Distorted Pain/日向の花 ◆yX/9K6uV4E



――――まるで、太陽のように輝きを放つアイドル達が居た。


世界を照らすように、燦々と。
その笑顔は人を明るくさせて、楽しくさせる、そんな、素敵なもの。
最高の笑顔を放ったアイドルの中のアイドル。

世界中の希望を一身に集めた、女の子。


その子の名前は、十時愛梨と言った。


沢山のアイドルから選ばれたシンデレラ中のシンデレラ。



普通の女の子が魔法で、シンデレラに変わって。



普通の少女達の『希望』だった。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







Distorted Pain/十時愛梨




私にとって、プロデューサーさんは、王子様でした。
こんなにも普通な私をシンデレラに変えてくれた人。

大切に、大切に、アイドルとして、育ててくれた人。


―――私の、大好きな、人でした。


だから、私も彼に見合うアイドルになるって決めた。
だから、私は頑張って、みんなに振り返ってもらうために。
私は、アイドルとして頑張って生きてきた。
辛い事も苦しい事も全部耐え切って。
楽しい事も嬉しい事も大切にしながら。

そして、私はシンデレラガールに選ばれて。

沢山の人に祝福されて。
沢山の人に賞賛されて。

そして、私の大好きな人が一番喜んでくれて。

私は嬉しかった。

何かご褒美が欲しい?と聞かれて。
私はたまらず、頬にキスをしました。


彼は驚いたけれど、お返しは、愛梨がアイドルとしてもっと輝いた後で、と照れて言ってくれました。
私は嬉しくて、涙を流して、もっと頑張ろうと思ったんです。

アイドルとして、皆の希望であるために。



――だから、殺し合いなんて、絶対出来なかった。


反対した、声を荒げた。
アイドルとして、死ぬなら、それでもいい。
そう、思ったのに。



死んでしまったのは、私の大好きな人でした。



声にならないなにかを、叫んで。
何もかもから、逃げたくなって。
絶望しか、なくて。


苦しくて、哀しくて、壊れそうになって。





私は、死を選ぼうとしたんです。




―――破滅へ向かう毎に少しの希望と、憧れ抱いて悲劇めいた少女は―――







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






――――そのアイドルは、まるで陽だまりのような、少女だった。


世界を温かにするように、ぽかぽかと。
その微笑みは朗らかで、優しくさせる、そんな、綺麗なもの。
最高の微笑みを放ったアイドルの中のアイドル。

世界中の優しさ一を身に彩った、女の子。


その子の名前は、高森藍子と言った。


FLOWERSという、トップアイドルグループのリーダーで。
一見取り得も無い女の子のように見えて、誰よりも、輝いている少女。
アイドルに囲まれていても、輝きを失われず、いつまでも輝いていて。



いつでも、彼女は優しくて、最高のアイドルだった。


そんな彼女は


普通の少女達の『希望』だった。





     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





日向の花/高森藍子




殺し合いが始まって、直ぐに出会った少女が居ました。
その子は、私もよく知っていて、テレビとかでも競演する機会が多い子でした。
気性もあって、仲がいい子です。
お菓子の食べ歩きとかしたり。
最近は忙しくて、あえなかったりしたけれども、大切な友人です。
まあ、誰でも知ってると思いますけど。
だって、一番取った子ですから、
最高の笑顔を放つアイドル……愛梨ちゃん。


「――――藍子ちゃん」
「愛梨ちゃん」


その子が、哀しい笑みを、向けていたんです。
手に不釣合いすぎる銃を握りながら。

「久しぶり……元気にしてた?」
「はい、互いに忙しかったみたいですけど、私は元気です」
「さすが、今を翔けるグループのリーダー」
「いえ、たいした事じゃないです」

