らうんど☆すたーず ツンとデレとニューイヤー

(投稿者:フェイ)



194X年、12月31日。
アルトメリア連邦都市、ビットバーグにあるクロスフォーミュラ本社ビル。
2Fに作られた多目的イベントホールに集められ、忙しそうに動くメンバーの中。
いつも通りの表情のまま――いや、いつもよりより不機嫌そうな顔で椅子に座りこみ、頬杖をついて座る人影が一人。

「―――」
アシェナ、いい加減に手伝え」
「うるさい」

幾度目かになるやりとりにカルナックはため息をつくと、せわしなく動く他のメンバーへと視線を戻す。

「全く………ああ、ヒカル。次の飾りはこれだ。あっちの天井に頼む」
「あや、了解~」
ジャック、ヒカルのスカートを覗こうとするんじゃない追い出すぞ」

天井へと浮かび上がったヒカルの下へさりげなく移動しようとしたジャックへ蹴りを入れる。

「…む、花が足りんな…レイン、頼めるか。超特急だ」
「は、はい! えっと…第二倉庫から4箱くらいでいいですか?」
「そこまで気合いれなくていい。…まぁ、多いに越したことはないな。持てるだけ頼む」
「では、いってきます!」
「今度はドアに気をつけろ。ぶつかってへこませるんじゃないぞ」

聞こえてるのか聞こえていないのか、ものすごい勢いで走っていくレイン。
それを見送り、人身事故が起きなければ良いが、などと若干他人事気味に考えつつ、意識を切り替える。

ゼノヴィア、そっちはどうだ?」
「んー…順調は順調なんよ。ただ…」
「ただ?」

ゼノヴィアが困った様子で後ろを向く。
視線を追ってゼノヴィアの背後へと視線を飛ばしたカルナックは、ゼノヴィアと同じような顔になる。

「………ミザリー?」
「………………………………………」
「おーい。…聞こえてるか?」
「………………………………………」
「だめどすなぁ…」

背後に『黙々』という言葉を背負いながら一心不乱に飾りを作り続けるミザリー。
内職娘と化したミザリーにはカルナックの言葉もゼノヴィアの言葉も届かない。
鬼気迫る勢いで飾りを生産し続けるミザリーの速度は凄まじく、あっという間にダンボール一つ分作り終えると、手際よく梱包。
新しいダンボールを組み立てると新たにできた飾りを放り込んでいく。

「ミザリっちゃんはこうなると止まらんねぇ…」
「だな…そもそも片付けちゃ駄目だろうに。チルチル、ミチル、トバジキは2000までスクランブル待機だっけか」
「後で合流やなぁ。…チルチルは嫌がってたようやけど」
「ミチルとトバジキがつれてくるだろう。心配はしてないさ」
「…ちょっと!」

肩をすくめていると、後ろから声が来た。

「おお、お疲れさん、ジェシカ
「お疲れさんじゃないわ! 指示出してばっかじゃなくてあんたらも動きなさいよ!」
「指示を出さないとあまりにも混沌としていてなぁ」
「ったく、ベリシュナイデッドだと思って手伝いにいったのに…!」
「?」

イライラとしながら矢継ぎ早にまくし立てるジェシカ。
手にはいくつものクラッカーが抱えられており、投げるようにゼノヴィアとカルナックに手渡してくる。

「いくつか持ってなさい。…ったく…」
「ほらほらジェシカぁ! まだ仕事はたぁっぷり残ってんだよー!」
「わかってるわよっ! ベリッシュの奴、こきつかってくれてっ…!」
「ジェーシーカァー! あたしのが早いぞぉー!?」
「うるっ、さい!」

吠えるジェシカに対して、快活に笑うベリッシュは率先してクラッカーやら紙コップやらを配り回る。
それに対抗心を燃やしたのか、後に続くジェシカもまた、手早く回っていく。

「おー…ベリッシュはジェシカの使い方が上手いな」
「ほんにねぇ。ジェシカがOAの時はベリッシュにDA任せるのもええかもしれんね」
「そうだな…ま、とりあえず私たちも動くか」
「やね」







