幻影(前編) ◆wlyXYPQOyA
『黙れ、モンスター! そっちから襲ってきておいて!』
『エヘヘ、逃げられちゃったね。逃げ足速いな~、まるで『はぐれメタル』みたい。
それに、せっかくだから『てんくうのつるぎ』も試しておきたかったのに。
お兄ちゃんみたいに、カッコ良く戦ってみたかったな~』
それに、せっかくだから『てんくうのつるぎ』も試しておきたかったのに。
お兄ちゃんみたいに、カッコ良く戦ってみたかったな~』
『ただ、人型の『モンスター』に襲われた、ってだけのことじゃない?
人間同士の『殺し合い』とは、違うもの』
人間同士の『殺し合い』とは、違うもの』
『大丈夫。話し合いなら倒した後、仲間になりたそうな目で見てきたらすれば良いんだよ』
『どうして? あいつらは敵なんだよ?』
『そっか、蒼星石は悪くないよー。夢の中でもちゃんとモンスターと戦ったんだから』
『でも凄いねっ。2匹も同時に倒しちゃうなんて!』
『何言ってるの、蒼星石? パーティの仲間が増えたらまず『そうび』を確認するのは、基本じゃない?』
『ふふっ、なかなかいいバランスのパーティになったね♪
できれば重装備の戦士タイプと、回復系魔法が使える僧侶タイプも欲しかったんだけど……』
できれば重装備の戦士タイプと、回復系魔法が使える僧侶タイプも欲しかったんだけど……』
『それにしても……白レンはもう信じられないねっ。あんなやつ、パーティに加えるんじゃなかった!
私たちのことを駒扱いして、『使えない』だとか何とか……その上、1人で逃げちゃって。
戻ってきたって、絶対許さないんだから!』
私たちのことを駒扱いして、『使えない』だとか何とか……その上、1人で逃げちゃって。
戻ってきたって、絶対許さないんだから!』
『え? ああ、イシドロ死んじゃったのかー。まああのダメージじゃ無理もないか』
『死んじゃったなら、仕方ないよね。それじゃぁ……とりあえず棺桶に入れとこうか。いつもみたいに』
『? どうして? そんなことしちゃだめだよ蒼星石。
それよりもイシドロを運ぶ方法を何か考えようよ』
それよりもイシドロを運ぶ方法を何か考えようよ』
『そんなに難しく考えることはないよ、蒼星石』
『蒼星石も生き返っただけのことなんだから。
きっとジェダがザオリクを使ったんだよ』
きっとジェダがザオリクを使ったんだよ』
『できるよ。悪い人以外、私たちの仲間はみんな助けてくれる。
一日じゃMPが足りなくなるかもしれないけど、何日もかければきっとみんな生き返れるよ』
一日じゃMPが足りなくなるかもしれないけど、何日もかければきっとみんな生き返れるよ』
『でも、まだ夜まで時間もあるし、休むのはもったいないなぁ』
『仲間になってくれるモンスターを探しに行くの。またあいつらが襲ってきた時のために、戦力を増やした方がいいと思うし。
あんまり遠くまで探せないけど、今ならまだ動いても大丈夫そうだから』
あんまり遠くまで探せないけど、今ならまだ動いても大丈夫そうだから』
『…蒼星石は、モンスターを仲間にできないでしょ?』
『でも、ただ弱いだけなら鍛えればいいよ。スライムだって成長すれば強くなるんだよ?』
『つまり、攻撃を外す可能性があって、一回転んだだけで気絶するほどHPも低いのね。……ちょっと致命的かなあ』
『それじゃあ、しょうがないかな。この子は『仲間にしない』ということで』
『そうだね……。村人を戦闘に巻き込むのは気が引ける、というより冒険者の道義に反するから連れていくことはできないし、
かといって村人をフィールドに放置しておくのもなあ。でも、移動するだけで気絶するのよね……』
かといって村人をフィールドに放置しておくのもなあ。でも、移動するだけで気絶するのよね……』
『うーん……あ、そうだ! イシドロの棺を使わせてもらうってのはどうかな?』
『イシドロにちょっと場所を空けてもらって、そこにこの子を入れるの!』
『こうなってくると、この子が寝てるのは好都合だね!』
『北東の村! 蒼星石が言ってた『のび太』って子も気になるし、他にも何人かいるのよね? 今度こそ新しい仲間が見つかるかも!
仲間が見つかったら宿屋で休もう。蒼星石も疲れたでしょ? 私ももうヘトヘト!
あ、ついでにこの『村人』も村に置いていくつもり。村人は村にいるべきだからね!』
仲間が見つかったら宿屋で休もう。蒼星石も疲れたでしょ? 私ももうヘトヘト!
