まえに、すすもう ◆0gyFSm2QyM
痛い。
さっき銃弾が掠めた頬も、銃で殴られた腹も、そして
見知らぬ赤毛の少女の目が入った左目も。
すべてが、痛い。
さっき銃弾が掠めた頬も、銃で殴られた腹も、そして
見知らぬ赤毛の少女の目が入った左目も。
すべてが、痛い。
「痛いよ……痛いよ……怖いよ……」
ミミは土の上で横になって泣いていた。
流れた涙は血と混ざり、正真正銘の血の涙となり流れ続けていた。
既に血もある程度は止まり、その量こそ少ないものの、それは頬にしっかりと赤い河を作り上げていた。
流れた涙は血と混ざり、正真正銘の血の涙となり流れ続けていた。
既に血もある程度は止まり、その量こそ少ないものの、それは頬にしっかりと赤い河を作り上げていた。
あの後ミミはしばらくそこから動けなかった。
麻酔もなしに抉られた痛みが激しかったのもあるが、先程の少女――グレーテルに植え付けられた恐怖心がそこから動くことを拒否していた。
また、彼女のような人に会ってしまうのではないか、またあのような目に遭うのではないかと。
そう思うと、一歩も動けなかった。
でも、動かなくても誰かが来たら……その矛盾に悩んでいた。
麻酔もなしに抉られた痛みが激しかったのもあるが、先程の少女――グレーテルに植え付けられた恐怖心がそこから動くことを拒否していた。
また、彼女のような人に会ってしまうのではないか、またあのような目に遭うのではないかと。
そう思うと、一歩も動けなかった。
でも、動かなくても誰かが来たら……その矛盾に悩んでいた。
(……動かなきゃ……目と、頬をなんとかしなきゃ……)
神楽の眼球が入れられた眼はミミの体に非常な嫌悪感をもたらしていた。
自分のものではない、他人の眼球を入れられたせいで身体が違和感を覚えている為だった。
その違和感は拭い去ることの出来ない感覚としてミミに襲い掛かってくる。
早く、その原因を取り除きたかった。
けれども、自分で眼を取り出すなんて事は出来なかった。
例え他人の眼だとしても今入っているのは自分の身体である。
それを自らの手で傷付けるのは、さすがに怖かった。
自分のものではない、他人の眼球を入れられたせいで身体が違和感を覚えている為だった。
その違和感は拭い去ることの出来ない感覚としてミミに襲い掛かってくる。
早く、その原因を取り除きたかった。
けれども、自分で眼を取り出すなんて事は出来なかった。
例え他人の眼だとしても今入っているのは自分の身体である。
それを自らの手で傷付けるのは、さすがに怖かった。
どれくらいの時間がたっただろうか、
ミミはそろそろ別の場所に行かないと、と思い上半身を起き上がらせた。
まず治療できそうな場所が何処にあるかを調べなくちゃと地図を探そうとした。
ミミはそろそろ別の場所に行かないと、と思い上半身を起き上がらせた。
まず治療できそうな場所が何処にあるかを調べなくちゃと地図を探そうとした。
少し身体を動かして、傍にある筈のランドセルから地図を取り出し、治療できそうなところを探す。
これだけなら単純な作業の筈だが、これだけの作業がいつもより難しくなっていた。
これだけなら単純な作業の筈だが、これだけの作業がいつもより難しくなっていた。
