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親心、恋心!?(2)~本当に、それだけ…?~

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親心、恋心!?(2)~本当に、それだけ…?~



クリスが誰かに恋をしている―

ふとしたことからその事実を知ってしまったクリスの参謀役サロメ。
クリスのためにと、その一心でクリスを支え続けてきた彼である。

そんな彼は、自分の気持ちなどを考えることさえせずに、クリスの恋の悩みを解決すべく(?)奔走するのだった。




「ふむ。まずは相手がどなたなのかを見極めねばなりませんな。
クリスさまにふさわしいお相手であればよろしいのですが…いや、道ならぬ恋だとしても…ううむ。」

ブツブツと独りごちながら、首を捻るサロメである。

長年、共に過ごしているとはいえ、クリスの好みというものをさっぱりと理解していないことに気づく。
騎士団には国中の女性達が騒ぎ立てるいい男がわんさと居るが、クリスはどうも見向きもしていない感がある。


つまりは、騎士団の誰か…というわけでもなさそうだし…

うむ…こちらに来て出会ったものの中なのか…。
では、騎士たちとは違うタイプなのだろうか…。

いや、しかし自分が気づいていないだけで、騎士達の誰かなのかもしれない。


一人で悶々と考えていると堂々巡りで、考えれば考えるほど解からなくなっていく。

「これは、埒が明きませんな。」

ぽつりとつぶやいて、サロメは部屋を後にした。





そして、サロメが相談相手として白羽の矢を当てたのは騎士団一こういう事情に精通していると思われる人物だった。

「パーシヴァル殿!」

ビュッデヒュッケ城のとある一室に、ようやく彼の姿を見つけ出したサロメは、徐に声をかける。

「サロメ卿?」

突然声をかけられ、さらにその様子が尋常ではなかったため、いったい何事かとパーシヴァルはきりりと表情を引き締める。

「…つかぬ事を聞きますが…」

辺りを見渡し、周りに誰もいないのを確認した後、サロメが声を潜めてパーシヴァルに切り出した。

「はい。なんでしょう?」

「……貴殿はクリスさまに想い人がいらっしゃることをご存知か?」

「は??突然どうされたんですか?」

会うなりそんな予想外の質問をぶつけてくるサロメに、パーシヴァルは当惑する。

「い、いえ…その…。最近クリスさまはよく物思いにふけっておられるゆえ…。」

やはり突然すぎたかと、サロメはたどたどしく状況を説明する。
その様はいつもの職務中に見せる様子とはまったく異なっている。
どうもクリスが絡むとそうなるらしく、それをお見通しなパーシヴァルは、そんな様子のサロメを見るとついついからかいたくなってしまう。

「で…知ってどうされるのですか?決闘を申し込むとか?」

「と、とんでもない!」

さも面白そうに聞いてくるパーシヴァルに対し、からかわれている事に全く気づいていないサロメは必死になって弁明する。

「…たとえそれが道ならぬ恋だとしてもクリスさまを応援するのが私の務めです。」

きっぱりとそう答えるサロメの表情は真剣そのものである。

「さすがというか…なんというか…」

パーシヴァルは半ばあきれ気味につぶやく。

「で、ご存知なのか!?」

「はて…どうでしょうな。案外近くにおられるのではありませんかな?」

サロメの追及をさらりとかわすのはさすがパーシヴァルというべきか。

「…そうですか。ふむ、わかりました。」

こういうことにはまるで疎いサロメである。
”本当は知っているんじゃ…?”などと感づくはずもなく、パーシヴァルの言葉をすんなり聞き入れる。

「邪魔をしました。それでは失礼。……ううむ…では……」

首を捻り、思案に暮れながら、サロメは部屋を後にする。
パーシヴァルは、その様子を笑いをこらえつつ見送った。



「しかし…なかなか面白いことをされる。
まあ…我らが女神様のお心を射止めてるんですから…このくらいの意地悪はさせてもらいますよ。」

わかっていて教えてあげないパーシヴァルだった。





「はて…どうでしょうな。案外近くにおられるのではありませんかな?」



廊下を歩きながら、サロメは先ほどのパーシヴァルの言葉を反芻する。


―案外近くにいるっていうことはやはり騎士達の一人なのか??


