PART3




あらすじ

プラクティス(救世群)は多くの都市を降伏させ、各都市に総督が派遣される。パナストロ(汎天体動的共同体)の首都ヒエロンで始まった、人類の行く末を賭けたひそかな攻防。アイネイアが乗り込んだドロテア・ワットとプラクティス艦隊の死闘。その決着の果てに、プラクティスは全太陽系で原種冥王斑を散布した。

ストーリー

第二部 西暦二五〇二年 (承前)

第四章 嚙み砕く者

まとめ
  1. 開戦から2ヶ月。数十の都市が降伏し、太陽系はプラクティスの支配下に入りつつあった。プラクティスにとってはすべてが順調に思われたが、クラスト(硬殻体)の生殖能力が奪われたと知ったオガシが激昂し、月面キュンティア基地にいたシグムントをはじめとするアンチ・オックスカルミアンを虐殺する。
  2. エウレカで知らせを受けたロサリオカルミアンに確認し、ヤヒロの血縁7人以外の生殖能力が失われたと知る。カルミアンは、クラストを人間に戻すためには全員分のセルマップが必要で、そのバックアップデータを得るためには“セレスを丸呑みして、ジニ号を引っ張”らなければならないと言う。
  3. 2502年9月。カルミアンを使った電子戦闘の末、ブラス・ウォッチは地球近くに潜伏しているシステムフリート(太陽系艦隊)の主力艦隊1000隻を接収する。
  4. ミヒルはディエゴという男の記憶と先入観を封じて誘惑し、生きたまま八つ裂きにする。その後ラゴスに、自身が3歳のとき冥王斑にもう一度感染していたこと、頑強な人間に冥王斑をうつしていたのは、優れた冥王斑患者との間に子供をつくるためだということを語る。
  5. システムフリートを掌握したプラクティスは、巫議と呼ばれる冥王斑患者群連絡会議の議員たちを、代官(フォークト)として太陽系各地に送り出した。巫議ノルベール・シュタンドーレは、パナストロの首都ヒエロンに降り立った。

情報・謎・他
  テラン、クマガイ、エルンスト、ビリバンティ
  モウサ・ヤヒロ、アダ・ヤヒロ、オガシ・ヤヒロ、イサリ・ヤヒロ、ミヒル・ヤヒロ、ティコ・イェン、ホナフェイ・ケラチの7名。
  ティコ・イェンは、アダの姉であるホナフェイ・ケラチとモウサの不義密通で生まれた子。
  生殖能力を奪われたのは19万2154人。
  怯えると互いの脇や腹に鼻面を突っ込んで完全な防御態勢をとる。ミスン星では嵐や雷をそのようにやり過ごしていた(それで対応できない強敵がいなかった)と考えられる。
  • ミヒルに八つ裂きにされた男(p.65,70)
  ディエゴ・「八起き」・ヘルゲン。40代後半の男性。小惑星ダビダ攻略作戦、地獄のハンベルダ双胴都市耐久、18次にわたるデイモス割譲交渉で勝利を収めた、ニューボンベイ共同体防衛軍きっての闘将。部下の命と引き換えに、プラクティスに投降した。

第五章 天冥の標

まとめ
  1. 2502年9月14日、パナストロ派遣総督シュタンドーレとその妻エフェーミアら数体のクラストが、ヒエロンの繁華街エディントン・ピットを訪れる。シュタンドーレはこの地区の接収を宣言し、反抗した警官を殺害する。
  2. 同日深夜、シュタンドーレらを迎えたパナストロの商務大臣ブレイド・ヴァンディが、ヴァンディ農場に帰宅する。そこで待っていたメララ・テルッセンと一頭の羊が、ノルルスカインの誕生から、いま太陽系で繰り広げられているミスチフとの新たな戦いまでを語る。さらに、プラクティスのなかにいる、ミスチフよりノルルスカインより強い何者かを味方にするため、シュタンドーレを仲間に引き入れるよう要求した。メララが自室に下がったあと、ブレイドは妻アリカが持つ「お荷物」について聞き、裏付けを得る。
  3. ブレイドがシュタンドーレ総督の応対を務めることになる。すぐにエディントン・ピットを訪れたブレイドは、プラクティスらと一緒にそこに住むことを申し出る。シュタンドーレはブレイドのヘルメットをとって恫喝するが、やがて冥王斑には感染しないことを告げ、何事もなかったかのように視察を始める。
  4. ヴァンディ一家はシュタンドーレが住む館の隣に移り住み、昼食会に日参するようになる。ブレイドたちは、プラクティスのなかにある人間性を知るようになっていく。一方、連絡医師団ディトマール・セアキはパラスで防疫に協力しながら、プラクティスへの対抗策を練っていた。
  5. メララも同席した昼食会のあと、ブレイドは十数人のヒエロン市民に襲撃された。目覚めたブレイドは、シュタンドーレに呼ばれてプラクティスの船ソウヤマル号に乗り込む。盗聴不可能なその空間で、シュタンドーレ自身は無差別殺戮どころか侵略と支配も望んでいないことを語る。皇帝モウサへの対抗策を話しはじめた二人のもとに、ロイズの艦隊がプラクティスに打撃を与えたという報が入る。
  6. 同時刻、ヒエロン宇宙港ではディトマール連絡医師団が、冥王斑ウィルスの入ったボールの研究を進めていた。ボールはツェンバーガーのスパイス、レッドホットキッスに含まれており、連絡医師団全員の体にすでに入り込んでいた。

