へと駆けていくのであった。



「――がはっ!!」

覚醒した漆黒の巨獣を取り巻く戦場。
『仮面の者』が繰り出した、巨大な拳撃を真正面から受けたクオンは、その身体を岩盤に叩きつけられ、苦悶を漏らす。
宙を駆けるうたわれるものは、その手に巨大な炎槍を顕現し、身動きの取れない彼女を葬り去るべく、投擲せんとする。
慌てて、早苗が援護に入らんとするも―――

『ヌゥウウン!!』
「きゃあ!?」

早苗の動きを察知したヴライは、投擲先を彼女に変更し、射出―――豪速で迫る巨大な炎塊を、早苗は翠色の髪を靡かせつつ、寸前で躱す。
的を外した炎槍は、大地に着弾。
業火に焼かれ、黒煙を上げる地上を一瞥し、早苗は冷や汗を浮かべる。
何とか今はやり過ごせたものの、その火力は桁違い―――直撃すれば、一たまりもない。
クオンの窮状を察して、駆けつけ加勢したのは良いが、北宇治高校で相対した破壊神に引けを取らぬ、圧倒的火力と相対する羽目になり、生きた心地がまるでしない。
例えるならば、死神に首筋に鎌を突き付けられているような、そんな感覚。

(――それでも、私は……!!)

仲間を助けたい―――その一心で、早苗は己の恐怖を押さえつけると、立て続けに迫り来る業火の塊を躱していく。
風を切り、豪炎の中を掻い潜りながらも、決して防戦一方というわけではない。
隙を見ては、ありったけの弾幕を叩き込んでいく。

『……ッ……、羽蟲―――』

巨獣化したヴライにとって、早苗の存在など、ブンブンと耳障りな羽音を立てる蟲にも等しいだろう。
しかし、現人神たる巫女から降り注ぐ光の弾幕は、ヴライの巨体に容赦なく突き刺さると、その肉を抉っていき、決して無視することは出来ない威力を孕んでいた。

『早々ニ失セイッ!!』
「っ!?」

苛立ちと怒りに塗れた咆哮を轟かせると、ヴライの胸部からは、業火が間欠泉のごとく噴射。
早苗は咄嗟に、風の結界を展開し、焼き焦げることだけは防ぐ。
しかし、業火の勢いを殺すことは出来ずに、後方へと、勢いよく弾き飛ばされてしまう。
百戦錬磨の闘鬼は、大地を蹴り上げると、これを猛追。まさに、蟲を叩き潰さんとする勢いで、猛炎を帯びた剛腕を振るう。

刹那―――

「早苗はやらせねえ!!」
『ヌッ――!?』

疾走する黒い人影が、ヴライの眼前へと跳躍。
予期せぬ乱入者によって、否応なしに開かれた深紅の眼光―――そこを目掛けて、手にする銀の得物を横一閃に振り抜く。
ヴライも、即座に迎撃せんとするも―――

ザ シ ュ ッ!!

『グゥウウ……!!』

怪獣の唸り声が轟く。
ヴライの顔面に刻まれた斬線は、左の眼窩を深々と抉り、その視界を奪ったのだ。

「ヴライっ!!」
『ッ!? 女ァ――』

片目を奪われ、瞬間的に動きが止まったヴライ。
それを好機と見たか、岩盤にめり込んでいたクオンが、戦線復帰。
自身が沈んでいた岩場を蹴り上げると、黄金の弾丸の如く、ヴライの元へと一直線に飛来してきたのだ。

「ハァァァァァァッ!!」

懐へ飛び込んできたクオンに、ヴライは反射的に左腕を振るい、裏拳の要領で殴り飛ばさんとする。
しかし、クオンの方が一瞬速く、拳が振るわれるより先に、巨獣の側頭部に痛烈な蹴撃を叩き込む。

『――ヌゥッ!!』

その巨体は、大きく傾ぐも、倒れることなく踏みとどまり、すぐに反撃せんと右掌に炎槍を顕現。そのまま、クオンに投擲せんとするも、すかさず早苗がこれに反応。風と光の弾幕を、巨獣の右手首へ連続掃射。
肉が爆ぜ削がれて、手元が狂うと、炎槍の投擲はクオンを捉えること叶わず、結果として、遠方の大地に火の柱を立ち昇らせるだけとなった。
再び生じた隙を、トゥスクルの天子は見逃すことなく、拳と蹴りを間断なく叩き込んでいき、巨躯を揺らしていく。