腕を組みあれやこれやと思案し、廊下を闊歩する姿はいやでも目に付いてしまう。
ただ、尋常ではない気配を背負っているため声をかけるものはいないのだが。

「おや?」

しかし、そんなサロメに気づき、声をかけるものがいた。
どうも声をかけずにいられない性質らしい。

「サロメ卿……」

不意に呼び止められ、サロメが顔を上げるとそこにはナッシュが立っていた。

「あ…わあっ?!!」

「うわっ!?」

しかし、考え事に夢中で気づくのが遅れ、サロメは目の前のナッシュに激突する。

「あたた。」

「もっ、申し訳ありませんっ!!」

よろけるナッシュにサロメは慌てて駆け寄った。

「らしくないですね。どうしたんです?……何か考え事でも?」

「ナッシュ殿。実は…」

もはや手詰まりのサロメである。
廊下の隅へと移動して、事の次第をナッシュに打ち明けた。



「へぇ~クリスが恋…ねえ。」

ナッシュは苦笑いを浮かべながらサロメの話に頷いた。

「はい。何か思い当たることなどございませんか?」

「あるにはあるけど…最重要機密事項だからなあ。」

そう言ってはぐらかすナッシュの様子が、何だか楽しそうに見えるのはサロメの気のせいだけではないだろう。

「…??以前から思ってたんですが…それ…何でしょうか?」

”最重要機密事項”

どうにも引っかかる物言いではある。
サロメはその真相を知るべく問いかけた。

「それは、いえない約束なんだ。」

いつになく真剣な表情で答えるナッシュ。
こういう時にいくら聞き出しても無駄だという事はサロメも経験上、承知していた。

「はあ…そうですか。では、その最重要機密事項とクリスさまの想い人は何か関係があるのですか?」

しかしながらそう簡単にあきらめるわけにはいかないサロメは尚も食い下がった。

「オオアリだ。ま、これに関してはクリスに聞いてくれ。」

そう言ってナッシュはこれ以上は何も出ないよとばかりに両手を広げる。

「わかりました。」

それ以上の追及は無駄だと判断したサロメは、結局何一つわからずにその場を後にした。
ナッシュは、その様子を手を振りつつ見送った。



「あれは全くわかっていない顔だな…。
まあ俺から言っちゃったら後でクリスに怒られるから自分で解決しなさいな。」

あくまでも保身第一のナッシュであった。





多くの仕事をこなしているサロメである。
そうそう考え事だけをしているわけにもいかず、部屋へと戻り、書類の山と格闘を始める。

しかし、どうしても気になってしまい、思うように仕事がはかどらない。
仕事に集中しようとサロメは何度もかぶりを振る。

「サロメ様…?」

傍らで仕事を手伝っていたルイスが見かねて声をかける。

「あ、ああルイス。何か。」

どうにも上の空…といった返答だ。

「どうされました?浮かない顔で。」

「あ、いえ………」

サロメは急に黙り込む。


―そういえば、クリス様の一番近くに仕えているルイスなら…
  何か…知っているのではないだろうか。

もうここまできたら何でもありである。
サロメはルイスに一縷の望みを託す。

「つかぬ事を聞くが…クリスさまの想い人…って思い当たるか?」

「はい?想い人…ですか?」

いきなりの質問にルイスは思わず聞き返した。

「ええ。クリスさまは最近よく物思いにふけっておられる…ご機嫌がお悪い時も多いし…。
私に出来ることならなんだってして差し上げたいのだが…」

その表情は重く、本気で悩んでいるようである。

「そ、そうですねえ~~。」

どう答えるべきか、ルイスは困り顔で首をかしげる。

「え、ええとですね。
サロメ様のお言葉ならクリスさまもお聞きになられますし…、やはり…直接聞かれてはいかがですか?」

「ふむ。実はナッシュ殿にもそう言われたんだが…。
クリスさまがそんなことを私に教えてくださるだろうか…。」

不安が口をついて出る。

こういう方面以外ならクリスの事は何だってわかっているつもりのサロメだが、
ことクリスの恋愛事に関しては全くもって把握しておらず、伺う事もおこがましいとすら思っているのだ。

