西暦2502年、セレス。さらなる絶望を描くシリーズ第7巻
あらすじ
ストーリー
第一章 椰子の実の島
まとめ
- 墜落したジニ号では、アイネイア、ミゲラ、オラニエが生き残っていた。アイネイアとミゲラはジニ号の救命ボートで一夜を過ごし、結婚する。翌日、スカウトの仲間がブラックチェンバーにいることを知る。
- スカウトのメンバーが地下鉄道を通って迎えに来る。アイネイアは、ミゲラ、オラニエ、フェオドール、カヨとともにブラックチェンバーに向かう。その入り口で、母ジェズベルが、MHDのロボットを動かす権限を遺してくれていたことを知る。
- ブラックチェンバーでは5万人以上の未成年者が生活しており、スカウトたちがその面倒を見ていた。大人たちは上層で防衛に専念していたが、外部から敵の侵入を防ぐため、エレベーターをフロアごと爆破した。
情報・謎・他
120人分のお皿と下着と歯ブラシ、水と食料と植物の種子、作業ロボットを整備する工場ユニットと指揮ユニット、歩兵用銃器1ダース、娯楽用動像1000万本、冷凍みかんと組み立て式航空艦、遺体袋2ダース、聖クリステンセンの聖遺物である靴下片方。コルホーネン法で冷凍睡眠させた動植物180種(ただし粉々の可能性あり)。
ブラックボルト社の地下シェルター。(p.29)
セレス・シティ第55層、地下400メートルにある重警備階層。独立系CELSSを備え、スポーツジム、書籍や動像のライブラリーが充実している。
居住区はリゾートホテルを思わせる階段形状の建物。格段にテラスと窓。奥が高く手前が低く、一番手前は砂浜。ホテルの裏側は岩盤がむき出しになっている。(p.50-)
男24905名、女27339名、計52244名。うち成人が1029名。
ロイズのメイドとボーイロボットが2000体以上。
ドーナツ型の大きな湖の内側に面して、10の居住区がぐるりと配置されている。ドーナツの中央=ホテルの裏側に維持管理区画。
- コスモス・パブリックスクールの生徒数は1600人ほど。(p.59)
- アイネイアたちもコスモス校中等部に通っていた。(p.61)
ミゲラと
アイネイアは学校が違うので、「たち」の範囲は不明。(Ⅵ-PART1,p.307)
14歳以上でスカウトに協力したいと申し出た子どもたち。30人ほど。
- 大人たちはシティ第53層のチェンバー装甲上拠点で防衛を行うが、40層にあるカレー・エレベーターステーションが制圧され、エレベーター竪坑を爆破。土砂で敵の侵攻を食い止めようとする。(p.69-)
第二章 落日に背を向けて
まとめ
- 先導工兵(パイオニア)でジニ号の扉を開け、必要な物資をブラックチェンバーに運ぶ。途中、サンドラはアイネイアを誘惑するかのように振る舞った。メララからジョージに連絡が入り、パラスの生き残り約300名がジニ号近くのキャンプで生活することになった。
- ブラックチェンバーでは子どもたちが寝場所を奪い合い、いくつもの数百人のチームと、そこに入れない子どもたちという構図が出来上がった。第2区で餓死しかかっていた厳紹祺・ディディエはオラニエに拾われ、第1区に受け入れられる。第1区では、「14日間、生き抜こう」を掲げたスカウトら運営委員会による統治が行われていた。運営方法を他地区にも広げようとするがうまくいかない地区も多く、ついに第2区で大規模な火災が発生する。
- 第2区の火災は、教師たちによる集団自殺だった。815人が死亡し、ミゲラたちは打ちのめされる。メララがブラックチェンバーを訪れ、ジョージがアイネイアの父と祖母の死を知らせる。
情報・謎・他
- 厳紹祺・ディディエ(イエンシャオチー・ディディエ)(p.90)
11歳。2代前に
ブラック・チャイナ(黒色中原人民帝国)から
セレスに移り住んだ、厳家の末子。先祖は中国系アフリカ人とラテン系で、褐色の肌と銀髪を持つ。
マルベリー・エレメンタリースクールの500人が客室の1/4を占領。寝場所も食料もなく飢える者が続出する。
- 第1区は、エレベーター竪坑の爆破で亡くなった所長の名を取りオリゲネス地区と名乗るように。(p.97)
- 第1区(オリゲネス区)の運営(p.97)
居住区から休憩室に行く空中通路から見渡せる。差し渡し100メートルほどの円形。通路から下は20メートルほど。頭上に天井があるが、かなり遠い。シティをつくるときに、この竪穴から掘削土を運び出した。土砂をスムーズに運び出す仕組みがある。
エレオノーラは回復者だが、原種冥王斑には感染した可能性がある。
→
クラスト(硬殻体)も、ある程度あとの時代に
プラクティスに加わった者は感染の可能性があるのか?