そして--

「てえああああっ!!」
『……ッ!!』

裂帛の気合いと共に、金色の闘気を全開にしたクオンが、渾身の右掌底を巨大な頭蓋に叩き込むと、ヤマト八柱の巨獣の躰は、後方へと大きく吹き飛び、大地に背を打ち付けた。

「――はぁはぁ……」

生身の身体で、城塞を彷彿させるような巨体を殴り飛ばすという、離れ業をやってのけたクオン。
ヴライが吹き飛んだ方向を見やりながらも、地面に着地すると、『力』の反動によって吐き出された口元の血を拭う。

「やるじゃねえか、あんた」
「――貴方は……?」

そんな彼女に、乱入者たるロクロウは、好奇の眼差しを向けて、語り掛ける。
遠目から、怪物相手に奮戦していたのは窺えていたが、実際にアレを吹き飛ばすのを目の当たりにしてしまうと、その規格外の強さに感銘を受けると同時に、己が夜叉の血が滾るのを感じていた。

「ロクロウさん……!!」
「助太刀に来たぜ、早苗。
ったく、一人で突っ走りやがって……」
「ご、ごめんなさい……。でも、クオンさんが危なかったので……」

慌てて駆け寄る早苗に、ロクロウは呆れた様子で嘆息すると、彼女は申し訳なさげに頭を下げる。

「……味方と考えて良いのかな?」
「応……、ロクロウだ、宜しく頼むぜ」
「私はクオン……。ロクロウ、早速で悪いんだけど、手を貸してくれると助かるかな?」

既にクオンの視線は、吹き飛んだヴライの方に向いている。
地に背を預けていたヴライは、ゆっくりと起き上がると、三人を鋭く睨み据えていた。

「言われるまでもねぇ。俺はその為にここに来たんだからな」

蠢く山に向けて、ロクロウも眼光を光らせると、妖しく煌めく剣を構える。
早苗もまた、ゴクリと生唾を呑みつつ、お祓い棒を振り上げる。

『……我ヲ阻ム蟲ガ、マタ増エタカ……』

一体の怪物と、三人の男女――。
互いに一触即発の空気を放つ中、山の如き巨獣は、前傾の構えをより前屈みにして、両の手に炎槍を顕現。

『良カロウ……、ナレバ此度コソ、汝ラ総テ滅却シ、我ガ武ヲ……否、ヤマトノ武ヲ、示ソウゾ!!』

開戦の号砲が如く、ヴライは炎槍を投擲。
迫り来る業火の塊を前にクオン、早苗、ロクロウは、それぞれ散開---爆心点より退避する。
爆ぜる大地と、迸る火花の嵐の中で、ロクロウとクオンはその脚力を以って、ヴライに肉薄せんと疾駆。

「「……っ!?」」

しかし、炎獄を掻い潜ったその先に、そこにいたはずの巨躯は存在せず――。

「なっ…!? 一体何処に……?」

宙へと退避していた早苗も、ヴライの消失に驚きを露にするも、すぐに、その答えに行き着く。

「っ!? クオンさん、ロクロウさん!!」

自身の更なる上空から伝播する熱量。
いつの間にか、頭上を覆うように跳躍していたヴライの両掌には、日輪の如く輝く炎球があった。
早苗は、咄嗟に二人の名を叫び、警鐘を鳴らす。

『ヌゥンッ!!』

しかし、その呼び掛けによって、ロクロウとクオンが、ヴライの所在に気付いた頃には、天より振り下ろされた業火球が猛然と差し迫っていた。
早苗は慌てて、光弾の弾幕を撃ち込んで、その勢いを殺さんとするが、如何せん質量が違い過ぎる。
炎球の速度は緩まることなく、瞬く間に、宙に浮かぶ早苗に達そうとする。

