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提督の決断

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提督の決断 ◆MjBTB/MO3I



スクーター(注・二輪車。モトラドではないものを指す)が、ある程度開かれた山中の道をマイペースに走っていた。
運転手の名前はキノ。独自のルールに基づいた旅をする人間である。
彼女はがむしゃらというには程遠く、どこか余裕も見えるようないつも通りの姿で、山を登っていく。

理由は、結局火の鳥の事も気になりつつも"やはり人数が揃っているはずの神社が気になる"からだった。

特に気になっているのは人員の"質"。正直なところ先程の"火の鳥"がいるという話は零崎人識からは聞いていなかった。
彼が言うには"出来る"人間と"出来ない"人間が集まっていたようだが、こうなると正直当てになるとは思えない。
あの飄々とした性格の少年のこと。こちらは正直に事を話したというのに、あちらは嘘をついているのかもしれない。
もしくは、"実は神社はやり手だらけ。キノを陥れる策だった"という可能性まで出てくる。
キノは事実を述べたというのに、もしもこの仮説が当たっていた場合はアンフェアとしか言いようがないだろう。
一応彼はきちんと殺害しているので、その情報が漏れることはないのだが。

だからこそ、自分の目で見極めておきたい。
神社にいるらしい人間を殺すべきか、交渉するべきか、利用するべきか。
人伝で得た情報ではなく、自身が得た情報を参考にする。その為に今は素直に神社を目指す。
それに、ついでに殺害できる様なら幸運でもあるわけで、今回の遠征は自分にとって損になる事はほぼ無いだろう。
零崎が神社から姿を消した後に団体様が解散していたら少し困る話ではあるのだけれど。

とまあ、そんな具合の事を考えながら走っていたキノ……なのだが、ここで彼女は突如停止を強いられる事になった。
"思考を"ではない。他ならぬ"走行の停止"。

その理由は、進行方向上に白いエプロンを纏った女性が立っていたが故である。


       ◇       ◇       ◇


山道の中、一人で二人のフレイムヘイズが侵入者の前に立ちはだかった。
彼女の名前はヴィルヘルミナ。相棒の王はティアマトー。
彼女らがこんな場所に立っている理由は、話せばそう複雑なものではない。

理由。それは逢坂大河の手術の開始前に、ヴィルヘルミナが彼女から了承を得て単独行動に出たからである。
別に約束を反故にしたわけではないし、予定通りに術式を開始するつもりであることには変わりはない。
彼女は成すべき事を成す為に、一時的に場を離れたに過ぎない。

そこまでした理由を説明するのは簡単だ。
彼女はただ、先の手術を滞りなく完了させる為にまず懸念を潰そうとしているだけだ。

今や、現在神社でまともに戦えるのはヴィルヘルミナただ一人。残りはテレサ・テスタロッサを除き皆身体能力は並の者達だ。
自分と同じフレイムヘイズであるシャナは人探しに出発し、零崎人識も今やここにはいない。
そんな状態で自分が手術へと意識を集中してしまえば、どうしても隙が生じてしまうのは明白だ。
そしてもしも隙が生まれている状態で、例えば"敵"が現れた場合はどうなるか。
間違いなく、対処に遅れが発生する。そうなれば流石に目も当てられまい。
最低、新たな怪我人発生。最悪、全滅。

避ける為の対策は、先んじて不安を取り除いておくことのみ。
先に見回りをしておき、現状侵入者がいない事を確認して出来うる限り懸念を潰しておくという作戦だ。
単純でしかも穴のあるものではあるが、現状方法はこれしかないので仕方が無いだろう。
フレイムヘイズが常人には有り得ぬ運動神経を持ち合わせているのが、唯一の救いではあるのだが。

そして、その救いは幸運を与えてくれた。

神経を集中して周りに不振な者はいないかと気配を探り、俊敏に探索。
見落としが無いようにとティアマトーの力も借り、二人がかりで作戦を開始し少々時が流れた辺りである。
スクーターに乗って神社へと走っている人間の存在に気付いたのは。
そしてその人間の下へとすぐさま出陣し、目の前を遮るような直立不動の仁王立ち体勢に以降。今に至るというわけだ。

