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匿名ユーザー

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866 アルシェリ、ベタ甘 sage 2008/06/06(金) 16:33:17 ID:FoXDLi2g
ここの職人さん達のレベルの高さにはいつも脱帽。
楽しませて貰ってありがとうございます。
大したもんじゃないですが、投下していきますね。
微妙に10話ネタ絡んでます。エロなしですいません。

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「キスくらい、何てことないんでしょ?」
 揶うように言ったシェリルの前で、アルトは憮然として目を反らせた。
「勿論……何てことないさ!」
「あら、余裕ね。予行演習してあげようかと思ったのに、余計な心配だったみたい」
「あ、当たり前だっ!」
 長い髪が宙に弧を描く勢いで振り返ったアルトの顔は、しかし真っ赤だった。
 それを見てシェリルは、クスクスと笑う。
「ほんっと、アルトってシャイよね。日系の人って、皆そうなの?」
「皆ってわけじゃない……それと、俺はシャイじゃない!」
「人前でキスするくらいで照れるなんて、充分シャイよ。人によっては普通にしてる事よ?」
「違う! これは……」
「これは?」
「これは……おまえが、シェリルがあんまり綺麗だから……」
 再び目を逸らしたアルトが、耳まで赤く染めて言った。
 長い睫毛に縁取られた瞳を、ぱちぱちと瞬かせたシェリルの頬に、
アルトの赤面が伝染したように朱が昇る。
「もう……アルトったら反則。奇襲が得意なんだから」
「おまえに言われたくない」
「あら、心外ね。私の信条は、いつでも正々堂々よ」
 クスリと笑ったシェリルは、細い指先で、アルトの顎をそっと撫でた。
 銀河中の人々を虜にする言の葉と音律を紡ぎ出す、白魚のような指先は、
今は、真っ白い布地に覆われて見えない。
「よく言うよ。あの時もそうだったって言うつもりか?」
「あの時?」
 きょとんと瞬きをしたシェリルは、ああ、と得心した笑みを洩らした。
 綺麗にピンク色のルージュを引かれた唇が、曲線形を描く。
「勿論よ。これ以上ないくらい正面突破だったでしょう?」
「………………」
「私はあなたの中の扉を、きちんとノックしたつもり。不法侵入なんて
したくなかったもの。気付かないあなたが悪いんだわ、アルト」
「……悪かったな」
「フフッ。いいわ、許してあげる。今はもう、あなたは私の全てを知ってるんだもの」
 言ったシェリルの、透き通ったブルーの瞳は、微かに濡れていた。
 衝動的に、アルトの腕が、その胸にシェリルを攫う。
 そして魅惑的に自分を誘うピンクのルージュに口吻けた。
「んっ……」
 一瞬、驚いたように目を瞠ったシェリルは、だがすぐに力を抜き、アルトに身を委ねる。
「……やっぱり、奇襲が得意ね。アルト」
 アルトの腕の中で、歌姫は綺麗に笑った。
「予行演習は合格か?」
「ええ。後は神様の前でも、今と同じように上手にしてくれたら……ね?」
 シェリルのストロベリーブロンドに纏わりつく純白のベールが、
窓から吹き込む風に揺られて、大きく舞い上がった。


END.
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