情報・謎・他
  • ヒエロンの壁鉄(p.92-)
  パナストロの首都ヒエロンの地区間主壁の内部には、300年前(2200年ごろ)つくられた壁内鉄道(壁鉄)が走っている。パラスは低重力天体のため路面摩擦が低く車輪機械の加減速が難しく、リニアモーター機関で動く。
  • ヴァンディ農場の設備(p.104,106)
  汎用宇宙船3隻を所有。アケボシを栽培する農室は16室、80ヘクタールの多層地下農場で、3000本の果樹を育てる。
  ノルルスカインがオルバース農場の羊にこもったのは、オルバース農場の回線整備が良くないので探知と襲撃から逃れやすいから。ロイズ非分極保険社団にはミスチフが潜んでおり、ロイズは太陽系の占領を狙っている。
  ・冥王斑は、過去にミスチフが人類の遺伝子を均質化するために送り込んだウィルスによって生まれた。
  ・人類の9割を殺して残りを自身の生態系に組み込むつもりでいたが、人間が冥王斑を食い止めたため、この作戦は打ち切りになった。それを知らずに、プラクティスロイズミスチフ)と対立している。
  ・ひいひいひいお婆ちゃんのアニーから代々受け継いだ、ある種の知識の塊。アニーに個体展開したノルルスカインが持っていた知識のサブセット。
  アリカの息子であるジョージは「お荷物」を受け継いでいないのか?(p.118-)
  22世紀末に成立。200の天体のうち5つや6つは毎年入れ替わる。
  ・2502年政権大統領 ル・アルフィネール
  ・航海大臣 ジャルカハン(宇宙軍を管掌する、事実上のナンバー2)
  ・東西南北500メートルほどのブロックがいくつも並んでいる。
  ・ブロックとブロックの間は20メートルで、その中に壁鉄や電気空調などのインフラ施設がある。
  ・エディントン・ピットの人口は3万5千人。
  • シュタンドーレ家のルーツ(p.134)
  ヤヒロ家に次ぐ古い家柄で、ココ島に住んでいた。
  ・生命医学企業のゲゼルシャフト・ヤマナカ・サンド・インデュストリー社
  (京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥先生とつながり??)
  ・機械工業のジレリオ・メクテック社
  ・天然食料栽培コンサルタントのシェンノン事務所
  • シュタンドーレがソウヤマル号で語った内容(p.177-)
  ・タレットの存在
  ・冥王斑の散布は皇帝モウサの直接命令による
  ・プラクティスがヒエロン市内を盗聴している
  ・ブレイド襲撃の黒幕は航海大臣ジャカルハン
  ・総督たちは冥王斑散布の方法を知らない
  ・各都市にひとつずつプラクティスの居住区をつくることで和解できるのではないか
  シリコンとカルシウムの化合物に、精密な機械加工を施して作られている。極めて頑丈で、塩酸でも分解されない。口から入ると歯の微細な隙間に入り込み、時間が経つと扁桃腺などの粘膜で定着する。