(随分と堂々とした振る舞いをする少年でありますな……)
(要対応)

目の前の"少年"――少なくともヴィルヘルミナにはそう見えた――は、無言でこちらを見ている。
ヴィルヘルミナも無言で"彼"へと視線を向けたまま無言を貫き、ティアマトーも倣う。
バッタリと正面から出会ったのである。相手は何を言うべきかと言葉を捜しているのだろう。
それはこちらも変わらない。まずアプローチを仕掛けるに際し、慎重さは大事であると考えるからだ。
しかし互いのこの無言、実はそれ以上に重大なもう一つの理由が表面化しているといっても良い。

牽制、である。

ヴィルヘルミナはこのスクーターに乗った少年を、ただの大人しそうな侵入者だと思っているわけでは決して無い。
彼女は少年の立ち振る舞い、というよりも大地に立っている姿から既に"彼は只者ではない"と感じ、今も警戒しているのだ。
根拠はいくつもある。
マイペースに見えて、というよりも究極のマイペースによって構築される隙の無い立ち振る舞い。
今ここで第三の人物か、もしくは自分が奇襲を仕掛けたとしても見切りそうな目。
安易には見透かせぬ心。考えを読むには厳しい表情。しっかりと大地に立つ堂々さ。
いつでも武器を取り出す事が出来る様にと考え、編み出されたであろうデイパックの位置取り。
このヴィルヘルミナ・カルメルが無言でプレッシャーを与えようと敢えて立っているというのに、一切退かぬ体。そして最後に、勘。
常に戦いに身を投じているヴィルヘルミナだからこそ解る。彼は人間という種の中では間違いなく"出来る"側だ。
そして因果な事に、おそらく彼も自分達と同じく"いつどこで敵襲われるかわからない"という日々を過ごしている!
そうでなくてはこの彼から感じられる重圧は、どう説明をしろというのか。

「……」

通常、フレイムヘイズは人間よりも遥かに強い。それは今も昔も変わらぬ常識である。
しかしそれでも、発見したばかりの時から今に至るまで、彼を見ていると体が警告をする。
"もしも彼が"敵"であるならばまずい展開になるぞ"、と。

(それでいて、一見しただけでは心が読めそうに無いのが困りものでありますな……元々不得意でありますが)
(警戒必須)
(我々の"味方"であるならば頼もしいのでありますが、楽観的な考えは危険であります。さて、どうするべきか……)
「あの……」
「何でありましょうか」

と、ここで少年はこちらに向かって言葉を放ってきた。
対話の始まりを予感させる種の単語であった為、ヴィルヘルミナは瞬時に頭を切り替える。
まずは軽く返事をし、相手の出方を待つことにした。

(相手の言葉の内容はもとより、その挙動や表情……全てから、彼が何を思いここに現れたかを掴むしかないであります)

今も隙を決して見せようとしない立ち振る舞いを続けているこの謎の少年は、深読みさせてもらうに相応しい相手だ。



       ◇       ◇       ◇


この女性は敵に回すと危険だ。
キノは目の前に突如現れた女性の立ち姿を見て、そう判断した。
理由はその女性がキノに抱いた感想と同じ部分から――キノ本人には知る由も無いが――来ている。
動き辛そうな服装であるにもかかわらず、いつでも戦闘状態に移行できそうな立ち振る舞い。
悪意からではなく、純粋に実力から現れるのであろう重圧。

そして何より、ここは今は相手の陣地である。
自分が下手に先制攻撃を仕掛けようとした瞬間、どんなしっぺ返しを喰らうか判断をし難過ぎる。
開けているとはいっても山道である。この女ならば用心に用心を重ねてオーバーキルな罠をしかけていてもおかしくは無さそうである。
というか、自分ならそうしている。今回はバッタリと出会った形になってはいるが、相手も流石に無策で目の前に現れるわけは無いだろう。
神社の人間を総動員して、という意地の悪い作戦を展開している可能性も決してゼロではない。