あ、ついでにこの『村人』も村に置いていくつもり。村人は村にいるべきだからね!』
『きっと、ダメージを受けた後で誰かがベホマを使ってくれたのよ』
『うん、そうだね。あ、さっきの村人さんも起きたみたい』
『もう街には着いたし、帰してあげないと。待って、今開けて上げるから』
『どうしたの、村人さんだいじょうぶ?』
『それじゃ蒼星石、村人さんも街に帰してあげたし私達も行かないと』
『あれ、街を間違えちゃったのかな?』
『変な子だったね』
『そっか。疑ってごめんね。蒼星石、行こう。金糸雀の仇をとらなくちゃ』
『ええと……じゃああれは悪いモンスター同士の戦いなの?』
納得する為に、
心を見透かされない為に、
頼られたいが為に、
甘えない為に、
落ち込まない為に、
無理をしてでも前に進む為に、
仲間を失いたくないが為に、
仲間を傷つけたくないが為に、
仲間に見限られたくないが為に、
仲間に自分の醜態を見せたくないが為に、
大切な存在と再会する為に、
その為に、自分に言い聞かせた。
◇ ◇ ◇
――バルディッシュ・アサルトとグラーフアイゼンの邂逅から少々の時間を経て。
少女達とデバイス二機、そして犬上小太郎はとにかく「安全であろう場所」へと足を進めていた。
少女達とデバイス二機、そして犬上小太郎はとにかく「安全であろう場所」へと足を進めていた。
仕方が無い話ではあった。
街のいくつかの場所がボロボロになった挙句に、レミリア・スカーレットとQBの死闘の目撃である。
外に留まるよりもどこかに身を隠すのが安全である事は明白だろう、という発想をした事は当然の流れだろう。
自分とトリエラの二人は街での惨劇の様子の大部分を目撃し、体験した身。
一方のタバサと蒼星石も、街の惨状には流石に動じているようであるし、正しい選択だ。
まずは腰を据えたい。落ち着きたい。情報交換がしたい。何よりも、まず。
街のいくつかの場所がボロボロになった挙句に、レミリア・スカーレットとQBの死闘の目撃である。
外に留まるよりもどこかに身を隠すのが安全である事は明白だろう、という発想をした事は当然の流れだろう。
自分とトリエラの二人は街での惨劇の様子の大部分を目撃し、体験した身。
一方のタバサと蒼星石も、街の惨状には流石に動じているようであるし、正しい選択だ。
まずは腰を据えたい。落ち着きたい。情報交換がしたい。何よりも、まず。
『お久しぶり、だ』
『ええ。元気でしたか?』
『否。正直なところ疲れている』
『ええ。元気でしたか?』
『否。正直なところ疲れている』
気づけば、タバサの持っている金色のアクセサリー(らしきもの)と金槌が会話をしていた。
金槌はあのレミリアが持っていたものだが、今のところ金槌自体が自分達に牙を向く事は無い。いや、そもそも口が無いが。
どうやらあのバルディッシュとか言った喋る魔法具と仲がいい様子ではあるし、隙あらば自分達をペチャンコに、という事もないだろう。
もしかしたら自分から動き出して――ということも考えたが、それならばそもそも誰かに持ち運んでもらう必要性や義理が無い。
一先ずは安心できる相手、更に会話が出来るとなれば好都合。是非ともあちらの情報を拝ませてもらいたいものだ。
金槌はあのレミリアが持っていたものだが、今のところ金槌自体が自分達に牙を向く事は無い。いや、そもそも口が無いが。
どうやらあのバルディッシュとか言った喋る魔法具と仲がいい様子ではあるし、隙あらば自分達をペチャンコに、という事もないだろう。
もしかしたら自分から動き出して――ということも考えたが、それならばそもそも誰かに持ち運んでもらう必要性や義理が無い。
一先ずは安心できる相手、更に会話が出来るとなれば好都合。是非ともあちらの情報を拝ませてもらいたいものだ。
「小太郎君、小太郎君!」
「……ん、呼び捨てでええからええから」
「……ん、呼び捨てでええからええから」
実際、助けたトリエラの話は特に聞いておきたい。
自分の名前を知っていた理由から始め、この街で見たことを彼女の視点から話してもらうことも重要に思える。
この街は訪ねた瞬間から色々な事が一度に起こりすぎた。自身の主観のみではその全てを知ることは不可能だろう。
途中で保護したトリエラ。危険すぎる敵、レミリア。更に闖入者のタバサと蒼星石。
色々な視点から様々な話を聞く事で、この事件の全貌が少しでも見えてくるはずだ。パズルの様に組み合わされれば尚良い。
それにトリエラからはネギの事に関しても――ああ、なんか珍しく考え過ぎて頭が痛くなって来……
自分の名前を知っていた理由から始め、この街で見たことを彼女の視点から話してもらうことも重要に思える。
この街は訪ねた瞬間から色々な事が一度に起こりすぎた。自身の主観のみではその全てを知ることは不可能だろう。
途中で保護したトリエラ。危険すぎる敵、レミリア。更に闖入者のタバサと蒼星石。
色々な視点から様々な話を聞く事で、この事件の全貌が少しでも見えてくるはずだ。パズルの様に組み合わされれば尚良い。
それにトリエラからはネギの事に関しても――ああ、なんか珍しく考え過ぎて頭が痛くなって来……
「いや、そうじゃなくて。良い場所があったの。もう、人の話聞いてよ」
「ぅえ!? あ、ああそういう事か。すまんすまん、考え事しとってん」
「前を見ないと危ないわよ、犬上小太郎」
「だから小太郎で……おお!」
「ぅえ!? あ、ああそういう事か。すまんすまん、考え事しとってん」
「前を見ないと危ないわよ、犬上小太郎」
「だから小太郎で……おお!」
どうやら疲れた体の上に思考に思考を重ねていた結果、様々なものが疎かになっていたらしい。
小太郎はトリエラの忠告とほぼ同時に頭から派手に転んだ。頭を押さえながら足元を見ると、そこには大きめの石ころが。
ちゃんと教えてくれてもええやん……と心中でひとりごちるものの、既に彼女らは「良い建物」とやらに入らんとしている。