第六章 戦いの踊り

まとめ
  1. 2502年10月末。皇帝モウサが率いるセレス攻略艦隊は、システムフリート予備艦隊との戦闘に勝利した直後、ドロテア・ワットに遭遇。乗っている何者かは「ノイジーラント大主教国の戦艦ドロテア」を名乗り、砲口をプラクティスに向けた。
  2. ドロテアでは、アイネイアフェオドールの助けを借りてプラクティス艦隊と戦っていた。皇帝モウサの乗った旗艦を撃沈し、プラクティス艦隊を降伏させる。11月21日、システムフリート司令部はプラクティスの本拠地エウレカを破壊。しかし、プラクティスの構成員は脱出した。
  3. ドロテアの襲来を知ったプラクティスはエウレカを捨てハニカムに移り住み、オガシが准帝に即位した。イサリアイネイアがドロテアに乗っている可能性に思い至る。2502年12月5日、システムフリートは地球と火星の間でプラクティスの主力艦隊を発見し、戦闘開始を宣言した。
  4. オガシとワイラケイ会派の新司令官ヅァーカは、ハニカムに艦隊の位置を教えた内通者がいると疑う。12月7日、ミサイルの着弾で戦局が動き出す。フェオドールブラス・ウォッチ艦を壊滅させるが、オガシの艦隊がドロテアの底に向かい進撃してくる。
  5. クラストの戦闘員2000名とワイラケイ会派のミスカが錨鎖口からドロテア内部に突入。フェオドールが内部で待ち構え、これまでにミスチフが集めた生物を使って戦闘員を虐殺する。冥王斑をもたらした存在に気づき、怒り狂ったオガシが咀嚼者(フェロシアン)に変化するのを見たミスカは、彼を射殺する。

情報・謎・他
  ・カルミアンの技術でつくられたCシップを原型に武装した高性能艦31隻からなる。ホーマン軌道所要速度の4倍で飛び、各艦の躯体は60メートルほど。
  ・皇帝モウサが乗る旗艦はグタン。
  ・乗組員は武辺30名。
  ノイジーラント大主教国の国王はイギリス国王。主神はアングリカン(イギリス国教会と、それがイギリスの世界進出に伴い各地に広がったもの)の神様。
  イスラム巡礼艦隊の司令官ディートリンデ・アブラハム・ザムーリ少将が、システムフリート予備艦隊409隻を率いる。ロイズの旗艦アストライア級法廷戦艦ハムレットが同行し、7名の従軍国際司法裁判官7名のうち3人が死亡、一人が心肺停止。
  ・ドロテア・ワットに入るとフェオドールが喋りはじめた。これまでドロテア・ワットに潜む敵ミスチフを抑えこみ続けてきた、「ダダーノルルスカインの思考ストリームのひとつ、フェオドール」を名乗る。
  アイネイアが監禁されていたのは2502年7月ごろ(Ⅵ-PART2,p.321など)。ドロテア・ワットを初めて動かしたのは9月末〜10月(Ⅵ-PART3,p.240)。移動に2ヶ月?
  ミスチフが8700年前につくった、文明攻略用の移動要塞。知的文明の前に吊り下げる一種の餌。エネルギー密度が高く、自然物とは考え難いパターンを持つ遺物で興味を惹きつける。
  ミスチフが200万年ほど前にスィルカマンジロゲフィラニセオルクという惑星で得た生物。年に2回運航する宇宙ロケットに寄生するかたちで進化し、宇宙空間と地上を往復する生活環を持つようになった。
  • 12月5日の戦い 双方の戦力(p.264-)
  ・プラクティス ブラス・ウォッチ艦隊が71隻。すべてCシップ
          システムフリートから接収したものが706隻
  ・ロイズ システムフリートが170隻あまり。
       ドロテア・ワット
  美しい8つの青縞のある惑星に住む肉食生物。長い鼻、分厚い鰭脚。潜水艇の窓のように丸く硬い、まぶたのない黒い目。高密度気体メタンの気洋中層に浮かんでいる。

第七章 祝宴

まとめ
  1. 2502年12月7日午前3時25分、プラクティスの艦隊は行動不能に。イサリとロサリオは降伏しようとするが、ミヒルプラクティスの不妊を明かして人々を扇動し、ロサリオを捕らえる。イサリミヒルドロテアと組んでこの事態を仕組んでいたことを知る。彼女を恐れるイサリへの報復として、ミヒルアイネイア冥王斑に感染させる。フェオドールアイネイアに、自分がすでにオムニフロラの窓口であること、母ジェズベルもそうであることを語る。
  2. モウサの死後も、ブレイドとシュタンドーレは、ヒエロンにプラクティスの居住区を作るための密議を続けていた。12月7日午前5時、大統領官邸にいたブレイドのもとに、シュタンドーレ総督から電話が入る。彼は、これからプラクティスから発表される降伏宣言は偽物であるから耳を貸してはいけない、ロイズに新リーダーを捕らえさせるようにと伝えた。通話ののち、プラクティスから太陽系全通信網に通信が入り、太陽系帝国最終皇帝を名乗るミヒルの動像が流れる。ディトマールは、その動像こそが発病のトリガーだったと気づく。ロイズの勝利を知ったメララは、身ひとつで家を飛び出しエディントン・ピットに忍び込む。パナストロの兵士に襲撃されたシュタンドーレはメララに、妻エフェーミアを頼って逃れるよう告げて息絶える。メララの家族は既に感染しており、メララはヒツジと共にソウヤマル号で脱出した。
  3. ノームの数が全体の半数を超えたことでラゴスは決意を固め、ラバーズ(恋人たち)はプラクティスのもとを離れる。