二回目の放送も終えて、現在の残り人数は四十人程度。
ここから「神社にいるらしい大量の人間を殺害出来れば大躍進と考えてはいたが、現実は厳しい。
もうこの女性一人がいるだけで場の空気が違う。下手に事を起こせば穏やかな結果では済まされないだろう。
七人の英雄を相手にしたことはあれど、それはまた勝手が違いすぎるので参考には出来まい。
それに繰り返すがやはり状況も悪い。零崎人識の時と全く違う事がやはり不安を抱かせる。
堂々と目の前に立っている事も解せないし、というよりも"解せさせない"為に立っているのか。
とにかく、全ての行動に理由があるのではないかと錯覚させるようなオーラを放っているのだ。
それに今、自分は少し眠い。体調が万全では無い今の状態でここまでの相手と闘うとなると厳しいものがある。
面倒事は、正直起こしたくは無い。


キノはここで、一旦殺害を考える事をやめた。
次に思考したのは、長居すべきか火の鳥を追うべきかである。


さて。
相手への無言の牽制、そして慎重さを大事にしたその結果、互いに一言も喋っていない。
このまま退散するのが良策であるとは"もう"言えない。もはや関わり過ぎている。
"長居すべきか火の鳥を追うべきか"のどちらかを選ぶ前に、一言挨拶だけでもしておくべきだろう。
おそらく自分が殺人に手を染めている事はまだ気付かれていないはずなのだから、それくらいは問題はないはずだ。
それにもしかしたら交渉に発展し、その末に何か得るものもあるかもしれない。そもそも寝床も欲しいわけで。
とりあえず、会話を試みるしかなさそうではある。

「あの……」
「何でありましょうか」

相手は話を聞く姿勢ではあるようだが、どうも顔が鉄面皮というかそういった具合なので、キノはどうすべきかと一寸迷った。
こちらをすぐに殺しにかかる気ならばいつでも迎撃の準備はあるのだが、如何せん彼女からは感情を捉え難い。
だがそれでも会話をしてみるかととりあえずトライしてみる事にした。何か取っ掛かりがあれば御の字、である。

「キノ、と言います」
「貴方の名前が、でありますか?」
「ええ」
「なるほど。記憶している名簿には確かに記載されているであります」

変わった言葉遣いだった。まるで軍人だ。

「では、あなたは?」
「『万条の仕手』」

"ああ、警戒されているな"と一発で解る回答であった。

「随分と警戒しているようですね……」
「状況が状況であります……こちらにもやるべき事が残っているが故、納得をして頂きたく思う次第であります」
「そうですか、正直残念です。ところで、寝床を探しているんですけど……神社をお借りすることは、やはり無理ですか?」
「少々厳しいでありますな。こちらにもそれなりに都合というものが存在しているものでありますから」

そして、歓迎されていない。
理由としてはこの闖入者たる自分を御する余裕が無いか、何か疚しい事を隠しているか、といった辺りだろうか。
仮に理由が前者ならば、一旦破棄した"『万条の仕手』を含む人間の殺害"も出来るかもしれない。
だが彼女の言葉から連想されるその理由が、隙が生まれていると見せかけている所謂"ポーズ"という可能性も決して否めない。
旅の中では"相手を油断させる"事で敵対者を撃退するのは常套手段だ。

「厳しいですか」
「厳しいであります」

もしもそうであってもそうでなくとも、なんともいやらしい。せいぜい深読みしろということか、さては。

「何かお手伝いできることは?」
「特にないでありますな」
「何かやるべき事があるのでしたら、その間に見張りくらいなら出来ますが」
「"見張りを誰が見張るのか"、が問題であります」