「サロメ様なら大丈夫ですよ。だって何よりクリスさまの…あ。」

思わず口が滑りそうになり、ルイスは”しまった”という表情を浮かべる。

「うん?」

サロメは続きを促す。

「あ、い、いえ。なんでも無いです。
その…きっと身近にいらっしゃる方を想っておられますから。
書類のほうは整頓しておきますのでどうぞ行ってきてください。」

「では…すまないが頼む。」

あわてて取り繕うルイスに後を任せ、サロメは、わかったようなわからないような…そんな複雑な表情で部屋を後にする。



「わかって…いないのかなあ…。やっぱり。」

一番傍で二人を見ているルイスにとってはもはや周知の事実なのだが…どうにもわかっていない様子に思わず不安になってしまう。

「もうちょっとはっきり言っても大丈夫だった…かな。」

心配そうな表情を浮かべるルイスであった。





ルイスの進言を聞き、部屋を後にしたサロメだが、未だに決心がつかないでいた。


―わからなければクリスに直接聞けば良い


皆の意見ももっともだとは思う。

しかし……


「もしかしたら…私は、直接聞くのを恐れている……のか」

自分で口に出してみてあらためてはっとなる。
どうも自分の気持ちに説明できないものがあることに、ようやく気づきかけたサロメである。

そしてサロメはクリスの部屋に行く前にある人物の許へと向かうのだった。





「アップル殿。」

先日と同様に図書館で調べ物をしているアップルの姿を見つけ、サロメは声をかけた。

「あら?サロメさん。また調べ物?」

「いえ、そういうわけでは…あの、少し…よろしいですかな?」

「ええ。じゃあ場所を移しましょうか」

「お忙しいところ申し訳ありません。」

先日の件以降すっかりお悩み相談員となっているアップルである。
二人は例によってメイミのレストランへと赴いた。

「フフッ。ここでこうやって話していたら、またクリスさんが飛んでくるかもしれないわね。」

以前ここでサロメの相談を聞いていたとき、クリスがすっ飛んできてサロメを連れ帰った事を思い出し笑みを浮かべるアップルである。

「は?」

サロメは一瞬ぽかんとする。

「あら…」

アップルはあわてて口を押さえる。


―まだ、わかってなかったのね。


「今日は仕事は済ませてきましたので大丈夫かと。」

「あ、あらそう…」

完全に勘違いしているサロメの話し振りにアップルは脱力感を覚えてしまう。


―だめだ、こりゃ…


「アップル殿?いかがされました?」

「あ、何でもないわ。じゃあ、お話を聞きましょうか。」

「はい…そうでしたな。実は…。」





一通り話を聞き終えたが、アップルはサロメのあまりの鈍さに呆れて言葉が出ない。
クリスの気持ちに気づいていないだけならいざ知らず、己の気持ちを自覚していないとはたちが悪すぎるではないか。

そして、しばらくそのまま黙り込み考えをめぐらせる。
いかにしてこの鈍感不器用人間を矯正すべきか、と。



「ねえサロメさん。」

「はい?」

「どうして…そんなに気にしているんですか?」

「は?」

「クリスさんのこと。」

「どうして…って。それは…」

そこまで言いかけてはたと止まる。


クリスのために…クリスのためにその想いを叶えて欲しい…


そう思っているのはまぎれもない事実。

しかし、そんな理由以上にクリスの想い人が気になって仕方ないのもまた事実なのだ。
アップルの言葉でその事実に気づかされる。

「私は…。」

自分の事なのに…サロメはその問いに上手く答えられない。

「ちゃんとクリスさんに聞いてみたら自分の気持ちがはっきりするんじゃないかしら?」

「自分の気持ち…。」

「ええ。あなたがクリスさんのことをそんなに気にかけているのには、他の意味があるんじゃないかしら?」


―あなたの気づいていない本当の意味が…


そんな思いを込めてアップルはサロメを諭すのだった。

「そう…ですな。」

まだはっきりとはわからないものの、アップルの言葉は徐々にサロメの心の靄を取り払っていく。

「自分のこともわからないで、人の心配してる場合じゃないでしょう?」

「は、はあ…。」

サロメは徐々にアップルのペースに乗せられていく。
アップルは最後の一押しをする。

「さあ。聞きにいってらっしゃいな。」

「いや、しかし…。」

未だに決心がつかないのか、サロメの態度ははっきりしない。

「もう!じれったいわね。迷ったときは”アップルにおまかせ”でいいんだってば!ほらほら♪」

「え?え?…」

変にノリノリになってしまったアップルに、サロメは強引に回れ右をさせられる。

そして、文字通りのアップルの後押しで、今度こそサロメはクリスの部屋へと向かうのだった。














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