ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
キノとトレイズ〈そして二人は探しに行った〉
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キノとトレイズ〈そして二人は探しに行った〉 ◆LxH6hCs9JU
「ふんふんふーん♪」
「…………」
「うーん、風が気持ちいー。路面の具合もいい感じー」
「……随分とご機嫌だな」
「まあね。やっぱり、モトラドは走ることが生きがいだからさ」
「走れることが幸せ……か。単純でいいよなぁ、君は」
「君が複雑すぎるだけなのさ。変に気負いしたって、人生損するだけだよ」
「ははっ。まさか、モトラドに人生を諭されるとは思わなかったや……」
「…………」
「うーん、風が気持ちいー。路面の具合もいい感じー」
「……随分とご機嫌だな」
「まあね。やっぱり、モトラドは走ることが生きがいだからさ」
「走れることが幸せ……か。単純でいいよなぁ、君は」
「君が複雑すぎるだけなのさ。変に気負いしたって、人生損するだけだよ」
「ははっ。まさか、モトラドに人生を諭されるとは思わなかったや……」
「にしても、君は運転が上手いね。キノみたいに乱暴でもないし。秀吉や実乃梨に比べたら月とスッポンポンだ」
「……月とスッポン?」
「そうそれ」
「キノっていうのは、エルメスの元の乗り手だったよな」
「そう。旅人だよ」
「じゃあ、秀吉と実乃梨っていうのは誰なんだ? 退場した人の中に、二人の名前があったと思うけど」
「キノが元の乗り手なら、秀吉と実乃梨は仮の乗り手ってところかな」
「……ああ。つまり、エルメスを“引き当てた”人間ってことか」
「秀吉のほうがそうだね。もっとも、二人ともモトラドの運転はできなかったみたいだけどね」
「ん? でも君は、俺が見つけるまで温泉の前に停まってたよな。誰があそこまで動かしたんだ?」
「秀吉と実乃梨だよ。ほとんど手押しであそこまで。試しに運転してみたりもしたんだけど、どっちもダメダメだった」
「初心者がバイク――モトラドに乗るのは感心できないな。事故が怖い」
「まったくだよ。何回も転ぶし、こっちとしても散々な目に遭った」
「乗れる人間がいないなら、素直に鞄にしまっておけばいいのに」
「君も酷いこと言うね」
「……月とスッポン?」
「そうそれ」
「キノっていうのは、エルメスの元の乗り手だったよな」
「そう。旅人だよ」
「じゃあ、秀吉と実乃梨っていうのは誰なんだ? 退場した人の中に、二人の名前があったと思うけど」
「キノが元の乗り手なら、秀吉と実乃梨は仮の乗り手ってところかな」
「……ああ。つまり、エルメスを“引き当てた”人間ってことか」
「秀吉のほうがそうだね。もっとも、二人ともモトラドの運転はできなかったみたいだけどね」
「ん? でも君は、俺が見つけるまで温泉の前に停まってたよな。誰があそこまで動かしたんだ?」
「秀吉と実乃梨だよ。ほとんど手押しであそこまで。試しに運転してみたりもしたんだけど、どっちもダメダメだった」
「初心者がバイク――モトラドに乗るのは感心できないな。事故が怖い」
「まったくだよ。何回も転ぶし、こっちとしても散々な目に遭った」
「乗れる人間がいないなら、素直に鞄にしまっておけばいいのに」
「君も酷いこと言うね」
「……これはちょっとした好奇心なんだけどさ」
「うん? どうしたの」
「秀吉と実乃梨の二人が退場した……エルメス、それは君も知っているんだよな?」
「もちろん。君が警察署の中に入っていった頃、そういう風に聞こえてきたからね」
「なるほど。となると、あの男の声は君みたいな“物”にも聞こえる仕様ってわけだ」
「なぁんか嫌な言い方」
「気を悪くしたなら謝るよ。で、本題だ」
「なにさ」
「秀吉と実乃梨の二人は、どうして退場してしまったんだ?」
「どうしてって言われても」
