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最後の道

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最後の道 ◆ug.D6sVz5w



 歩くことが苦痛だった。
 考えることが嫌だった。

 それでも留まっていることも嫌で、一歩歩くたびに痛む体を鞭打つように歩きつづけた。
 考えるつもりはなくとも、次々に頭の中に浮かぶ事があった。

 頭の中でぐるぐると、浅羽がここで出会った人たちの言葉が浮かんでは消えていく。 

『あんたは悪い人間だーっ!』
 ぼくが乱暴しようとした、あの栗毛の少女は僕を軽蔑していた。

『報いは受けて貰うぞ。貴様はリリアに酷い事をしたっ!』
 そう言って彼女を守ったあの人は、きっとぼくなんかとは全然別の種類の人間なのだろう。

『っしゃぁーーっ!
 このバカガキがそこを動くな逃げるな口答えするな、いやたとえ逃げても逃げきれると思うなっ!
 ぶっ殺してやるっ! 絶対にぶっ殺してやるぅっ!』

 ……そういえばあの子もぼくのことを怒っていたっけ。

『あんた、まさか……みんな、こ、ころ、殺す気、なの?
 本気で?
 あたしや、部長も、みんなみんな……殺す、っていうの?』

 そう晶穂は信じられないようなものを見るような顔で言った。
 だってそうしなくちゃいけないじゃないか。
 そうしないと生き残れないんだから。
 そうしないと伊里野が……。

(……っ!)
 そこまで考えたところで、この半日あまりの間に散々責められた言葉が浅羽の脳裏によみがえる。
 でも、『自分の為』に人を殺すことなんて、とても悪いことだから、決して許されることじゃないんだから、とてもできることじゃなくって、でも殺さなくちゃいけないんだからそれは結局『イリヤのため』に殺すんであって。
 ああ、でもそれは言い訳だったと言われて、でもあいつらはぼくの事情も知らなくて伊里野は生かさなくちゃいけなくってでもその責任は僕には背負いきれるものじゃなくて……。

 終わりのない思考の循環。
 出せない答えはがぐるぐると浅羽の頭の中で回りつづける。

 そんな風に考え事に気を取られすぎていたせいで、引きずるように踏み出した足が、路面の出っ張りに引っかかっても一瞬何の反応もできなかった。

「……っ!」
 咄嗟に突き出した両手のうち、右手は骨が折れていてひどい激痛を浅羽にもたらし、残った左だけでは自分の体重を支えることはできなくて、体をひどくアスファルトの路面へと打ちつけた。

「うくっ……!」
 痛みにうめく。

 ――右手が痛い。
 当然だ。さっき折られたのだから。

 ――口が痛い。
 当然だ。殴られて、打ち付けて、歯が数本折れたのだから。
 少し前に唾を吐いたら、真っ赤になっていて気持ち悪かったのを覚えている。

 ――体が痛い。
 当然だ。この半日の間で転んで、倒れて、噛まれて、殴られて、蹴られて、今も地面に打ち付けて。
 この体で傷ついていない場所など一つもない。

 ――頭が痛い。
 当然だ。川に流されたあの時のまま動き回ったせいで、はっきりとわかるぐらいに熱っぽい。
 きっと学校の保健室に行ったなら、保健室のベッドで休んだ後に帰宅させられるぐらいの熱はとっくに出ているに違いない。

 ――心が痛い。
 ……当然だ。これまでの自分を振り返ってみろ。  
 ……伊里野を守ると決意して、これまで自分は何をやった?

 女の子にマシンガンで襲いかかって、殺せずに。

 晶穂と出会っただけで、慌てて、言い訳をして。

 ぼくを尋問しようとした人をもっていた毒で殺してしまって。

 あのリリアって子に乱暴して、欲情して、それでも殺すことはできなくて。

 宗介って人に殺されかけて、そのまま見逃されて。


 ……伊里野のために何ができた?