誰が見張る、と来たか。初対面の人間に放つには厳しすぎる発言であった。
単に人付き合いに関して不器用なだけだろうか。いや、まさか。
敢えてこちらを刺激することで反応を見ようとしている可能性もある。
明らかに思考が泥沼に入りかけていると思わざるを得ないが、どうしたものか。
……ああ、じゃあもう"あれ"を訊いてしまえば良いか。
キノは、口を開く。

「その拒絶の理由……さては"あの火の鳥の様なもの"と、関係がありますか?」
「……」

相変わらずの無言。だが無言は無言でも"一寸考えていた"ような無言。

「…………"火の鳥"、でありますか?」

その後に『万条の仕手』は同じ言葉を復唱してきた。とぼけているのだろうか。

「ご存知、ないのですか? あなた程の方があれに気付かないとはどうにも思えませんけど」
「いえ、そういう事ではないのであります」
「そうでしょうね。今思えば神社から飛んでいったようですし」
「……よく観察していたであります」

知っていたようだ。では果たしてあの火の鳥の様なものの正体は何であるのか。
それはこの目の前の『万条の仕手』がどういった状況に置かれているかを推理する鍵であると、キノはそう見ていた。
もしも鳥もどきが彼女の味方であったならば、貴重な戦力を分散させてしまった為にこうして警戒を強めているという可能性が出てくる。
逆にあれが彼女の敵だったとしたら、あれを追い出した後であるが故に警戒態勢に入っているのかもしれない。
何かから逃げているようにも見えたあの火の鳥もどき。その正体を尋ねる事は、目の前の彼女の現状を把握するための一手となり得るはずだ。

「更に思い返せば派手な戦闘音なども見受けられませんでしたね……あなたの仲間、と考えるのが妥当ですよね?」
「そう……あれは我々の仲間であります。この"生き残りをかけた物語"で意を同じとする同胞、でありますな。
 しかしながら意は同じであれど過程までもが全く同じである必要は皆無。故に今は別行動を取ったのであります」
「なるほど……"それで、人手が足りないと"」
「それに関してはご心配ないであります」

そしてその予測は、実際に当たった。おそらくこれに関しては真実なのだろう。
あの火の鳥が敵である場合、あれが味方だったと嘘をつくメリットは決して見当たらない。
逆にあの火の鳥が味方である場合、敵だと嘘をついた所で「ではあの敵を倒してきます」と言われたらそこまでだ。
故にこの『万条の仕手』の発言は真実であると考えるのが妥当。深読みする必要は無いだろう。
しかしながらそうなると、駄目押しで放ったもう一つの質問には否定されたことが解せない。
仲間がいなくなったものの人手には問題ない。強がりか、事実か、どちらだろうか。

都合があるので歓迎出来ない。
仲間が別行動を取った。
やるべき事が残っている。

この三つの情報から、人手に関しての供述は黒であると考えられるものの、未だ推測の域を出ないことは事実。
実際にどれくらいの人数が残っているのかがわからない以上、敵の陣地への単独潜入は非常に厳しい。
"人数を減らして最後に残る"という目的を抱いていることも知られたくはないし、やはり改めて考えれば下手な動きは出来そうに無い。
よし、もうここまでだ。これ以上食い下がっても得るものは無いであろう。
"厳しい言葉を浴びせられても話しかけてくる物好き"だとか、そんなポジティブな印象を持ってくれる相手でもなさそうである。
目の前の『万条の仕手』の性格が完全に掴めたわけではないが、そうする他はないと思う。ここいらでちょっと読むべきだ、空気を。