「あの死体だらけの温泉でなにがあった。そもそも、秀吉と実乃梨っていうのはどんな人間なんだ」
「矢継ぎ早に質問しないでよ」
「俺はまだ、そのあたりの事情を詳しく聞いていなかったと思ってね。可能なら話してほしい」
「そう言われてもなぁ。温泉に到着して、すぐあそこに停められちゃってたから。なにがあったかはよくわからないんだよ」
「じゃあ、到着する前は? なにか話は聞いてないのか? 二人の交友関係とかさ」
「そうだね。初めは、北村くんって人が温泉にいるって話だったんだよ」
「うん」
「でも見つからなかったみたいで、みんなどっかに行っちゃった」
「……温泉の中の死体が、もしかして北村って人だったのか?」
「さあ。中は確認してないし、そもそも北村って人のことは名前くらいしか知らないしね」
「秀吉と実乃梨がどこに行ったかは、エルメスにもわからない……か」
「あー、でも、二人の友達の名前なら覚えてるかな」
「本当? 覚えている限りでいいから教えてくれないか」
「たしか、明久と姫路、大河とあーみんと高須くん、だったっけかな?」
「あーみん……っていうのは? たぶん、誰かのあだ名なんだろうけど」
「うーん、そこまではわからないや」
「うん? どうしたの」
「秀吉と実乃梨の二人が退場した……エルメス、それは君も知っているんだよな?」
「もちろん。君が警察署の中に入っていった頃、そういう風に聞こえてきたからね」
「なるほど。となると、あの男の声は君みたいな“物”にも聞こえる仕様ってわけだ」
「なぁんか嫌な言い方」
「気を悪くしたなら謝るよ。で、本題だ」
「なにさ」
「秀吉と実乃梨の二人は、どうして退場してしまったんだ?」
「どうしてって言われても」
「あの死体だらけの温泉でなにがあった。そもそも、秀吉と実乃梨っていうのはどんな人間なんだ」
「矢継ぎ早に質問しないでよ」
「俺はまだ、そのあたりの事情を詳しく聞いていなかったと思ってね。可能なら話してほしい」
「そう言われてもなぁ。温泉に到着して、すぐあそこに停められちゃってたから。なにがあったかはよくわからないんだよ」
「じゃあ、到着する前は? なにか話は聞いてないのか? 二人の交友関係とかさ」
「そうだね。初めは、北村くんって人が温泉にいるって話だったんだよ」
「うん」
「でも見つからなかったみたいで、みんなどっかに行っちゃった」
「……温泉の中の死体が、もしかして北村って人だったのか?」
「さあ。中は確認してないし、そもそも北村って人のことは名前くらいしか知らないしね」
「秀吉と実乃梨がどこに行ったかは、エルメスにもわからない……か」
「あー、でも、二人の友達の名前なら覚えてるかな」
「本当? 覚えている限りでいいから教えてくれないか」
「たしか、明久と姫路、大河とあーみんと高須くん、だったっけかな?」
「あーみん……っていうのは? たぶん、誰かのあだ名なんだろうけど」
「うーん、そこまではわからないや」
「ん……ちょっと待てよ」
「どうしたの?」
「北村って人は、たしか名簿には載っていなかったよな。だとしたら、その人が温泉にいるって話はどこから出てきたんだ?」
「ああ。それはね、千鳥と上条って人から聞いたんだよ」
「……ええと、その二人についても詳しく教えてもらいたいんだけど」
「そう言われても、ちょっとすれ違っただけだからなぁ。あんまり話せることはないよ」
「じゃあ、話せることだけでいいから話してくれ」
「仕方ないなぁ。うーんと……ああそうだ、二人とも壁を見に行くって言ってた」
「壁……ああ、あの黒い壁か」
「シャナが行っても意味ないって忠告したんだけどね。まったく、なに考えてんだか」
「おい、ちょっと待て。そのシャナっていうのは誰だ?」
「君って、質問が多いよね」
「君って、説明が下手だな」
「どうしたの?」
「北村って人は、たしか名簿には載っていなかったよな。だとしたら、その人が温泉にいるって話はどこから出てきたんだ?」