急いで立ち上がり、小太郎は歩む少女達を追いかけていった。
小太郎はトリエラの忠告とほぼ同時に頭から派手に転んだ。頭を押さえながら足元を見ると、そこには大きめの石ころが。
ちゃんと教えてくれてもええやん……と心中でひとりごちるものの、既に彼女らは「良い建物」とやらに入らんとしている。
急いで立ち上がり、小太郎は歩む少女達を追いかけていった。
『大丈夫です。このエリアに留まっても問題はありません』
「ありがとうバルディッシュ。皆、ここなら大丈夫だそうよ!」
「随分と凄いのね、お前。索敵が出来るだなんて」
『Thank you.』
「ありがとうバルディッシュ。皆、ここなら大丈夫だそうよ!」
「随分と凄いのね、お前。索敵が出来るだなんて」
『Thank you.』
一歩遅れて建物に入ると、彼女らの会話がすぐさま耳に入った。
どうやら、あの喋る道具のおかげで既に索敵を完了させていたようだ。
……なんでも出来んねやな。小太郎は感心したようにため息をつきながら呟く。
続いて「さっきからぼやき過ぎやな」と反省した。情報交換が出来るという良い状況で何をしているんだ自分は。
どうやら、あの喋る道具のおかげで既に索敵を完了させていたようだ。
……なんでも出来んねやな。小太郎は感心したようにため息をつきながら呟く。
続いて「さっきからぼやき過ぎやな」と反省した。情報交換が出来るという良い状況で何をしているんだ自分は。
気分を切り替える為に、そして現在の状況を自分なりに整理する為、家の構造を舐める様に眺める事にした。
少女達と共に入ったこの建物はこざっぱりとした一般家屋だった。察するに自分達がいる場所は居間だろう
ガスや水道、コンセントといった「普通のもの」も揃い、大き目の卓袱台の近くに座布団が並べられている。
家の構造は「木造建築」と呼ばれる類であろう。火がつくと危ういだろうが、それでもしっかりとした建築だろうと思える。
卓袱台や座布団といった家具の一部が纏う和の雰囲気は、家の雰囲気に合わせたか家主の趣味か。
特筆すべきは、ずっとここで誰かが住んでいたかのような印象を放っている事だろう。派手な老朽化もしていない様に思える。
先程視界に入ったガスや水道といったライフラインは一体どうなっているのだろうか、と小太郎がふと疑問を浮かべると、
ガスや水道、コンセントといった「普通のもの」も揃い、大き目の卓袱台の近くに座布団が並べられている。
家の構造は「木造建築」と呼ばれる類であろう。火がつくと危ういだろうが、それでもしっかりとした建築だろうと思える。
卓袱台や座布団といった家具の一部が纏う和の雰囲気は、家の雰囲気に合わせたか家主の趣味か。
特筆すべきは、ずっとここで誰かが住んでいたかのような印象を放っている事だろう。派手な老朽化もしていない様に思える。
先程視界に入ったガスや水道といったライフラインは一体どうなっているのだろうか、と小太郎がふと疑問を浮かべると、
「気が利くわね、この家。普通に水や火が出るみたい」
いつの間にか炊事場に入っていたらしいトリエラが、居間に戻りながら答えを出してくれていた。
以上のことを踏まえれば、ここは随分と気の利いた家である事がわかる。
仮に辺り一帯が平和であったならば篭城も可能だと思えるくらいだ。
殺伐とした殺し合いの舞台の中に、こんなサービス染みた場所があるのが不思議ではあるが。
以上のことを踏まえれば、ここは随分と気の利いた家である事がわかる。
仮に辺り一帯が平和であったならば篭城も可能だと思えるくらいだ。
殺伐とした殺し合いの舞台の中に、こんなサービス染みた場所があるのが不思議ではあるが。
「さて、そろそろ腰据えて話したいところなんやけど……ええか?」
一通り家に目を通して満足すると、小太郎は話を切り出した。
タバサは蒼星石に教わった様に座布団に正座をし、トリエラもそれに続く。
最後に小太郎が胡坐をかいて座すと……小太郎とタバサ、トリエラと蒼星石が向かいあうような陣になった。
円陣、というには少々人数が少なすぎるか。
タバサは蒼星石に教わった様に座布団に正座をし、トリエラもそれに続く。
最後に小太郎が胡坐をかいて座すと……小太郎とタバサ、トリエラと蒼星石が向かいあうような陣になった。
円陣、というには少々人数が少なすぎるか。
「その、なんや……棺桶とかの事も聞きたいしな」
「それなら僕も金糸雀の腕について聞きたいところだけれど」
「それなら僕も金糸雀の腕について聞きたいところだけれど」
小太郎が言葉を漏らすと、蒼星石が少しツンとした表情でトリエラを見る。
タバサとトリエラは何も言わない。特に後者は蒼星石の言葉をその身に受けるだけで留めている。
一方の問題児、タバサの方は棺桶とこちらを交互に見る仕草をしている。
更には何か考え事をしているかのようにぶつぶつと呟いており、傍から見ると奇妙だ。
だが蒼星石はいつもの事だと言わんばかりに、気にせずトリエラへと視線を送っていた。
――この状況、正直宜しくない。
タバサとトリエラは何も言わない。特に後者は蒼星石の言葉をその身に受けるだけで留めている。
一方の問題児、タバサの方は棺桶とこちらを交互に見る仕草をしている。
更には何か考え事をしているかのようにぶつぶつと呟いており、傍から見ると奇妙だ。
だが蒼星石はいつもの事だと言わんばかりに、気にせずトリエラへと視線を送っていた。
――この状況、正直宜しくない。
「ああ、えっと、すまんすまん焦ってもうたな。まぁ全部話をしてからにしよう」
「……ああ、そうだね。噛み付いてしまってごめん。悪かったよ」
「えっと、じゃあまずは……何から行く?」
「各々の自己紹介に、今までの行動と情報交換……から入るのが得策のような気がするわね」
「やっぱそやろな。その案貰たわ、トリエラ」
