夕日に照らされ、美しく、哀しく、咲き誇って ◆yX/9K6uV4E



――――恋と友情と希望、私はそれを手放そうとして……















     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇











「I'm always Close to you~~♪」

綺麗な、それでいて、何処か心が温かくなるような歌声。
透き通って、心が癒されるような歌が聞こえてくる。
スタジオの一角で、私――相葉夕美は椅子に座りながらその歌を聞いているんです。


「はい、オッケー! 流石だね藍子ちゃん!」」
「ありがとうございます」
「このまま、次もいっちゃおう!」
「はーい!」

一曲歌い終わってまた次の曲へ。
歌った主、我がフラワーズのリーダー、高森藍子ちゃんはそれでも楽しそうに。
耳にヘッドフォンをあてながら、目を瞑って。
柔らかな歌声を、私たちに届けてくる。
この曲もまた、優しい曲だ。

「選曲……彼女に任せたようですけど、成功のようですね」
「ああ、藍子らしくて、いいな」

私から、ちょっと離れた所に、私たちのプロデューサーと、ほかのプロデューサーさん二人が居る。
私達のプロデューサーは勿論私達を見守るために。
残りのプロデューサー……小日向美穂ちゃんだったかな? そのプロデューサーさんはこの企画のお手伝い。
もう一人……周子ちゃん、肇ちゃんのプロデューサーさんは眠たそうに、その光景を眺めている。
どうやら、私のプロデューサーに連れてこられたらしい。

あの二人はよく一緒にいる……仲がいいのかな。

「とりあえず二人だけど、美羽と友紀も近い内に収録だし……楽しみだな」
「どんな曲選ぶんでしょうね?」
「……解らん……特に友紀は」
「……確かに」

そういって、美穂ちゃんのプロデューサーは苦笑いを浮かべる。
今やっている収録は……簡単に言っちゃうと、私達のソロのアルバムだ。
ただし、それは、オリジナルじゃなくて。
有名な歌や、好きな歌……それを、私達自身が選んで、カバーする。

そんな、カバーアルバムの企画で。
その第一弾として、まず藍子ちゃんと私が歌うことになっているんです。
今日は、その収録で、私は順番待ち。

「……あの子の歌は、なんか本当優しいですね。上手いのもあるんですけど……そういう問題じゃなくて」
「……そうだなぁ」

そう、藍子ちゃんの歌は優しい。
何処までも、優しく、人を包むような歌だ。
私はそんな藍子ちゃんの歌声が大好きで。
何時までも、聞いていたくなってくる。

「んー……」
「どうした?」
「いや、先輩が大分無理をして引っ張ってきたのも解るなって」

興味深そうに、そう言ったのは周子ちゃんのプロデューサーだった。
眠たげなのは、変わらないのに、ちゃんと聞いている。
この人は、何回か話したことあるけど周子ちゃんと同じように掴み所が無い人なんだ。

金髪で髪の毛を思いっきりいじっていて。
服もスーツじゃない、きちんとしたブランドもので。
サングラスもしていて……なんかホストみたいな外見です。
異色といってもいいプロデューサーさんです。

元々はその世界ではカリスマといってもいい程のファッションデザイナーらしい。
今も、その名前でインターネットで検索をかけると沢山ヒットする。
センスの塊のような人で、無くてはならない存在らしい。
……なのに、プロデューサーもしている。
本人曰く「させられている」といってたけど。
……まあ、そこら辺、正直よく解らないや。

「…………まぁな」
「でも、それで立場が悪くなったのもそーでしょ」
「…………まぁな」
「他のプロデューサー白い目で見られてまでさ……」
「それは、お前も一緒じゃねえか」
「……うぇ、そーいわんでくださいよ」

聞き耳を立てていたけど…………それはちょっと初耳。
うちのプロデューサーは……まあ、フラワーズが人気のせいで、大分忙しい。
だから、他のプロデューサーと居るのはあんまり無い。
それは忙しいせいだと思ったけど。

他にも理由があったこと?
それは、藍子ちゃんに絡んだ事でもあって。
藍子ちゃんがプロデューサー変わったのは知っているけど。
円満に移ったものだと思っていた。
でも、プロデューサー達の大分苦い表情を見ると絶対に、違う。

明らかに……揉めた感じがする。


「つーか、今日つれてきたのも、お前を思ってだな! お前も、そろそろ新田の収録だろ!」
「うげ……藪蛇……」
「全く……心配してるんだぞ」
「まあ、ぼちぼち、やってるんで。実際助かってますよ」
「……本当かぁ?」
「本当ですって!」

その後もプロデューサー達は、話をしているがもう、耳に入ってこなくなってきちゃった。
前を見ると、一曲歌い終えて、ほっと息をつく藍子ちゃん。
私が見つめているの気づくと、ほんわかと笑う。
私も、手を振りかえした。

そうだ、元々何となくだけど、解っていた。

高森藍子とプロデューサーの間には、誰にも解らない、強い『モノ』があるということを。

それがその藍子ちゃんのプロデューサー権に関する事も、関係しているのかもしれない。



…………なんか。
…………なんだか、嫌だな。
胸が凄くもやもやする。
私だって、プロデューサーとの絆はきちんとあるのに。
それなのに、何処かわからない線があるように感じられて。
私は心が締め付けられるような気がする。