「ああ。それはね、千鳥と上条って人から聞いたんだよ」
「……ええと、その二人についても詳しく教えてもらいたいんだけど」
「そう言われても、ちょっとすれ違っただけだからなぁ。あんまり話せることはないよ」
「じゃあ、話せることだけでいいから話してくれ」
「仕方ないなぁ。うーんと……ああそうだ、二人とも壁を見に行くって言ってた」
「壁……ああ、あの黒い壁か」
「シャナが行っても意味ないって忠告したんだけどね。まったく、なに考えてんだか」
「おい、ちょっと待て。そのシャナっていうのは誰だ?」
「君って、質問が多いよね」
「君って、説明が下手だな」
「……という感じで、シャナと秀吉と実乃梨の珍道中が始まったのでした。めでたしめでたし」
「髪が燃える女の子、ねぇ……正直言って、信じられない」
「だろうね。その意見には同意するよ」
「でも、喋るバイクのことを考えれば不思議でもないか」
「バイクじゃないよ、モトラドだよ」
「シャナもエルメスも……それに、警察署にいた女の子も。どうなってるんだろうな、ここは」
「伏し目がちになるのは構わないけど、よそ見して転ぶのだけはやめてよね」
「はいはい、気をつけるとするよ」
「それにしても、この辺はなんだか壁が多いね。もっと開けた場所を走りたいのに」
「仕様がないよ。ここは城塞の一部みたいだから」
「はい? どういうこと」
「ほら、左手の方角に城が見えるだろう? 道がこれだけ入り組んでいるのは、簡単にあそこまで辿り着けないようにするためなのさ」
「詳しいね。トレイズって、ひょっとしてどこかの国の兵士だったりするの?」
「……さあ、どうだろうね」
「髪が燃える女の子、ねぇ……正直言って、信じられない」
「だろうね。その意見には同意するよ」
「でも、喋るバイクのことを考えれば不思議でもないか」
「バイクじゃないよ、モトラドだよ」
「シャナもエルメスも……それに、警察署にいた女の子も。どうなってるんだろうな、ここは」
「伏し目がちになるのは構わないけど、よそ見して転ぶのだけはやめてよね」
「はいはい、気をつけるとするよ」
「それにしても、この辺はなんだか壁が多いね。もっと開けた場所を走りたいのに」
「仕様がないよ。ここは城塞の一部みたいだから」
「はい? どういうこと」
「ほら、左手の方角に城が見えるだろう? 道がこれだけ入り組んでいるのは、簡単にあそこまで辿り着けないようにするためなのさ」
「詳しいね。トレイズって、ひょっとしてどこかの国の兵士だったりするの?」
「……さあ、どうだろうね」
「で、わざわざこんな入り組んだ道を選んで、トレイズはどこを目指しているっていうのさ」
「北東の方角。南西のほうはあらかた走り回ったしね。そろそろそっちを探してみるのもいい」
「必要なものを?」
「リリアをだよ」
「ふーん。ま、別にいいけど。あのあたりには、なんだか物騒な人がいるみたいだし」
「ああ……そうだね。特にあの女性は、物騒極まりなかった」
「トレイズもよく生き延びたもんだ」
「ホント、そう思うよ」
「でもさ」
「うん?」
「その人をなんとかしないと、いつかリリアって子にも危害が及ぶんじゃないの?」
「それは確かに。俺だって、彼女を止めようとはしたさ。でも駄目だった。生き延びるだけで精一杯だったんだよ」
「かっこわる」
「うるさいな」
「北東の方角。南西のほうはあらかた走り回ったしね。そろそろそっちを探してみるのもいい」
「必要なものを?」
「リリアをだよ」
「ふーん。ま、別にいいけど。あのあたりには、なんだか物騒な人がいるみたいだし」
「ああ……そうだね。特にあの女性は、物騒極まりなかった」
「トレイズもよく生き延びたもんだ」
「ホント、そう思うよ」
「でもさ」
「うん?」
「その人をなんとかしないと、いつかリリアって子にも危害が及ぶんじゃないの?」
「それは確かに。俺だって、彼女を止めようとはしたさ。でも駄目だった。生き延びるだけで精一杯だったんだよ」
