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ハルヒ「キョン、キョン恐いよキョン!」②
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meteor089
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ハルヒ「キョン、キョン恐いよキョン!」 ① ② ③ ④
94 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01:58:42.35 ID:L16jdEMsO
翌日。十二月二十二日
「ひぃ、ひぃ、はぁっ、ちくしょーー」
これは間に合うかどうか微妙だ。担任の岡部に呼び出され進路についてチクチクと説教をされたせいで意外と時間を食ってしまい、午前授業だというのに我が母が作ってくれた弁当を食べる時間もなく駅前へと急いでいる俺だったが、そもそも光陽園と北高とでは駅までの距離に大分差があるのに集合時間を午後一時に設定するのはおかしいだろう。授業が終わってから1時間も経っていないというのに。あとで抗議してやろうかね、あやつが聞く耳を持つかどうかは定かではないが。
足や心臓の悲鳴を無視し続けて走ったせいか、なんとか集合時間に間にあうことができたのだが、すでに俺以外の全員が集まっていた。
「遅い、罰金!」
96 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01:59:45.84 ID:L16jdEMsO
冬なのに汗だくでかつマラソンした後のように息切れを起こしている俺に気遣う言葉をかけるでもなく、問答無用で罰金宣言かい。
「はぁ、はぁ、集合時間には間に合ってるはずだろ」
「たとえ遅れなくても一番最後に来た奴は罰金なの。それがあたしたちのルールよ」
「初耳だが」
「今決めたからね」
そう言ってハルヒはにやりと笑った。そういう風に笑ってた方がとっつきやすいねお前は。昨日職員室で出合ったときの八倍はとっつきやすいオーラを出してるぜ。
「な、何言ってんのよアホキョン、さっさといくわよ、あんたのおごりだからね!」
そういうとハルヒはずかずかと喫茶店に直進していった。
97 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:01:00.71 ID:L16jdEMsO
「キョンくん、よかったらこれで汗をふいてください」
そう言ってハンカチを差し出してくれたのは朝比奈さんだった。いやいや朝比奈さん、あなたの小奇麗な木綿のハンケチーフを男の汚い汗で汚すわけにはいきませんよ。気持ちだけもらっときます。こんなのシャツの袖で十分ですよハッハッハ。
「昨日は本当にごめんなさい、キョンくんの記憶が無いなんてどうしても信じられなくて、気分を悪くさせるような態度をとっていたかもしれません」
「何を言ってるんですか朝比奈さん、俺が朝比奈さんに乱暴を働いたのは事実のようですから、朝比奈さんが恐がるのも無理はないですよ。態度については俺は全然気にしてませんから大丈夫ですよ。」
「でも・・・」
「朝比奈さんが気に病むことはないですよ、ほら元気出してください。ハルヒに置いていかれちゃいますよ。」
「は、はい!」
やはり笑顔の朝比奈さんは天使のように可愛いね。うん。いかん、少しでも油断したら鼻の下がのびてそうだ。
98 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:03:38.99 ID:L16jdEMsO
喫茶店での俺のおごりということでいつの間にか決定していたようで、ハルヒは全く気を使うことなく高級そうな高いお茶をオーダーし、長門と朝比奈さんは気を使ってくれたのか一番安いホットコーヒー、古泉はカプチーノを、俺はアップルティーを注文した。
「なによこれ、苦っ!」
自分のオーダーした茶に文句をつけるハルヒ。自業自得だね。と、一瞬だけニヤっとした俺の表情をハルヒは見逃さなかったようで、
「キョン、あんたちゃんとジョン救出作戦について考えてきたんでしょうね。あんたから発表しなさい!」
そういえばそんな宿題があったな、と今思い出した。すまん、まったく考えてなかった。
「はぁ!?あんたやる気あんのキョン?そんなんだからいつまでもパシリのままなのよパシリ!」
100 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:05:37.88 ID:L16jdEMsO
「いつまでもも何もこの団は昨日立ち上げたばかりだろうが。そもそもなぁ、お前らはジョンの消失を見ているからまだいいものの、俺はそれらの不思議現象を直に体験したわけじゃない。昨日の話だって一応信じると仮定してはいるものの心の奥底では疑心もまだ残っていてなぁ、そんな状態の俺にジョン救出だとかぬかしてもなかなか想像しずらいのだよ。ここは団長様の意見を聞きたい所だね。」