「たぁぁあああああああっ!!」

刹那、全開の闘気を纏ったクオンが、地を思いっきり蹴ると、ロケットの如く天高く飛翔。
早苗を吞み込まんとしていた炎球を突き破り、これを霧散させると、勢いそのままヴライに迫る。
ヴライもまた二発の炎槍を連続投擲し、これを撃ち落とさんとする。
しかし、クオンが纏う金色の闘気は、二度の爆撃を真正面から受けても、尚健在。
勢いを殺されることなく、ヴライに肉薄していく。
咄嗟に剛腕が振り下ろされるが、クオンはくるりと身を翻して、躱しきる。
やがて、高度が巨獣の頭上を越えるや否や、空中で一回転―――遠心力に勢いを乗せて、自身を見上げる怪物の頭蓋に、踵落としを叩き込んだ。

『グッ……!?』

爆発的な衝撃に、巨獣の頭蓋は軋みを上げ、その巨躯は地上へと、叩き落とされる。
隕石の如く、豪速で地面へと叩きつけられると、大地は円状に陥没。
その周囲は罅割れ、捲れ上がった土砂が天へと立ち昇った。

「――そこぉっ!!」

ダダダダダダダン!!

人間(ヒト)の姿を保った者達の攻勢は、尚も続く。
地に倒れ伏すヴライに対して、流星の如く光弾を叩き込む早苗。
着弾とともに、肉体が削られていき、その巨体は揺れ動くものの、ヴライはその身を奮起させ、ゆっくりと起き上がらんとする。

ザシュッ!!

『――ヌゥッ……!?』

脚に灼熱が走り、思わず膝をつきそうになるヴライ。

ザシュッ!!
ザシュッ!!
ザシュッ!!

目をやると、自身の脚部に何重もの斬線を刻み込んでいく、隻腕の剣士の姿があった。

『小癪ナァ……!!』

上体を穿っていく早苗―――。
脚部を斬り付けてくるロクロウ―――。
二方向からの同時攻撃を、ヴライは剛腕を振るい、薙ぎ払わんとするも―――

ガ ゴ ン ォ !!

天より降ってきたクオンが、ヴライの側頭部に回し蹴りを叩き込んだ。

『ヌ……グゥッ!?』

頭の中で星が煌めくような衝撃が走り、ヴライの巨躯は水平に、二転三転―――地鳴りを轟かせながら、荒廃した大地を転がっていく。
黒と橙が混合した、うたわれるものの巨躯は、生々しい傷と土埃によって、すっかりと汚されてしまっている。

「早苗、ロクロウ、合わせて……!!」

地の味を噛み締めながら、上体を起こすヴライの視界が捉えたのは、猛然と自身に突貫する、クオンとロクロウの二人。

ダダダダダダダン!!

『……ッ!!』

迎撃の構えを取る前に、その視界は、天より降り注ぐ早苗の弾幕によって、遮られる。
顔面に殺到した爆撃を嫌って、右前腕で顔を庇うと、がら空きとなった胴体部に、クオンとロクロウが詰め寄る。

「「おおおおおおおおおおおおおっ!!」」

ロクロウが左から、クオンが右から。
猛る強者二人から繰り出されるは、斬撃と拳打の雨あられ。

―――真向、袈裟、逆袈裟、左袈裟、左逆袈裟、刺突……。
隻腕の業魔が、一閃一閃に神速を宿して、ランゲツ流の剣技を叩き込んでいく一方で―――。

―――横打、斜打、突き、掌底、突蹴り、回し蹴り……。
金色を纏う天子は、その四肢を存分に活かして、その身を躍動させながら、連撃を撃ち込んでいく。

ヤマト最強はその巨躯を捻り、左前腕を振り回して、反撃を試みる。
しかし、二人は素早く跳び上がることで、これを躱すと、息つく間もなく、怒涛の勢いで、肉を切り裂く斬音と、内をも穿つ打刻音を、奏でていく。

ダダダダダダダン!!

無論、ヴライの巨躯にダメージを与えるのは、地上の二人の攻勢だけではない。
天より降り注ぐ早苗の弾幕もまた、ヴライの頭蓋に炸裂し、血肉を抉っていく。

『――オノレェ……』

三方向からの一斉攻撃を受けて、怪物の表情は、屈辱と憤怒に歪んでいく。
己は帝より『仮面』を賜った、ヤマトの矛。
その『仮面』を完全解放したからには、敬愛する帝の威光の元、最強であらねばならない。
しかし、今はどうだ。誉れある『仮面の者』は、オシュトルの側付きの女と、何処の馬の骨とも分からぬ者達によって、いいように痛めつけられているではないか。
このような恥辱が、許されるものか。

―――否ッ、断ジテ否ッ……!!

