こいかぜ ◆yX/9K6uV4E



―――ずっと想い続けるの 誰にも負けないほど君のそばにいたい ずっと










     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






【集合】


空港の一室に、五人のアイドルが揃っていた。
亡くなった一人アイドルが横たわるソファの隣で、彼女達は話を始めようとする。
生きるために、生き残る為に、彼女達は、方針を定めるのだ。
それが生き残った者の定めだから。


「殺し合いはしない……その前提でいい?」

年長者の高垣楓の確認の言葉に、残りの四人の少女が一斉に頷く。
楓は返事を受けて、じゃあと言葉を紡ぐ。

「これまでの事とこれからの事を話しましょう。昼の放送までかかるだろうし」

まずは、これまで五人がどういう風に生きてきたか。
そして、これからどう生きるのか。
大事な、大事な一歩だ。
リスタートする五人にとっては。


……いや、


「…………私も加えてもらって良いかしら?」
「……誰!?」
和久井留美よ。ナターリアちゃんは久しぶり」
「留美さんっ!? 生きてたんだネ!」
「ええ……私も殺し合いはしてないわ……信じてもらえるか解からないけど」



『6人』だった。
ヒロインである筈の和久井留美が姿をさらし、話し合おうとしている。
その意図はわからないけど、この輪に加わろうとしている。

「……いいわ、どうせ皆同じようなものだし」

楓は、留美を一瞥し、ふうと溜め息をついて、笑う。
この際一人増えた所で大きくは変わらない。

兎に角、もう一度、始まるためには、話さなければならないのだ。

これまでの事、これからの事を。



そうして話し合いは――始まる。








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





【ナターリア】



「まずは、ナターリアから話すネ……」

まず、口火を切ったのは、異国の少女、ナターリアだった。
胸に手を当て、深呼吸をして。


「ナターリアは……もう、二人も殺しタ」
「……え、二人?」

自分の罪の告白をした。
その言葉に、驚きの声を上げたのは、フラワーズの一人矢口美羽だった。
一人は美羽にも解かる。
今もソファーで横たわっている佐久間まゆだろう。
じゃあ、その前にも一人居るという事だ。
恐らく放送で呼ばれた十五人の中に。

「……ミリアを、撃ってしまっタ」
「みりあちゃんが……」
「事故と言えば良いけド……そんなので逃げちゃ駄目だヨ」

赤城みりあ
天真爛漫の可愛らしい女の子。
美羽は彼女の事を知っている。
その彼女をナターリアが撃ったという。
信じられないことを言うが、こんな冗談を言う訳もない。


「つまり、そこで死んでいる彼女も、貴方が?」
「うん……そうだヨ」

何も知らない留美が、まゆの死もナターリアの手によるものかと訊ね、ナターリアは素直に首肯する。
なるほどとだけ留美は言い、続きをナターリアに促す。
その態度に、美羽は少しだけ違和感を示した。
この人はなんで、生々しい死体にこんなにもドライなんだろう?
幾ら年上とはいえ、明確な死に何も反応しないなんて。

「ナターリアがしてしまった事は許されなイ……きっと重い罪だと思ウ」
「……ナターリア」
「御免なさい……御免なさい……」

そして、ナターリアは謝罪を繰り返す。
きっと、謝っても許さない人は絶対に居る。
みりあとまゆの両親とかは絶対にそうだろう。
でも、それでも、ナターリアは謝る。
自分が犯した罪は罪なのだから。

「……でも……ナターリアは、それでも、歌を、皆に、届けるヨ」


それが、ナターリアのこれまでの事。
そして、ナターリアのこれからの事だ。


「殺してしまったケド……それでも、心に燃える太陽は、想いは、冷めない……熱いままデ」


心に太陽を。
太陽は、冷めない。
熱く、熱く、燃えるように。


「亡くなった人に想いヲ……生きている人に応援ヲ……そして、殺してしまった人にモ……」


すべての人に


「熱い歌を、届けるんダ! それが、ナターリアがやるべき事……ウウン……したい事ダヨ!」



心の太陽を燃やせるように。
ナターリアは歌を歌う。
そう、決めたのだから。


「……流石ナターリアだね」
「そんな事無いヨ、ミウ」
「ううん、きっとそう」
「ミウもライブ会場で、一緒に歌おう! フラワーズのミウなら、届くヨ!」


そして、美羽はまざまざとナターリアの、アイドルの強さを見せ付けられたような気がする。
なんで、そんな罪を犯したのに、貴方は強いの?
そう問いかけたい気持ちで一杯で。
ナターリアの強さを感じる一方で。


――ねえ、殺したしまった人の言葉なんて誰が聞くの?