そう考え、ハンドルに手をかけた。


       ◇       ◇       ◇


「では、歓迎されてはいないようですし……帰ります」

ため息混じりに、キノと名乗った少年はあっさりと引き下がった。
もう少し食い下がってくると思っていたヴィルヘルミナにとっては意外といえば意外であった。

「そうでありますか。今回は、申し訳ないであります」

結局ヴィルヘルミナはキノを信頼する事は出来なかった。
彼がただの強い人間で、本当にこちらの助けになってくれるというならばありがたかった。
だがしかし今は睡眠中の人間を二人収容中かつ、更に手術も開始しなければならない状況。
"一般人"に分類される人間ならばともかく、強い人間というものはこの状況ではいかんしがたい。
御し難い、とでも言うべきか。今は"万一"が起きないように、こうするしかなかったのが現状だった。
悟られぬようにしたが、巧くいっただろうか。不安を覚えないわけではない。
だがまあいい。今回は仕方の無かったことである。180度ターンして去ろうとしている彼の背中を、今は見送るだけだ。
「いえ、気にしなくても結構ですよ」という返答を放つと同時に乗り物を起動させるキノ。
排気ガスを出しながら振動を始めるそれが静かに離れ始めた。

「ではお互いお気をつけて。縁があればまた……今度はお手伝いが出来ると良いですね」

最後にこんな台詞を残して。

「…………」
「…………」

一寸の間。

「…………会話終了?」
「で、ありますな」

キノの姿が遂に見えなくなり、気配の察知も出来なくなったところでティアマトーがようやく口を開いた。
彼女は結局キノとの会話全てをヴィルヘルミナ・カルメルに委ねていた。
ただでさえピリピリした空気の中、自分が突如発言をしてはその理由の説明も面倒千万であると判断したが故にである。

「少々喋り過ぎたであります……しかしながらあの"火の鳥"に答えぬままでは何を思われるかもわからず……。
 "火の鳥"にしてもどこまで把握して尋ねているのかが判らない以上、例えば"たまたま目撃した"などとも偽り難かったであります。
 それでも相手が短絡的な性格かつ、我々に敵意を抱く人物ではなかったのが救いでありますな。運が良かったのであります……が」
「油断厳禁」
「そう、まさしくその通りであります。結局のところあの少年の考えを見透かすには至らず、結果としては先延ばしに近きもの。
 次に出会うときはこちらにも若干の余裕が生まれた頃であることを全力で祈り、また叶えられる様努力する他はないであります」
「同意」

なかなかに辛い選択であった。
もしもあの少年が本当に"神社で手伝いをしてくれる"と確信できる人間だったなら、と考えるとあまりにも惜しい。
仮に神社の人員を自分一人か、または複数のフレイムヘイズで構成していれば、多少のリスクを背負ってでも受け入れただろう。
相手が自分に害為す存在であろうともフレイムヘイズの力を以って全力で迎え撃つだけであるし、そもそも無害ならば万々歳だ。
どちらに転ぼうとも、慢心さえしなければ悪い方向にはいかないしいかせない。そう考えられる。
しかし今回は別だ。自分以外に存在しているのは一般人がほとんどである。しかも手術までも敢行しなければならない。
睡眠中の二名の事も護らねばならない状況で、もしも黒か白かわからない者が現れたら、対処しきる自信はさすがにない。

『常のフレイムヘイズならば、死を呼ぶには足りない武器だ。しかし、この場ではどうだろうか?』

フリアグネのこの言葉も気になる。実際確かめていない以上、懸念すべき情報であり続けているのが現状だ。
今のヴィルヘルミナを見て考え過ぎではないかと考える者もいるだろう。
が、重要な戦力である仲間を見送った身である。こうしてでも、残った仲間を護るのは当然の勤めだ。

「とりあえず……神社に戻るのはもう一度一回りしてからでありますな」
「妥当」
「それから、手術の開始であります……出鼻を挫いたようで、決心を鈍らせてしまっていなければいいのでありますが……」
「少々心配」

仁王立ちの体勢であったヴィルヘルミナ・カルメル。
堂々とした出で立ちはそのままに、彼女は久しく再び動く。


       ◇       ◇       ◇


下山中、キノは考える。
今回はあまりにもアウェー過ぎた所為で、些か不自由であったと。
今は別に旅をしているわけではない。下準備というか、きちんと斥候活動もしておくべきだったのだ。
いや、むしろそれを考えてはいたが運悪く相手に先手を取られてしまっていたというのが正しいか。
焦らずに対処が出来て良かったと思う。