「かっこわる」
「うるさいな」
「…………」
「…………」
「急に無口になったね」
「少し、考えていたんだ」
「なにを?」
「彼や彼女は、あれからどうなったんだろう……って」
「彼? 彼女? いったい誰のことを言ってるのさ」
「……いや、なんでもない。聞かなかったことにしてくれ」
「変なの」
「今は……そう、リリアだ。道を迷っちゃいけない」
「まいった。今度の乗り手は運転は上手いが、独り言が多いらしい」
「…………」
「急に無口になったね」
「少し、考えていたんだ」
「なにを?」
「彼や彼女は、あれからどうなったんだろう……って」
「彼? 彼女? いったい誰のことを言ってるのさ」
「……いや、なんでもない。聞かなかったことにしてくれ」
「変なの」
「今は……そう、リリアだ。道を迷っちゃいけない」
「まいった。今度の乗り手は運転は上手いが、独り言が多いらしい」
「ところでエルメス。あれに見える黒い景色は、なんだと思う?」
「どれどれ? ああ、あれか。あれはどう見ても、煙でしょ。大きな建物が燃えているみたい」
「放火かな。どうやらあっちの方角にも物騒な人がいるみたいだ」
「じゃあどうする? やっぱり、あっちのほうに行くのはやめようか」
「いや、行こう」
「勇気あるね」
「リリアが野次馬根性で近寄らないとも限らないから」
「なんかじゃじゃ馬みたいだね、その子」
「……否定はできない」
「まあ、道を決めるのは君さ。モトラドはただ走るだけ。でも一応、言っておくよ?」
「聞こうか」
「なんだか危ない感じがする。さっきの警察署以上に。近づかないほうが無難だと思うけど」
「エルメス、君はなにか勘違いをしているみたいだな」
「え?」
「俺は別に、我が身可愛さで逃げ回っているわけじゃない」
「尻尾巻いて逃げてきたのは誰さ」
「“必要なもの”を探す。そのために君の力を借りている」
「無視ですか」
「まあ聞いてくれよ。あの煙。あそこからは確かに、危険な香りがする。でも」
「でも?」
「そこに“必要なもの”があるっていうんなら、行かないわけにはいかない。たとえ危険だとしても、ね」
「……トレイズってさ」
「うん?」
「たぶん、長生きはできないよ」
「俺もそう思う」
「だったら」
「でも」
「また、でも?」
「長生きはできないとしても――早死はしてやれない」
「……そういうの、へそくりって言うんじゃない?」
「……へりくつ?」
「そうそれ」
「君は学校に通ったほうがいいな。リリアが通っているロクシェの学校をおすすめする」
「どれどれ? ああ、あれか。あれはどう見ても、煙でしょ。大きな建物が燃えているみたい」
「放火かな。どうやらあっちの方角にも物騒な人がいるみたいだ」
「じゃあどうする? やっぱり、あっちのほうに行くのはやめようか」
「いや、行こう」
「勇気あるね」
「リリアが野次馬根性で近寄らないとも限らないから」
「なんかじゃじゃ馬みたいだね、その子」
「……否定はできない」
「まあ、道を決めるのは君さ。モトラドはただ走るだけ。でも一応、言っておくよ?」
「聞こうか」
「なんだか危ない感じがする。さっきの警察署以上に。近づかないほうが無難だと思うけど」
「エルメス、君はなにか勘違いをしているみたいだな」
「え?」
「俺は別に、我が身可愛さで逃げ回っているわけじゃない」
「尻尾巻いて逃げてきたのは誰さ」
「“必要なもの”を探す。そのために君の力を借りている」
「無視ですか」
「まあ聞いてくれよ。あの煙。あそこからは確かに、危険な香りがする。でも」
「でも?」
「そこに“必要なもの”があるっていうんなら、行かないわけにはいかない。たとえ危険だとしても、ね」
「……トレイズってさ」
「うん?」
「たぶん、長生きはできないよ」
「俺もそう思う」
「だったら」
「でも」
「また、でも?」
「長生きはできないとしても――早死はしてやれない」
