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食事が終わった後、あの忌まわしい放送が始まった。
幸いにして、南条光に近しい人間の名前が呼ばれることはなかった。
例えばずっと心配している小関麗奈古賀小春
この二人が呼ばれなかったことで、正直光は安堵していた。


けれど、それは光だけの事情に過ぎなかった。


「雫さんが……雫さんが死んじゃった……」
「美羽ちゃん……泣かないで……ぐすっ」

美羽と親交のあった及川雫が死んでしまった。
その名前を聞いた後に、美羽はぽろぽろと涙を零している。
慰めている歌鈴も、いつの間にか同じようにもらい泣きをしていた。

「ニナ……ニナッ……どうシテ……なんデ……」
ナターリア……」

ナターリアと親しかった市原仁奈もその一人。
一緒に日本語の勉強だと笑っていた二人の姿を、見た事があった。
だから仁奈の死を嘆く姿に、光にはかける言葉が思いつかなかった。
泣くなと言うのは残酷すぎる、だけど根拠もないのに大丈夫だとは言えない。
ただ背中に手を当てて、悼むように撫でることくらいのことしか出来なかった。

「留美さん……元気、出してください」
「ええ、分かってるわ、大丈夫よ」

大人の二人も、泣いたり取り乱したりはしなかったけど悲しそうな様子だった。
多分年の近い三船美優が死んでしまったのもあるんだろう。
特に留美は仲が良かったはずだ。
楓が心配そうな顔で留美を気遣っているけれど、比較的両者ともに落ち着いてるみたいだ。

(また、死んでしまったのか……)

(理想のヒーローみたいに上手く行かないのは、分かってる)

(けど……けど……やっぱり無力だよ)

周りの空気は先程明るくなったように見えたというのに、今ではすっかり元通り萎んでいた。
こんな時、光の知ってるヒーローなら気の利いた言葉で慰めて、鼓舞するのだろう。
けれど現実はそんなに甘くない。
人が死んでしまうということは、そんなに簡単に整理出来ることじゃない。
簡単に諦めるな、乗り越えろなんて言えない。
この殺し合いに巻き込まれるまでの光なら、違ったのかもしれないけど。
死というものに直面し肌で感じた今、そんな無神経なことは出来なかった。

けど、このままでいいのだろうか。
操縦する人を失った、翼のない飛行機のように。
プロデューサーという羽根を失ってしまった自分たちは、世界の底でもがくことしか出来ないのだろうか。

もう、二度と羽ばたくことなんて敵わないのだろうか。

もう、ヒーローで在り続けるなんてただの絵空事に過ぎないのだろうか。

心の太陽は、ただ自分を慰めるためだけに存在してるのだろうか。



「……違う」



思わず零れてしまった言葉に、全員が光の方を向く。
光は顔を挙げて、それを真正面から受け止める。
たとえ意味不明であろうとも、この想いを示したいから。

「確かに、アタシたちには翼がないのかもしれない」

「でも……でも、まだ足があるんだ!」

「翼がないなら、世界の底を全力で駆け抜ければいい!」

「もう届かないかもしれない、飛べなくなるのかもしれない……」



「けれど……アタシの空にある太陽は、絶対にまやかしなんかじゃない!」



翼を奪われた少女は、世界の底を駆け抜ける。



その背にある太陽が、決して偽りでないことを示すために。






そんな光の叫びに、歌鈴の心は動かされていた。
誰もが落ち込んでいて、暗い雰囲気の中で。
彼女が紡ぐ言葉は、今の自分を励ましているように感じたから。

「悲しんでばかりじゃ……駄目なんですよね」
「え……歌鈴ちゃん?」

普段はそこまで積極的な方ではない歌鈴が最初に反応を返したのはその証。
先程は美羽を慰めていて、いつの間にか一緒に泣いていた。
それと同時に、名前の呼ばれなかった彼女のことを考えてもいて。


名前が呼ばれなかったのには、本当にほっとしていた。
そんな自分に心の何処かで疑問を感じたのはその時だった。

(私は……無事を祈ってるだけ?)

