待ってて ◆/D0HAk633.
「ん……」
朝の日差しが眩しい中、一人の少女が立ち上がった。
少女の背には赤いランドセルがしっかりと背負われている。
12,3歳に見えるその外見には非常に似合っているのだが、彼女を知る者にはちょっと想像出来ない姿だろう。
「さっきのあいつは徒だったのかな?それにしてはいちいち手の込んだ事をする奴だけど――」
少女の名はシャナ。『天壌の劫火』アラストールのフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』たる少女。
常ならば胸元のコキュートスが何かしらの返事を返してくれるものだが、今そこには何も無い。
返事がないと知りつつも呟き、ため息をつく。
改めて周りを見渡せば目の前には鬱蒼とした森、背後には崖。
「ふう……」
朝の日差しが眩しい中、一人の少女が立ち上がった。
少女の背には赤いランドセルがしっかりと背負われている。
12,3歳に見えるその外見には非常に似合っているのだが、彼女を知る者にはちょっと想像出来ない姿だろう。
「さっきのあいつは徒だったのかな?それにしてはいちいち手の込んだ事をする奴だけど――」
少女の名はシャナ。『天壌の劫火』アラストールのフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』たる少女。
常ならば胸元のコキュートスが何かしらの返事を返してくれるものだが、今そこには何も無い。
返事がないと知りつつも呟き、ため息をつく。
改めて周りを見渡せば目の前には鬱蒼とした森、背後には崖。
「ふう……」
炎も封絶もこの場所に送られてから既に試している。
多少の勢いはあるものの紅蓮の炎は一定以上の大きさには燃え上がらず、封絶に至っては発動の前兆である自在式さえ見られなかった。
確かに自在法は便利だが、シャナは使えないと分かったものに固執するような性格ではなくすぐに次の行動に移った。
ランドセルを開け中身と先程の説明内容が合致しているかを確かめる。
このランドセル、目にした事は何度かあっても実際には初めて使用したので開けるのに苦戦した。
それが痛かったのだろうか、ゲームが始まってから既に20分が経過していた。
名簿や地図など説明にあった物は無視して手を潜らせて行く。
指先に触れた金属特有のひんやりとした感触をぶっきらぼうに引き抜いた。
「何、これ?」
それは確かに剣だった。
西洋風で恐らくは片手持ちであろう小振りな剣。
『吸血鬼』より小さいにもかかわらず、その重量は比にならないほど大きかった。
かつて天道宮にいた頃似た様な形式の物を見た事はあるが使った事は無い。
「使いづらそう…」
あの男の説明を鵜呑みにするのならこれがシャナの支給品という事になる。
更に奥を探ってもみたがそれ以上の物は無かった。
(やっぱりコキュートスは無い、か。それならまずコキュートスを探さなきゃ)
微妙なところではあったが、かくしてシャナは出発を決心し立ち上がった。
多少の勢いはあるものの紅蓮の炎は一定以上の大きさには燃え上がらず、封絶に至っては発動の前兆である自在式さえ見られなかった。
確かに自在法は便利だが、シャナは使えないと分かったものに固執するような性格ではなくすぐに次の行動に移った。
ランドセルを開け中身と先程の説明内容が合致しているかを確かめる。
このランドセル、目にした事は何度かあっても実際には初めて使用したので開けるのに苦戦した。
それが痛かったのだろうか、ゲームが始まってから既に20分が経過していた。
名簿や地図など説明にあった物は無視して手を潜らせて行く。
指先に触れた金属特有のひんやりとした感触をぶっきらぼうに引き抜いた。
「何、これ?」
それは確かに剣だった。
西洋風で恐らくは片手持ちであろう小振りな剣。
『吸血鬼』より小さいにもかかわらず、その重量は比にならないほど大きかった。
かつて天道宮にいた頃似た様な形式の物を見た事はあるが使った事は無い。
「使いづらそう…」
あの男の説明を鵜呑みにするのならこれがシャナの支給品という事になる。
更に奥を探ってもみたがそれ以上の物は無かった。
(やっぱりコキュートスは無い、か。それならまずコキュートスを探さなきゃ)
微妙なところではあったが、かくしてシャナは出発を決心し立ち上がった。
「さて、兄様はどこにいるのかしら?」
木々の合間から日差しの差し込む森の中をグレーテルは歩いていた。
目的は最愛の兄を探し出す事ただそれだけ。
ふとその視界の端に座り込む人影が映ったが、立ち並ぶ樹木やその葉でその正体を掴みきれない。
「あれは兄様…?」
足元の雑草を煩わしく思いながらも枝葉を掻き分けて人影の方へ進んでいく。
やがてその姿が鮮明になってきた。
それがヘンゼルでないことを確認するとグレーテルはランドセルの中に手を突っ込む。