第三章 史乗の底へ
まとめ
- 14 日目の朝。スカウトたちは、死体の処理と第二区からあふれた子どもたちの処遇を話し合う。その後は「新しい部屋を組み立てよう」を目標に切り替え、SCS(セルフ・カロリー・システム)プラントを製造。食料の残りがあと5日分になり、再生ケーキの生産に踏み切った。オラニエがスカウトのもとを訪れ、おそらくプラクティス以外の太陽系人類が滅びていること、無期限にブラックチェンバーで居住する前提ですべてを計画する必要があることを告げる。引き続きハンがブラックチェンバーを指揮し、オラニエ率いるアンチ・オックスがハンを助けるという体制で同意した。そこへ、第7区のティーガー・レックスたちが第6区に攻め込んだという知らせが入る。
- 第6区へ向かうスカウトとオラニエたち。戦いの途中でアイネイアがミゲラを守るよう命じると、“遵法(ロウフル)”は容赦ない殺戮を始める。オリゲネス側が勝利し、第7区で大腸菌による感染症が発生していたことがわかる。スカウトたちは、はじめて人を殺したという事実に打ちのめされていた。
- 3ヶ月後、メララたちパラス人とラバーズ(恋人たち)がブラックチェンバーに合流する。そこでは、オリゲネス幹部会を頂点とする新たな秩序が生まれていた。6区の争乱のあと、大量の遺体による汚染をコントロールできなくなった幹部会は2,6〜9区を封鎖、2万人以上を見捨てた。2503年5月の選挙で、サンドラを除くスカウト他数名が、ブラックチェンバーの閣僚に選ばれた。
情報・謎・他
- 第2区であふれた子供達はセントラルパークにキャンプを設営して受け入れることに。(p.142)
- ジニ号から運び入れた自己展開型工場機構は「マイダスタッチ」。(p.146)
由来は触れたものをすべて金に変える「ミダス王の手Midas Touch」?
オリゲネス幹部会=Origenes Executive Board(O.E.B.) スカウトの9人
オリゲネス運営委員会=O.S.C.
- セントラルパークの周壁に、各区へつながる放射状通路。その入り口をコンクリートで封鎖している。(p.200)
- メララがセレスにいたジョージを訪れたのは、2501年1月。(p.204)
- 6区にいた6211人のうち、争乱の日に357人が死亡、その後3日間で犠牲者は1.5倍に。(p.219)
- ブラックチェンバーの初閣僚選挙(p.226-)
第四章 激流のとき
まとめ
- O.E.B.体制の日常が固まったが、シティからの電力供給は減少していた。2503年6月1日、大きな地震とともに重力が増加。中央竪坑で大規模な崩落が起き、人命救助を優先するサンドラとチェンバー全体の崩壊を防ごうとするミゲラが対立する。ミゲラとの不和が続いていたアイネイアは、サンドラとともに会議室を出た。
- 1週間後に救出は打ち切られ、幹部会は中央竪坑に大支柱を並べる計画を打ち出す。6月16日に二度目の地震が起き、新たな居住区を掘り進める計画の進行が困難に。幹部会と運営委員会が今後の方針を話し合う。地震の原因への言及はないまま、幹部会の専制のもと、地下にドーム型の大空間をつくるという方針が決定された。その建築計画には、ラバーズのラゴスがかかわっていた。
- 3ヶ月後、地下の空間は高さ80メートルにまで広がり、大低地と呼ばれるようになった大地では牧草が育てられはじめていた。その間にも徐々に重力が強まり、ジョージはメララが妊娠したことを告げる。アイネイアはサンドラとともに大低地に移り住み、ここで生きることについて考え始める。2503年12月、ついにセレスの中央融合炉が一基止まり、点検と再起動のため地上に偵察隊を送る。そこにはクラストとカルミアンがいた。
情報・謎・他
- ティーガー・レックスは7区から助け出され、第5層で働いている。(p.246)
- ブラックチェンバーと竪穴の位置関係(p.250,256)
水平に置かれたドーナツと、その中心を貫く竪穴。竪穴が下に向かって伸び、周りにたくさんの水平坑道が、ドーナツの直径以上に広がる。崩落でチェンバーの真下が空洞に。崩落した竪穴をバケットで上がったところにセントラルパークがある。