そう、今までは漫然と「会いたい」と思っていただけ。
自分から状況を変えようなんて思ってなかった。
けれどこのままみんなと一緒に居ても、会うことは難しいんだと思う。

だからこそ、迷っていた。
思考停止してしまっていた自分を変えて、たとえ一人になったとしてもここから飛び出すべきか。
それともあくまで生きる事を優先して僥倖を望み続けるのか。
このまま流されてライブ会場に向かってしまえば、探しに回ることさえ難しくなってしまう。

だからこそ、躊躇していた。
そんなときに光の言葉に勇気づけられたから。
歌鈴は思い切って一歩を踏み出そうと決意する。

「そうね、このまま落ち込んでばかりじゃ居られないわ」
「楓さん……」

戸惑った風に歌鈴へ声を掛けた美羽とは違い、楓は微笑みながらそう言ってくれる。
その表情に、更に勇気づけられた。
アイドルたちが死んでしまっている中で、今の歌鈴の考えは狂気の沙汰と受け取られてしまうかもしれない。


それでも、たった一人でも、美穂ちゃんに会いに行きたい。


自分から、探しに行きたい。


次こそは、ちゃんと向き合いたいから。



「あのっ!私……」
「……みんな、提案があるんだけどいいかしら?」

思い切って主張しようとした瞬間、その言葉は楓に遮られる。
このときは、それをもどかしく感じていた。
けれど彼女の提案が思わぬものであったことを、歌鈴は間もなく知る事になった。






歌鈴が何かを言おうとした瞬間に、楓がそれを遮るようにして呼びかけた。
矢口美羽はその様子を見て少し違和感を感じる。
しかし一面的には大いに尊敬している彼女に提案があると知って、是非知りたいと思った。

「どうしたの?急に」
「カエデ……何か考えがあるノ?
「よく分からないけど、是非聞かせてくれ!」

さっきの光の主張は抽象的で難しかったけれど、あの熱さには少し元気づけられていた。
それは留美やナターリアも同じみたいで、話に耳を傾ける余裕が出来たようだだ。
光もこのチャンスを逃してはいけないとばかりに、空気を変えようとしている様子。
……どうやら歌鈴には自分以外気付いてないみたいだ。

「あ、あのっ!その前に私のはなしゅ!?」
「歌鈴ちゃん!?」

慌てたように再び声を上げた歌鈴が不自然を言葉を切って俯く。
どうやら思いきり舌を噛んでしまったようだ。
気持ちは分かるけれど、やっぱりドジな部分があるみたいで目が離せないと思う。

「……とりあえず、落ち着くまで楓さんの話を聞こう?」
「えぅ~……」

涙目になっている歌鈴の頭を撫でつつ、目で続きを促した。
少し和やかになった空気の中、対称的に少し硬くなった表情で楓が言葉を紡ぐ。



「さっきまではみんなでライブ会場に行こうって言ってたけど……今の放送を聞いて思うところがあって」



「……私たち、二手に分かれるべきじゃないかしら?」



呆気に取られたのは美羽だけじゃなかっただろう。
何故なら他のみんなも歌鈴を含めて驚いたように口を開けていたからだ。
折角全員で決意表明して、そんな時にこの提案?
戸惑いながらそう考えていると、留美が重々しく言った。

「……それは、本気?」
「ええ、勿論」
「理由が聞きたいわね、というかそれ次第に尽きるわ」
「そうですね……ハッキリとした理由はたった一つ。
 この大人数だとあまりにもデメリットが大きすぎる、でしょうか」
「……なるほど、確かに見方によっては一理あるかしら」

納得しかけた留美に、慌てた風に光とナターリアが割って入る。
美羽はむしろこの二人がそう語る理由が知りたかったけれど、あえてそれを止めなかった。

「ま、待ってくれ、折角みんなで団結しなきゃいけない時にそれはあんまりな気が……」
「そうだヨ、それにいっぱい居た方が安全だと思うナ」
「いや、それは違うわ」

そう言って楓は少し考えてから言った。

「さっきの放送で分かった通り、他の子たちはどんどん死んで行ってる。
 全員が自殺なんて希望的観測を除くなら、確実にやる気になってるアイドルが居るの。
 だからこそ、これからは襲われたときのことも念頭に入れなければいけない。
 今の人数だと、素人揃いの私たちでは襲われたときに全員の安全を確認しながら抵抗は出来ないわ。
 だから一旦別行動を取った方が逆に安全だと思ったのだけれど、どうかしら?」

美羽はその言葉を聞いて感心してしまった。
この状況に向き合い始めたことで、楓の落ち着きはむしろ更に研ぎ澄まされているようにも見える。
確かに大人数だから有利というのは、あくまで個々が訓練された人間であって初めて成り立つことだ。
自分の身すら守る自信がないのはきっと美羽だけじゃないから、これは正論だろう。
光もナターリアも思うところがあるのか、少し落ち込んだ風な様子で引き下がった。
すると留美がもう一度口を開く。

「それで、分かれるとしてもどういう行動を取るつもりなの?」
「とりあえず、片方はあまり離れずに飛行場付近にいるべきじゃないでしょうか。
 流石にこれでさようならというわけにもいかないですし……」
「それは確かに……いずれはまた合流しなければ意味がないものね」