尚も猛攻仕掛ける連中を、忌々しげに見据えたヴライは、早苗からの弾幕の傘としている右腕―――その掌を開くと、そこに灼熱の炎を灯らせる。
早苗がいち早く異変を察するも、憤怒の猛炎は、既に膨張しきっており―――

『我ラ、ヤマトノ武ヲ、身ヲ以ッテ知レィッ!!』

怒声とともに、大地に叩きつけられると、直径数十メートル規模の爆炎が、盛大に弾けた。

「チィっ!!」
「きゃあっ!?」

風の障壁で身を護った早苗は、圧しきられる形で遥か上空へ。
ロクロウは身を焦がしながら、水平方向に吹き飛ばされる。
ただ唯一、金色の闘気を纏うクオンのみが爆炎の中では健在。
そのまま、燃え盛る炎を突っ切ると、跳躍―――ヴライの下顎目掛けて、アッパーカットを打ち込まんとする。

『図ニ―――』

しかし、再三クオンに苦杯を嘗めさせられたヴライは、この動きを読んでおり。
巨躯に似合わぬ俊敏さで身を捻り、彼女の拳打を躱すと―――

『乗ルナァッ!!』

カウンターとして、右の大振りを放ち、クオンの華奢な身体を地盤に叩きつける。

「がはっ!!」

圧倒的な質量差、そして、無理矢理に引き起こされた『力』の酷使により、少女の肉体は悲鳴を上げ、血反吐を吐いてしまう。
ヴライは間髪入れず、炎槍を生成すると、クオンへと射出。
一撃目、二撃目と―――それが大地に着弾する度に、爆炎と地鳴りが連続していく。
まずは目下最大の戦力を排除せんと、クオンを徹底して狙い撃っているのだ。

「クオンさんっ!!」

爆風に吹き飛ばされながらも、直ぐに空中で体勢を立て直した早苗。
慌てて戦線に復帰すると、弾幕をヴライに浴びせ、懸命に妨害せんとする。

『目障リダ、羽蟲ッ……!!』

これを患しく思ったヴライは、早苗目掛けて炎槍を乱れ撃つ。
早苗は、風を纏いながら、俊敏に飛行し、これを躱していく。
炎槍が躱される度、ヴライの苛立ちは募っていき、必然とその意識は、早苗の方へと傾いていく。

--刹那。

「うおおおおおおおおおおおお!!」

巨獣の背後より一つの影が跳び上がると、身体を何重にも回転させつつ、ヴライの首筋へと迫っていく。
影の正体は、戦線に復帰したロクロウ。
風に黒の長髪を靡かせる、獰猛な夜叉の紅き眼光が捉えるは、怪物のあまりにも太い首元。
これもμの力によるものなのか、そこには『仮面の者』の変身にも適応し、膨張した銀の首輪も見受けられる。

「その首、貰い受けるぜ!!」

恐らく、これに攻撃を加えれば、爆殺も狙えるだろう。
しかし、隻腕の業魔には関係ない。首輪ごと敵の首を斬り落とす---その一心で、巨獣の首元に、遠心力を乗せた刃を奔らせんとする。

しかし――。

『ガアアアアアアアアッ!!』
「――何っ!?」

ロクロウが放つ殺気を、即座に感知したヴライは、咆哮と共に全身から爆炎を噴出。
その爆風の勢いに圧されて、渾身の刃は、ヴライの首に到達することなく、ロクロウの身体は、遥か上空へ。

「チィッ……!!」

ロクロウは舌打ちしながら、空中で身体を捻り、すぐに体勢を立て直そうとするも―――。

「っ!?」

真正面を向けば、宙へと舞い上がった黒の巨像が、追撃のために巨腕を振りかぶっていた。
咄嗟に手に握る剣で、防御せんとするが――――

『消エ果テヨ!!』

バ  ゴ  ォ  ン  !!