- 6月16日の地震で各地区にある海の底が損傷し、中央竪坑の崩落跡に水が流れ込み新たな浅い湖ができた。(p.269)
- 会議の展開(p.271-)
オラニエはシティの偵察を提案するが、幹部会はリスクの高さを指摘し、投票なしで拒否。中央竪坑跡に大支柱を立て、新たにできた地底湖の外周を掘削してそこに水を落とし込み、ドーム型の大空間をつくることが決まった。
天井から地上までは80メートル。天井に素子化塗料を吹き付け、途中まで空を模した天蓋ができている。中央山体の中腹にホテル(
ブラックチェンバーの居住区)。最年少組が重工兵(レジョネイア)を操縦し、外周海からさらった土砂を中央山体にある竪坑に運び出す。大低地には放射状の排水路と、幅10メートルの環状道路。
- サンドラはグロッサとも関係を持っている(p.289)
第五章 沃野を目指して
まとめ
- 技術チームが融合炉を再起動した帰りにカルミアンに遭遇、1匹を連れ帰る。ラゴスが話し、ハニカムが近くに来ていることがわかる。ブラックチェンバー内での妊娠は増加を続け、人口の増加や母子の保護を巡ってスカウトのメンバーは対立する。幹部会はセックス禁止令を出すが人々は統制を嫌い、徐々に居住区から大低地に移り住むようになる。2505年5月、プラクティスがチェンバーに現れる。幹部会が開かれ、ハンはサンドラにすべての権限を委譲した。
- サンドラたちは、捕虜のカルミアンを使ってプラクティスを欺き、追い返した。サンドラは大統領府を解散させ、民主的な選挙を行うと宣言した。アイネイアはジョージに連れられ、オリゲネスホテル(もとの居住区)と大空洞の間の空間にある、カルミアンと羊がいる場所を訪れる。そこで会った“偽薬売りのノルルスカイン”が、サンドラの要望を受けてカルミアンとの同盟を成立させ、プラクティスからブラックチェンバーを守っていた。
- 2505年6月に議会選挙が行われ、首相に就任したサンドラはこの国を「メニー・メニー・シープ」と名付ける。アイネイアはサンドラの子とフェオドールをつれてジョージの家に移り住んだ。ラバーズもメニー・メニー・シープに居場所を作り始めていた。2506年初頭、サンドラはセレス南半球で建造中だった大型発電所の遠隔操作が可能になり、5000万キロワット以上の電力供給が可能になったと発表する。これ以降、メニー・メニー・シープでは野菜が収穫され、羊肉が供され、さらに子供が増えた。建築や農業、インフラも整っていった。2508年、アイネイアはミゲラと共にメニー・メニー・シープの拡張計画に取り組み、その過程で和解する。サンドラは世界に新しい建国の物語を広め、メララはプラクティスの歌を子供達に伝えていった。
情報・謎・他
- 発電所を訪れたのは、ユレインとグロッサが率いる技術チーム。(p.304)
- ハンはコスモス校のジャケットを着ている。多分コスモス校に通学していた。(p.309)
- ベルは幹部会支配圏内での最高裁判官。5区から10歳の少年を2人保護している。(p.309-)
- 市民集団検診の結果、妊娠した女子が551人。(p.311)
- 海に潜って外周海の調査をするアンチ・オックスのことを、アイネイアが「窒息知らず(アンチヨークス)」と呼ぶ。←おそらくun-chokes (p.320)
- メララとジョージの子はザリーカ・テルッセン。2504年3月25日生まれの女児。そこから3ヶ月ほどで、700人あまりの子供が生まれた。(p.325)
- ミゲラのまわりに、ラゴス以外のラバーズが増えている(p.329)
- スカウト内の対立構造 (p.335-)
- 人類滅亡を示唆され、ハンが一度リーダーを辞退した日(=6区争乱の日)は、アイネイアとミゲラがブラックチェンバーに来て2週間目。(p.358)
- 首相になったサンドラは大低地に住み続け、技術相のユレインだけがオリゲネスホテルに残る。(p.359)
- ミゲラは降格され、エネルギー局長に。(p.361)
- 元素資源を増やす方法(p.366)
セレス・シティ1層に大量の水を送り込み、遺体由来の養分が豊富な土をシティの集水地に集める。その循環ポンプを破壊し、最下層にある
メニー・メニー・シープに流れ込ませる。流路で冥王斑ウィルスを滅菌。