「……ああ、そうだね。噛み付いてしまってごめん。悪かったよ」
「えっと、じゃあまずは……何から行く?」
「各々の自己紹介に、今までの行動と情報交換……から入るのが得策のような気がするわね」
「やっぱそやろな。その案貰たわ、トリエラ」
この会話の間も、タバサは相変わらずだった。
◇ ◇ ◇
情報交換は順調に進んでいた。
初めて邂逅したときには誤解はあったものの、今の状況にはほとんど意味を成さない。
今回の出会いは極めて良い物であったと言えるだろう。
初めて邂逅したときには誤解はあったものの、今の状況にはほとんど意味を成さない。
今回の出会いは極めて良い物であったと言えるだろう。
「シャナが……人形を? なんでや」
「さぁ……とにかく彼から話を聞いたのは、君がのび太君と出会う前だ。
”トリエラさんに助けてもらった後”そうなったと聞いたけれど、詳細は解らない」
「私達は確かにシャナを助けたわ。じゃあやっぱり……あの道具が、原因?」
「まぁ助かっとんのやったらええけど……あいつは悪い奴やない事は、皆わかってくれ」
「人形を、か……」
「さぁ……とにかく彼から話を聞いたのは、君がのび太君と出会う前だ。
”トリエラさんに助けてもらった後”そうなったと聞いたけれど、詳細は解らない」
「私達は確かにシャナを助けたわ。じゃあやっぱり……あの道具が、原因?」
「まぁ助かっとんのやったらええけど……あいつは悪い奴やない事は、皆わかってくれ」
「人形を、か……」
「残念だけど僕は金糸雀には会ってはいない。だから僕の知る彼女は、今まで話した事が全てだ
ここに連れて来られていた事はともかく……この街でヴィクトリアって子に殺されたなんて……!」
「蒼星石……大丈夫、大丈夫だから……」
「うん、ごめん……ありがとう、タバサ」
「やっぱりククリは……空回りな事ばかりだわ、私……」
ここに連れて来られていた事はともかく……この街でヴィクトリアって子に殺されたなんて……!」
「蒼星石……大丈夫、大丈夫だから……」
「うん、ごめん……ありがとう、タバサ」
「やっぱりククリは……空回りな事ばかりだわ、私……」
「で、そののび太君というのは……」
「のび太は確かに最初は色々あったらしいわ。シャナとも色々あったらしいしな。
でも少なくとも、俺と会うたときにはちゃんとしとった……ちゃんと、最期まで頑張っとった」
「そう……」
「のび太は確かに最初は色々あったらしいわ。シャナとも色々あったらしいしな。
でも少なくとも、俺と会うたときにはちゃんとしとった……ちゃんと、最期まで頑張っとった」
「そう……」
「今まで私は三人もの人を殺してきた。信念の元に、私が正しいと思っての行動だった」
「…………」
「でも、それが今覆されようとしている……あなた達の情報によって、ね。
だから、だからこそ私はこれから、真実を捕まえたいと思ってる。わかって、くれる?」
「……信じるよ」
「僕も。それに、大丈夫だよ。まだやり直せるさ」
「…………」
「でも、それが今覆されようとしている……あなた達の情報によって、ね。
だから、だからこそ私はこれから、真実を捕まえたいと思ってる。わかって、くれる?」
「……信じるよ」
「僕も。それに、大丈夫だよ。まだやり直せるさ」
「あの子が……死んだ?」
『ミミという少女と、目撃した死体の特徴が合致しています――おそらくは』
「そうか。ここは言うなれば殺意の坩堝……大丈夫、タバサの所為じゃないさ。彼女は運が悪かったんだよ」
「え、あ、えっと……そう、だね。うん、運が悪かったのね……うん、そういう事、よね」
『ミミという少女と、目撃した死体の特徴が合致しています――おそらくは』
「そうか。ここは言うなれば殺意の坩堝……大丈夫、タバサの所為じゃないさ。彼女は運が悪かったんだよ」
「え、あ、えっと……そう、だね。うん、運が悪かったのね……うん、そういう事、よね」
これらを始めとする様々な情報交換は続けられる。話せば話すほど、有難い出会いであったと確信出来た。
いくつかの誤解は確かに解け、徐々に徐々にではあるがトリエラも落ち着きを取り戻している。
一方のタバサと蒼星石も、自分達の情報が役に立ったことに安堵している様子だ。
事実この情報交換は複雑ではあるものの、元を辿れば全員が今まで見聞きしたことに過ぎない。
例え、内容がいくら衝撃的であれど――辛い話であったにしろ、それは変わりは無い。
後でゆっくりと話を整理すれば良い。そうすれば解決の糸口は見つかる。全員に救いの手が伸ばされるのだ。
いくつかの誤解は確かに解け、徐々に徐々にではあるがトリエラも落ち着きを取り戻している。
一方のタバサと蒼星石も、自分達の情報が役に立ったことに安堵している様子だ。
事実この情報交換は複雑ではあるものの、元を辿れば全員が今まで見聞きしたことに過ぎない。
例え、内容がいくら衝撃的であれど――辛い話であったにしろ、それは変わりは無い。
後でゆっくりと話を整理すれば良い。そうすれば解決の糸口は見つかる。全員に救いの手が伸ばされるのだ。
――だが、他の様々な会話の中で納得できないことが一つあった。
情報交換も終盤に差し掛かった辺り。
喋る金槌、グラーフアイゼンの証言が始まった時のことだ。
まず一つ目の内容は『雛苺という人形が殺しを働いている』という事。
続いて『タバサの兄、レックスが生存中である』と証言したときだった。
喋る金槌、グラーフアイゼンの証言が始まった時のことだ。
まず一つ目の内容は『雛苺という人形が殺しを働いている』という事。
続いて『タバサの兄、レックスが生存中である』と証言したときだった。
「そう、良かった……でも、蒼星石は……」
「いや、大丈夫だよ。倒して仲間に出来れば、何も問題ないさ。そうだろう?」
「え? ……あ、う、うん! そうだよ蒼星石、希望は捨てじゃ駄目。絶対大丈夫!