そう、問いかけたい。
何もかも詭弁の聴こえて。
美羽は、不思議な気持ちで、ナターリアを見つめていた。



それが、ナターリアのこれまでとこれからだった。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






南条光


「じゃあ、次はアタシ」

そう言って、ナターリアの次に手を上げたのはヒーローに憧れる少女、南条光だった。
一同が光に視線を集め、光は少したじろぎながら、言葉を紡ぐ。


「これまで……そうだな、アタシは……菜々さんとあって」

紡がれた名前。
安部菜々
おっさん臭い、けれど可愛い少女だった事を道明寺歌鈴は覚えている。
でも、彼女は確か……


「彼女はプロデューサーを助ける為に、殺しにかかってきた、アタシを」


もう、放送に呼ばれていて。
それはつまり。


「そして……アタシは菜々さんを倒した」


光が殺してしまったという事。
この事を光はどう受け止めているんだろうか。
正当防衛といってしまえば、その通りだろう。
素直に殺されれば言いとか、誰が言えるものか。

「正当防衛かもしれない……けど、それしか方法が無かった……というより、わからなかった」

それが正しいのか。
そんなもの解からない。
正しい方法なんて、誰が判断するのか。

「そういう意味では手を汚してしまったのはナターリアと変わらない。罪を背負ってる」

だから、光は臆せず罪を背負ってると素直に言う。
ヒーローがいつも正しいとは限らない。
ヒーローだって沢山罪を背負って、それでも自分が信じる何かの為に戦っている。


これが、南条光のこれまで。


「だからはアタシは……まあ、ナターリアと変わらないんだけど、さ」


そして、南条光のこれからの事。


「アタシはヒーローであり続ける。間違ってるかもしれない。正しくは無いかもしれない……けどっ」


南条光は、ヒーローでいたくて。
それが間違いや正しくないとしても。


「アタシが憧れたヒーローとして、太陽として燃え続けるよ!」


憧れたヒーローとして貫く。
迷っても、苦しんでも。
いつまでも真っ直ぐに。
ヒーローで居るんだと、光は誓う。
太陽は不変に燃え続けるんだから。



「だから、ナターリアについていく。そして心の太陽を……見せ付けるんだ!」



それが、南条光のこれから。




ヒーローであり続けたい少女の思いだった。



けれど、光は、ヒーローで、いられるのだろうか?


いつか、背負った罪に押しつぶされないのだろうか?




だって、光は、所詮―――十四歳の少女でしかないのだから。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






【矢口美羽】


「……次は私、かな」

そうして、フラワーズの矢口美羽の番が回ってきた。
歌鈴と一緒に行動していたし、これまでの事は二人ほどしてる事は無い。

「まあ、単純に言うと、殺し合いに乗ってました。歌鈴ちゃんと」

ただ、決定的に違うのは、殺し合いに乗っていたという事だけ。
二人で話し合って、決めた事だ。

「集団に潜り込んで、こっそり殺して……なんて、考えていたんですけど」

美羽は其処まで言って、ちらっと歌鈴を見る。
歌鈴は気まずい笑みを浮かべていて。
はあと心の中で溜め息をつきたくなる。


「まあ、楓さんに歌鈴ちゃんがぶっちゃけたので、ご破算です」
「……ご、御免なさい」
「流石に、もうあの死体みて誰か殺したいとか思いません」

これが、私のこれまでの事ですと美羽は簡潔に言う。
前の二人ほど、壮絶な経験した訳でもない。
けど、大事なのは。


これから。


「私は、フラワーズのメンバー誰か一人を生かしたい……その考えで、殺し合いに乗って……それは、全く変わっていません」


大切な、フラワーズ。
その誰かを生かすという事。
それは全く変わってない。

だって、自分には何も残っていないから。
自分はきっと輝けないから。
あんなにキラキラ輝いたフラワーズ。
そんな、フラワーズの希望なんて、アイドルの希望なんて。



「だから、どのように……彼女達を生き残らせるか……それだけを考えています」



私には、似合わない。
私は、ただの女の子だから。


何も決まってない。
何も定まらない。
そんな、矢口美羽のこれから。


いつかは覚悟を決める。
未だにポケットに入っている拳銃の、たった一つの銃弾が。
いつまでも、心に残っていた。



それを、和久井留美は静かに聴いていた。
ああ、この子はいいと思う。
とても、聡い。
誰かと協力し、そして潜り込む。
殺し合いに乗った留美だからこそ、彼女の考えは正しいと思う。
間違いはパートナーは選び間違ったぐらい。