大低地の直径は5キロに広がる。草原のあちこちに大支柱が立っている。
(条件)救世群に発見されるから地上には出られない。崩落の危険が知られているので人々は地下に住まない。
(帰結)地下に空洞を作り、国土をジャッキダウンする。水が溜まらないよう、外周に海を掘り続ける。
エピローグ 植民地の夜明け
情報・謎・他
- ユレインは「甲板長ウェルフロイ」、カルミアンは「石工(メイスン)」と呼ばれるようになっている。(p.387)
- 追放されたオラニエらは、オリゲネスから東へ15キロ離れた外周海へ。ネレンスク食料相は自発的に、別の土地に移る。(p.388)
- オリゲネス中央山体(居住区のあった部分)が「要塞峰(フォートピーク)」と呼ばれている。(p.387)
- 第1回空洞掘削作業 (p.388-)
高さ70メートルの地下空間をつくり、そこに積層盤式の支柱を建てる。
メニー・メニー・シープ全土にわたる大きさになると(ここまでにおよそ10年)、地下支柱の積層盤を1枚ずつ引き抜き、形を保ったまま降下する。地上にある大支柱も延伸する。このとき、オリゲネス中央山体が
セレス・シティから切り離され、文字通りの山となる。
作業は甲板長の指揮のもと、先導工兵、重工兵(レジョネイア)、石工を使って行われた。工事完了の翌日から、第2回空洞掘削作業を開始。
- 2555年、スカウトメンバーの近況(p.393-)
オマージュ
あらさがし
ハンの在任期間
ブラックチェンバーに
プラクティスが現れ、
ハンが大統領をやめたのは2505年5月15日(p.334)。本文中ではハンの在任期間は「2年に9日足りなかった」(p.335)とされているが、閣僚選挙の公示が2503年5月24日、選挙がその1週間後なので(p.226)、もっと短かったのでは?
→幹部会が、公示日に遡って就任したことにすると定めていれば別。事実上、公示期間もハンが大統領のようなものだった。
(参考)
日本の公職選挙法では、選挙期日を就任日として数える
人類滅亡を示唆され、
ハンが一度リーダーを辞退した日(=6区争乱の日)は、
チェンバーに入って2週間目 (p.358)
とされている。この日は試作品のハンケーキが完成した直後(p.151-)なので、
ブラックチェンバーでの避難生活が始まってから最速で25日目。
→もし「チェンバーに入って」が「チェンバーでの避難生活が始まってから」という意味なら、ここは「4週間目」が正しい。
→もし、
アイネイアがチェンバーに入って2週間目にこのやりとりがあったという意味であれば、
(1)
アイネイアと
ミゲラと
オラニエが
ブラックチェンバーに来たのは、最速で避難生活開始から12日目(25日目の13日前)。
(2)第2区の火災の日(=
オラニエがディディエを1区に連れてきた日、4区からネレンスクたちが来た日)には、
ミゲラは運営委員として活動していた。(p.106)
(3)火災があったのは避難生活が始まって14日目より前だった。(p.137)
→第2区の火災は避難生活が始まって12日目か13日目(おそらく後者)。
・
オラニエと
ミゲラが、到着当日あるいは翌日からこんなに動けるのか?
・1,2日後が14日目というときに、「14日間生き抜こう」と言うのか?(p.96)
・火災後かつ13日目夜までに
メララが
ブラックチェンバーを訪れているが(p.133,137/ただし出来事の順番が入れ替えられていない場合)、これは
アイネイアが
ジニ号での荷物捜索中に
メララのことを聞いてから3,4日以上経っていることになり(p.84)、日数が合わなくなってしまう。
登場人物
スカウト/幹部会
幹部会の周囲
ダック班
- ローラ・ダンゲルマイヤー
- エルキュール・グリニョン
第4区
第6区
第7区
オルバース盆地組
- メララ・テルッセン
- ザリーカ・テルッセン(メララ長女)
- アラート・テルッセン(メララ次女)
- クァンタム・テルッセン(メララ長男)
- ヨログ
アンチ・オックス
ブラックチェンバーの大人
《恋人たち》
他
- アリ
- ワレンチナ
- ミッキー
- ヴァンス
- アルカディー(サンドラの長男)
地名
最終更新:2017年07月02日 21:24