孤独月 ◆yX/9K6uV4E
――泣かない約束した、限りなく続く未来に また明日会えるかな? 言葉を残して……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
わたしは、緒方智恵里は、ずっと不幸な、人間でした。
そうだと、決め付けていたんです。
生まれてから、16年間碌な事がないと思っていて。
それぐらい、わたしは不幸で、不運で。
いつも、哀しくて、苦しくて。
なんで、こんな目にあうんだろうっていつも思っていました。
いつも、酷い目にあって、苛められて。
どうしてだろうって。
でも、そうやって、いつもわたしが、悪いと、決め付けました。
臆病で、泣き虫で。
弱気で、愚図で。
どうしようもないくらい、駄目なんだなと。
だから、見捨てられるんだって。
誰も彼もから、わたしは。
とても、不幸だったけど、それはわたしのせいでもありました。
でも、それでいいんだって。
自分を変えることなんて出来なくて。
わたしは閉じ篭ってしまいました。
何処にも行きたくなくて。
人の目が怖くて。
だから、閉じこもる事が幸せでした。
でも、それだけじゃ哀しすぎたから。
たまに部屋に外にでて、誰も居ない河原にいくんです。
そこで、暖かい日向の中、四葉のクローバーを探すのが楽しかったんです。
幸運の証を、一つずつ集める。
そうすれば、幸せになれる気がしたから。
そんな、ささやかで、ちっぽけな幸せだけで充分でした。
わたしは、そうやって閉じこもって。
誰とも接触せずに、学校すら行かないで。
そんな日々がずっと続いて。
――泣かない約束した、限りなく続く未来に また明日会えるかな? 言葉を残して……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
わたしは、緒方智恵里は、ずっと不幸な、人間でした。
そうだと、決め付けていたんです。
生まれてから、16年間碌な事がないと思っていて。
それぐらい、わたしは不幸で、不運で。
いつも、哀しくて、苦しくて。
なんで、こんな目にあうんだろうっていつも思っていました。
いつも、酷い目にあって、苛められて。
どうしてだろうって。
でも、そうやって、いつもわたしが、悪いと、決め付けました。
臆病で、泣き虫で。
弱気で、愚図で。
どうしようもないくらい、駄目なんだなと。
だから、見捨てられるんだって。
誰も彼もから、わたしは。
とても、不幸だったけど、それはわたしのせいでもありました。
でも、それでいいんだって。
自分を変えることなんて出来なくて。
わたしは閉じ篭ってしまいました。
何処にも行きたくなくて。
人の目が怖くて。
だから、閉じこもる事が幸せでした。
でも、それだけじゃ哀しすぎたから。
たまに部屋に外にでて、誰も居ない河原にいくんです。
そこで、暖かい日向の中、四葉のクローバーを探すのが楽しかったんです。
幸運の証を、一つずつ集める。
そうすれば、幸せになれる気がしたから。
そんな、ささやかで、ちっぽけな幸せだけで充分でした。
わたしは、そうやって閉じこもって。
誰とも接触せずに、学校すら行かないで。
そんな日々がずっと続いて。
変わる切欠が来て……しまったんです。
河原で、四葉のクローバーをいつも通り探してたら。
急に話かけてきた、男の人。
ぽかぽかな陽気につられたきたのでしょうか。
兎に角、平日の昼間に学校も行かずにいるわたしは、びくびくしました。
補導されちゃうんじゃないかって。
逃げ出そうとして、結局怖くて逃げ出せなくて。
話しかけられても、ぷるぷる震えるだけでした。
そして、わたしは、
「い、いや……ふ、ふぇぇ……」
泣き出してしまって。
怖くて、哀しくて。
そんな自分に失望して。
でも、あの人は
――大丈夫、泣かないで。何もしないよ……ねえ、君はなにしてたの?
と優しく、声をかけてくれて。
わたしは手にしてた四つ葉のクローバーを無言で見せて。
あの人は笑ってくれて。
――じゃあ、僕も探そう。
といって、探し出してくれました。
ぽかんとしながら、わたしも手伝い始めて。
そして、一つの四葉のクローバーを見つけることができたんです。
そしたら、わたしは久しぶりに笑えていて。
あの人も笑ってくれて、わたしにたいして
――明日、また会えるかな?
そう、いってくれて。
わたしは、こくんと頷いてしまいました。
何故か解からないけど、わたしといてくれる。
それが、何か嬉しくて。
それが、プロデューサーとの出会いでした。
彼は、こんなわたしでも、傍に居てくれて。
わたしは河原で話し合うのが好きになって。
やがて毎日河原にきはじめて。
彼も付き合ってくれて。
辛いこと、哀しいことすら、話せていました。
涙ばっかりでちゃったと思うけれど
三週間ぐらいたった後でしょうか?