「……そういうの、へそくりって言うんじゃない?」
「……へりくつ?」
「そうそれ」
「君は学校に通ったほうがいいな。リリアが通っているロクシェの学校をおすすめする」
「話を聞いていると、なんだか興味が湧いてきたなぁ」
「なにに?」
「トレイズが言う、リリアって子にさ。君にそうまでさせるなんて、どんな子なの?」
「どんな子……と言われても、説明に困るな」
「えー。教えてよ」
「教えてやってもいいけど……そうだな、エルメスからなにか質問してくれ。そして俺が答える形にしよう。それなら説明しやすい」
「じゃあさっそく。リリアって子は、トレイズの恋人?」
「……この場に彼女がいたら、『違うわよ!』って殴られていただろうな」
「ひえっ。おっかない子なんだね」
「勘違いするな。殴られるのはエルメスじゃない。俺のほうだ」
「どっちにしろおっかないよ」
「そこも否定できない部分なんだよな……」
「容姿はどうなの? 君に似て美人さんだったりとか?」
「美人だよ。怒ってるとき以外はね」
「へぇ」
「髪とか長くてサラサラでさ。よくある茶色なんだけど、お日様の下で見ると透き通るみたいでキレイなんだ……」
「……ゾッコンみたいだね」
「否定しない。ただ」
「『ここにリリアがいたら、俺が殴られる?』」
「そうそれ」
「なにに?」
「トレイズが言う、リリアって子にさ。君にそうまでさせるなんて、どんな子なの?」
「どんな子……と言われても、説明に困るな」
「えー。教えてよ」
「教えてやってもいいけど……そうだな、エルメスからなにか質問してくれ。そして俺が答える形にしよう。それなら説明しやすい」
「じゃあさっそく。リリアって子は、トレイズの恋人?」
「……この場に彼女がいたら、『違うわよ!』って殴られていただろうな」
「ひえっ。おっかない子なんだね」
「勘違いするな。殴られるのはエルメスじゃない。俺のほうだ」
「どっちにしろおっかないよ」
「そこも否定できない部分なんだよな……」
「容姿はどうなの? 君に似て美人さんだったりとか?」
「美人だよ。怒ってるとき以外はね」
「へぇ」
「髪とか長くてサラサラでさ。よくある茶色なんだけど、お日様の下で見ると透き通るみたいでキレイなんだ……」
「……ゾッコンみたいだね」
「否定しない。ただ」
「『ここにリリアがいたら、俺が殴られる?』」
「そうそれ」
「さあエルメス、目的地についたぞ」
「すごい火の勢い。離れてても熱さが伝わってくる」
「燃えていたのは……【C-4】のホテルみたいだな」
「あんまり近づかないでよ。煤がついちゃう」
「心配しなくても、これ以上は近づけないよ」
「で、どうするのさ? 火の中にリリアがいないかどうか捜すのかい?」
「防火服でもあればそれも考えたけどね。さすがの俺も、そこまで馬鹿じゃない」
「それを聞いて安心した。今のトレイズなら、やりかねないと思ったから」
「……俺って、そんなに切羽詰ってるように見えるか?」
「見えるね。もうちょっと余裕を持ったほうがいい」
「肝に銘じておく。それはそうと」
「ん?」
「どうやら先客がいたようだ。接触するよ、エルメス」
「了解したよトレイズ。って、あれは……ちょっと待って」
「どうした」
「一応、忠告。気をつけたほうがいい」
「もちろん気をつけるけど……」
「なら倍、気をつけたほうがいいよ。いきなり撃たれないとも限らないからね」
「やけに警戒するな。なにかあるのか?」
「いずれわかると思うよ。さ、行こうか」
「すごい火の勢い。離れてても熱さが伝わってくる」
「燃えていたのは……【C-4】のホテルみたいだな」
「あんまり近づかないでよ。煤がついちゃう」
「心配しなくても、これ以上は近づけないよ」
「で、どうするのさ? 火の中にリリアがいないかどうか捜すのかい?」
「防火服でもあればそれも考えたけどね。さすがの俺も、そこまで馬鹿じゃない」
「それを聞いて安心した。今のトレイズなら、やりかねないと思ったから」
