SILVERMOON
間に合わない
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間に合わない
私は、ゼクセンの騎士を率いる立場で、
そんな私を彼は支えてくれる。
私はいつも頼ってばかり…
そしてそんなだからか、いつまでたっても彼は保護者止まり。
私も…彼のために何が出来るだろうか。
今の距離を変えることが…出来るだろうか。
そんな事を、最近よく考える。
「なかなか…難航しますな。」
「…ああ。」
クリスとサロメ、それと数名の配下の騎士たちが難しい顔をして机を囲んでいる。
机の上には結ばれるはずだった休戦協定の内容をしたためた書状が置かれている。それはもはや意味を成さないただの紙切れである。
机の上には結ばれるはずだった休戦協定の内容をしたためた書状が置かれている。それはもはや意味を成さないただの紙切れである。
クリス達が出向いているのはリザードクランの大空洞。
休戦協定を結ぶべく赴いているのだが、評議会、グラスランド双方の要望を通しながらの協定案は意見が折り合わず、なかなか思い通りにはいかなかった。
ゼクセン代表として赴いた面々はひとまず族長たちの集う広間から退出し、宿屋の一室を借り受け、こうして今後の対策を立てているのである。
休戦協定を結ぶべく赴いているのだが、評議会、グラスランド双方の要望を通しながらの協定案は意見が折り合わず、なかなか思い通りにはいかなかった。
ゼクセン代表として赴いた面々はひとまず族長たちの集う広間から退出し、宿屋の一室を借り受け、こうして今後の対策を立てているのである。
「仕方ありません。もう一度私があちら側と話をつけ、案を練り直しましょう。」
サロメがすっくと立ち上がる。
一同が期待と不安の入り混じった表情でサロメを見る。
皆の視線を感じ取り、サロメはふっと表情を緩めた。
一同が期待と不安の入り混じった表情でサロメを見る。
皆の視線を感じ取り、サロメはふっと表情を緩めた。
「何、ここまで来たのです。今更あせっても仕方ありませんからな」
その穏やかな物言いは皆の不安を打ち消す。
そしてそんなサロメを見ていると彼に任せていれば間違いないという確信が広がる。
そしてそんなサロメを見ていると彼に任せていれば間違いないという確信が広がる。
「そうだな…。」
それはクリスも同様で、サロメの言葉にすんなりと賛同した。
「しかしもうそろそろ出立いたしませんと夜半になってしまい帰城が間に合いません。」
騎士の一人が進言する。
今日のうちにブラス城へ戻る予定をしており、タイムリミットが迫っていたのである。
今日のうちにブラス城へ戻る予定をしており、タイムリミットが迫っていたのである。
「そうですな。もうそんな時間ですか。今から話をしていては間に合いませんな…。」
サロメはなにやら思案している。
「いったん出直すか?」
クリスが提案する。
「ふむ…そうですな…。」
クリスの声もあまり聞こえていないようでサロメは思案をめぐらせているようだ。
どうやら心はすでに休戦協定の練り直しに向かっているようだ。
どうやら心はすでに休戦協定の練り直しに向かっているようだ。
「クリスさま」
不意にサロメがクリスのほうを向く。
「どうした?」
「私はここに残ることにします。」
「え?」
突然そう宣言されてクリスは目を瞬かせる。
「クリス様は皆とブラス城へお戻りください。」
「え…でも…?」
「私も明日になればすぐに戻りますゆえ…」
「一人で残るのか?」
クリスはとがめる様にサロメに問いかける。
しかし休戦協定のことで頭がいっぱいのサロメにはクリスの非難も届いていないようである。
しかし休戦協定のことで頭がいっぱいのサロメにはクリスの非難も届いていないようである。
「問題ございません。では私はデュパ殿のところに今一度話して参りますので。」
くるりときびすを返しサロメは立ち去っていく。
「……」
一方的に告げられて、クリスは何も言えずに立ち尽くしていた。