どうやら片方が飛行場近くに残って、もう片方は外へ向かう流れらしい。
ふと疑問に思って、美羽は口を開いた。

「だったら、外に行く人達はライブ会場へ向かうんですか?」
「そうでもいいし、そうでなくてもいいかもしれないわね」
「どういう……ことですか?」
「要するに、明確な目的地を決めたらそこに行った後に戻ってこなければいけないでしょう?」
「ちょっと待って、それだったら再合流するのはいつにする予定なの?」
「区切りとしては……次回か次々回の放送ですね、その時の状況次第です」
「つまりはその時間まで外に居るってことですか……?」
「そうなるわね」

それだけ長時間外に居るということは、危険に晒されるかもしれない。
流石にそれは無茶が過ぎると思った。
さっきは悪くないと考えていたけれど、今度は美羽が割って入る番だった。

「そんな……いくらなんでも危なすぎますよ!」
「けど、このまま留まっていても状況は変わらない」
「う……」
「確かに危険は付きまとうけど……このままじゃ徐々に打つ手が無くなるのは目に見えてるの」
「私は楓さんに賛成ね、取れるうちに打開の可能性がある手段は取っておくべきだわ」
「それに、外に出れば他のアイドルたちを保護できるかもしれないわ」
「は……い……」

結局美羽もあえなく撃沈。
年長者だけあって2人はよく考えてるし、年下の少女たちにもちゃんと考えを示してくれている。
それは分かってるけど、感情的にはやっぱり不安だった。
折角みんなで集まったのに、ここでバラバラになってしまうのだろうか。

「善は急げと言いますし、早速メンバーを分けましょう」
「残留組と……外出組とでも言うべきかしら?」
「ええ、言いだしっぺですし外出組には私が入ります。
 だから留美さんはここに残ってもらえますか?」
「分かったわ……後は4人、ね」

少し落ち込んでいる美羽を他所に、2人はどんどん話を進めて行っている。
留美は、残りの振り分けについて少し迷っているようだった。
外出組は危険が大きいから躊躇しているのもあるのだろう。
しかし楓は、ここで思わぬ人間の名を出した。

「……歌鈴ちゃん、一緒に来る?」
「…………??」
「強制はしないけど……やっぱり怖いかしら?」
「…………ええっ、私ですか!?」
「か、歌鈴ちゃんを?」

思わず美羽はツッコミを入れてしまう。
指名された歌鈴も、まさか呼ばれるとは思ってなかったらしく一瞬意味が分からないという顔をしていた。
これは流石に……と思ってしまい。

「あの、楓さん……歌鈴ちゃんは……えーと、ちょっと……」
「私はなるべく連れて行きたいのだけど……」
「……分かりました、行かせてください!」
「ちょっとドジな……ってええええええええ!?」

あんまりハッキリ言うのも失礼だからと言葉を濁していると、なんと歌鈴が承諾してしまった。
しかも決意に満ちた様子だったから、尚更驚いてしまう。
ただ、本人が受け入れてしまった以上口を挟むことは出来ず。

「これで……後一人ね」
「ええ、美羽ちゃんと光ちゃんと……ナターリアちゃん」
「……アタシたちか」
「どう、しようカナ」
「……あー……」

結局最後の一人を決めることになり、美羽は同じ候補である二人を見る。
さっきは一緒にやってきた二人だし、やっぱりバラバラにしてしまうのは可哀想だろうか。
それに歌鈴は……なんというか凄く心配だ。
確かに外へ向かうのは怖いけど、誰かが引き受けないと困ったことになるのは事実。
だから美羽は、腹をくくることにした。



「だったら……私も行きます!」






最後の一人に美羽が名乗りを上げてから更に話が続いていく。
ナターリアは、どちらかと言うとほとんど聞き役に徹していた。
本当は今でもバラバラになってしまうのは反対だ。
けれど、みんなを納得させる理由もないし仕方ないかなとも思っていた。

「……それじゃあ、万が一襲われたときの為に武器が必要ですね」
「ええ、そういえば美羽ちゃんと歌鈴ちゃんの支給品は何だったのかしら?」
「私は……今歌鈴ちゃんが着てる制服と、後はこのしびれ薬です」
「この黒い煙がもくもくって出る奴と、後は……バナナです」
「折角だからアタシたちの分も確認しとこう、アタシはこの服とリングだ」
「ナターリアは……この拳銃だヨ」

とりあえず4人がそれぞれの支給品を並べる。
中には役に立つのか疑問なものもあるのだが、情報交換は重要だろう。
しかし、どういうわけか今まで先んじていた年長組が動かない。
何故か楓は呆然とした表情で何かに気付いたようだ。
ナターリアは、ふと近くに居た留美の様子がおかしいことに気付く。
表情は変わらないけどなにやら焦っているような、そんな気配がするのだ。