団長の意見を聞きたかったのは俺だけではなかったらしく、長門と朝比奈さんもヌッとハルヒの方を見る。
うっ、と何かつまったような反応を見せるハルヒ。さてはこいつも考えてないな。
「団長」
古泉が割って入る。俺としてはもう少しハルヒを困らせたかったのだが。
「よろしければ僕の考えを発表したいのですが、よろしいですか」
101 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:06:33.67 ID:L16jdEMsO
「さ、さっすが古泉くんね。だてに副団長じゃないわ。キョン、あんたも古泉くんを見習いなさい」
古泉を見習ってニヤケた笑みを浮かべてみようかと一瞬考えるも脳内会議で即座に却下された。
「解決策といいますか、ただの分析なのですがとりあえず聞いてください。昨日も一部説明はしましたが、十二月十八日におかしくなってしまった世界についてです。世界がパラレルワールドのように枝分かれしていて、ジョンさんが何らかの影響により彼が元々いた世界から僕らの世界に迷い込んでしまい、そこから脱出プログラムを使い元の世界に戻ったのか、あるいは世界がジョンさんを残し世界が全て変わってしまい、脱出プログラムによって彼が世界そのものを変えようとしたのか、そのどちらか、あるいはそれ以外の選択肢もある可能性もありますが、とりあえずはこの二つについて考えましょう」
103 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:09:59.39 ID:L16jdEMsO
何を言ってるのかねこいつは。こういう時はやけに元気になるんだな。
「前者の、世界がパラレルワールドのように枝分かれしているとすると、彼が無事に帰還できたかどうかは定かではありません。パラレルワールドですから、彼のがどうなろうとお互いの世界は独立していますからお互いに影響を及ぼすことはないと推定できます。しかし後者の場合はどうでしょうか。もし彼が時空改変に成功したとなれば、僕たちは今ここに存在しないはずです。ジョンさんにとって僕らの世界は間違った世界なのですから、彼が改変を成功させていれば彼にとっての正しい世界が再構築され、今の僕たちは存在しないことになります。」
うーん、まぁなんとか理解したことにするか。しかしマジでいい顔してやがる。反抗して俺は曇った顔をすることにする。
106 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:11:39.23 ID:L16jdEMsO
「なるほど・・・つまり後者であれば、ジョンは時空改変を失敗したということになるのね」
こいつは、どうあってもジョンを次元の狭間に閉じ込めたいようだな。
「長門、お前はどう思う?」
いきなりだったが長門に振ってみた。少しは驚いたそぶりを見せるのかなと思いきや意外にも冷静に答えてくれた。
「わたしは後者だと思う。彼が消える前のパソコンの画面に表示されたメッセージに、時空改変の機会を得るが成功の保障はできないという一文があった。もし世界が前者であれば、大切なのは彼が元の世界に帰れるかどうかであり時空を改変する必要性が無い。時空改変をする必要があるのは後者のみであるとわたしは解釈した」
俺は少し驚き混じりの顔で長門を見つめる。こいつは、前に図書館で会った時や昨日の様子では、口下手で人付き合いの苦手なたよりなさそうな一少女に見えたがどうやらそれは間違いで、自分なりの意見をきちんと持っている奴のようだ。いざというときに頼りになる奴だったりするんじゃないか。ジョンは長門に絶対の信頼を置いていたようだしな。
108 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:13:21.84 ID:L16jdEMsO
俺は長門をまじまじと見つめる。俺の視線に気が付いたのかうつむき、頬を朱に染める長門は結構可愛かった。ほんとに。じっと見てたかったがそれも意地悪なのでやめておいたが。
「なるほど・・・そうですね、それにもし前者であれば文芸部のあのパソコンのプログラムや栞は向こうの世界のからどうやってこちらの世界に来たかが謎です。ジョンさんがこちらに迷い込んだと同時のことだったのかもしれませんが、少々都合が良すぎるような気もします。後者であれば事前に仕込んでおけますからね」
そ、そうなのか?また頭がこんがらがってきた。見ろ、朝比奈さんも首をひねっている。
「後者の可能性のほうが高いってわけね。みくるちゃんは?何か意見ある?」
「ひぇっ、う、うーん、あ、そういえば・・・」
見事に慌ててくれた朝比奈さん。慌てた朝比奈さんも絵になるほど可愛い。この人に可愛くない瞬間なんてあるのだろうか。
「あの、わたし書道部の部活にも参加しないといけないんですよぉ。もう少ししたら引き上げ・・・ひゃぁっ!!!」