 罪悪感、後悔、情けなさ、自嘲、自己嫌悪。
 そうしたもろもろの感情がぐちゃぐちゃになって、浅羽の頭の中を埋め尽くしていく。
 ぐちゃぐちゃになった感情は、ほどなくしてひとつの単語となって固まった。

(……どうしてっ!)
 そこまで考えた途端、ぼろぼろと、馬鹿みたいに涙が出てくる。溢れ出す涙と同時に刃のような傷みが元々あったずきずきとした痛みとは別に頭の芯を刺す。
 柔らかく朝日が照らす、誰もいない静かな通りをふらふらと歩きつづけながら、浅羽は嗚咽をこらえようとして、それでもこらえきれずに声を漏らした。

「…………!」

(……どうしてっ!)
 言葉には出せずに、ただ頭の中でその単語がぐるぐると回る。

 どうして、なぜ、なんで。
 疑問は頭の中を駆け巡るばっかりで、彼ののうみそは部長や榎本のように正しい答えは導き出してはくれない。

(どうしてっ!)
 どうしてこんなことになった。
 一体自分は何を間違えた?
 こんなはずではなかった。
 こんな風になるなんて、想像さえしていなかった、望んではいなかった。

 ほんの少し前の日々、当たり前だった日常を思い出す。
 部長がいて、晶穂がいて、伊里野がいたあの日々はどこへいってしまったのだろう。
 何が、違ってしまったせいで、何を間違ってしまったせいでこんなことになったのだろう。

「くっ……!」

(帰りたいっ!)
 やはり言葉には出せずに心の中でのみ願う。
 強く、固く握り締められた左手にははっきりと爪の跡が残っていた。

 ……あの時、リリアって子をそのまま殺していたら何か違っていたのだろうか。

 それとも、あの男の人にそれは毒だって言って、あの人を殺さずに済んでいたら何か変わっていたのだろうか。

 晶穂にあった時に迷わずに銃を向けていたら、こんなことにはなっていなかったのだろうか。

 あの時、最初に出会ったあの子を殺せていたらもっとましになっていたのだろうか。

 いや、それよりも。
『よお、久しぶり』
 榎本の顔を見た瞬間、全身から力が抜けていったあの瞬間のことを浅羽は思い出す。
 あの時諦めずに逃げ出していたら、伊里野はまだ自分のそばにいてくれたのではないか。

 むしろいっそ、あの夏休み最後の日に、おとなしく家に帰ってさえいれば『日常』は今も続いていたのではないだろうか……。

「……っ!」
 地に倒れ伏せたその体勢のままで、浅羽はぶんぶんと首を振る。

 ……一体、今ぼくは何を考えようとした。 

 自分自身に浅羽はぞっとしたものを感じる。
 一瞬頭の中に浮かんだ考えはひどくおぞましく、そんなことを思いついてしまう自分自身が嫌になってしまう。

 結局、ぼくは伊里野を言い訳にしていただけなんだろうか。  

 あの子たちが正しくて、ぼくが間違っていただけなんだろうか。

 そうじゃないと信じたい。
 でも、じゃあ何で、ぼくはあの子たちの言葉に『伊里野のため』以外の答えを返すことはできなかったんだろうか。

 けれど、もしもぼくが間違っているのだとしても、すでに人を殺してしまったぼくはこの道を進む以外のことはできなくて、でも伊里野を言い訳にすることはできなくて。

「…………うっ、うううううううう……」
 路上に伏せた、そのままで浅羽は泣いた。


 ……じゃり

 路面に近かったせいでその音は聞こえた。
 不意に聞こえてきたその音に、咄嗟に浅羽は声を押さえた。
 そして咄嗟にそんな行動を取れる自分自身にまた嫌気を感じる。
 振り返ってみれば最初からそうだった。

 銃を持っていたくせに、それを使って女の子一人殺すことはできなくても、とっさに浮き輪やビート板を使っておぼれることは防いだ自分。
 腕を折られて、人を殺した直後だっていうのに、道具を持って逃げた自分。

 ぼくが『正しい』行動を取れたのは、イリヤのために何かをしようとしたときでなく、いつも自分の身を守るときだけだった。

 改めて自分の醜さというものを思い知らされながらも、浅羽はのろのろと身を起こすと、音の主が姿を見せる前にビル影へと体を引き摺っていった。

 浅羽がビル影に身を隠すのとほぼ同時に、足跡の主はその姿を通りに晒す。

 それは浅羽が守りたいと願っていた少女の姿。
 ……ただし、来ている服を血で染めて、ふらふらと前が見えていないような危なっかしい足取りであるいているという予想外の姿。