「そういえば私……今までバッグを開けたことすらなかったわね」
「そ、そうだったんですか?」
「あ……けどこのままじゃ私と歌鈴ちゃんの武器じゃ身を守れないから」
「何か役立つものが出るかもしれないな!」

歌鈴たちに促され、楓がバッグを開いた。
しばらくごそごそと探ったのち、出てきたのは。

「……これは、なんだ?」
「栓抜き……じゃないよね」
「いや、だったら色々付いてるのはおかしいんじゃ」
「なんか……ゴテゴテしてるヨ」

何やらT字型の、下の部分を長くしたようなものだった。
レバーのようなものと、ツマミが付いている。
楓もしばらくそれを興味深げに見つめていたけれど、ふと説明書が同封されていることに気付いて目を通し始めた。
しばらくすると、何やらその目がキラキラと輝き始めて。
すっくと立ち上がると、周りと少し距離を取る。
そして持ち手に付いているレバーを握りながら、勢いよく、かつ大きくそれを振るった。

「はあっ?」
「ひゃっ!?
「ええええええ!?」
「おお、凄いヨ……」

すると、ジャキン!と言う音と共にT字の先から何段かに分かれて金属の棒のようなものが飛び出した。
そうなると楓が握っている物は何やらお洒落な雰囲気の紳士が持つ、アレに似ていて。
驚く4人を尻目に、楓はニッコリと笑って言った。



「このステッキ……とても、素敵」



一瞬空気が凍りついたのは、最早言うまでもないだろう。



楓がもう一度説明書を精読している間、折り畳み式?のステッキは4人の手を渡っていた。
ナターリアが手に取ると、持ち手の部分が独特の感触を返してきた。
どうやら、伸びる前の黒っぽいこれはゴムで出来ているらしい。

「けど……どうしてこんなもの支給したのカナ?」
「何段もの折り畳みになってるから、伸びても中はスカスカだな」
「うーん……パッと見は鈍器に見えなくもないけどね」
「あっ……このツマミってなんだろう」

ふと、持ち手に付いているもう一つのギミックに気付いた歌鈴が手を伸ばす。
美羽が何かを察知したかのように、ギクリと反応する。
しかし、歌鈴がそれを手にする前に、楓が言った。

「待って……そのツマミを動かしたらステッキの先で催涙ガスが噴射されるらしいわ」
「うひゃあ!?」
「おっと!」

歌鈴がビックリしたようにステッキを放り出したのを、美羽がキャッチする。
何やら先程から慣れてる様子だけど何があったんだろうとナターリアはそれを見ていた。

「どうやらそれって……仕込み杖に近いものみたいね」
「あっ、そういう用途なのか」

光が感心したようにうなずく、ナターリアも気付いた。
これは相手の動きを止めるための道具だ。
一見危険そうに見えないから、不意を突く状況を想定しているのだろうか。。

「それと……バッグの中にもう一つ何か入ってるわ」

そう言って楓はもう一度探り始める。
今度は何が出るのだろうと、4人は戦々恐々としていた。
正に某猫型ロボットのポケット、パンドラの箱とでも言うべきだろうか。

「お、今度はそんなにおかしくないな」
「サングラス……にしてはちょっと仰々しいね」
「これも何か仕掛けがあるんじゃ……」
「カエデ、説明書はあるノ?」

やっぱり付属していた説明書をナターリアたちも覗き込む。
とは言えナターリアは日本でそこまで長く過ごしてきたわけじゃないからあまり読めなかった。
しかし、また変わった道具らしいという雰囲気は伝わってきた。

「サーモ……スコープ?」
「どんな道具なんだろう」
「サーモグラフィーなら聞いたことあるけど……」

バッグから更に6つほど長方形のバッテリーのようなものが出てきた。
楓は両脇にそれぞれ一つずつそれを嵌め込むと、サーモスコープなる道具を被った。
そして上を向いていたスポーツ選手がかけているサングラスのような部分を目まで下げる。
しばらくキョロキョロと周りを見回した後に一つ頷いた。

「要するに、熱を発している部分が変色するみたいね。
 テレビでよく見るサーモグラフィーの小型版かしら」
「へぇ……これも便利な道具だな」
「なんか……両方とも一見まともに見えないよね」
「あ、あはは……」



結局、身を守るための道具探しが主旨だったものの結果はイマイチだった。
楓の支給品だが、片方は銃を持っている相手に対しては効果が期待できず。
もう片方に至ってはどんな状況で役に立つのか分からない。
とりあえず装着はしておくものの、電源を入れずにサングラス部分も上げておくことにしたようだ。

「このままじゃ危ないヨ、ナターリアの銃持って行っテ」
「えっ……けど、それじゃあこっちが危なくなるんじゃ……」
「心配ないよ美羽さん、アタシが二人を守ってみせる!」
「……悪いけど、お言葉に甘えていいかしら」