ロクロウの全身に、彼の人生でかつて体験したことがない程の、凄まじい衝撃が迸った。
盾代わりに構えた剣は、いとも簡単に粉砕され、自身の身体を大きく上回るサイズの剛拳を真正面より受けたロクロウは、矢の如く勢いで、彼方へと吹き飛ばされていった。

「ロクロウさんっ!?」

夜空の向こうへと消えていったロクロウに、悲鳴を上げる早苗。
しかし、次の瞬間には、その叫びに呼応するかのように、ヴライは宙にて反転。
ギロリと早苗を睨みつけると、間髪入れずに、炎槍を連続投擲。

「……っ!!」

超高速で飛来してくる二つの弾頭―――。
回避は間に合わず。早苗は咄嗟に風の障壁を展開して、身を護る。

ド ゴ ォ ン!!
ド ゴ ォ ン!!

鼓膜を突き破らんとばかりの轟音が、連続して響けば、黒と橙が入り混じる爆炎が、早苗の視界を埋め尽くしていく。

「ぐ、ううう……!!」

一発でも被弾したら、あの世行きとなるのは必定だろう。
早苗は歯を食いしばり、障壁が砕けぬように、必死で耐え凌いだ。
しかし、爆炎が晴れて、視界が開けた時――。

「ぁ……っ!?」

早苗の目に飛び込んできたのは、ヴライが放ったであろう大火球が、目前に迫っていた光景であった。
今しがたの炎槍ほどの速さはない。しかし、あまりにも巨大なそれはもはや壁とさえ錯覚してしまうほど。
早苗に回避の猶予は与えられておらず、展開済みの障壁に、ありったけの風を纏わせ、これを受け止める他なかった――

バギバギバギバギ

だが。

「う、く……っ!?」

早苗を護る、風の障壁は軋み、今にも砕けそうな悲鳴を上げる。
ヴライの放った大火球は、その大きさと質量故に、風の障壁だけは止めきれず。
懸命に押し返そうと、早苗はありったけの風を込めて、障壁を満開にする。
しかし、そんな彼女の抵抗を嘲笑うかのように、大火球は容赦なく彼女を圧し迫る。

バギバギバギバギ

「ぐ、ぁああああああああっっ!!」

そして遂には、障壁ごと早苗を呑み込むと、勢いそのまま地上に激突。
大爆発とともに地は震え、天を衝く火柱が、夜天と荒廃した大地を繋ぎ合わせた。

「がはっ……ごほっ……、さ、早苗……」

血を吐きながらも、地に穿たれたクレーターより這い上がったクオンは、その惨状を目の当たりにして、言葉を失う。

豪ッ!!

「--っ!?」

だが、クオンに仲間の安否を気遣っている暇は与えられない。
早苗を片付けたヴライは、クオンを視界に捉えるや否や、急降下。
そのまま、炎を纏わせた拳を振りかぶり、クオンに殴りかかってきたのである。

「このっ……!」

クオンは瞬時に、『力』を解放。
再び金色を全身から滾らせ、拳を繰り出してくるヴライに対し、自らも拳を放つ。
両者の拳は再度衝突し、大気が振動し、世界が軋むが、それは刹那の出来事。

「っう……!!」

当初よりも、纏う闘気が大分薄くなってしまったクオン。
『力』の出力も、大幅に弱まってしまったためか、ヴライの巨躯を僅かでも押し返すこと叶わず。
剛拳に押されると、大地にその躰を打ち付けられ、地盤に放射状の亀裂を走らせながら、めり込ませてしまう。

『ヌゥオオオオオオオオッッ!!』

地鳴りと震動を轟いた。
クオンは咄嗟に両の腕を交差させて、巨拳を受け止めた。
しかし、躰の負担が高まり、『力』の出力がままならない状況で、その威力を防ぎ切ることは叶わず。
『力』の反動と、外部からの圧倒的な膂力に、彼女の華奢な身体は絶叫を上げて、大地に埋没していく。

そして、尚もヴライは拳を振り下ろす。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

右の拳、左の拳を交互にして。
何度も、何度も、執拗に叩き込む。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

クオンの肉体のみならず、内包される魂魄すらも圧砕せんと。
容赦のない拳の嵐が、大地を揺らしていく。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

「ぐっ、あ”あ“あああああああああああああああああっ―――」

クオンは防御の姿勢を崩さない。
しかし、止め処ない真正面からの猛打と、『力』の酷使によって生じる内部からの崩壊―――二つの激痛に挟まれて、苦悶の叫びとともに、その端正な顔を歪ませていく。
それに伴い、命綱たる『力』も、徐々に減衰していく。全身に帯びる金色が霞んでいくのが、その証左になりえるだろう。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