「……イリヤ!」
 思わず浅羽はよろよろとビル陰から飛び出す。本当はそのまま飛びつきたかったけど、それをするには体の節々が痛くて。
 だから代わりに彼女に声をかけた。
 口内の痛みのせいで、あまり大きな声は出せなかったけどその声はちゃんと彼女に聞こえたのか、少女はゆっくりとその視線を浅羽のほうへと向けた。 



 ◇ ◇ ◇



 ……良かったことが一つ。
 ……悪かったことが一つ。

 放送を聞きながらわたしはそう状況を判断する。

 よかったこと、あさばはまだ生きている。
 榎本以外は聞いたことがない名前が十人分呼ばれたけれど、放送を聞き漏らさないように注意して、なんだかよくわからないことを言っていた長い前置きの途中から頑張って聞いていたけれど、あさばの名前は呼ばれてはいない。
 のこりは50にん。
 あさばの為に私も入れた49にんをころせば、あさばは生きて園原に戻れる。
 それがとてもうれしい。

 そして悪かったこと。 
 一時的なものだと思っていた目の不調は確かに一時的なもので、少し休んだだけで目はもとに戻ってくれた。
 けれど、もとの調子でいられるのもやっぱり一時的でしかなかったらしいということ。

 榎本を刺して少し装備がましになったわたしはもう少しだけ中心部に近付こうとした。
 さっき考えたとおり、きっと中心部に行けば行くほど自分に自信があるひとがいる。そのひとたちの装備の方が優れているに違いない、そう考えてわたしは進み。
 歩き出して少しして放送が流れて、あさばが無事なのを喜んで、また歩き出そうとした矢先にまた調子が悪くなったのだ。
 その時は少し休むだけで、またもとに戻ってくれたけど、またいつ悪くなるのかわからない以上考えないといけない。

 だからわたしは考えた。

 そして病院へと向かうことにしたのだ。

 病院へ向かう、と言っても別に薬が欲しいわけじゃない。
 わたしが今欲しいのは強力な装備。

 わたしが今もっているのは、手榴弾と刃物と銃が二挺。
 悪くはないけど、視力がいつどうなるかわからない以上、確実に殺せる装備が欲しかった。
 今の装備じゃ、手榴弾以外だと急所に当たらなきゃ殺せない。
 そしてそれだとあまり遠くの人間は殺せない。
  だから榎本に止めを刺すちょっと前、逃がした二人組みのうち、男の子の方の武器が欲しかった。
 あのロケット弾ならかなりの距離があっても相手を襲うことができるし、威力の方も十分、また視力が落ちて、狙いが多少ずれてしまっても、殺せる。

 確か土屋といった男の子の名前も呼ばれなかったし、お腹を三回も刺して、あそこまで血色が悪くなっていたのだ。
 きっと彼らは病院に向かって、傷の治療をしたに違いない。

 今度はもう、油断しない。
 ころして、うばう。

 そう決めてわたしは歩き出したけど、しばらく進むとまた目の前が見えにくくなってきた。
 本当は休んだ方がいいのだろうけど、あの子達もいつまでも病院にいるはずがない。今は急ぐ必要があった。
 幸い、と言っていいのかはわからないけど、目の前の様子はぼんやりとは、もしも誰かがいればわかる。
 ならもう少しだけ、進める。
 そうして、がんばって歩いていると、横の方から誰か、出てきた。
 誰かはそのまま様子をうかがっているのか、その場に立ったままで動かない。

 ……距離は近い。

 ひょっとしたらこの人も何か強い武器を持っているかもしれない。 
 そうじゃなくても、あさばの為には殺さないといけない。

 わたしはそのまま、ぼんやりと見える人影に銃を向け。

「……あさばのために、しんで」

 言い切るよりも早く、引き金を引いた。



 ◇ ◇ ◇



 ぱぁん。

 最初に浅羽が持っていた軽機関銃に比べればはるかに小さい銃声が響く。
 同時に見えない誰かに思いっきり突き飛ばされたかのような衝撃がはしって、浅羽はどしん、と尻餅をついた。