銃を差し出したナターリアに、楓が申し訳なさそうな顔でそれを受け取る。
どうやら武器的な意味での戦力分散までは頭になかったようだ。
それでもこちらに残るよりは危険だから当然だろうとナターリアは思う。
そこで美羽が思い出したようにポツリと言った。

「あれ?そういえば留美さんの支給品は?」
「あっ……そういえば」

歌鈴の言葉を皮切りに、先程からずっと黙っていた留美へ視線が集まる。
その視線を受けて、少し苦笑しながら彼女はおどけたように持っていたものを掲げた。

「悪いわね、私の支給品はこんなものなの」
「灰皿と……縄跳び?」
「ええ、こんなものじゃ何の足しにもならないと思って恥ずかしくて」

珍しく落ち込んだ風に言う留美の様子に、軽い笑いが起こった。
それはきっと、これからの別れを惜しんでいるのもあるのだろう。
これが、今生の別れになるかもしれないのだから。
そして立ち上がった楓が、真剣な顔で言う。

「それじゃあ留美さん、最後に一つだけ。
 もし、次の放送で私たちのうちの誰かが死んでしまったら合流は諦めてください。
 逆に私たちもここに残る誰かが死んでしまったのを知った場合は、もうここには戻ってきませんから」
「えっ!?楓さん、そんなの私聞いてな……」
「やっぱりそのつもりだったのね、分かってるわ」

ビックリしたように反応する美羽や光たちを横目に、留美は頷いた。

「それだけの覚悟は必要、だものね」
「そっか……そうだったんだネ」

ナターリアは、留美が珍しく表情豊かだったのはそれが理由だったのだと気付いた。
多分、心の底では楓と留美は最初からそのつもりで話してたのだろう。
だからこそ最後は良い雰囲気にしたかったのだ。
オトナってすごいな、と思う。
とても他の4人だけでは、そこまでの覚悟が必要なことを自覚出来なかっただろう。
本当に、頼もしい人たちだ。

「それでは留美さん……行ってきます」
「なるべくドジはしないから……心配しないでね!」
「光ちゃん、ナターリア!また会おうね、絶対だよ!」

大人たちの覚悟を知って、心もち目を潤ませながら美羽と歌鈴が手を振る。
楓自身も、何処か名残りを惜しんでいるようだ。
飛行場の見回りのついでに少し先まで見送ると言う光と共に、三人は飛行場を出て行った。

「行っちゃったネ……」
「そうね……」

それから二十分ほどして、大分寂しくなった気配の中二人はソファに座っていた。
一気に半数の欠けた飛行場は、前よりも増して広々と感じてしまう。
ナターリアはなんとなく、ソファの上で膝を抱える。

「ルミ、これからどうするノ?」
「とりあえず、少しの間は定期的に周囲を見回ることね」
「誰か、来てくれるとイイナ」
「そうね……楓さんたちも誰かを見つけて戻ってくるかもしれないわ」

あるいは残った側の方が心配で辛いのかもしれないな、とナターリアは思う。
本当はライブ会場に向かいたいという気持ちはあったけれど、迷ってるうちに美羽に先を越されてしまった。
それにもう、再合流の約束をしてしまった以上仕方ない。
そういえば楓は何故最初に歌鈴を連れて行こうとしていたのだろう。

そうボンヤリと考えていたナターリアの視線の端に何かが引っかかった。
視線の先には留美の傍にある彼女のデイバッグ。
ジッパーが少しだけ開いていて、そこから中身が僅かに覗いている。
留美が身じろぎをしたときに触れて、一瞬何やら黒くて細長いものが見えたのだ。

(あんなモノ、ナターリアのバッグにはなかったと思うケド……)

留美の支給品は灰皿と縄跳びだ、それ以外の基本支給品にもあのような形状をしたものはなかったはず。
道中で何かを拾ったとも聞いてないけれど、一体あれは何なのだろうか。
何気なく、ナターリアは留美に問いかける。



「ねえ…………ルミ?」






和久井留美は、ソファに腰掛けながら心の中で嗤っていた。
何故ならば事態は思っても見ないほどに理想通りに進んでいる。
高垣楓が二手に分かれようと提案したときには思わず動揺が顔に出てしまいそうになったほどだ。

(これで……私を含めて三人)

(さて、どう始末したものか……)

表面上はいつも通りを装いつつ、留美は作戦を練っていく。
次の見回りの時、片方を誘って建物を離れたところで隙を突いて殺す。
その後迅速に引き返してもう一方も殺してしまうのがベターだろう。

(そうなると……出て行った三人をどうするか)

(この子が拳銃なんて渡してしまったから、下手に追いかけるわけにはいかなくなったわね)