なら、パートナーを変えればいい。
今は殺し合いは出来ないし、実際したくないだろう。
最初に一線を越えないまま死体を見ればそうだろう。

だけど、それは、いつかこちら側に立てるという事。
後は切欠さえ、あればいい。


(ねえ、美羽ちゃん。貴方の覚悟を……私は楽しみにしてるわ)



そしたら、きっと、私達は―――







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







【道明寺歌鈴】


「じゃあ、美羽ちゃんに続いて……」

4番手は、巫女の道明寺歌鈴だった。
立ち上がる時、全力でこけそうになったが、それもいつも通りだった。
歌鈴のこれまでは…………


「……といっても、はい美羽ちゃんと大体一緒です」

えへへと恥ずかしそうに歌鈴は言う。
先程まで一緒に行動していたのだから、美羽と被るのは当然だった。

「でも、私は楓さんが死んでもいいと言った時、何処かでわたしが変わったと思うんです」

けど、楓と会った時、歌鈴は変わったのだろう。
楓にあって

「楓さんがずるいと思って……皆、皆、怖いのに死にたくないのに」

皆、怖くて。絶対死にたくないのに。
彼女は死んでもいいといって。

「私は大好きな人が居ます。プロデューサーさんです」

大好きな人。
自分のプロデューサー。


「その人の為に殺そうと思って……でも、殺そうと思って、殺せと言われたら何もできなくって……わたし、駄目駄目ですね」


その人の為に殺そうと思った。
けど結局殺し合いなんて出来なかった。

それが、道明寺歌鈴のこれまで。


これまでを経験して、歌鈴はこれからを語る。
それは、道明寺歌鈴のありのままの心だった。


「………………わたし、プロデューサーと結婚の約束をしているんです」
「……えっ」
「どうしました? 留美さん」
「……なんでもないわ。続けて」


歌鈴は、プロデューサーと婚約をしている。
大好きな人と約束しあった。

「トップアイドルになってからって……大切な夢なんです、絶対に無くしたくない夢なんです」
「……っ」
「だから、わたし、絶対に死ねません、死にたくないです。生きたい。生きてプロデューサーに会いたい。それが本心です」

大切な夢。
絶対に無くしたくない夢。
だから死ねない。
それが偽りざる本音で。

何故か言葉を紡ぐたび、留美が歌鈴を注目していたが、歌鈴はきにしない。

「でも、気付いたんです。アイドルとして、会わないと駄目だって」
「……どうして?」
「だって、そう約束したから。アイドルとしての歌鈴が好きで、そしてそれが、私と彼との約束だから」
「……っ!?」


そして、歌鈴はいう。
アイドルとして彼に会うと。
彼と交わした約束だから。
そういう夢だから。


「それに美穂ちゃんに……大切な親友の小日向美穂ちゃんに、会いたい。言葉を交わしたい」

小日向美穂。
大切な親友。
そして、裏切ってしまった親友。

「奪ってしまったから……ちゃんと、話し合いたい。彼の事を……どうなるか、解からないけど」

話したい。
話し合いたい。

「話さなきゃ…………駄目なんです。それが、わたしのこれから、です」



それが、恋に生きる少女の、これから。








(ああ…………なんて、眩しいの)


そんな、彼女をみるのは、和久井留美。
彼女もまた将来をプロデューサーと誓った人。
眩しい、眩しすぎる。
道明寺歌鈴が。


(……私も彼女のようにならなければならなかった?)


だって、そういう約束を自分もしていたのだから。
アイドルとしてならなかったのは、留美だって一緒だというのに。
でも、でもだ。
そこまで、愛してる人が居るのに。




―――どうして、貴方はアイドルでいられるの?



問いかけたい、言葉。


そんな



対極の位置に、道明寺歌鈴と、和久井留美は、居た。



アイドルとヒロインは、交差するのだろうか?









     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





【和久井留美】


「じゃあ、先いわせてもらおうかしら」

そうして、声を上げたのは、ヒロイン和久井留美。
彼女は五人を様子見していて。
そして、決めたのだ。潜り込むと。
どうやらこれから、話し合いをするらしい。
ならば、何かしらの情報などが沢山はいるだろう。
そう思ったから。
幸いナターリアがいたから、信じてもらえる。
だから、留美は行動をおこし、偽り合流した。