まず、いつもより視野が狭くなった為ランドセルを探すのに微妙に苦労した。
人間の視野は両目で約200度、片目で約160度ぐらいと言われている。
この僅か40度の差が意外と影響を及ぼすのだ。
例えば周辺3mの範囲を探すとしても約3平方メートル分の差が出る。
範囲が大きくなればなるほどその差は広くなる。
それのせいで僅か十数メートル先のランドセルを探すのにも少しだけ手間の差が出たのだ。
人間の視野は両目で約200度、片目で約160度ぐらいと言われている。
この僅か40度の差が意外と影響を及ぼすのだ。
例えば周辺3mの範囲を探すとしても約3平方メートル分の差が出る。
範囲が大きくなればなるほどその差は広くなる。
それのせいで僅か十数メートル先のランドセルを探すのにも少しだけ手間の差が出たのだ。
次にランドセルを開ける時。
人間は普段二つの目で物の距離を測っている。
片目になった分だけ、感覚の距離と実際の距離との差異が出てしまいランドセルを開けるのに苦労した。
ランドセルを取りに行くときも距離感が分からず、手前で何回も空振りしてしまっていた。
人間は普段二つの目で物の距離を測っている。
片目になった分だけ、感覚の距離と実際の距離との差異が出てしまいランドセルを開けるのに苦労した。
ランドセルを取りに行くときも距離感が分からず、手前で何回も空振りしてしまっていた。
最後に地図で探すとき。
人間は両目視力と片目視力では普通、両目視力の方が良いとされている。
そのせいか普段両目で見ていたときよりも片目の今は視力が下がったように感じられて地図の文字が見えにくかった。
人間は両目視力と片目視力では普通、両目視力の方が良いとされている。
そのせいか普段両目で見ていたときよりも片目の今は視力が下がったように感じられて地図の文字が見えにくかった。
目が片方無いだけでもこれだけの差が出るのだ。
いわば今のミミは視覚と視覚に頼る様々な感覚にハンデを背負った状態になってしまっている訳である。
いわば今のミミは視覚と視覚に頼る様々な感覚にハンデを背負った状態になってしまっている訳である。
(……出来れば…病院か薬屋さんもありそうな街の方がいいかな……)
地図をざっと見渡してるうちに、『病院』の文字が見えた。
目的地が見つかった……と思ったのもつかの間
目的地が見つかった……と思ったのもつかの間
(……すごく遠いよ)
病院が、今いる場所から正反対に近い場所である事に気が付いた。
あまりにも遠すぎる。
このままだと傷口が悪くなってしまうかもしれないと不安になりながら念のため他も探してみる。
あまりにも遠すぎる。
このままだと傷口が悪くなってしまうかもしれないと不安になりながら念のため他も探してみる。
(……あ、れ?ここから下の方にも何か病院の文字が……)
すぐ南の森の中の辺りに、『廃病院』の文字を見つけた。
すぐ南の森の中の辺りに、『廃病院』の文字を見つけた。
(……廃って、確かもうやってない所ってことだったかな……)
頭の中で以前習ったことをかろうじて思い出した。
頭の中で以前習ったことをかろうじて思い出した。
(……もうやって無くても薬とかは置いてあるのかも。じゃあ近いしまずはここに――……!!)