現状では首尾よく二人を手にかけることが出来たとしても、楓たちまで葬り去るのは難しいだろう。
けれどその辺りは妥協することにした、下手に分かれることを反対すればむしろ怪しまれてしまうと思ったからだ。
高垣楓は見た目通り、本腰さえ入れてしまえば中々に頭の回る人物のようだったのもある。

それに、先程の放送を聞く限り殺し合いに乗っているアイドルが複数人居るのは間違いない。
ならば焦らずに光とナターリアだけでも確実に始末することが最善だろう。
無理をして違和感を感じられては元も子もない。

(それと……先程の支給品でも危ない橋を渡ってしまった)

(流石に一発撃った銃を持ってるのを見られるのは不味かったとはいえ、ね)

銃をデイバックに隠していた留美にとって、あの時は流石に動揺してしまっていて。
けれど楓の支給品が珍妙なものだったのが幸いだった。
他のアイドルたちの注意が向いている隙になんとかダミーである今井加奈の支給品を取り出して騙しとおせた。
少し大袈裟な態度を取ってしまったが、怪しまれなかっただろうか?

(まあいいわ……とりあえず今は目の前の仕事に集中ね)

(楓さんたちのことは、また改めて考えましょう)

頭の中でそう考えた瞬間だった。



「ねえ…………ルミ?」
「……なにかしら?」



考え事をしていた所為か、一瞬反応が遅れてしまった。
また寂しさを感じて話しかけてきたのかと、何気なくナターリアの顔を見る。
すると、その視線は留美でなくその横の。

僅かにジッパーの開いたデイバックに、注がれている。



(しまった――――――)



かろうじて、歯噛みしかけるのを堪える。
先程慌てて灰皿と縄跳びを取り出した所為か、最後に気を抜いてしまったらしい。
留美は固唾を飲んで、ナターリアの次の言葉を待つ。
まだ中に隠しているショットガンを見られたとは限らない。

しかし、もしそうなのであればどうするべきか。
流石にこの状況で上手く誤魔化す自信はなかった。
それならば、作戦を前倒しにしなければ。



「ねえ……ルミのバッグにあるその細長いのッテ……」



「「おーい!」」



留美がナターリアの顔面を狙うために手元の灰皿を掴もうとした瞬間。
入口から二人の大声がした。
ナターリアが振り返ってそちらに向くと、嬉しそうに頬を緩めた。
対して留美は今度こそ苦虫を噛み潰したような顔になる。
流石に今までのツケが回ってきたのだろうか、と考えながら。



(さて……どうやら今の私は中々に不運みたいね)



(けど、ここまで来たなら腹をくくって最後まで綱を渡り切って見せましょう)



(後戻りは……出来ないのだから)



そう決意して、留美は近づいてくる光と。



共に歩いてくる前川みくを、見据えた。






その少し前、高垣楓は二人の同行者を連れて飛行場の南端を目指していた。
光とは建物を出てほんの少しで分かれ、もう振り返ってもその姿は見えない。
いつまでも惜しんでばかりではいられないと思って、見送りは早めに終わらせた。

(まゆちゃんの為にも……生き残らないと、ね)

(本当にどうして……ここまで生き長らえてしまったのかしら)

佐久間まゆのことは、やっぱり少し心に引っ掛かっていた。
もう命なんてどうでもいいなんて言っていたのに、今では方向性はすっかり逆だ。
そうなってしまった以上、やる気のなかった自分のせいで死んでしまったのは少し重い。
けれど、本当に申し訳ないと思っているのなら尚更生きなければと思う。
罪悪感から逃げることと、償うことをすり替えてはいけないから。

(きっとまゆちゃんも、死んで償うくらいなら生き残れって言うでしょうし)

(ちゃんと、貴女の想い人に伝えられるように頑張るわね)

こっそりと建物の方向を振り返って、小さく拳を握る。
そんな楓におずおずと、同行者の一人が声を掛ける。

「あの……楓さん、ちょっといいですか?」
「あら、何かしら?」
「どうして、私を連れて行きたかったんですか?」

歌鈴の問いを受けて、楓は少し考え込む。
確かにあの中で歌鈴を名指しで指名したのは少し意外に思われたのかもしれない。
かといって、そこまで深い意図があったわけでもなかった。

「そうね……強いて言うなら、誰かに会いたそうだったから」
「えっ……」
「もし違ったのなら、余計なお世話だったかも」
「いえ……実はその通りなんです」

そう言って、歌鈴は少しはにかんだ風に笑う。
楓はほとんど確信してたのもあって、それほど大袈裟に反応は返さなかった。
あのタイミングで居ても立っても居られないような素振りをしていれば、誰だって勘づくだろう。
正直に言えばそこに付け込んだというのもある。