それに、万が一のことがあっても……レックスがいるなら生き返らせられる。大丈夫!」
「いや、大丈夫だよ。倒して仲間に出来れば、何も問題ないさ。そうだろう?」
「え? ……あ、う、うん! そうだよ蒼星石、希望は捨てじゃ駄目。絶対大丈夫!
それに、万が一のことがあっても……レックスがいるなら生き返らせられる。大丈夫!」
この会話の中。明らかな違和感を覚えた。隣を見ればトリエラも顔をしかめている。
そう、タバサと蒼星石の反応が、明らかにおかしかった。
そう、タバサと蒼星石の反応が、明らかにおかしかった。
いや、そもそも今更な話だった。
この違和感はタバサと蒼星石から話を聞いていたころから生まれていた。
先程出てきた「生き返らせる」という言葉も、その時点で何度か出ていた。
死んだ仲間を棺桶に入れ、気絶した少女すら入れるという話も聞いている。
明らかに流してはいけない話題だったが、当人達は当然の様に話していたし
何よりもまずは情報の整理を最優先したかったために一度保留としていた。
だが、再びこうして違和感を覚えさせる言葉を聞かされてはもう尋ねざるを得なかった。
この違和感はタバサと蒼星石から話を聞いていたころから生まれていた。
先程出てきた「生き返らせる」という言葉も、その時点で何度か出ていた。
死んだ仲間を棺桶に入れ、気絶した少女すら入れるという話も聞いている。
明らかに流してはいけない話題だったが、当人達は当然の様に話していたし
何よりもまずは情報の整理を最優先したかったために一度保留としていた。
だが、再びこうして違和感を覚えさせる言葉を聞かされてはもう尋ねざるを得なかった。
「ちょっと待て自分ら……なんや、倒して仲間にってどういうことや」
「ああ、それは……えっとね」
「タバサが言ったんだよ。彼女の世界ではモンスターは倒して仲間にするらしい」
「ああ、それは……えっとね」
「タバサが言ったんだよ。彼女の世界ではモンスターは倒して仲間にするらしい」
小太郎が違和感の元に率直に尋ねると、タバサは何か考えるように一寸言葉を止める。
だがそのタバサが濁した様に聞こえた言葉を遮って、代わりに蒼星石が質問に答えた。
話が長くなるかも、という危惧の上での発言だろうか。
しかしタバサはまた何かを呟いている……今の蒼星石の行動が不服だったかの様に見えた。
だがそのタバサが濁した様に聞こえた言葉を遮って、代わりに蒼星石が質問に答えた。
話が長くなるかも、という危惧の上での発言だろうか。
しかしタバサはまた何かを呟いている……今の蒼星石の行動が不服だったかの様に見えた。
「……倒して、仲間にする?」
「そ、そうなの!」
「ほんまか?」
「ほんま!」
「そ、そうなの!」
「ほんまか?」
「ほんま!」
小太郎が怪訝そうに復唱すると、今度はタバサが焦ったように前へ前へと出るように発言した。
怪訝そうにされたのがそんなに嫌だったのか。もしくは、口を挟まれる事を防ぎたかったのか。
怪訝そうにされたのがそんなに嫌だったのか。もしくは、口を挟まれる事を防ぎたかったのか。
「じゃあ、あれは? 何回か言っとったが……この棺桶はどういう事や」
「え? えっと、それは」
「ああ、それは『たまたま死んでる』仲間がいてね。運ぶのに大変だったから棺桶を、とね。
ついでに気絶していた子も運ぶのが大変だからって。全部タバサが考えた方法なんだよ」
「え? えっと、それは」
「ああ、それは『たまたま死んでる』仲間がいてね。運ぶのに大変だったから棺桶を、とね。
ついでに気絶していた子も運ぶのが大変だからって。全部タバサが考えた方法なんだよ」
再びタバサの言葉を遮り、蒼星石が答えた。
彼女の答えは情報交換の最中にもちらちらと顔を見せていたものだ。
その時は「情報交換が最優先だ」と質問を控えていたが、こうなってしまえば無視は出来ない。
落ち着いて静観していたトリエラすら「たま、たま……?」と怪訝そうな声を上げていたからでもある。
彼女の答えは情報交換の最中にもちらちらと顔を見せていたものだ。
その時は「情報交換が最優先だ」と質問を控えていたが、こうなってしまえば無視は出来ない。
落ち着いて静観していたトリエラすら「たま、たま……?」と怪訝そうな声を上げていたからでもある。
「いいよ、蒼星石。私が説明する」
見かねたのか、タバサが蒼星石にそう断りを入れた。
そして彼女の瞳は小太郎とトリエラを同時に捉え始める。
そこに先程言葉を濁していたときの迷いは無い。
そして彼女の瞳は小太郎とトリエラを同時に捉え始める。
そこに先程言葉を濁していたときの迷いは無い。
「途中でね、ミミっていう気絶していた子がいたの。でも私達がその子を運ぶのも無理だった。
だから『死んでしまった』イシドロと一緒に入ってもらっていたの。やっぱりその方が、早かっ」
「待て」
だから『死んでしまった』イシドロと一緒に入ってもらっていたの。やっぱりその方が、早かっ」
「待て」
そのあまりの迷いの無い回答を、小太郎は思わず遮った。
「イシドロって奴にも、ミミって奴にも失礼や。あんまりやないか?」
「仕方なかったの。私達は大人の人たちみたいに重いものは運べない。
どう足掻いても、結局は無力な子供だから……うん、そう。仕方なかったの」
「だからってお前、もっとええ方法も……」
「ないよ、そんなの」
「仕方なかったの。私達は大人の人たちみたいに重いものは運べない。
どう足掻いても、結局は無力な子供だから……うん、そう。仕方なかったの」