情報・謎・他
  ミヒルのクーデター時点で、プラクティスの人口は17万3250人。
  カルミアンは、クラストが怒りと恨みの感情によって質的に違う生き物に変わってしまったため、反抗が不可能になった。

最終章 全太陽系応答なし

まとめ
  1. アイネイアが目覚めると、冥王斑は完治していた。イサリが彼を助け出してシェパード号で離れていくラバーズに預け、そこには以前カルミアンに作らせた冥王斑根治薬があった。ラゴスアイネイアに、ラバーズセレスで受け入れてくれるよう頼む。冥王斑は人類社会全体に広がり、大都市は冥王斑と火災と暴動に襲われていた。
  2. ヒエロンの都市機能は失われていき、生存者300名ほどを受け入れたソウヤマル号はセレスへ発つ。ブレイドメララジョージの居所を告げた。
  3. セレスから3000キロの位置に滞空するジニ号で、ミゲラアイネイアから無事を知らせるメールを受け取った。セレスの秩序も乱れていくなか、太陽系にとどまるかどうかの議論が行われる。12月28日、ジニ号ロイズの襲撃を受ける。冷凍睡眠技術を強奪にきたジェズベルジニ号の乗組員が対峙するところに、アイネイアが現れる。ジニ号の竜骨を外し、エアロックを解放して逃れるが、このままでは数時間でセレスに墜落するという。ジニ号シェパード号を巻き込んで、セレス・シティから100キロの位置に墜落する。
  4. ジョージMHD社でナシュリンガを引き取る。コニストン湖畔のアイネイア宅でエレオノーラに会い、地下道からブラックボルト社のシェルターに戻る。墜落を生き延びたアイネイアミゲラと再会する。2502年12月29日、ロイズの経営陣がすべて死亡し、消滅する。冥王斑の混乱は地球でも拡大し、主小惑星帯の天体と宇宙船は次々と消息を絶った。

情報・謎・他
  総勢五千数百人のラバーズを折りたたみ、蛋白機械(プロトロボット)として乗っているのは十数名。名前が出ているのは以下。
  ・ラゴス
  ・スキットル
  ・一旋次
  ・アリアドネー
  パナストロイスラム巡礼艦隊サンタクルス・クリオーリョ軌道ナイジェリア共和国、緑の申し子たち(プランツチャイルズ)、マニ本地回復兵団
  • 人類社会の広がり(p.404)
  主小惑星帯(メインベルト)を中心に、12125個の有人植民天体。冥王斑感染が報告されたのはそのうち1/6以下。
  • 冥王斑カプセルを壊す仕組み(p.405-)
  六重のカプセル(A/軽度の感染症をもたらすウィルス)と十八重のカプセル(B/冥王斑ウィルス)を何百種類もつくる。どのカプセルも、それぞれ決まった和音を聞かせたときに割れる。AとBをセットにし、その組み合わせを記録しておく。太陽系全体に行き渡らせたところで、CMなどを使って特定のAを割る。軽度な感染症の情報が太陽系保健機構に報告され、どこにどのAがあるのか(=それとセットであるBがあるのか)わかる。本番では、政見放送に目的のBを割る和音を載せる。
  オガシとミヒルの特定の言葉が、すべてのボールを割るキーになっている。
  ミヒルの放送から4日目(12月11日)に60 %を超える。
  8日目(12月15日)にアリカ死去
  • 墜落前、ジニ号の甲板長(ボースン)は鳳(フォン)(p.456)
  • MHD社のロボットを動かすマスター・コードの紛失(p.474)
  アイアイ・ラウンツィユリーはマニュアルメイカーのなかでほぼ最後まで生き残り、MHDのFOO代行代理に就任。12月29日、すべてのロボットを誰でも使えるようになるマスター・イマンスペート・コードを解放しようとするが、暴徒に襲撃されて死亡。

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最終更新:2017年06月27日 22:59
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