楓がそこまでして策を弄したのにも理由がある。
二手に分かれようと提案したのは、個人的な事情もあるのだ。
流石にこれは我が儘にも程があるから口に出すつもりはないのだけれど。

「さて、話してるうちにもう南端ね」
「ずっと飛行場に留まってたから……やっぱり怖いな」
「そういえば……どうしてわざわざここに?」

今度は美羽が問いかけてくる。
これに関しては二人の意見も聞きたいので、楓はあっさりと口を開いた。

「実は……行き先を改めて考えようと思って」
「そういえば、最初はライブ会場に行く予定だったんですよね」
「そうね、けれどあの頃とは事情も変わってしまったし」
「事情……あ、そういえば……」
「ええ、ナターリアちゃんが居ないからイマイチ必要性が薄れてしまったでしょう?」

最初に行き先を決めた時は全員で行動することが前提だったので、明確な目的地のあったナターリアの意見を尊重した。
しかし、今は同行していないのもあって絶対的な拘束力がないのも事実だった。
それに理由は一つだけではない。

「それと、歌鈴ちゃんの尋ね人を探すなら端の辺りまで行くのは……」
「もし居なかったら引き返さないといけないですもんね」
「そういうことね」

美羽が納得したようにうなずく横で、歌鈴が表情を引き締める。
もしライブ会場の方向に居なければ引き返さないといけない。
それならばまずは中央へ行くというのも手の一つ。
そういった選択肢を明確に示す為に、あえて南端まで進んだのもあった。

「けれど、あちらの方面を先に探すのもそんなに悪くはないかも」
「えと……どうしましょう」
「楓さんとしては、どう思います?」

美羽が考え深げにそう問い返してくる。
どうやら年長者としてだけでなく、何か理由があって尊重してくれてるのかもしれない。
とは言え、これに関しては歌鈴に委ねても構わないかなとも思っている。

自分も同じ尋ね人が居る身なのに、それを隠している負い目もあったから。
しかし、思わず気になっていた場所が口に出てしまった。

「灯台は……どーだい……」
「ええっ、流石に遠すぎませんか?」
「あ、今のはなんとなく思いついただけだから気にしないで」

そう、本当にただなんとなく思いついただけなのだ。
あの子の性格なら、誰も来ない場所で膝を抱えているんじゃないかと思っていたから。



(一体……何処に居るのかしらね……愛梨、ちゃん)



同じプロデューサーの元にいた、その少女を。



(今までは周りを気遣う余裕なんてなかったけれど、ね)



食事の用意の前に楓は間違えて持ってきたワインを元の場所に戻そうとしていた。
そんな時に、隣に置いてあったラム酒が目に入って。、
昔、彼女が読んでいたお菓子のレシピに載っていたから思い出してしまったのだ。
ラム酒をふって、レモン汁……だった気がする。

(けれど……あんな顔してたのを思い出したら、ほっとけるわけない)

いつも太陽のような笑顔を浮かべていたあの子。
プロデューサーが死んでしまった時、周りなんて見えなかったはずなのに。

あの子が絶望に染まった顔で叫び声をあげていた光景が、頭のどこかに焼き付いてしまっていた。
それが妙に引っ掛かってるうちに、気付いたら外へ出る口実を考えてしまっていて。
そして、今に至る。

一体今はどうしているのだろうか。
きっと、今は元気を出して気丈に生きているというのはありえない。
同じプロデューサーの元に居たからこそ、他の人間よりは十時愛梨という子を知っているつもりだ。
あの子は周りが思っているほど、強い子じゃない。
周りが思っている以上に、繊細で……抱え込みやすい子だった。
人気が出るうちに、段々と周りに気を使って後ろ向きな発言をしなくなってしまった。
だからこそ、彼女にとって唯一弱音を吐いて寄りかかれるのが、彼だった。
そんな人を失って、それでも前を向ける人間が居るはずがない。

(一人になれる場所で自分を責めてるのか……それとも)

(不安なのは……あの言葉、ね)

プロデューサーが遺した、最後の言葉。
絶望に染まって、悲しみにのたうちまわって。
「生きて」という彼の最期の願いを思い出した愛梨はそれをどう考えるだろうか。
あまり信じたくはないけど、可能性としては排除出来ない。
抱え込みやすいあの子が暴発してしまうのが、むしろ自然に思えてしまう。

(とは言え、私も似たようなものかしら)

(ただ……私の場合、やっぱり今でもそこまでの自信はないかな)

(留美さんは、ああ言ってくれたのだけど)

留美は恐らく、あの言葉が愛梨と楓の二人に掛けられたものだと思っていたのだろう。
けれどあの言葉に動かされた楓は、心の何処かでは今でも冷めた風に考えている。
あの言葉は、やっぱり愛梨だけに向けられた物ではないかと。
無論そうあって欲しくはないのだけど。

