SILVERMOON
親心、恋心!?(1)~事の発端~
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このSSは”アイはうらはら”から数日後のお話です
親心、恋心!?(1)~事の発端~
サロメがクリスの事をアップルに相談してから数日が過ぎていた。
自分の事を嫌っているのでは?と心配してアップルに相談を持ちかけたサロメであったのだが、実のところ、こちらに来てからサロメが他の人に構っているために”サロメを独占できない”…と、クリスがヤキモチを妬いていただけだったのだ。
しかしながら、その事実に気づいていないサロメにとっては、この悩みは依然として解決していない…。
この日、あんまり天気がいいので、クリスは城の周りを散策していた。
今日はこれといった急務もなく、久々にゆっくりとできそうであった。
「クリスさま~!!お早うございます!!」
城門の辺りを歩いていると、この城の守備隊長のセシルが声をかけてきた。
いつもどおりの明るい表情は見ているほうまで明るくさせてくれる。
そんな魅力を持つ少女である。
いつもどおりの明るい表情は見ているほうまで明るくさせてくれる。
そんな魅力を持つ少女である。
「ああ、セシル。いつもご苦労様。」
「今日はとってもお天気がいいからここでちょっと休んでいきませんか?」
そういってセシルは城門の裏手を指し示す。
指し示された先は、一面に柔らかな芝生が敷き詰められた一帯であった。
そこにはぽかぽかと暖かい日の光が差し込んでおり、日向ぼっこをするには随分と気持ちよさそうだった
指し示された先は、一面に柔らかな芝生が敷き詰められた一帯であった。
そこにはぽかぽかと暖かい日の光が差し込んでおり、日向ぼっこをするには随分と気持ちよさそうだった
「そうだな。少し休んでいくかな。」
そういってクリスは腰を下ろす。
「ジョアンさんなんてしょっちゅうここで昼寝してるんですよ!」
セシルもクリスに合わせて座る。
「ふふ。その気持ちも解かる気がするよ。」
そして、たわいもない会話を交わしながら、のんびりと過ごす二人であった。
「あ、そうだ!!私、昨日ピッコロさんにとってもステキなおまじないを教えてもらったんですよ!!」
「おまじない?」
「はい!!なんでも遥か東のトラン共和国から伝わってきたんですよ!!」
「トランから?それはすごいな…で、どんなまじないなんだ?」
「恋のおまじないなんです!」
セシルは懐から1枚のメモを取り出した。
クリスはそれを覗き込む。
そこには意味不明の幾何学的な模様が並んでいる。
クリスはそれを覗き込む。
そこには意味不明の幾何学的な模様が並んでいる。
「この模様の真ん中に、好きな人の名前を書いて枕の下に入れると…なんと恋がかなうんですよ!!」
そう熱く語るセシルの表情は真剣そのものである。
「そ、そうなのか?」
あまりの非現実的さに、胡散臭さを感じずには居られないクリスである。
「あ、そうか…クリスさまには必要ないですよね。」
セシルは残念そうにうつむく。
どうもクリスのそんな反応をセシルは間違ってとらえたようである。
どうもクリスのそんな反応をセシルは間違ってとらえたようである。
「え?そ、そんなことないけど…。」
「そうですか!?じゃあこのメモを差し上げます!クリスさまも絶対試してくださいね!!」
クリスの言葉に瞬時に元気を取り戻すセシルである。
「セシル…試してるんだ?」
「はい!!クリスさまも一緒に頑張りましょう!」
笑顔ではきはきと答え、セシルは両の拳を握り、ガッツポーズをしてみせる。
「あ、ああ。ありがとう。」
半ば強引に押し切られる形で、セシルからメモを手渡されるクリスであった。
「おまじない…か。」
執務室に帰った後、クリスはセシルから受け取った紙片をまじまじと眺めていた。
おまじない等を信じた事などほとんどないクリスだったが、何故か捨てることが出来ないでいた。
おまじない等を信じた事などほとんどないクリスだったが、何故か捨てることが出来ないでいた。
それは、このおまじないが”恋の”おまじないであるからに他ならなかった。
「まあ…せっかくセシルがくれたものだからな。」
そして、そう自分に言い聞かせるクリスだった。
コンコン
そんな折、執務室にノックの音が響く。
「開いているぞ。」
「クリス様!」
クリスの声と共に部屋に来たのはボルスだった。
「どうしたボルス?」
「今からパーシヴァルと牧場へ馬を走らせに行くのですが、クリスさまもご一緒しませんか?」
「そうだな。天気もいいし、いい気晴らしになりそうだな。」
「では参りましょう!」
セシルにもらったメモを机の上に置き、クリスは部屋を後にした。