「だからってお前、もっとええ方法も……」
「ないよ、そんなの」
小太郎の素直な問い。そこには多少の怒りも含まれていた。
だがタバサはそれも関係ないと言うかのように、理由を重ねていった。
重ねる問い、重なる疑問。それに対しタバサは淡々と答えを述べていく。
そして最後には、全てを封殺するようにきっぱりと言い切った。
「方法が無いから仕方なかった」と。言い聞かせる様に、はっきりと、小太郎へ告げるタバサ。
――――カチンと来た。
だがタバサはそれも関係ないと言うかのように、理由を重ねていった。
重ねる問い、重なる疑問。それに対しタバサは淡々と答えを述べていく。
そして最後には、全てを封殺するようにきっぱりと言い切った。
「方法が無いから仕方なかった」と。言い聞かせる様に、はっきりと、小太郎へ告げるタバサ。
――――カチンと来た。
「仕方なかったら……仕方なかったらなんでもやってええんか! ええ!?」
「だって、こんな状況だもん! 少しでも危険を減らせるんだったら……」
「だって、こんな状況だもん! 少しでも危険を減らせるんだったら……」
小太郎は変わらぬタバサの言い訳に更に激しい怒りを覚え、勢いよく立ち上がった。
「さっきから聞いてて……おかしいねんお前! 全部が全部わけわからん!」
ボルテージの上昇を素直に表現したこの言葉に、タバサも立ち上がった。
触発されたかのように行動を起こしたタバサの瞳にも怒りが浮かんでいるのがわかる。
触発されたかのように行動を起こしたタバサの瞳にも怒りが浮かんでいるのがわかる。
「私の世界では……私の世界ではそういう仕組みなの!」
「仕組みィ!? 他の人間を全部モンスター扱い、死体は運び倒す、一般人を勝手に『村人』とか呼んで危険地帯に放す!
これが正しい判断!? これがお前の世界の仕組み!? それで皆が納得すると思ってんのか!? 俺はせぇへんぞ!」
「蒼星石は納得してくれた……! 皆が安全になるには、これしかないってわかってくれた!」
「棺桶で連れまわされた方はどうなる!? さっきも言うたけどミミって奴にもイシドロって奴にも失礼や!
周りに変な主張撒き散らして……最後はなんや、『死者は生き返る』だ!? ふざけんなあほらしい!」
「アホらし……!? そんな言い方っ、そんな言い方無いよ!」
「仕組みィ!? 他の人間を全部モンスター扱い、死体は運び倒す、一般人を勝手に『村人』とか呼んで危険地帯に放す!
これが正しい判断!? これがお前の世界の仕組み!? それで皆が納得すると思ってんのか!? 俺はせぇへんぞ!」
「蒼星石は納得してくれた……! 皆が安全になるには、これしかないってわかってくれた!」
「棺桶で連れまわされた方はどうなる!? さっきも言うたけどミミって奴にもイシドロって奴にも失礼や!
周りに変な主張撒き散らして……最後はなんや、『死者は生き返る』だ!? ふざけんなあほらしい!」
「アホらし……!? そんな言い方っ、そんな言い方無いよ!」
言葉は更に怒りの炎を燃え上がらせる。怒号と化した言葉を叫ぶ当人同士には、消火など出来はしない。
「私の世界を知らないのに! 何も知らずに否定しないで!
私がどんな思いでこんな事してたか……知らない癖に!」
「お前の考えなんか知るか! 言ってもわからん様やから、はっきり言うたる!
死んだ奴が生き返る事も、お前がやってきたことも全部ふざけとる! 悪――」
私がどんな思いでこんな事してたか……知らない癖に!」
「お前の考えなんか知るか! 言ってもわからん様やから、はっきり言うたる!
死んだ奴が生き返る事も、お前がやってきたことも全部ふざけとる! 悪――」
「小太郎!!」
小太郎がタバサへの怒りを全て吐き出そうとした刹那、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
急いで視線を声の主に向けると――隣には、トリエラがいる。
彼女の視線は冷ややかだった。責める様に、だが諌める様にこちらを見ている。
そこで初めて落ち着きを取り戻し、自分が今にもタバサの心を傷つけんとしていた事に気づいた。
タバサの隣で座っている蒼星石は、突然の事におろおろとしていた様だ。
置いてけぼりにして、無駄に怖がらせてしまった。
急いで視線を声の主に向けると――隣には、トリエラがいる。
彼女の視線は冷ややかだった。責める様に、だが諌める様にこちらを見ている。
そこで初めて落ち着きを取り戻し、自分が今にもタバサの心を傷つけんとしていた事に気づいた。
タバサの隣で座っている蒼星石は、突然の事におろおろとしていた様だ。
置いてけぼりにして、無駄に怖がらせてしまった。
「すまん、トリエラ……タバサと蒼星石もごめん。俺……言い過ぎたわ、悪かった」
大きなため息をついて、再び座布団に座る。
そうするとトリエラの視線が別へと移った。今度はタバサだ。
先程まで口論の相手となっていたタバサは、未だ激情を押さえられない様子だった。
しかし彼女は、大きく息を吸っては吐き、吸っては吐き……それを何度か繰り返して、座布団に腰掛けた。
どうやらあちらも落ち着きを取り戻したらしい。微かに「ごめん、なさい」と呟く声が聞こえた。
「ええよ」と、返す。それを最後に、場は一転静寂に包まれた。
そうするとトリエラの視線が別へと移った。今度はタバサだ。
先程まで口論の相手となっていたタバサは、未だ激情を押さえられない様子だった。
しかし彼女は、大きく息を吸っては吐き、吸っては吐き……それを何度か繰り返して、座布団に腰掛けた。