徹底して撃ち込まれていく巨拳の嵐によって身体が軋む音と、大地が陥没していく音を耳にしながら。
クオンの意識は、徐々に混濁し、薄れていく。

(わ、たくしは……、ま、だ---)

それでも、未だ闘志は潰えていない。故に戦える、と―――。
腕のガードを崩さずに起き上がろうとするも、結局は天からの鉄槌にて叩きつけられてしまい、磔からの脱出は叶わない。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

無情にも迫り来る“終わりの刻”。
ヤマトの天子を内包するヒトとしての器は、既に限界を迎え、決壊寸前となっていることを、クオンは悟り始めていた。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

--ピタリ。

その時だった。

(……え……?)

不意に、巨拳の嵐が止んだ。
訝しながら、巨獣の様子を窺うクオン。
ヴライは、振り下ろしていた拳を引き戻しつつ、彼方を見つめていた。
既に彼の注意は、クオンには一切向けられていない。
一体何が―――と、クオンが身を起こした、その瞬間。

『―――ウォオオオオオオオオオオオッッ!!』

猛々しい咆哮が轟いたかと思うと、どこからともなく現れた巨大な影が、ヴライへと猛進。

『ヌゥンッ!!』

ヴライは拳で迎撃せんとすると、その巨大な影もまた、拳を繰り出す。
拳と拳が激突し、大気を震わせると、その振動が、地上にいるクオンの髪を激しく揺らした。

『――……。』
『クッハハハハハハ……!! コノ時ヲ、待チ侘ビタゾ……!!
漸ク、汝モ《仮面》ノ枷ヲ外シタカ……!!』

視界が晴れてきたクオンの瞳が捉えたのは、対になる二体の巨獣。
黒と橙を基調とする巨獣は、言うまでもなくヴライだ。
そして、もう一体。そのヴライと拳を交錯させるのは、白と蒼を基調とすると巨獣―――そのサイズ感はヴライのそれと同等のものであった。

「――ハ、ク……?」

クオンを庇うようにして立ちはだかり、ヴライに負けじと張り合っているのは、初めて見る巨獣。
だけど、その背中から垣間見える、どことのない頼もしさと温かさは、姿形こそ違えど、確かに覚えがあるもので。
クオンはぽつりと、その名を呟いた。

『サァ、互イニ縛ルモノハ無クナッタ……!!
今コソ、己ガ力ヲ存分ニ振ルイ、死合ウ時ゾ、オシュトルッ……!!』
『アァ……貴様トノ因縁、今ココニ断チ切ッテクレヨウ、ヴライッ!!』

地上でクオンが呆然と見上げる中。
二体の巨獣は、同時に咆哮し、拳を振りかぶり、激突するのであった。




ド ォ ン !!

「――ぜぇはぁ……、皆……!!」

東風谷早苗の身体を吞み込んだ、大火球が地に激突し、大爆発する頃。
熱風吹き荒れる戦場にて、オシュトルは満身創痍の身体に鞭打ちながら、戦禍のど真ん中へと駆け付けんとしていた。
自身が参戦してしまえば、余計な混乱と負担を、味方に与えかねないとロクロウに諫められ、固唾を飲んで戦況を見守るしかできなかったが、そのロクロウが盤外に弾き出され、早苗もまた理不尽なまでの火力によって、排除されてしまった今、オシュトルが駆けつけぬ理由などありはしなかった。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

焦燥に駆られるオシュトルの鼓膜に、断続的な轟音が突き刺さる。
巨獣が、大地に剛拳をうちつける音だ。

「――っ……、クオン……!!」

遠目にて確認できる、拳の集中砲火を浴びているのは、クオン。
亜人達の世界にて最初に出会い、右も左も分からなかった自分に「名前」を与えてくれて、世話をしてくれた少女。
怒ると怖いが、面倒見がよく、聡くて、強かで、そして、いつも傍にいてくれた、かけがえのない仲間だ。

ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!
ドゴォッ!!

そんな自分にとってかけがえのない、大切なヒトが蹂躙されている―――。
『仮面』の力を完全解放したヤマト最強は、たった一人のヒトを破壊するために、ひたすらにその剛拳を振るい落しているのだ。

「止めよ、ヴライ!! 貴殿の狙いは某だろう。
某は、ここにいる!!」

クオンを見殺しには出来ない。
声を張り上げて、オシュトルはヴライの注意を引こうと試みる。
だが、その声がヴライに届くことはなく、苛烈な拳の嵐が止まることはなかった。

(くそっ……、今度ばかりは恨むぞ……。
己の無力さ、無能さ、不甲斐なさを……!!)