(…………え!?)
 疑問が浅羽の脳裏を埋め尽くす。

(……今、何が起こった?)
 そんな疑問にわずかに遅れて浅羽の右腕が燃え上がる、いや、違う。右腕が燃えているかのような灼熱した痛みに襲われた。

「う、うわわわ、うわああああああああああああぁああああああああああ!」
 絶叫する。  
 絶叫する。
 絶叫する。

 叫ぶ浅羽をよそに、彼の目の前で伊里野が銃を構えている。


「い、伊里野……どうして?」
 痛みと恐怖、そしてそれ以上の絶望。
 歯ががちがちとなってかみ合わない。
 撃たれた右肩からはそんなに血が流れてはいないけど、きっとそんなのは見た目だけ。
 だって、ひどい貧血の時のように頭からどんどん血が抜けていって、目の前が暗くなってきているんだから。
 だけど、それでも伊里野を信じたくて。
 伊里野がぼくを撃ったなんてことが嘘なんだって、何かの間違いなんだって思いたくって、震える声で問い掛ける。

 出てきた言葉はとても小さい上にしどろもどろな自分でもなんていっているのかわからないような、これが自分の声だって信じられないようなもので。
 それでもその言葉は伊里野に届いたのか。
 彼女の口は動いた。

「……あさ――」
 それと同時の二回目の銃声。
 伊里野の言葉に気を取られていた浅羽は動くことさえできなくて、ただ彼女のことを呆然と見つめつづけているのが精一杯だった。
 それでも浅羽にとっては幸運なことにその一撃の狙いは逸れて、浅羽の背後、ついさっきまで浅羽が隠れていたビルの窓ガラスに当たるとそれを粉砕した。

 だが、そんなことは今の浅羽にはどうでもいいことだった。
 銃が撃たれた瞬間、反応さえできなかったが故に浅羽は伊里野を見つめつづけていたのだ。
 伊里野のことだけに気を取られていたのだ。
 銃声のせいでわずかに途切れたところがあったけど、間違いなく伊里野が言った言葉の最初と最後は浅羽の耳に届いていたのだ。

 伊里野は確かに言っていた。

『……あさば――――しんで』

 ぴしり、と浅羽の中で何かが壊れた。

 ……伊里野は今、ナントイッタ?
 ナンデソンナコトヲイッタ?

 ……決まっている。
 伊里野を理由にしてひどいことをしてきたからだ。
 伊里野の為に伊里野の友達だった晶穂にさえ銃を向けたからだ。
 伊里野のために、伊里野を言い訳に人を殺そうとしたからに決まっているじゃないか。

 みんな言っていたじゃないか。
 それはエゴの押し付けだって。
 お前は伊里野って人のことを考えていないって。

 だからそう、人殺しの理由にされた伊里野がぼくのことを怒るのは当然で。
 ぼくを守るために闘った、ぼくを守るためにあの最後の戦いに向かって伊里野からしてみれば、それはひどい裏切りで、きっとぼくに今こうして銃を向けてくるぐらいにぼくを恨むには十分な理由で。

 ……ならぼくはどうなる。
 伊里野の為に殴られて、噛まれて、蹴られて骨さえ折られてそれでもがんばっていりやのためになるとおもってくじけそうになってもがんばってきたのに、それが全部無駄になるなんてことがあっていいはずなくって、
なんでぼくが撃たれなくちゃ、そんなのはきっと間違いだ。そうだそうにきまっている。がんばってがんばってがんばってきたことが全部無駄だったなんてことは認められない。
 ――それならいっそ。

「うわわあわぁぁぁあああああああああああああ!!」
「!?」
 絶叫と共に飛び掛る。
 それは銃では埒があかないと判断して、刃物を取り出そうとした伊里野の、『相手』からの反撃がなくって油断していた伊里野の虚をつくタイミングで。