どうやらあちらも落ち着きを取り戻したらしい。微かに「ごめん、なさい」と呟く声が聞こえた。
「ええよ」と、返す。それを最後に、場は一転静寂に包まれた。
「もうわかってるでしょうけど、小太郎とタバサは言い過ぎ。
私が言えることじゃないけど、もっと冷静にならないと何も得られないわ」
私が言えることじゃないけど、もっと冷静にならないと何も得られないわ」
静寂の中、トリエラは冷静に口を開いた。
ごもっともだ、と言う様に小太郎とタバサは項垂れる。
ごもっともだ、と言う様に小太郎とタバサは項垂れる。
「でも小太郎の言うことはもっともでもある。言い方は悪かったけどね。
だからタバサ、詳しく話を聞かせて。そうじゃないと納得できない事は沢山あるんだから」
だからタバサ、詳しく話を聞かせて。そうじゃないと納得できない事は沢山あるんだから」
トリエラの主張によって、場の殺伐さは少しずつ消えていった。
蒼星石もどうやら落ち着いたようだし、タバサからも先程の剣幕は消え失せた。
気分は反省会。いや、気分だけではない。今のこの状態はまさしくそれそのものだ。
だがどんな形であれ爆弾の投下は抑えられた。トリエラには感謝しなければ。
蒼星石もどうやら落ち着いたようだし、タバサからも先程の剣幕は消え失せた。
気分は反省会。いや、気分だけではない。今のこの状態はまさしくそれそのものだ。
だがどんな形であれ爆弾の投下は抑えられた。トリエラには感謝しなければ。
再び視線をタバサに戻す。
彼女は再び自分達に説明をしようとしていた。そう、説明を……タバサ、が――――
彼女は再び自分達に説明をしようとしていた。そう、説明を……タバサ、が――――
ふと、デジャ・ヴュを感じた。今の状況はどこかで見ている……。
蒼星石に自分から説明することを主張したタバサ。
ゆっくりと何にも動じないという風に説明するタバサ。
冷静さを失い、激しい喧嘩へと発展したときのタバサ。
相手の言葉を封殺する様に、言い聞かせる様に言葉を連ねるタバサ。
ふいに、思い出した。フラッシュバックが始まる。
蒼星石に自分から説明することを主張したタバサ。
ゆっくりと何にも動じないという風に説明するタバサ。
冷静さを失い、激しい喧嘩へと発展したときのタバサ。
相手の言葉を封殺する様に、言い聞かせる様に言葉を連ねるタバサ。
ふいに、思い出した。フラッシュバックが始まる。
――――小太郎の脳裏に、誰かの姿が過ぎった。
「あのね、聞いて欲しいの」
タバサがゆっくりと話し始める。
また、誰かの姿が過ぎった。
また、誰かの姿が過ぎった。
「私の世界では、死んだ人の命は余程の理由がない限りは蘇らせる事が出来るの。
奇跡を起こす高等呪文があって、私のお兄ちゃん――レックスもその魔法を使うことが出来る」
奇跡を起こす高等呪文があって、私のお兄ちゃん――レックスもその魔法を使うことが出来る」
再び小太郎の前を”誰か”が過ぎる。今度はクッキリとしていた。
タバサの言葉と彼女自身の姿を見て浮かべるのは――少女らしき者。
タバサの言葉と彼女自身の姿を見て浮かべるのは――少女らしき者。
「でも私にはそれが出来ない。レックスに何かあったら、蘇生も無理。
だから私はどんな事をしてでも……レックスに会わなきゃいけない」
だから私はどんな事をしてでも……レックスに会わなきゃいけない」
ぴょんと跳ねた二つのお下げが見えた。こげ茶色の髪だ。
「命に関する事以外でも、私の世界には私の世界の仕組みがある」
少女が、まっすぐにこちらを見つめた。
可愛らしい丸い瞳、整った顔、小さな口。
可愛らしい丸い瞳、整った顔、小さな口。
「簡単じゃないのかもしれないけど、それでも、信じて欲しいの……」
ああ、お前か。
「皆の……皆の力に、なりたいから!」
タバサを通して自分を見つめていたのは、お前か――――高町、なのは。
――――説明が終わると、彼女に重なるようにこちらを見ていたなのはが不意に俯く。
見ればタバサが同じように俯いていた。自分の言葉を信じてもらえるかが不安なのか。
いや、それだけではない。それだけが理由ではないのだろう、と確信する。
見ればタバサが同じように俯いていた。自分の言葉を信じてもらえるかが不安なのか。
いや、それだけではない。それだけが理由ではないのだろう、と確信する。
今の小太郎にはわかる。
タバサが言い聞かせているのは、自分の仲間に対してではなく……。
タバサが言い聞かせているのは、自分の仲間に対してではなく……。
「そう、わかった。順番を勝手に決めて申し訳ないけど、まず私から正直な感想を言わせて貰う。
あなたの話は大体わかった。あなたにはあなたの世界があるということ、多少なりとも実感したわ」
あなたの話は大体わかった。あなたにはあなたの世界があるということ、多少なりとも実感したわ」
トリエラが相変わらずの口調でタバサに感想を並べた。
それを聞いて安心したのか、タバサは少し微笑みを取り戻した。
「じゃ、じゃあ……」と、信頼を得られることへの期待感を言葉にする。
それを聞いて安心したのか、タバサは少し微笑みを取り戻した。
「じゃ、じゃあ……」と、信頼を得られることへの期待感を言葉にする。
「けれど、あなたの行動には賛成できないわ。死者が復活するなんてのも、正直信じられない。
ここに来る前の私なら、それ以外の部分も全否定するところでしょうけど……あなたに悪意が無いという事だけは、理解したわ」