違う、話したいことはそんな事じゃない。
今あることから、互いに目を逸らしてるだけだと思う。

「ねえ、愛梨ちゃん……つら――」
「言わないで」

それは、十時愛梨のプロデューサーさんが命を落としたこと。
なんて、声をかけていいかわからなくて。
つきなみな言葉を紡ごうとして、止められた。


「プロデューサーさん死んじゃった……わたしのせいで」


否定は出来ない。
否定してしまったら、それこそ彼女が不憫だから。
だれのせいでもないなんて、言えない。

「私が『アイドル』になったから? 身も丈も知らない夢を抱いたから?」
「違う、それは否定しちゃいけないです!」

それは、否定しちゃいけない。
だって……だって……


「私達が、アイドルになったことで、笑顔になったファンが沢山居るんです! 苦しい事、悲しい事を忘れるぐらい優しい気持ちになった人達が!」


私達がアイドルで、それで幸せになった人がいるから。
だから、絶対にそれは否定しちゃいけないんです。

「強いね、流石フラワーズのリーダー」
「ねぇ、愛梨ちゃん……笑って。そんな哀しい笑みを浮かべないで……貴方はシンデレラでしょう?」

茶化すように言う愛梨ちゃん。
私は見てられず、言葉を紡ぐ。
だって彼女は最高の笑みを浮かべる希望に満ち溢れた子だったから。


「――笑い方なんて、忘れちゃいました」


へへ、と言って。
彼女は困ったように、笑う。
それは、哀しい笑みでしかなくて。
絶望に染まってるような笑みで。


「だから、きっと、アイドル……『失格』なの」


そう言って、彼女は私に銃を向けた。
どうして、なんて言葉は言えなかった。
きっと、彼女は………………


「殺し合いに……乗っちゃったんですか?」
「はいっ」

不釣合いな、明るい返答。


だって、と彼女は言って。



「『生きて』……と、――さんがいったから」


シンデレラは、泣いていた。
大事な王子様の最後の言葉を呟いて。
その言葉だけに縋って。
何も残ってないシンデレラは生き残る為に、最も辛い道を選んだ。



「それは、違います。愛梨ちゃん。プロデューサーはきっと……そんなつもりで、その言葉を紡いだんじゃないんです!」


でも、それは違う。
きっと、いや、絶対違う。


「アイドルとして、愛梨ちゃんが笑顔を忘れないように、優しい気持ちで居られるように、ファンの皆を忘れないために……そして何より……」


答えは、一つでしょう?


「愛梨ちゃんに、アイドルでいてほしいから!」



そして、渇いた銃声が鳴った。





     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






言葉が、反芻する。


――――愛梨ちゃんに、アイドルでいてほしいから!



――――お返しは、愛梨がアイドルとしてもっと輝いた後で




でも、十時愛梨は、普通の女の子なのです。




ただの、普通の、恋していた、少女、でしかないのした。



だから、私は大好きな人の最後の言葉を大切にして、生きていくしか、無い。


だから、だから、私はどんなに絶望しても。



殺して生きていくと決めたのだ。





―――――破滅へ向かう毎に少しの希望と憧れ抱いて悲劇めいた少女は



――――あの時貴方がくれた一言だけを大事にしてたと思い出して生きてく!




【G-2/一日目 深夜】
【十時愛梨】
【装備:ベレッタM92(15/16)】
【所持品:基本支給品一式×1、予備マガジン×5 不明支給品0~1】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:生きる。
1:殺して、生き抜く。

※楓と同じPです。またOPで声を上げたアイドルです。






     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






―――流石、藍子ちゃんは、『希望』のアイドルだ。


愛梨ちゃんの言葉が響く。
銃弾は、私の顔の横を通って、消えた。
狙って外したのか、解からない。
そうだと、思いたい。


――――そんな、同じ高みに立ったアイドルだから、お願いするね。


彼女は、言葉を残して去っていた。
それは、私にとっても重みで。




――――最後まで、私の代わりに輝いた最高の『アイドル』で居てください



そんなお願いだった。
今を翔けるFLOWERSのリーダーとして。
いつまでも、輝き続けてと。

彼女は言った。


「当然です……だって、私はアイドルだから」

歌が上手い夕美ちゃん。
ダンスが上手い友紀ちゃん。
魅力的な美羽ちゃん。

その中で、私はアイドルに向かないかなと思った時もあった。
それでも、みんなは私にリーダーであるように願った。

貴方が、相応しいからと。

プロデューサーも応援してくれてるから。
私の……私の……大好きな人。
恋してる人の為にも。

だから、私はアイドルだ。

ファンのすべてが。
今のすべてが。

私にとって宝物だから。

だから、

「愛梨ちゃん……でもね、自分がアイドルじゃなきゃ……いけないんです」


私は


「殺し合いを止めて、皆がアイドルで居られるように……私は頑張ります」



頑張ると、決めたのだから。





【G-2/一日目 深夜】
【高森藍子】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品1~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いを止めて、皆が『アイドル』でいられるようにする。
1:愛梨ちゃんも止める。

※FLOWERSというグループを、姫川友紀、相葉夕美、矢口美羽と共に組んでいて、リーダーです。四人同じPプロデュースです。


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最終更新:2012年12月12日 20:46