春風が心地よい日でした。
わたしに一つの名刺を差し出して。
其処にはプロダクションの名前が書かれて。
アイドルになりませんかと。
わたしに問いかけてくれたんです。
わたしはビックリして、出来ない、無理ですとばかりしかいわなかった。
だって、またそんな状況になったら、苛められる、無視される、見捨てられる。
絶対いやだ、いやだと、言って。
怖い、怖い、怖いと。
けど、あの人はいってくれました。
「見捨てない、護ってあげるよ」
と。
差し伸べられた手は温かくて。
嬉しくて、嬉しくて。
誰かに必要にされてるんだと思って。
わたしは、
「……はい」
それが、アイドルになった切欠でした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
月がまんまるで、綺麗でした。
わたしは、殺し損ねた後、街を歩いていました。
今度はしっかり殺さないと……
そう思って、わたしがたどり着いたのが病院。
此処に、怪我してる人とか着てるはず。
そう思って、中に入ると
「ひっ……」
てんてんと、床についていた血痕。
紛れもなく、人の血でした。
よせばいいのに、わたしはそれを辿ってしまっていて。
……そして。
「……あ……あぁ……あぁぁああああああああああああ!?!?」
絶叫。
見つけてしまったのは、小さな遺体。
右半分が見ることも出来ないぐらいに、焼け落ちた、一つの遺体でした。
そして、無事な左半分の姿には見覚えがありました。
一緒に仕事した事もある。
小さいけど不思議な色気もあって。
でも、可愛らしい、可愛らしい少女で。
「あぁ……ちえ……ちゃん……なんでぇ」
酷い、有様でした。
こんなの千枝ちゃんじゃない。
そう思いたいのに、彼女だと解かる自分が嫌で。
こんな哀しい死に方なんて。
そんなの酷すぎる。
自分が誰かを殺そうとした事を棚において。
私は、哀しくなって。
涙が出そうになって
――――約束を思い出したんです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アイドルとして、デビューして少し経ったぐらいでしょうか。
わたしは、まだ臆病で。
弱気でプロデューサーの背中に隠れる事が多くて。
そんな駄目だったわたしは…………やってはいけないミスをしてしまいました。
ミニライブで、全く声が出なくて。
大してファンも居ない小さいものだったけど、大事な一歩になるはずのライブで。
わたしは、声が出なくて、終いには泣き出してしまって。
プロデューサーが折角用意したものを、台無しにしてしまいました。
私は、また、逃げ出しました。
そして、また閉じこもればいい。
臆病で、泣き虫で。
弱気で、愚図で。
どうしようもないくらい、駄目な私なんだから。
それが、お似合いなんですと思って。
そして、夕暮れの河原で一人泣いていた時。
やっぱり、プロデューサーがやってきたんです。
わたしを慰めて。大丈夫だよと。
失敗は誰でもあると。
だから、また頑張ろうと。
でも、私は出来ないとまた言っていました。
臆病で泣き虫で、駄目な私なんだから。
そう言ってプロデューサーを突き放そうとして。
そんなプロデューサーが差し出したのは一つの手紙。
ファンのメッセージ。
逃げ出した私への心配する言葉でした。
そして、プロデューサーは言ったんです。
――――僕も智恵里のファンだから……もっと君の笑顔を見せて欲しい。
そしたら、嬉しくて、嬉しくて。
だって、必要とされてる。このわたしが。
嬉しくて、泣きそうになって。
――――言ったよ? 見捨てないって。
その言葉が嬉しくて。
もう本当に、どうしようもないぐらい、わたしは幸せに感じて。
だから、涙が出そうになって。
―――ストップ。智恵里、約束しよう。
約束?
なんだろう?
―――智恵里がトップアイドルになるまで、泣かない。応援するから、ずっと笑っていよう。できるかな?
泣かない……出来るかな?
でも、この人の約束は護りたい。
絶対に、絶対に破りたくない。
だから、わたしは小指をだして。
「「ゆびきりーげんまんうそついたら――――」」
泣かない約束を、したんです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ、つっつーーー」
涙を、こらえました。
泣いちゃ、いけない。
泣いちゃ、駄目なんです。
約束したから、泣かない約束をしたから。
「千枝ちゃん……千枝ちゃん」
そう、彼女の無事な小さな左手を握りながら、私は名前を繰り返し呼びました。
彼女は二度と私の名前を呼んでくれない。
解かってる、解かってるのに。
私は繰り返し彼女の名前を呼びました。
ああ、哀しい、苦しい、です。
それでも、私は泣かない。
あの人の為に、私はっ。
誰かを殺さないと……いけないんです……いけないんですよぉ。
出来なくても、殺さないといけないん……ですよぉ。
あの人が私を見捨てなかったように、私もあの人を見捨てられない。
大好きだから、大好きだからっ!
護らなきゃ、護らなきゃいけないのに。
でも、こんなの見て……殺せる訳……ない……ですぅ……あぅ。
ぅあ…………っーあぁー。
「……っ!!……泣かない、泣かない、泣かない! ちえり、ふぁいと!」
ひたすら、自分を応援する。
だって、だって、約束だから。
プロデューサーとした約束だから。
やぶりたくない、やぶってはいけない
――――泣かない(泣けない)約束だから。
プロデューサー。
わたし……わたしは……泣かない。
でも……わたしに殺しなんて、できないかもしれない。
どうすれば、どうすればいいですか?
「…………千枝ちゃん…………」
握り締めた小さな手は冷たかった。
でも、せめてわたしの手の温かさを伝えたくて。
願い続けたのは彼女の幸せ。
「プロデューサー……プロデューサー」
助けたい、絶対に助けたい。
大好きだから、大好きだから。
絶対に護りたい。
のに。
「どうして………………この手は、こんなにも、冷たいの?」
温かな河原はもはや遠く。
握り締めていた手も、私の手も、こんなにも冷たかった。
そして、わたしは、人の死すら、泣けなくて。
空には、真丸い月が、独り、わたしを照らしていた。
――泣かない約束した、限りなく続く未来に 右手に握り締めた、破壊されたものを。
【B-4 病院/一日目 黎明】
【
緒方智絵里】
【装備:アイスピック】
【所持品:基本支給品一式×1、ストロベリー・ボム×10】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:生き残り、プロデューサーに想いを伝える。
1:殺し合いに賛同していることを示すため、早急に誰か一人でもいいから殺す?
最終更新:2013年01月13日 18:32