「これまでのこと……遺体になった今井加奈さんをみたわ……その後北東の町で火事があったのを見て避難してきたわ」

嘘は言っていない。
彼女を遺体にしたのは、自分自身だが。
それで、空港に着てみたら貴方達がいた。
そう伝えて、これからの事を話すと留美は言う。

「貴方達と行動したいわ。ちひろさんが何したいか解からないしね」

それも事実だ。
ただし、殺す隙を窺いながらという条件で。
内部に居て信頼を得れば、分断することもできるだろう。
そういう判断を下し、留美は此処に身をおく事を決めた。
勿論信頼はしない。殺されるかもしれないのだから、危険を察知したら直ぐ見切る。
そういう判断だった。

幸い収穫はあった。
矢口美羽と、道明寺歌鈴。
この二人は面白い。
特に前者は、興味深い。

さて、どうなるか。


(どうでても……私は優勝を目指すだけよ)


どうなろうとも、留美は、あの人の為に、戦うだけ。


それだけ。










     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【高垣楓】



「………………私ね」


そして最後に回ってくるのは、高垣楓。


「わたしのこれまでは……死んでもよかった。それで終わってしまうわ」

呟く言葉は簡潔で。
死んでもよかった。
だって、


「私のプロデューサーが死んだ。それが理由だった」


プロデューサーが死んだ。
それだけで充分だったから。


「なのに、まゆちゃんがついてきて……そして、ナターリアちゃんの事があって、今に至るわ」


楓は大分はしょって言った。
まゆのことは語りたくなかった。
だって、それは楓とまゆの事だから。



「それで、これからの事か…………ふふっ、言っておいてなんだけれど、何も考えてないのよ」

これからの事。
何にも考えてなかった。
色々託されたものがあった。
でも、解からない。
言葉も想いも出ない。


だって、


「私はプロデューサーに恋していた……それだけで、もう叶わない思いを抱きしめているのよ」


楓を未来に連れて行く風は吹いてない。
それだけ。
未だに時が止まっている。



動かすとならば



「………………死んだプロデューサーは、貴方のプロデューサーでも会ったのね。シンデレラガールズだけじゃなくて」
「……ええ、そうよ、留美さん」
「なら、彼が最後になんて言ったか聞いてないの?」
「――――え?」




それは、



「――――生きて」




こいという、かぜだろう。












     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇











ああ。
ああ……ああ。

なんて、なんて、あの人は。


出逢いは本当偶然で。
本当なんで好きになったかなんて。
解からない、けど。


でも、私は、出逢って。


初めて、恋をしたんだろう。


それなのに、彼は死んで。

私は、苦しくて、痛くて。


言葉にできない痛みを きっと恋と呼ぶのでしょう。

感じてる 初めて恋して生まれたこの瞬間を。



声が、リフレインする。
あの人が、私の名前を呼ぶのをリフレインしている。
楓さんと優しく呼ぶのが忘れられない。





ああ、なんで、今になって、こんなに溢れるの?
苦しいほど、想いが、言葉が溢れていく。


ねえ、貴方は、どうして、そんな言葉を残したの?




――――生きて。



そんな言葉を。
私は、私は。

どうかかれば、生きていけばいいの?
ねえ、何でそんな言葉を?



――――まゆは……かえでさんに、いきていてほしいんです……。わがまま……かも、しれませんけど……しんで、ほしくない……



ああ、どうして、皆、私に生きることを望むの?
どうして? ねえ?

まゆちゃんも、あの人も?



おしえ……



――天国に行っても、ずっと見ていますから……



……不意にリフレインする言葉。


あぁ……あぁ、そうなのか。

そうか、そうなんだ。


死んでも、死んだとしても、あの人も、いろんな人が、私を見ている。



高垣楓を。
自分をプロデュースしたアイドルを、ずっと見守っている。
だから、生きてと言った。


どうして?
そんな簡単だ。


彼がプロデューサーだから。
私がアイドルだから。
そんな関係でも。


私達にとって、絆で何処までも行ける『翼』なんだ。



彼は言っていた。約束すると。


素晴らしいアイドルにするって。
何処までも、何処までも飛んでいくアイドルにと。



あぁ……ああ……ぁあ……


じゃあ、私は。



いつまでも、見守られて。
そして、生きてという言葉を、残してくれて。
そんな彼だから私はついていって。





だから、私は、彼に恋をして!





私は―――





―――アイドルになったんだ!