「……俺って、そんなに切羽詰ってるように見えるか?」
「見えるね。もうちょっと余裕を持ったほうがいい」
「肝に銘じておく。それはそうと」
「ん?」
「どうやら先客がいたようだ。接触するよ、エルメス」
「了解したよトレイズ。って、あれは……ちょっと待って」
「どうした」
「一応、忠告。気をつけたほうがいい」
「もちろん気をつけるけど……」
「なら倍、気をつけたほうがいいよ。いきなり撃たれないとも限らないからね」
「やけに警戒するな。なにかあるのか?」
「いずれわかると思うよ。さ、行こうか」
「……ホテルが燃えている」
「…………」
「結構、豪華なホテルだったみたいなのに」
「…………」
「ベッドはふかふかで、部屋は広くてキレイで」
「…………」
「ごはんも美味しかったんだろうな……残念だ」
「…………」
「すごく残念だ……残念すぎて、ちょっとイライラしてきた」
「…………」
「君はなにも喋ってくれないし、余計にムシャクシャしてきたぞ」
「…………」
「ボクも憂さ晴らしに家を焼こうか!」
「…………」
「……はぁ」
「…………」
「結構、豪華なホテルだったみたいなのに」
「…………」
「ベッドはふかふかで、部屋は広くてキレイで」
「…………」
「ごはんも美味しかったんだろうな……残念だ」
「…………」
「すごく残念だ……残念すぎて、ちょっとイライラしてきた」
「…………」
「君はなにも喋ってくれないし、余計にムシャクシャしてきたぞ」
「…………」
「ボクも憂さ晴らしに家を焼こうか!」
「…………」
「……はぁ」
「……あの人はなにをやっているのだろう?」
「さあ。単なる独り言じゃない? ただ、気が立っていることだけはわかる」
「近づくのは危険かな……それにしても、いつかの君の言葉は正しかったみたいだ」
「でしょ?」
「ああ。確かに――似てる。鏡でも見ているみたいだ」
「向こうもたぶん、驚くと思うよ」
「あれが“キノ”。君のご主人様、ね」
「さあ。単なる独り言じゃない? ただ、気が立っていることだけはわかる」
「近づくのは危険かな……それにしても、いつかの君の言葉は正しかったみたいだ」
「でしょ?」
「ああ。確かに――似てる。鏡でも見ているみたいだ」
「向こうもたぶん、驚くと思うよ」
「あれが“キノ”。君のご主人様、ね」
「火の鳥も見失ったし、もうどこでもいいから、休める場所が欲しいな……できれば、ちゃんとしたところがいい」
「…………」
「それと、話し相手も欲しいところだ。いい加減、君との関係にも辟易してきた」
「…………」
「まったく、エルメスのヤツはどこでなにをしているのやら。あんな口やかましいのでも、いてくれたほうがよかったのに」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
「いやいや、心にもないことを言うのは疲れるよ」
「前言撤回。相変わらず君はひどいヤツだ」
「そうでもないよ。それと久しぶり、エルメス」
「久しぶり、キノ」
「……そちらの方は?」
「いきなり撃ったりしないでよ? 彼は――」
「――俺はトレイズ。こちらはエルメス。よろしく、キノさん」
「…………」
「それと、話し相手も欲しいところだ。いい加減、君との関係にも辟易してきた」
「…………」
「まったく、エルメスのヤツはどこでなにをしているのやら。あんな口やかましいのでも、いてくれたほうがよかったのに」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
「いやいや、心にもないことを言うのは疲れるよ」
「前言撤回。相変わらず君はひどいヤツだ」
「そうでもないよ。それと久しぶり、エルメス」
「久しぶり、キノ」
「……そちらの方は?」
「いきなり撃ったりしないでよ? 彼は――」
「――俺はトレイズ。こちらはエルメス。よろしく、キノさん」