そんな、私自身の心が嫌で。
私は、大きく頭を振った。


「……どうした、夕美?」
「……なんでもないよ!」
「そろそろ、夕美の番だぞ。声の状態はどうだ?」
「バッチシ」
「そか。なら、期待してるぞ、フラワーズの歌姫」
「お任せあれ♪」

プロデューサーは心配するように、私に話しかけて。
私は大丈夫だよと言う。
うん、大丈夫だよ。


「ふう……ただいま」
「おう、お疲れ様」
「おつかれ♪ はい水♪」
「あ、ありがとう! 夕美ちゃん」

藍子ちゃんが戻ってきて。
私は、水を彼女に渡す。
藍子ちゃんは喉を労る様にしていて。
ゆっくりと水を飲んでいた。

「どうだった? 夕美ちゃん」
「やー流石だね! こうふんわりとした? こう優しい歌って、やっぱ藍子ちゃん、流石ーっ!」
「わわ、ありがと、嬉しいな」
「ふふ、やっぱ可愛いなぁ」
「ふぇ!?」
「可愛いって事だよ、流石藍子ちゃんだ」

恥ずかしそうに笑う藍子ちゃん。
顔真っ赤にして、本当にもー。
あー本当可愛いな。


「この歌が……誰かに届いて、笑ってくれて、優しい気持ちになるといいな」



笑って。
顔を赤くしながらも。
その嬉しそうな表情は。


本当素敵だな、って思う。



「うん、できるよ! 藍子ちゃん可愛いもん、きっと誰だって、幸せにできる!」



だから、私は藍子ちゃんに抱きつきながら、そう言う。
藍子ちゃんは顔を赤くして。
でも私はずっと抱きしめていた。
私の顔も赤くなっていたかな?
まあいいけど。


「そ、そうかな?」
「そうだよ!」

そうやって、手を強く握る。
彼女はだから希望なんだ。
そうなんだよ、うん。

「さあ、次は私の番かな?」
「そうだな、頑張って来い」
「うん!」



私がカバーするのは――



「夕美ちゃんがカバーするのって、ラブソングが多目?」
「かな?」



そう、ラブソング。
大切な想いを。
私の想いを。



乗せた愛の歌と。




「後は、友情を歌った歌だよ!」





大切な、友情を。
心の其処から感じてるものを。



何も変わることが無い友情の歌を。







「じゃあ―――私の想いを歌ってくるね♪」






私は歌うんだ。















     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇











「はっ!?」

竿が強く引っ張られてので、ふと我に返る。
私は慌てて、竿を引く。
そしたら、大きい魚がひっかかっていた。

「わお……」

これで、夕飯にありつけるね。
……全くそんなこと考えていなかったけど。

そうだ、私は釣りをしていたのだ。
余りにつれなくて、眠たくなって。
そしたら、色々考えていて。

今に至る。
……気がついたら夕暮れ時だった。
……そんな、長く釣りしていたのかな?
まあ、成果があったし、よしとしよう!


「夕ご飯……夕ご飯っと」

そう。
今は生きるためにご飯なのです。
これだけ大きいなら、夕飯は心配しなくていい。
後は焼いて調理して。
美味しくいただこう。

となると、夕飯の支度をしなきゃね。
サバイバル……サバイバルっと。


「……そう、私は歌わない」


もう、歌わない。
アイドルじゃないから。
アイドルでいれないから。


想いは叶わないから。


きっと、哀しみで潰れてしまうから。





「恋も……友情も…………全部塗り潰されてしまうから」





そう、哀しみの花は…………








――――――ピリリ。





うん? 何かな?
携帯端末からだ。





其処に書いてあったのは……………………え………………?








――――貴方の希望の花に。貴方が信じる希望の花と、今夜に話させてあげます。 何を話したいか……ちゃんと考えてくださいね♪




藍子……ちゃん……と……?




――――哀しみの絶望の花は、何よりも強い恋に焦がれる希望の花でもあるんですから。






…………千川ちひろ……何を考えて。





―――また、連絡しますね♪





藍子ちゃん。
大切な親友。
希望の花。
幸せの花。






私は――――――何を話せと言うの?





恋も、友情も、希望も全て飲み込んだ、つもりなのに。



私は……



夕日が、輝いてる。


まるで何もかも、惜しむように。




哀しく。



美しく。




希望も絶望も解らない



ただの花を、照らして。




花は、揺れて、咲き誇っていました。





【G-7 大きい方の島/一日目 夕方】

【相葉夕美】
【装備:ライフジャケット 大きな魚】
【所持品:基本支給品一式、双眼鏡、ゴムボート、空気ポンプ、オールx2本
     支給品の食料(乾パン一袋、金平糖少量、とりめしの缶詰(大)、缶切り、箸、水のボトル500ml.x3本(少量消費))
     固形燃料(微量消費)、マッチ4本、水のボトル2l.x1本、
     救命バック(救急箱、包帯、絆創膏、消毒液、針と糸、ビタミンなどサプリメント各種、胃腸薬や熱さましなどの薬)
     釣竿、釣り用の餌、自作したナイフっぽいもの、ビニール傘、ブリキのバケツ、アカガイ(まだまだある?)】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
 基本方針:生き残り、24時間ルールで全員と一緒に死ぬ。万が一最後の一人になって"日常"を手に入れても、"拒否"する。
 0:私は――何を話せというの?
 1:サバイバルを続行っ!

 ※金平糖は一度の食事で2個だけ!
 ※自分が配置されたことには意図が隠されていると考えています。(もしかしてサバイバル特訓するって言ったから?)


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最終更新:2016年10月21日 22:38