今も、想いで胸が痛い。
苦しくて、苦しくて仕方ない。

これが、恋で、愛なのでしょう。


でも、だから。



君だけを 想う気持ち 伝えられる勇気が、

私にあれば切ない夜にさよなら出来る。

願いを込めて 私の愛を願って。




――――さん、


踏み出す力下さい。











     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇










気がつけば、涙が溢れていた。
それでも、立ち上がっていた。
哀しいけれど、苦しいけど。
それでも、前に歩けていた。
ちょっとした、広い場所に出て。


楓は、ステップを踏んでいてた。
彼が私にくれた曲。
どこまでも風が感じられるような曲。

手を翼のように振るう。
脚は風のように舞って。

まるで、『神秘の女神』のようなオーラを放ち。


其処に居たのは、紛れも無い『アイドル』だった。


「ココロ風に 溶かしながら 信じてる未来に つながってゆく」


翼に恋という風を受けて。


「満ちて欠ける 想いはただ 悲しみ消し去って しあわせへ誘う」


この想いを抱えながら。


「優しい風 包まれてく あの雲を抜け出して鳥のように like a fly 」




高垣楓というアイドルは、


こいかぜを受けて、翼を羽ばたかせて。




――――生きることを決めた。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






そして、溢れるのは拍手だった。
割れるばかりの拍手。
楓が振り返ると、其処には彼女を見ていたアイドル達がいて。

「…………ありがとう」

楓は微笑んで、お礼を言って。



「これからの事を宣言するわ」



太陽は昇っている。
空は何処までも、蒼い。

風は、いつまでも、吹いている。


「高垣楓は、生き続けるわ。アイドルとして、あの人が育ててくれたアイドルとして!」


風は、いつまでも、吹いている。



「どこまで、飛んでいってみせる!」


なら、何処だって、飛べる!



それが、あの人に恋して、生きることを望まれた楓なのだから。


アイドルとして。



生きるんだ。


こいかぜは、いつまでも、楓の心に、吹いている。








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「さて、放送まで休憩ね」
「ええ」

そうして、その後、6人は放送まで休憩することを決めた。
その後、ライブ会場に向かう事に決めた。
もう楓は迷わない。
生きる、生きて生き抜いてみせる。
そう決めたから。

「まゆちゃんのプロデューサーにも伝えないと……ね」
「何かしら?」
「女の約束よ」
「そう」

留美に言おうかと思ったが、それは内緒にすることにした。
だって、それはまゆとの約束だから。
生きると決めた以上、約束は、絶対護る。

「まずはお昼ご飯ね」
「……私に作れるかしら」
「まぁまぁ肩肘張らず、和久井さん、これもワークです」
「そ、そう……(駄洒落?)」

そして、みんなでお昼を作ろうと決めた。
生きるためには、ご飯だ。
そうして、二人は喫茶店に向かう。
四人はちょっと前で先に歩いている。



「―――さん、生きますから……だから、見守って」


返事は無いけど。
うんといってくれたはずだ。

だから。


「恋して、ました、大好きでした」



想いを伝えて、前に、行こう。



優しいかぜが、吹いていた。




【D-4 飛行場/一日目 昼】

【高垣楓】
【装備:ワイン】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品x1~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:アイドルとして、生きる。生き抜く
1:アイドルとして生きる。
2:まゆの思いを伝えるために生き残る
3:今はご飯ね。


【矢口美羽】
【装備:歌鈴の巫女装束、タウルス レイジングブル(1/6)、鉄パイプ】
【所持品:基本支給品一式、ペットボトル入りしびれ薬】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:フラワーズのメンバー誰か一人(とP)を生還させる。
1:とりあえずフラワーズの誰か一人は絶対に生還させる


【道明寺歌鈴】
【装備:男子学生服】
【所持品:基本支給品一式、黒煙手榴弾x2、バナナ4房】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:プロデューサーの為にアイドルとして生き残る。
1:プロデューサーに会うために死ねない。
2:美穂と話し合いたい。


【ナターリア】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式、ワルサーP38(8/8)温泉施設での現地調達品色々×複数】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:アイドルとして“自分も”“みんなも”熱くする 。
1:B-2野外ライブステージでライブする。
2:心に太陽を。


【南条光】
【装備:ワンダーモモの衣装、ワンダーリング】
【所持品:基本支給品一式】
【状態:全身に大小の切傷(致命的なものはない)】
【思考・行動】
基本方針:ヒーロー(2代目ワンダーモモ)であろうとする。
1:仲間を集める。悪い人は改心させる
2:ナターリアについていく。



【和久井留美】
【装備:ベネリM3(6/7)】
【所持品:基本支給品一式、予備弾42、ガラス灰皿、なわとび】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:和久井留美個人としての夢を叶える。
1:潜伏し、機会を窺う。
2:『ライバル』の存在を念頭に置きつつ、慎重に行動。無茶な交戦は控える。
3:『ライバル』は自分が考えたいたよりも、運営側が想定していたよりもずっと多い……?
4:矢口美羽の動向に興味。
5:道明寺歌鈴に対して……?


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最終更新:2013年05月07日 06:29