「……なるほど。事情はわかりました。トレイズさんはリリアという方を捜していると、つまりはそういうことですね」
「ええ。そのために、キノさんのエルメスをお借りしていました」
「あいつ、うるさかったでしょう?」
「おかげで退屈しませんでしたよ」
「それはよかった。ですがあいにく、ボクはリリアという方に出会ったことはありません」
「誰かから噂を聞いたということは?」
「それもありませんね。ところで、トレイズさん」
「なんでしょう?」
「エルメスは、ボクのことをなんと言っていましたか?」
「俺に似ていると。それとそうですね、十分に気をつけろ、とも言われています」
「なるほどね。それでですか。納得できました」
「でしょう?」
「でも、ですね」
「はあ」
「ボクは今、とてもおなかが空いています。それに、とても眠いです」
「まあ、もうすぐ夜ですしね」
「そこで提案なんですが、今日はもう休みませんか。どこか寝床を知っていれば、紹介していただけるとありがたい」
「いい案だとは思いますが、それはつまり、俺も一緒に――と、そういうことですか?」
「あなたには、エルメスをここまで連れてきてくれた恩がありますから」
「キノさんは、義理堅い性格なんですか?」
「いいえ、薄情なほうだと思いますよ」
「正直ですね」
「嘘は苦手なんです。ですから、どうするかはトレイズさんに委ねます」
「……提案に乗りましょう。ここで“必要”な選択は、それだけのようだ」
「よかった」
「ええ。そのために、キノさんのエルメスをお借りしていました」
「あいつ、うるさかったでしょう?」
「おかげで退屈しませんでしたよ」
「それはよかった。ですがあいにく、ボクはリリアという方に出会ったことはありません」
「誰かから噂を聞いたということは?」
「それもありませんね。ところで、トレイズさん」
「なんでしょう?」
「エルメスは、ボクのことをなんと言っていましたか?」
「俺に似ていると。それとそうですね、十分に気をつけろ、とも言われています」
「なるほどね。それでですか。納得できました」
「でしょう?」
「でも、ですね」
「はあ」
「ボクは今、とてもおなかが空いています。それに、とても眠いです」
「まあ、もうすぐ夜ですしね」
「そこで提案なんですが、今日はもう休みませんか。どこか寝床を知っていれば、紹介していただけるとありがたい」
「いい案だとは思いますが、それはつまり、俺も一緒に――と、そういうことですか?」
「あなたには、エルメスをここまで連れてきてくれた恩がありますから」
「キノさんは、義理堅い性格なんですか?」
「いいえ、薄情なほうだと思いますよ」
「正直ですね」
「嘘は苦手なんです。ですから、どうするかはトレイズさんに委ねます」
「……提案に乗りましょう。ここで“必要”な選択は、それだけのようだ」
「よかった」
「どうやら、上手くいったみたいだね。トレイズもやるなぁ」
「…………」
「キノは気まぐれ屋だから、見ているほうとしてもハラハラものだったんだけど」
「…………」
「君は疲れなかった? キノみたいなのと一緒でさ」
「…………」
「ああ、わかる! すっごくわかるよそれ! キノったら、運転がいつも粗野すぎるんだ」
「…………」
「このへんはモトラドにしかわからないところだよねぇ。苦労したんだなぁ、君も」
「…………」
「それにしてもさ」
「…………」
「君って無口なんだね」
「…………」
「キノは気まぐれ屋だから、見ているほうとしてもハラハラものだったんだけど」
「…………」
「君は疲れなかった? キノみたいなのと一緒でさ」
「…………」
「ああ、わかる! すっごくわかるよそれ! キノったら、運転がいつも粗野すぎるんだ」
「…………」
「このへんはモトラドにしかわからないところだよねぇ。苦労したんだなぁ、君も」
「…………」
「それにしてもさ」
「…………」
「君って無口なんだね」
【C-4/ホテル近辺/一日目・午後】