 肩口から伊里野に体当たりをした浅羽はずざざっ、と伊里野ごと地面に倒れこんで。
 怒りのままに、これまでのように痛みに震えることもなく素早く伊里野の上に馬乗りになると叫び声をあげながらも何度も伊里野を殴りつけた。

「この! この! このおおぉぉぉぉっ!」
 左の拳を何度も振るう。
 興奮しきった浅羽の狙いは定まらずに、何発かは伊里野には当たらずに路面のアスファルトを殴りつける。
 拳がアスファルトで擦り切れて、真っ赤になっても浅羽は気にせずに何度も拳を振るう。
 そうして激昂したまま、両手で伊里野の首を締め上げ――ようとして。
 興奮状態でも騙しきれなかった右手の骨折と右肩の銃創。
 この二つの負傷が発した痛みによって、ようやく少しだけ我に返った。

「…………え?」
「あ……さ…………ば……」


 ……結局それが浅羽直之という少年にとって幸運だったのか、それとも不運なのかはわからない。

 自分の手で守りたかった少女を殺さずに済んだ、殺す前に我に返れたという点では、それはこれ以上なく幸運で。

 自分の手で守りたかった少女を傷つけていたという事実に気がついてしまったという点では、それはとてつもない不運で。

 その事実を前に彼は。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 わからない。
 わからない。
 わからない。

 一体何をしたかったのか。
 一体誰の為にがんばっていたのか。
 一体何をすればいいのか。

 わからない。
 わからない。
 わからない。

 絶叫と同時にこの場から、いや……『全て』から逃げ出した。



【C-6/一日目・午前】



【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:自信喪失。茫然自失。現実逃避。全身に打撲・裂傷・歯形。右手単純骨折。右肩に銃創。左手に擦過傷。 微熱と頭痛。前歯数本欠損。
[装備]:毒入りカプセル×1@現実
[道具]:デイパック、支給品一式 、ビート板+大量の浮き輪等のセット(三分の一以下に減少)@とらドラ!、カプセルを入れていたケース
[思考・状況]
0:????????????
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
※浅羽が駆け出した方向は後の書き手にお任せします。 (ただし北~北西方面ではない)




 ◇ ◇ ◇


 ……気がついたら地面に倒れていて、あさばが泣きながらわたしのことを叩いていた。
 それからいったいどれくらいの時間がたったのだろう。
 やがて、あさばは大声をあげながら、なんだかとても悲しそうな様子でどこかへ走って行ってしまった。

「……あ」
 わたしはよろよろと手を伸ばして、あさばのことを引きとめようとしたけれど、その手はあさばに届かなくて、何故だか声も出なくって、あさばの姿はやがて見えなくなってしまった。

「…………」
 わたしは黙ったままでゆっくりと体を起こした。

 あさばに叩かれたのはとても辛い。
 あさばに叩かれたところはとても痛い。

 でも、我慢しなきゃいけない。
 だって最初からわかっていたことだから。
 だってあさばは優しいからわたしがみんなを殺そうとしているって知ったらきっと怒るってわかっていて、それでもわたしはあさばを助けるって決めたから。

 ――たとえあさばがわたしのことを嫌いになっても、わたしはあさばがすきだから。

 そして彼女は再び進む。
 大好きな彼とは異なる道を。

【C-6/一日目・午前】



伊里野加奈@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:顔に殴打の痕。返り血で血まみれ。たまに視力障害。 とても哀しい。
[装備]:ベレッタ M92(13/15)、『無銘』@戯言シリーズ、北高のセーラー服@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:デイパック、支給品一式×2、トカレフTT-33(8/8)、トカレフの予備弾倉×4、
     べレッタの予備マガジン×4、ポテトマッシャー@現実×3、10人名簿@オリジナル
[思考・状況]
基本:浅羽以外皆殺し。浅羽を最後の一人にした後自害する。
1:他の人間を探す。
2:晶穂も水前寺も躊躇いも無く殺す
3:さっき逃がした2人組を追いかけ、病院へと向かう。
[備考]
 不定期に視力障害をおこすようです。今のところ一過性のもので、すぐに視力は回復します。
 『殴られた』ショックのせいで記憶に多少の混乱があります。そのせいで浅羽直之を襲撃した事実に「気がついていません」


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