「こんなもん、か」
「そうですね」
「…私が手伝ったんだもの。これぐらい当然よ」

綺麗に飾り付けられたイベントホールを見て、満足そうに頷くラウンドスターズ。
上がりで合流したチルチルら三人を椅子に座らせ、他のメンバーも席につく。

「…あと30分。主賓、間に合うの?」
「年末まで仕事だなんて、長官さんってやっぱり大変なんですね…」

心配そうにいうミザリー、レイン。
カルナックもまた、時計を気にしながらやや落ち着きなくつま先で床を叩く。

「まぁ落ち着きなはれ? 気だけ急いても仕様ありませんえ?」
「あやぁ、したって、やっぱ心配だぁよ?」
「でもなぁ?……ほら」

と、ゼノヴィアが指さした先には、アシェナ。
―――が、座っていたはずの場所。
そこには持たされていたはずのクラッカーが置いてあり、席はもぬけの殻。


「ちょ、アシェナどこいった?!」
「……あ、のっ、糞灰かぶり…!!」
「――――――…良い根性だ…!」
「お、落ち着け! ベリッシスターにはなるな! …本当にどこに行った!?」
「……いいなら私も帰んぞ」
「あらあらだめよ、チルチル?」
「そうそう。女は待つ生き物だってよく言うじゃない?」
「て・め・ぇ・は…男だろうがあああ!!」
「あがががががらめえええええええええええ!!」
「あやや、だ、だいじょぶか?」
「そっちはそれこそ放置して平気でしょ。ジェシカとベリッシスターこそ止めないとまずいって」
「ふ、ふたりとも落ち着いてくださいー!?」
「落ち着けるかぁー! 手伝わないだけならともかく逃げるなんてあり?! ぜっったい許さない!」
「――手伝うぞジェシカ。武器をもってこい」
「武器は使用禁止!!」
「武器じゃなくても暴力はだめですー!!」
「なら俺の凶器、マグナm―――」
「――黙れ。潰れろ」
「じゃ、ジャックさんの顔色が凄まじいことに!?」
「あらあら…でも、死にはしないから大丈夫じゃないかしら?」


「んー…あのなぁ? 逃げたとかそういうことじゃなくてやね…」

ぎゃあぎゃあと姦しく騒ぎまわるメンバーをゼノヴィアがなだめようとした時。
イベントホールの入り口が開いた。

「おー! すごいな流石ラウンドスターズ!!」
「長官!」

急いできたのか、乱れたスーツと髪型をキザっぽく整えながらイベントホールへ入ってくる男。
ラウンドスターズ設立の提唱者でもあり、直属の上司となる、レオナルド・ボールドウィンその人である。
笑って歯を見せればきらりと光る――仕組みが、仕込まれてる――らしい。

「ようやく来たか。…ただ、もう少し待ってくれ。あと一人、逃げ出したのをとっ捕まえてこないと」
「ん? 全員揃ってるとアシェナから聞いてきたんだが」
「…アシェナから?」
「ああ。どーにも抜けれなくて困ってたんだがね。とっとと来いと脅されるぐらいの勢いで連れ出されたよ」
「………」
「ほぉら時間が無いんだろう? 仕上げだ仕上げ、あと10分もないぞー!!」
「あ、は、はい!!」

パンパン、と手を叩いて仕切り始めるレオナルド。
仕切られるまま、ラウンドスターズの面々は準備を初めていく。







年の境残り10分――その喧騒の中、ジェシカが何かに気づいたように扉の影を覗き込む。

「何格好良く一人満足して消えようとしてるの? やっぱ馬鹿じゃないのあんた?」
「――――うるさいわね。私の勝手でしょう」

フン、と鼻を鳴らして顔を背けるのは、扉の影に隠れていたアシェナ。
どこか拗ねたように、気まずそうに視線をそらして。

「あんだけ協力嫌がってたのに、最後でなんて、どういうつもり?」
「いったはず。私の勝手」
「………」
「……………。強いて、いうなら――――。……いえ、なんでも」
「なによ、いいなさいよ」
「貴女にいってもしょうがないもの」
「このっ……ふん、まぁいいわ。ほら」
「………?」

差し出された手を訝しげにみるアシェナに、今度はジェシカがそっぽを向き。

「行くわよ。…あんたみたいのでも、いないと…ね」
「…………フン」







「お、戻ってきたなアシェナ?」
「もう、心配しましたよぉー」
「ベリッシスターになって散々いってたのが嘘みたいですね…」
「まぁ、もう慣れたけど。ベリッシュの性格も、アシェナのワンマンプレーもね」
「なんだかんだ、ながいだなぁ」
「……腐れ縁だな」
「あらあらチルチルったら…チームなのだから当然でしょう?」
「そうそう♪」
「…………フン」
「っと、そろそろ時間のようだぜ?」
「いつ復活したんどす? ジャック…」
「男には寝てられねぇ時があるのさ」
「もっかい寝かすか」
「そんな時間はないってば…じゃ、いくよー?」












A HAPPY NEW YEAR!!




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最終更新:2010年01月01日 00:00
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