心の臓が張り裂けそうなまでに鼓動し、早鐘を打つのを感じながら、地を駆けていく。

「ぐっ、あ”あ“あああああああああああああああああっ―――」

接近するにつれて、轟く地鳴りは大きくなっていき、クオンの苦悶に満ちた悲鳴が鮮明に聞こえ始める。

(……クオン……!!)

オシュトルの脳裏に過るのは、彼女との最後の会話―――。

『……何でかな……。どうして、仮面(アクルカ)なんかを……』
『何故、貴方は、仮面を着けて、『オシュトル』の振りをしてるのかな……?』
『その……、私が戻ってきたら、包み隠さず話してほしいかな……。
貴方と《オシュトル》の間に、何があったのかを……』

自分の正体を悟り、しかし、それを頑なに否定する自分に対して見せた、寂しくて、悲しい表情。
着飾っている衣装は違えど、道中でいざこざはあれど、最後に自分を気遣い、面倒見良く接してくれたのは、間違いなく、いつものクオンで――。

『……それじゃあ、行ってくるから……』

寂しげな微笑みと共に去る彼女を、本当は呼び止めたかった。
自分のせいで、悲しむ彼女を見るのは、これ以上なく辛かった。
自分の口から真実を打ち明けて、隠していてすまなかったと、詫びを入れて、抱きしめてやりたかった。

(……某は―――、自分は―――)

―――あの会話を以って、今生の別れとするものか。
―――クオンを失いたくない、救いたい。

オシュトルの中で、そんな"願い"が膨れ上がっていく。

「友よ、某に力を……!!」

息を切らせながらの疾走の中、気付けば、己が仮面に手を添えていた。
友より託された、揺るぎのない意思を宿した仮面。
その仮面に、祈るように、縋るように、"願い"を込めていく。

「仮面(アクルカ)よ―――」

ヴライとクオン達が交戦する中で、オシュトルは幾度となく、自身も同様に変身せんと試みていた。
しかしながら、主催が『仮面』に制限を掛けた影響か―――『仮面』の力を完全解放することは叶わなかった。
ヴライが如何にして、主催の制限を突破したのかは不明だ。
だが、クオンを救うためには、彼と同じくその制限を突破した上で挑まねばならない。

「扉となりて……根源への道を開け放てっ!!」

だからこそ、藁にも縋る思いで。
オシュトルは、ありったけの“願い”を込めて叫んだ。
根源につながる力を呼び覚まさんと、再び『仮面』に訴えかけた。

瞬間―――。

「……っ!?」

オシュトルの視界は眩い光に覆われた。
次に感じたのは、浮遊感。
全身を伝うは、灼熱を帯びた大いなる力の流れ。

白に塗りつぶされていた視界が晴れると、此方を見据えるヴライの姿が目に入る。
大地を揺らしていた、その巨腕は既に引っ込められている。
そして彼と交わす視線が、見上げるような形ではなく、同じ高さになっていたことを悟ると――。

『―――ウォオオオオオオオオオオオッッ!!』

白の巨獣と化したオシュトルは、大地に轟く咆哮と共に、地を踏み砕くと、黒の巨獣へと飛びかかったのであった。




本来であれば、『仮面』の力の完全開放―――すなわち、巨獣への変身は、殺し合いにおけるゲームバランスを崩壊させかねないものとして、主催からは細工(ストッパー)を施され、封じられていた。
しかし、ヤマト最強の武士は、その道中における破壊神との交戦、そして、『根源』への過剰アクセスを契機として、その抑止を突破。己が姿を、黒と橙を基調とした巨獣へと昇華させた。

それでは、オシュトルの『仮面』の完全開放は、如何にして発現に至ったのだろうか?
予め断っておくが、この殺し合いの監獄を管理している主催者は、支給品である『仮面』に対して、同等の制限を掛けていた。決して、オシュトルの『仮面』への細工だけ、手を抜いていた訳ではない。
ヴライの力の解放が、前述の通り、二つの事象が重なったことがきっかけであったように、オシュトルもまた、二つの大いなる力が併さった結果、『仮面』の完全開放に至ったのだ。