クリスがボルスたちと牧場へ向かったほぼ同時刻、サロメはクリスの執務室へと向かっていた。
昨夜のシーザーたちとの会合で決められた事柄を伝え、クリスのサインが必要な書類を届けるのが表立った目的である。
昨夜のシーザーたちとの会合で決められた事柄を伝え、クリスのサインが必要な書類を届けるのが表立った目的である。
そしてもう一つの目的はクリスの様子を伺う事である。
時折自分に見せる不機嫌な態度…。
それに、最近のクリスはなにやら考え事をしているのか、ぼうっとしていることが多々見受けられるのだ。
そんな時、サロメが声をかけると何故かひどく慌てた様子を見せる。
それに、最近のクリスはなにやら考え事をしているのか、ぼうっとしていることが多々見受けられるのだ。
そんな時、サロメが声をかけると何故かひどく慌てた様子を見せる。
「クリスさま…。」
サロメはそんなクリスが気がかりでならなかった。
コンコン
執務室の前へと到着し、ノックをしてみるが返答がない。
『ふむ。今日はさしたる用事もなかったはず…おそらく出かけておられるのか。』
そう判断し、とりあえずサインの済んだ書類を回収するために執務室に入った。
実質的に大半の職務を取り仕切っている立場上、クリスの執務室に入る事は日常茶飯事であった。
実質的に大半の職務を取り仕切っている立場上、クリスの執務室に入る事は日常茶飯事であった。
サロメは必要な書類を回収し、サインの入っていない書類を机の上にドンと置く。
「ん?…これは……?」
サロメの目に止まったのは先ほどまでクリスが見ていた1枚のメモであった。
「さて、本業のほうも頑張らないと。」
そう言って私室から出てきたのはアップルである。
軍師として名の通っているアップルだが、現在の本業は歴史家である。
今日は、大広間で行われるいつもの会合までに結構な時間があるので、図書室へと向かった。
ここの図書室にはグラスランドの歴史的資料が数多くあり、空き時間は大抵図書室で過ごすアップルだった。
今日は、大広間で行われるいつもの会合までに結構な時間があるので、図書室へと向かった。
ここの図書室にはグラスランドの歴史的資料が数多くあり、空き時間は大抵図書室で過ごすアップルだった。
アップルが図書室に行くと、そこには先客がいた。
「あら…調べ物ですか?」
「アップル殿…」
声をかけられ、顔をあげたのは悩めるゼクセンの正軍師、サロメ=ハラスである。
といっても職務とは全く違うところで悩んでるのだが。
といっても職務とは全く違うところで悩んでるのだが。
「実はこのようなものを見つけましてな…」
サロメはアップルに先ほどのメモを見せる。
「へえ。何かしら。」
「私にはさっぱり読解できないのです。これは何の暗号なのでしょうか。」
アップルならばもしや解かるのでは…とサロメは期待をかける。
「う~ん……あ、これって…」
しばらく思い悩んだ後、何か思い立ったようである。
「何か!?」
思わずサロメは身を乗り出す。
「ええ。これ…私も以前やったことがある恋のおまじないね。」
「おまじない…ですか??」
思いもかけない返答に、サロメは思わず聞き返す。
「ええ。他愛もないものだけどね。
効果なんてあるわけないって思っていても恋をすると女ってついこういうものに頼っちゃうところがあるのよ。」
効果なんてあるわけないって思っていても恋をすると女ってついこういうものに頼っちゃうところがあるのよ。」
「そ、そうですか…。」
では…では…クリスさまがどなたかに恋…!?
「あ、サロメさん?」
ふらふらとした足取りでサロメは図書室を出て行く。
アップルの声など聞こえていないようだ。
アップルの声など聞こえていないようだ。
「どうしちゃったのかしら?」
首をかしげるアップルであった。
クリスさまが誰かに恋をしている―
最近のクリスの様子がおかしいのもそのせいだと思うと全部つじつまが合うではないか。
そんな現実を突きつけられ、サロメの心はざわめきたつ。
遅かれ早かれそんなときはやってくるとは思っていた。
娘を嫁にやるような気分…とまではいかないが、言ってみればそのようなものである。
娘を嫁にやるような気分…とまではいかないが、言ってみればそのようなものである。
さみしい気持ちがないといえば嘘になってしまう。
それでも…
それでもサロメはクリスの想いを叶えてやりたいと思ってしまう。
思い悩むクリスを見ているほうがつらく、せつない。
思い悩むクリスを見ているほうがつらく、せつない。
クリスを思うあまりに、自分の気持ちにはきっちりと蓋を閉めてしまえるサロメであった。
かくして、
サロメはクリスの恋の悩みを解決すべく(?)奔走するのだった。