「兄様じゃないの…それなら殺さなくちゃ」
ゆっくりと取り出したのは1m近い大きさの銃、ウィンチェスターM1897。
音を立てないようにランドセルを下ろし、座り込む名前も知らない少女の頭に照準を定める。
間にあるのはちょっとした茂みだけ。
ショットガンという特性を考えれば茂みなど遮蔽物にはなり得なかった。
その引き金を引く、その瞬間――
木々の合間から日差しの差し込む森の中をグレーテルは歩いていた。
目的は最愛の兄を探し出す事ただそれだけ。
ふとその視界の端に座り込む人影が映ったが、立ち並ぶ樹木やその葉でその正体を掴みきれない。
「あれは兄様…?」
足元の雑草を煩わしく思いながらも枝葉を掻き分けて人影の方へ進んでいく。
やがてその姿が鮮明になってきた。
それがヘンゼルでないことを確認するとグレーテルはランドセルの中に手を突っ込む。
「兄様じゃないの…それなら殺さなくちゃ」
ゆっくりと取り出したのは1m近い大きさの銃、ウィンチェスターM1897。
音を立てないようにランドセルを下ろし、座り込む名前も知らない少女の頭に照準を定める。
間にあるのはちょっとした茂みだけ。
ショットガンという特性を考えれば茂みなど遮蔽物にはなり得なかった。
その引き金を引く、その瞬間――
「そんな所で何やってるんや、お前?」
突然、背後から声を掛けられた。
グレーテルは思わず引き金を引きそうになりながらも、冷静に考える。
ただし優先するのは決して『逃げる方法』ではない。
『兄様を探しつつ、効率良く殺していく』ための最良の方法。
見れば茂みの向こうで少女はいつの間にか立ち上がり剣を握っている。
気付かれているのかいないのか、しかしこちらを見ていることには変わりない。
今すぐ撃ち殺してもいいが、後ろの人間がもし銃やナイフを持っていたら、それから逃げ切るのは難しいだろう。
よってこの場で取るべき行動は唯一つ。
「ねぇ貴方、私の兄様を知らない?」
「兄様、ってそんな奴見たことも聞いた事も無いわ」
まだこのゲームが始まって間もなく、応えは分かりきっていた。
この場だけを切り抜けられれば十分なのだ。
「そう、それは残念だわ」
「お、おう」
振り向き、にっこりと微笑むとその少年は照れたように視線を外しながら頭を掻く。
「向こうに一人、名前も顔も知らないけれど人がいるわよ」
そしてその少年に背を向ける。
「お前はどうするんや、一緒に来ないんか?」
「ええ、私は兄様を探すので。では」
それだけ言ってグレーテルは走り出す。
始めは徐々に――そして全力で。
少年――犬上小太郎はその場に一人残された。
突然、背後から声を掛けられた。
グレーテルは思わず引き金を引きそうになりながらも、冷静に考える。
ただし優先するのは決して『逃げる方法』ではない。
『兄様を探しつつ、効率良く殺していく』ための最良の方法。
見れば茂みの向こうで少女はいつの間にか立ち上がり剣を握っている。
気付かれているのかいないのか、しかしこちらを見ていることには変わりない。
今すぐ撃ち殺してもいいが、後ろの人間がもし銃やナイフを持っていたら、それから逃げ切るのは難しいだろう。
よってこの場で取るべき行動は唯一つ。
「ねぇ貴方、私の兄様を知らない?」
「兄様、ってそんな奴見たことも聞いた事も無いわ」
まだこのゲームが始まって間もなく、応えは分かりきっていた。
この場だけを切り抜けられれば十分なのだ。
「そう、それは残念だわ」
「お、おう」
振り向き、にっこりと微笑むとその少年は照れたように視線を外しながら頭を掻く。
「向こうに一人、名前も顔も知らないけれど人がいるわよ」
そしてその少年に背を向ける。
「お前はどうするんや、一緒に来ないんか?」
「ええ、私は兄様を探すので。では」
それだけ言ってグレーテルは走り出す。
始めは徐々に――そして全力で。
少年――犬上小太郎はその場に一人残された。
茂みの向こうでがさっと音がしたかと思うとそこにあった気配が急に遠ざかっていく。
「そこの、待ちなさい!」
気配を追って走り出した瞬間、シャナは木陰にもう一つ気配がある事に気付く。
「あっ……」
ごちん、と鈍い音を立ててシャナはその場にしりもちを着いた。
「痛っ…お前のせいで逃げられたじゃない、どうしてくれるの?」
現れたのはどこにでもいそうな黒い学生服の少年。
ただし耳が頭頂部付近にあり、しかもそれが体毛で覆われている事を除けば、であるが。
「何なのあんた、もしかして徒?」
「お前なぁ、人にぶつかっといて謝りも無しか!?」
「私はシャナ、お前にお前なんて呼ばれるのは嫌。ぶつかったのはお前が急に出てくるから」
「な、急に走るお前が悪いんやろ。それに何やシャナて?変な名前やな」
「…悠二が付けてくれた名前をお前なんかが馬鹿にするのは許さない」
「なんか、やとぉ…お前みたいなちび女は引っ込んどれやぁ!」
「なっ…うるさいうるさいうるさーい!」
