連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-21a - 「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

「それじゃ、彼女にも伝えておくぞ」

　窓枠に座ったまま、漆黒の翼をはばたかせ始めるマステマ
　その様子に、犬メイドが慌て出す

「待て、マジでこれ回収していけっ！？」

　あー、と声をあげる悪霊を指差し、半ば叫ぶように告げる犬メイド
　…にじりにじり、と悪霊が距離を詰めてきているように見えるのは気のせいか否か

「なぁに、小さいが役に立つかもしれないし。持っておけばいいだろ？」
「いらねぇよっ！？色んな意味で身の危険しか感じないわっ！？」
「正直、そいつなり何なり傍に居れば、こっちがお前の状況を把握できる。万が一お前の身が危険になったら助けにこれるぞ」
「せめて、チェンジ！別の悪霊にチェンジを！！」
「これから、悪霊共を情報収集に使う訳で。そっちにつけられそうな悪霊っつーと、そいつとどっこいどっこいの性欲関連の悪霊か、元大量殺人鬼の悪霊くらいだが」
「最悪だーーーーっ！？」

　がっくり、項垂れる犬メイド
　ぅあー、と悪霊がすりすり、擦り寄ってくる
　…そんな事をされても、可愛いとは思わんぞ、畜生

「何かあったら連絡するからな。お前音拾えるんだろ？」
「…こっちからは、どう連絡とりゃいいんだ？」
「その悪霊に話し掛ければ、俺の耳に届く」

　んじゃあな、と
　ばさばさと翼をはばたかせて…マステマは、窓をすり抜けて、夜の空へと飛び立っていった
　…天使は、元々霊体のような存在で、実体をもたない存在とも言われる
　その言い伝えの応用か

「…………はぁ」

　犬の手も借りたい、今の状況
　あんな連中の手も借りねばならぬとは

「…血が薄まってるとは言え、「あの都市伝説」の血を引いてる相手だろ…まぁ、悪党の子孫が悪党とは限らないけど、「教会」に知られたら煩いな、こりゃ…」

　自分が所属してい「MI6」はともかく、「教会」には知られない方がよさそうだ　
　そう考え、にじにじと足を登ってこようとした悪霊を、摘んでぺいと投げながら、犬メイドはため息をついたのだった

　ばさり
　夜の空を飛ぶマステマ
　空から、学校町を見下ろす

　ざわり
　ざわりざわりざわり

　マステマの周囲の闇が、蠢き始めた
　どこから現れたのか、悪霊達がざわめき始める

「………行け」

　マステマの言葉に反応して、悪霊達が散っていく
　…マステマは、神から悪霊の十分の一を任せられた存在、と言われている
　その悪霊達は、たいてが悪党共が死んで地獄に落ちた存在
　それを、マステマは人々を悪の道へと誘惑する為に使う…のが、本来の使い方
　が、とある女性に心底惚れ込んでしまい……その女性の考えに感化されたマステマは、悪霊達が別の使い方も出来る事に気づいた
　元が悪党の魂だからだろうか　
　それは、自然と他の悪に惹かれていく
　それは、同じ「悪」を見つけることに役に立つのだ
　正直、精度はあまり良くない
　たとえば、盗人を探そうと元盗人の魂の悪霊達を散らせば…ちょっとしたスリや万引き犯から、生気の大泥棒まで、何にでも反応してしまう
　同じような性質の悪に惹かれてはいくものの、細かい限定はできないのだ
　それでも、情報収集として役に立たないわけではない、一応

　今、散らせたのは…元・誘拐犯の魂の悪霊達
　相手がどんな悪なのかわかれば、他の悪霊に変える必要が出てくるかもしれないが…今は、こちらを使うしかない

「さて、引っかかるかね……」

　…まぁ、まず、情報収集は悪霊達に任せるとして
　まずは、あの犬メイドの服などを調達してやらないと

「女物の服なら、エリカに頼んだ方がいいよな………うん、若干不安を感じなくもないが。武器は……あー、くそ、あの場で協力をとりつけられてれば、エリカがぶっ壊したアレ、彼女が自力で直して渡したんだが…」

　…仕方ない、あの姉弟の親のルートで手に入れるか
　これから忙しくなりそうな事を感じて…しばらく、エリカとのデートは無理だな、と
　若干憂鬱になりながら、マステマは夜の空へと姿を消していった

　後日
　犬メイドの元に、郵送で服が届けられたのだが
　その中身が、九割が某ドクターが某姉妹に送ったような服で、残り一割がマステマの良心による普通の服だったそうで
　それに、犬メイドがどう言う反応を示したかは、不明である

とぅーびー？？