【キノ@キノの旅 -the Beautiful World-】
[状態]:健康
[装備]:トルベロ ネオステッド2000x(12/12)@現実、九字兼定@空の境界、スクーター@現実
[道具]:デイパックx1、支給品一式x6人分(食料だけ5人分)、空のデイパックx4
エンフィールドNo2x(0/6)@現実、12ゲージ弾×70、暗殺用グッズ一式@キノの旅
礼園のナイフ8本@空の境界、非常手段(ゴルディアン・ノット)@灼眼のシャナ、少女趣味@戯言シリーズ
【思考・状況】
基本:生き残る為に最後の一人になる。
1:今日はもう疲れた。どこか、安心して夜を越せる場所を探そう。
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
8巻の『悪いことができない国』の充電器のことは、知っていたのを忘れたのか、気のせいだったのかは不明です。
※「師匠」を赤の他人と勘違いしている他、シズの事を覚えていません。
※零崎人識から遭遇した人間についてある程度話を聞きました。程度は後続の書き手におまかせです。
[状態]:健康
[装備]:トルベロ ネオステッド2000x(12/12)@現実、九字兼定@空の境界、スクーター@現実
[道具]:デイパックx1、支給品一式x6人分(食料だけ5人分)、空のデイパックx4
エンフィールドNo2x(0/6)@現実、12ゲージ弾×70、暗殺用グッズ一式@キノの旅
礼園のナイフ8本@空の境界、非常手段(ゴルディアン・ノット)@灼眼のシャナ、少女趣味@戯言シリーズ
【思考・状況】
基本:生き残る為に最後の一人になる。
1:今日はもう疲れた。どこか、安心して夜を越せる場所を探そう。
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
8巻の『悪いことができない国』の充電器のことは、知っていたのを忘れたのか、気のせいだったのかは不明です。
※「師匠」を赤の他人と勘違いしている他、シズの事を覚えていません。
※零崎人識から遭遇した人間についてある程度話を聞きました。程度は後続の書き手におまかせです。
【トレイズ@リリアとトレイズ】
[状態]:お腹に打撲痕、腰に浅い切り傷
[装備]:コルトガバメント(8/7+1)@フルメタルパニック、コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、鷹のメダル@リリアとトレイズ、
[道具]:デイパック、支給品一式、エルメス@キノの旅、銃型水鉄砲
[思考・状況]
基本::リリアを守る。彼女の為に行動する。
1:キノと一緒にどこか寝床を探す。今日はもう休もうか?
2:今度は北東の辺りでリリアを捜してみる。
[備考]
マップ端の境界線より先は真っ黒ですが物が一部超えても、超えた部分は消滅しない。
人間も短時間ならマップ端を越えても影響は有りません(長時間では不明)。
以上二つの情報をトレイズは確認済。
[状態]:お腹に打撲痕、腰に浅い切り傷
[装備]:コルトガバメント(8/7+1)@フルメタルパニック、コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、鷹のメダル@リリアとトレイズ、
[道具]:デイパック、支給品一式、エルメス@キノの旅、銃型水鉄砲
[思考・状況]
基本::リリアを守る。彼女の為に行動する。
1:キノと一緒にどこか寝床を探す。今日はもう休もうか?
2:今度は北東の辺りでリリアを捜してみる。
[備考]
マップ端の境界線より先は真っ黒ですが物が一部超えても、超えた部分は消滅しない。
人間も短時間ならマップ端を越えても影響は有りません(長時間では不明)。
以上二つの情報をトレイズは確認済。
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