ここに来る前の私なら、それ以外の部分も全否定するところでしょうけど……あなたに悪意が無いという事だけは、理解したわ」
しかしそれもすぐにトリエラの言葉によってかき消された。
再び悲しそうな顔で俯きそうになるが……まだ彼女は答えを全て聞いたわけではない。
タバサが小太郎へと視線を移した。更に、トリエラも「小太郎はどうなの?」と話を振ってきた。
正直に答えざるを得ない。
再び悲しそうな顔で俯きそうになるが……まだ彼女は答えを全て聞いたわけではない。
タバサが小太郎へと視線を移した。更に、トリエラも「小太郎はどうなの?」と話を振ってきた。
正直に答えざるを得ない。
「まぁ、その……俺もトリエラと同意見や。実際に死者が復活するなんて信じられん。
しかもそれ以前にお前の取ってる方法には納得がいかん。正直、止めて貰いたい位や。
でも悪意が無いとわかったのはトリエラと同じ……それやから余計に許せん部分もあるけどな」
しかもそれ以前にお前の取ってる方法には納得がいかん。正直、止めて貰いたい位や。
でも悪意が無いとわかったのはトリエラと同じ……それやから余計に許せん部分もあるけどな」
「そう……」という言葉を残して、タバサが黙り込んだ。
はっきりと言った所為であるというのは明白だが、後悔は無い。
これが自分の意見だ。トリエラと共に感じ、共に放った感想だ。
自分の行動は納得の上だし、タバサがこうなるのもわかる。
だが、一人は違った。
はっきりと言った所為であるというのは明白だが、後悔は無い。
これが自分の意見だ。トリエラと共に感じ、共に放った感想だ。
自分の行動は納得の上だし、タバサがこうなるのもわかる。
だが、一人は違った。
「実際に復活した存在なら、ここにいるよ」
蒼星石が、タバサの隣で呟いた。
そしてしっかりと小太郎の目を見つめながら、ハッキリと言った。
そしてしっかりと小太郎の目を見つめながら、ハッキリと言った。
「僕は元の世界では一度死んだ身だ。水銀燈という僕の姉との戦いに負けて、ね。
それでも僕は今ここにいて、こうして話している。証拠が欲しいというなら僕を見て欲しい。
僕が生き証人だ。タバサの言葉の証拠だ。だから……あまり彼女を責めないでくれないか」
それでも僕は今ここにいて、こうして話している。証拠が欲しいというなら僕を見て欲しい。
僕が生き証人だ。タバサの言葉の証拠だ。だから……あまり彼女を責めないでくれないか」
”自身が証拠だ”という蒼星石を見て、小太郎とトリエラは少し――いや、かなり動じた。
突然何を言うのか。先程否定した言葉を躍起になって否定しようとしているように見える。
だが、その瞳は嘘を言っていないようにも思えた。嘘ではない、と叫ばんばかりだ。
けれど。違う。
突然何を言うのか。先程否定した言葉を躍起になって否定しようとしているように見える。
だが、その瞳は嘘を言っていないようにも思えた。嘘ではない、と叫ばんばかりだ。
けれど。違う。
「タバサが君達に無闇に言い聞かせようとしたように見えたのなら……”仲間である”僕も謝ろう。
だけど、彼女が嘘をついているように見えるかい? 僕にだって、こんな嘘をつくメリットは無い」
だけど、彼女が嘘をついているように見えるかい? 僕にだって、こんな嘘をつくメリットは無い」
違う。そうやない。お前は本質が見えてへん。小太郎は心中で呟く。
「タバサの事を悪く言われるのは、正直心苦しい。でも彼女に悪意が無いのがわかればそれで良い。
彼女が君達にとって、僕たちにとっても突拍子の無いことを言うのはわかっているからね。でも……」
「おい待て、まぁ待て。俺は……」
彼女が君達にとって、僕たちにとっても突拍子の無いことを言うのはわかっているからね。でも……」
「おい待て、まぁ待て。俺は……」
蒼星石が何が言いたいのか、それはおぼろげながら想像出来た。
”タバサがおかしな事を言い聞かせる癖がある事を知っているからこそ、僕は君を許せない”といった所だろう。
だが、違う。それはなんだか違う。小太郎は蒼星石の言葉を遮ろうと口を開いた。
”タバサがおかしな事を言い聞かせる癖がある事を知っているからこそ、僕は君を許せない”といった所だろう。
だが、違う。それはなんだか違う。小太郎は蒼星石の言葉を遮ろうと口を開いた。
「いいよ、蒼星石。私が悪い人じゃないってわかってくれただけ儲けものだもん」
だが、それすらも遮られた。声の主はタバサだ。
蒼星石は納得が言っていないらしく、「でも……」と呟く。
が、タバサが再び「いいから」と返すと、遂に口を閉じた。
蒼星石は納得が言っていないらしく、「でも……」と呟く。
が、タバサが再び「いいから」と返すと、遂に口を閉じた。
こうして、タバサに関する話は終わった。
蒼星石は未だ納得していない様子だが、トリエラはマイペースに現在を受け入れている。
小太郎自身はタバサに特殊な想いを浮かべており――全てを納得しきれたとは言い難い。
だが、タバサに悪意が無いことはよくわかった。彼女の言うとおり、儲けものではあっただろう。
蒼星石は未だ納得していない様子だが、トリエラはマイペースに現在を受け入れている。
小太郎自身はタバサに特殊な想いを浮かべており――全てを納得しきれたとは言い難い。
だが、タバサに悪意が無いことはよくわかった。彼女の言うとおり、儲けものではあっただろう。
情報交換は、こうして様々な想いが交錯しつつ終了した。
だがこれで対話は終わりではない。まだ話さなければならないことはある。
だがこれで対話は終わりではない。まだ話さなければならないことはある。