さて。では対処ついでにどうするかというと、とりあえずそのまま火の鳥もどきを追う事にした。
何せそちらの方がやりやすい。相手の力量がどの程度なのかがわからないと言っても、先程の『万条の仕手』よりは遥かにマシだ。
何故なら神社という拠点から出て行ったという事は、わざわざ混沌とした場に飛び込んでいったということである。
つまり条件は同じ。火の鳥もどきが第二の拠点を作ったりしない限り、お互いにアウェーでの戦闘になるという事だ。
拠点を作られていた場合はまた再び困る事になるが……あんなに目立つ姿なのだ、こちらも準備や対策もしやすいというもの。
ああ、もしくは今度こそ何かしらの交渉を試みてもいいかもしれない。どちらにしろ、次は火の鳥狙いか。

「昔の師匠も、あんな感じだったのかな……」

と、そんなことを呟いたとき。キノの現在位置の遥か遠くで黒い煙が上がっているのが確認出来た。
既に随分と山も下っていたからだろう、樹木も随分と少なくなってきたのでどうにか視界に捉えられたのである。

目算では零崎人識と共に食事をした場所に近い。スクーターを停止させると、急いで地図などをデイパックから取り出し確認作業に入る。
建物の規模から見て、ホテルだと考えるのが妥当か。現在から東に戻ればすぐに辿り付けるだろう。
丁度火の鳥もどきが飛んでいったのも東。そして燃え盛る炎。何か怪しい臭いを感じる出来事だ。
とは言え飛んでいる姿を目撃してからそう時間は経ってないので、もしかすると無関係であるのかもしれない。
しかしそれでも構わない。間違っていようとも、どうせ火の鳥もどきの進路を考えれば東に行くしかないのだから。

「ひとまずは現地に到着するまでに色々と対策を練らないとね……それじゃあ行こうか」

キノは、再び街の真ん中へと向かい始める。
ついでに今度こそ寝床も確保しておかないと、と考えながら。




【C-2/神社/一日目・日中】

【ヴィルヘルミナ・カルメル@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン一箱(7/20)、缶切り@現地調達、調達物資@現地調達
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。しばらくは神社を拠点として活動。
 1:今一度手早く付近に侵入者の有無を確認。安全確保が出来次第神社に戻り、大河に義手を取り付ける手術を行う。
 2:神社を防衛しつつ、警察署に向かった御坂美琴とキョンの帰りを待つ。人員が揃うようなら、上条当麻の捜索も検討。
 3:六時を目処に、仮眠中のインデックスとテッサを起こす。問題ないようなら、天体観測に同行。
 4:シャナ、島田美波の帰還を待つ。



【C-2/山中(もうすぐ平地付近)/一日目・日中】

【キノ@キノの旅 -the Beautiful World-】
[状態]:健康
[装備]:トルベロ ネオステッド2000x(12/12)@現実、九字兼定@空の境界、スクーター@現実
[道具]:デイパックx1、支給品一式x6人分(食料だけ5人分)、空のデイパックx4
     エンフィールドNo2x(0/6)@現実、12ゲージ弾×70、暗殺用グッズ一式@キノの旅
     礼園のナイフ8本@空の境界、非常手段(ゴルディアン・ノット)@灼眼のシャナ、少女趣味@戯言シリーズ
【思考・状況】
 基本:生き残る為に最後の一人になる。
 1:火の鳥を追跡する為、まずは煙が上がっている方角へ。
 2:夜に備えて寝床を探しておく。
 3:エルメスの奴、一応探してあげようかな?
[備考]
 ※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
   8巻の『悪いことができない国』の充電器のことは、知っていたのを忘れたのか、気のせいだったのかは不明です。
 ※「師匠」を赤の他人と勘違いしている他、シズの事を覚えていません。
 ※零崎人識から遭遇した人間についてある程度話を聞きました。程度は後続の書き手におまかせです。


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