連載 - 花子さんと契約した男の話-34 - 「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

　ドドドドドドドドドドドドドドドドド………！！
　俺達の背後を、何かが駆け抜けていった

　…ＯＫ、俺は何も見ていない
　一瞬見てしまったような気がしないでもないが見ていないぞ
　何も見ていないからなっ！？

「…どうしたの？」
「いや、なんでもない」

　よし、委員長も見てないな
　なら、問題はない
　あんなもん見たら、確実にトラウマだ
　むしろ、都市伝説よりもトラウマだ
　見せちゃいけないだろう、あれは
　…花子さんが、どこかでうっかりと見てしまっていない事を祈る

　祭り会場で買ったハンバーグなど２人で食べつつ、のんびりと歩いていたのだが
　…うん、あれだ、何か恐ろしいものが背後を通り過ぎたような気はしたが
　全ては気のせいなのでる

　…背後を通り過ぎた全裸マッスル禿の姿を、俺はこの瞬間、一瞬で記憶から抹消した

「…そう言えば、秋祭りも終われば、体育祭の時期だな」

　話題をそらすためにも、そう言ってみた
　そろそろ、そんな季節だ
　体育の授業でも、体育祭の練習が中心になってくる
　う、と
　委員長が、若干憂鬱そうな表情を浮かべてきた
　…む、マズった、話題ミスか？

「…体育祭かぁ…」
「…そう言えば、委員長、運動苦手か」
「うん、全然駄目」

　がくー、と項垂れている委員長
　体育は男女別だから、女子の体育の様子を見る機会なんぞめったにないが…
　以前、ちらっと見かけた時は、マラソンでかなり後ろのほうを走っていたような

「安心しろ、俺も運動は苦手だ」
「…それって安心できるの？」
「……さぁ？」

　言っておいてなんだが、安心材料ではないな、うん
　俺も、花子さんと関わってから逃げ足だけは速くなったような気がしないでもないのだが
　…はっきり、言おう
　都市伝説から逃げる時と、体育とかの授業で走るのとは、違うんだよ
　なんて言うか、その

　不謹慎な言い方だが
　命かかってる時が、一番早く走れる
　人間なんて、そんなもんだ
　命がかかってる時ってのは、軽く限界超えれる

「…ま、互いに倒れない程度に頑張るか」
「そ、そうよね」

　ほっとしたように笑ってきた委員長
　よし、まぁ、元気は出たようだ

「次、どこ行く？」
「えぇと……お化け屋敷とか」
「そこだけはやめた方がいい」
「え？」

　うん、あそこだけは
　あそこだけは、やめとけ
　確か、不良教師が骨格標本と人体模型を持ち込んでいる
　骨格標本は、まだいい
　人体模型の変態が、何をやらかすかわかったもんじゃない

　不思議そうに首をかしげている委員長を前に
　さて、どうやって説得したらいいものか
　俺は、しばし悩むのだった

　……なお、余談だが
　後日、俺たちのクラスが「体育祭で１位をとるゼぇええ！！！！！！」と無駄に燃えやがった為に
　俺も委員長も軽く地獄を見る事になったのだが
　それはまた、別の話だ

　終われ