廃病院に行こうと考えた瞬間、恐るべき事を思い出してしまった。
――グレーテルが森の中へ入っていった事を。
――グレーテルが森の中へ入っていった事を。
( 「それじゃあ、お姉さん、またいつか逢いましょう。――そのときは遊んで頂戴ね」 )
あの子に最後に言われた言葉が頭の中で蘇ってくる。
まだ遊んでなんて冗談じゃない。二度と会いたくないのに。
このまま森に行ってしまえば、もう一度遭ってしまうかもしれない。
まだ遊んでなんて冗談じゃない。二度と会いたくないのに。
このまま森に行ってしまえば、もう一度遭ってしまうかもしれない。
(……嫌だ、もう会いたくない、怖いよ……)
もう一度出遭った時の事を考えると、恐ろしくてとても森の方には行きたくなかった
これで南にある森の中にはもう入れない、地図で見る限りここから北と西には何も無いみたいだった。
残った東の方を見てみると端っこの方――橋を二つ越えたところに街みたいな区画があった。
残った東の方を見てみると端っこの方――橋を二つ越えたところに街みたいな区画があった。
(……ここなら大丈夫かも、薬屋とかもありそうだし。ダメならここの街からから下に行けば病院があるし……)
行く途中に何があるかは分からない。
もしかしたらさっきの少女みたいに殺し合いに乗った子も途中にいるかもしれない。それは怖いけど。
それに、さっき受けた傷も痛むけど。
もしかしたらさっきの少女みたいに殺し合いに乗った子も途中にいるかもしれない。それは怖いけど。
それに、さっき受けた傷も痛むけど。
でも、ここで立ち止まってても何も変わらない。
それに。
それに。
(……もしかしたら丈さんや光子郎さんや太一さんに、会えるかもしれないし)
仲間に……逢えるかもしれない。
きっと仲間となら何事も乗り越えていけるはず。怖い事も、痛い事も。
ここにずっといても、自分の知らないところで仲間が殺されてしまうかもしれないし。
なら自分が先に見つけて助けるんだ。デジタルワールドで私がそうしてもらったように。
きっと仲間となら何事も乗り越えていけるはず。怖い事も、痛い事も。
ここにずっといても、自分の知らないところで仲間が殺されてしまうかもしれないし。
なら自分が先に見つけて助けるんだ。デジタルワールドで私がそうしてもらったように。
ここに来て最初に、そう決めたんだ。
(……わたしが、がんばって、みんなを、まもるんだ)
それが、先へ進む最初の一歩を踏み出す切欠になった。
そして、ミミはゆっくりと立ち上がり、街に向かって歩き始めた。
目や頬の痛みを我慢して、少しずつ、ゆっくりと。
慣れていない片目での感覚に何度か転びそうになりながら着実に、前へ。
目や頬の痛みを我慢して、少しずつ、ゆっくりと。
慣れていない片目での感覚に何度か転びそうになりながら着実に、前へ。
(ぜったいに、みんなで帰るんだから)
【C-1/道路上/一日目/真昼】
【太刀川ミミ@デジモンアドベンチャー】
[状態]:左目損失(神楽の眼球入り)、頬に軽度の弾痕、腹部軽打、情緒不安定、軽い精神崩壊(回復気味?)
[装備]:塩酸の瓶
[道具]:支給品一式、ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケットx5@MOTHER2
[参戦時期]:無印終了後
[思考] :痛いけど、怖いけど、前に進むんだ……
基本行動方針:みんなでおうちにかえる
第一行動方針:とりあえず目と頬の治療の為に街に向かいたい。もしダメなら次は病院に向かう。
第二行動方針:太一、光子朗、丈を見つけて助ける
第三行動方針:彼らを殺してしまいそうな人は自分が倒す
第四行動方針:二度と銀髪の少女(グレーテル)には会いたくない
【太刀川ミミ@デジモンアドベンチャー】
[状態]:左目損失(神楽の眼球入り)、頬に軽度の弾痕、腹部軽打、情緒不安定、軽い精神崩壊(回復気味?)
[装備]:塩酸の瓶
[道具]:支給品一式、ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケットx5@MOTHER2
[参戦時期]:無印終了後
[思考] :痛いけど、怖いけど、前に進むんだ……
基本行動方針:みんなでおうちにかえる
第一行動方針:とりあえず目と頬の治療の為に街に向かいたい。もしダメなら次は病院に向かう。
第二行動方針:太一、光子朗、丈を見つけて助ける
第三行動方針:彼らを殺してしまいそうな人は自分が倒す
第四行動方針:二度と銀髪の少女(グレーテル)には会いたくない
[備考] ・距離感や遠近感に多少のズレが生じています、また視力が微妙に低下しています
どのくらいの時間で感覚に慣れるかどうかは次の書き手さんにおまかせします
どのくらいの時間で感覚に慣れるかどうかは次の書き手さんにおまかせします
・邪剣ファフニール@TOSは神楽の死体に刺さったままB-1に放置されています
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