恋心を自覚出来なかったのも、指摘されるまで彼の言葉に自分が含まれてると考えられなかったのにも。
ちゃんと、そう思うに足る理由があるのだから。

(多分、心の底で諦めてたから気付けなかったのね)

(私がアイドルになった時から、もうあの二人に割って入る隙なんてなかった)

(それだけ、あの二人の絆が強いものだったから)

楓は知っている。
愛梨が思っている以上に、彼は愛梨のことを大切に想っていた。
果たされることのなかった飲みに行こうといったあの日も、もしかしたら愛梨の話が出ていたのかもしれない。
今考えると、惚れられてる相手に別の女性の相談をするなんてとんでもない人だった。
その所為で無意識に自分の感情に蓋をしなければいけなかったのというのに。

(とは言え、愛梨ちゃんに会えても私に出来る事なんてほとんどない)

(精々、あの子のやりきれない気持ちを受け止めるくらいかな)

それと、死んでしまった彼が直接口に出せなかった愛梨への気持ちを伝えるくらいだろうか。
結局のところ、励ましたり叱ったりすることは出来ないと思う。
自分の柄ではないし、きっと愛梨が欲しているのはそんなものじゃないだろうから。


(本当に……ばかみたい)

(なんで何も出来ない癖に探そうなんて思っちゃうんだろう)

(――さんの、所為です)

(きっと貴方が喜んでくれるだろうから、そうしてるだけ)

(これでも私……尽くす女なんですよ?)

(例え叶わないって分かってても、何だってしちゃいます)


楓が突然押し黙り、微笑むのを見て美羽と歌鈴は首をかしげる。
その視線を気にすることなく、彼が見守ってくれているかもしれない天を見上げる。

穢れのない空の下、翼を失いながらもその高さを思い出した楓の行く末は何処へ繋がっているのだろうか。





【D-4 飛行場/一日目 日中】


【ナターリア】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式、温泉施設での現地調達品色々×複数】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:アイドルとして“自分も”“みんなも”熱くする 。
1:ひとまず待機。
2:B-2野外ライブステージでライブする。
3:心に太陽を。



【南条光】
【装備:ワンダーモモの衣装、ワンダーリング】
【所持品:基本支給品一式】
【状態:全身に大小の切傷(致命的なものはない)】
【思考・行動】
基本方針:ヒーロー(2代目ワンダーモモ)であろうとする。
1:ひとまず見回り……のはずが。
2:仲間を集める。悪い人は改心させる
3:ナターリアと一緒に居る。



【和久井留美】
【装備:ガラス灰皿、なわとび】
【所持品:基本支給品一式、ベネリM3(6/7)、予備弾42】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:和久井留美個人としての夢を叶える。
1:隙を突き、飛行場に居るアイドルを殺害する。
2:『ライバル』の存在を念頭に置きつつ、慎重に行動。無茶な交戦は控える。
3:『ライバル』は自分が考えていたよりも、運営側が想定していたよりもずっと多い……?



【前川みく】
【装備:セクシーキャットなステージ衣装、『ドッキリ大成功』と書かれたプラカード、ビデオカメラ、S&WM36レディ・スミス(4/5)】
【所持品:基本支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:みんなを安心させて(騙して)、この殺し合いを本物の『ドッキリ』にする。
1:????????



【D-4 飛行場南端/一日目 日中】


【高垣楓】
【装備:仕込みステッキ、サーモスコープ】
【所持品:基本支給品一式×1、ワルサーP38(8/8)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:アイドルとして、生きる。生き抜く
1:アイドルとして生きる。
2:まゆの思いを伝えるために生き残る。
3:……プロデューサーさんの為にちょっと探し物を、ね。



【矢口美羽】
【装備:歌鈴の巫女装束、鉄パイプ】
【所持品:基本支給品一式、ペットボトル入りしびれ薬、タウルス レイジングブル(1/6)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:フラワーズのメンバー誰か一人(とP)を生還させる。
1:とりあえずフラワーズの誰か一人は絶対に生還させる。
2:これからのことを相談する。



道明寺歌鈴
【装備:男子学生服】
【所持品:基本支給品一式、黒煙手榴弾x2、バナナ4房】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:プロデューサーの為にアイドルとして生き残る。
1:プロデューサーに会うために死ねない。
2:美穂を自分から探し出す、そして話し合う。


※次回、もしくは次々回の放送を区切りに飛行場へ戻る約束をしています。
 ただし、放送の際に双方一人でも欠けていた場合は再合流を断念するようです。


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矢口美羽
道明寺歌鈴
南条光 次:ヘミソフィア
ナターリア
和久井留美
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最終更新:2013年06月28日 14:19