まず、一つ目。
これはヴライと同じく、『仮面』に施された制限装置―――これが『破壊』の力によって損壊したことが根幹にある。
きっかけは、ヴライの拳を仮面に受けた、あの瞬間にあった。
破壊神との交戦により、『破壊』の衝撃を受けたヴライは、仮面と、それに施された細工に損壊を与えられただけに留まらず、僅かながら、その躰の内に『破壊』の残滓を内包していた。
そして、その力の残滓は、ヴライの意識しないところで、彼が織り成す破壊行為に反応。それに力を貸し与えていたのだ。
こうして、ヴライの『破壊』の残滓を帯びた拳を受けたオシュトルの『仮面』は、亀裂が生じ、ヴライのそれと同様にして、内部の制限装置も損壊を受けることとなったのだ。
とは言え、破壊神の衝撃を直接受けたヴライの『仮面』を比べると、その損傷具合は微々たるものに過ぎなかった。

それでは、何故この微かな破壊から、制限装置の完全停止に至ったのだろうか?
こちらにも、『破壊』とはまた異なる、二つ目の大いなる力が深く関わることになる。

事は、激昂したクオンの蹴撃が、オシュトルに容赦なく叩きつけられた瞬間にまで遡る。
クオンは元々その躰の内に『願い』の神ウィツァルネミテアを宿していたが、知っての通り、北宇治高校での大戦を経て、それはクオンの元から消え去った。
しかし、完全に消失したという訳ではなく、その一部を、クオンの躰の内に残していた。
今でこそ、この残滓を制御し、『超常の力』発現のための歯車として活用しているクオンであるが、当初この『願い』の断片は、彼女の制御下にはなく、不定形且つ不安定なものであった。
例えるならば、器に収まっていない液体のようなものであり、クオンの意思とは無関係に、外部と激しい接触を行えば、その欠片は無作為に撒き散らされていた。
そして、クオンに無慈悲な蹴撃を叩き込まれたオシュトルもまた、激しい痛覚と同時に、図らずとも、微弱ながら『願い』の断片を身に宿すこととなった。

そして、時を経て、その『願い』の残滓が、「クオンを護りたい」というオシュトルの強い願いに呼応―――その力を以てして、オシュトルが装う『仮面』に干渉。
『仮面』の内にある制限装置の損壊箇所を拡張させ、最終的には機能停止へと追いやった。
その結果として、オシュトルは『仮面』の完全開放に至ったのである。

だが、ここで疑問が一つ残る。
『願い』の残滓が撒き散らかされていた間、オシュトル以外にも、クオンによる猛打を浴びた者はいた。
ヴァイオレットとヴライである。
しかし、現在のところ、彼女らに『願い』の力が発現する気配はない。
それでは、二人には『願い』の断片が宿らなかったということになるのだろうか――?
答えは否―――。ヴァイオレットもヴライもまた、その躰に、『願い』の神の残滓を宿したのには違いなかった。

では何故オシュトルのみ、“願い”に呼応したのだろうか?
それは残滓に込められた大いなる意志が、オシュトルの“願い”に共鳴したからだ。
オシュトルが「クオンを護りたい」と強く願ったのと同じくして、欠片となった『願い』の神の意思もまた、己が『同胞』になり得る元の宿主を失いたくないと同調したのだ。

故に、大いなる意思を味方につけたオシュトルだけが、『願い』の力を発現。
最終的に、『仮面』の完全開放に至ることが出来たのである。

『破壊』の神と『願い』の神―――。
この殺し合いの会場で、激闘を繰り広げた二つの神の残滓は、再び一人の漢の中で交錯し、『仮面』の完全開放による『根源』への到達という、奇跡を顕現させたのであった。


前話 次話
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 投下順 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―

前話 キャラクター 次話
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 高坂麗奈 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 黄前久美子 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 岩永琴子 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 間宮あかり 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― ロクロウ・ランゲツ 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 折原臨也 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード―) オシュトル 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― カナメ 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― クオン 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― 東風谷早苗 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― ウィキッド 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
戦刃幻夢 ―感情表現の強制パレード― ヴライ 戦刃幻夢 ―この真っ暗な闇を切り裂いて―
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