朝の静かな森にシャナの怒鳴り声が響き、大量の鳥が慌てて飛び出していった。
「そこの、待ちなさい!」
気配を追って走り出した瞬間、シャナは木陰にもう一つ気配がある事に気付く。
「あっ……」
ごちん、と鈍い音を立ててシャナはその場にしりもちを着いた。
「痛っ…お前のせいで逃げられたじゃない、どうしてくれるの?」
現れたのはどこにでもいそうな黒い学生服の少年。
ただし耳が頭頂部付近にあり、しかもそれが体毛で覆われている事を除けば、であるが。
「何なのあんた、もしかして徒?」
「お前なぁ、人にぶつかっといて謝りも無しか!?」
「私はシャナ、お前にお前なんて呼ばれるのは嫌。ぶつかったのはお前が急に出てくるから」
「な、急に走るお前が悪いんやろ。それに何やシャナて?変な名前やな」
「…悠二が付けてくれた名前をお前なんかが馬鹿にするのは許さない」
「なんか、やとぉ…お前みたいなちび女は引っ込んどれやぁ!」
「なっ…うるさいうるさいうるさーい!」
朝の静かな森にシャナの怒鳴り声が響き、大量の鳥が慌てて飛び出していった。
この辺りまで来れば大丈夫だろう。
ちょうど森を抜けたところでグレーテルはランドセルから地図を取り出し現在位置を確認する。
確かにこれは『逃げ』だが、あの状況においてこれこそが最善の手。
次に会った時は容赦無く鉛弾をブチ込んで、引き裂いて、殺す。
「あぁ兄様、兄様と会ったら初めに何をしましょうか?」
僅かに頬を赤らめながらグレーテルは再び歩き出した。
ちょうど森を抜けたところでグレーテルはランドセルから地図を取り出し現在位置を確認する。
確かにこれは『逃げ』だが、あの状況においてこれこそが最善の手。
次に会った時は容赦無く鉛弾をブチ込んで、引き裂いて、殺す。
「あぁ兄様、兄様と会ったら初めに何をしましょうか?」
僅かに頬を赤らめながらグレーテルは再び歩き出した。
【A-2/森の境、後ろは崖/一日目/朝】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:元気、ちょっとイライラ、小太郎と口喧嘩中
[装備]:マスターソード@ぜルダの冒険(重量感あり、使えない事は無い)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:コキュートスを見つけたい(アラストールと合流)
2:小太郎を負かしたい(負けたくない)
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:元気、ちょっとイライラ、小太郎と口喧嘩中
[装備]:マスターソード@ぜルダの冒険(重量感あり、使えない事は無い)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:コキュートスを見つけたい(アラストールと合流)
2:小太郎を負かしたい(負けたくない)
【A-2/森の境、後ろは崖/一日目/朝】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:元気、ちょっとイライラ、シャナと口喧嘩中
[装備]:支給品は不明、犬神は弱体化?
[道具]支給品一式、他にあるかも?
[思考]
1:シャナを負かしたい(負けたくない)
2:ちょっとだけグレーテルが気になる
3:ネギやエヴァと合流したい
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:元気、ちょっとイライラ、シャナと口喧嘩中
[装備]:支給品は不明、犬神は弱体化?
[道具]支給品一式、他にあるかも?
[思考]
1:シャナを負かしたい(負けたくない)
2:ちょっとだけグレーテルが気になる
3:ネギやエヴァと合流したい
【A-1(B-1との境目)/一日目/朝】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:少し疲労
[装備]:ウィンチェスターM1897@Gunslinger Girl、(全部探したわけじゃないので他にあるかも?)
[道具]支給品一式、他にあるかも?
[思考]
1:兄様(ヘンゼル)を探す
2:とにかく殺しまくる(小太郎に執着か?)
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:少し疲労
[装備]:ウィンチェスターM1897@Gunslinger Girl、(全部探したわけじゃないので他にあるかも?)
[道具]支給品一式、他にあるかも?
[思考]
1:兄様(ヘンゼル)を探す
2:とにかく殺しまくる(小太郎に執着か?)
状況次第で[思考]の1と2は入れ替わる可能性大
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