ハルヒは書道部の"しょ"の文字が耳に入った瞬間に立ち上がり朝比奈さんが座る椅子の背後に回り、いきなり後ろから抱きついた。
109 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:16:14.92 ID:L16jdEMsO
「ひゃあぁぁ、ななな、何するんですかぁー!!」
セクハラ女は朝比奈さんの制服の下から手を入れ、なんと直に胸を揉み始めた。オイオイ。
「なぁにみくるちゃん、あたしの団があるってのに部活?掛け持ちは半端になるから許さないわよ。そっちはやめてきて欲しいんだけど~。」
なんという傲慢さか。まぁこいつの自己中さにおいては今更突っ込む気にもなれんが。
「そそそ、そんなぁー」
「そそそ、そんなぁー」
「しっかし本当に胸でかいわねぇ~。こんなかわいい顔してあたしより胸でかいなんてなんかイジワルしたくなっちゃうわねぇー」
ハルヒがスカートの裾をめくり上げ始めた所で俺は止めに入る。
「アホか。そこらへんにしとけ。他の客がみんなこっち見てるじゃねーか。」
111 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:17:33.88 ID:L16jdEMsO
「なによ、あんたも触ってみる?古泉くんは?」
「ヒッ・・・」
大丈夫ですよ朝比奈さん、そんなことしません。多少羨ましかったがそう言っておくべきだろうここは。古泉も、
「遠慮しておきましょう。後が恐そうだ」
とニヤケたままに否定をする。
長門は羨ましそうに朝比奈さんを見ていた。長門・・・。
結局このあとは終始雑談で、ハルヒはゴリ押しで朝比奈さんに書道部をやめることを約束させ、全員の携帯の番号とアドレスを交換して今日はお開きとなった。しかし、全く進展しなかったな。
「明日も同じ時間に集合ね。キョン、あんたは特に時間に気をつけなさいよ。あたしはともかく、他の団員に迷惑がかかってるってことを忘れないことね。あとジョン奪還作戦についてもちゃんと考えてきなさいよ、じゃねー」
そう言ってハルヒはB'zの"いつかのメリークリスマス"を口ずさみながら帰っていった。そういやもうすぐクリスマスだな。
113 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:20:09.85 ID:L16jdEMsO
俺は長門と途中まで一緒に帰った。思ったことを正直に言ってみることにした。
「正直、お前が自分の意見をはっきりと述べた時には驚いた。てっきりお前は口下手な奴だとばかり思っていたからな。まぁこういう表現もどうかと思うが、見直したぜ、長門。」
長門は少し照れた様子で、少しの間の後に、
「・・・・・・・・わたしも、知りたいから」
「ジョンのことか?」
「そう。彼にも、お礼を言わなければいけない。それと、彼に渡したいものがある」
119 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:33:23.64 ID:L16jdEMsO
「渡したいもの?」
「・・・・そう」
「何なのか聞いていいか?」
「・・・・ひみつ」
長門がそれを渡したいのは俺ではなくてジョンだ。まぁなんとなくジェラシーを感じなくも無いが俺ももう高校生だ。つまらない嫉妬などはしないさ。
長門は俺の考えが読めたのかハッと顔を上げるが、俺のわかっているさ的な微笑を見て安心したのか、ゆっくりと視線を元に戻す。
頬を撫でる冬の風は冷たいが、どこか心地いい。
「じゃあな、長門」
「・・また」
しかしやっぱ冷えるね。俺は家路へと急いだ。
123 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:36:56.69 ID:L16jdEMsO
翌日。十二月二十三日
翌日。十二月二十三日
俺は珍しく余裕を持って学び舎に到着し、そんな俺とほぼ同じ時間に到着した朝倉が変な微笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「もう頭は冷えたみたいね」
どうやらそのようだ。
「驚いたわ、あなたが、私があなたを殺そうと思ったことはないかって言ってきた時にはね」
忘れてくれ。っつっても俺にはそんなことを言った記憶は無いがな。
そういえば長門は言っていたな、ジョンが朝倉は長門の同類だと言ったってことを。ということはジョンの世界では朝倉も宇宙人なのか。
「なぁ朝倉」
「なーに?」
「お前、宇宙人を信じるか?」
124 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:38:35.49 ID:L16jdEMsO
朝倉はその晴れやかだった表情を一気に怪訝そうな表情に変化させ、
「まーだ熱があるみたいね」
と言い大きなため息を吐いた。そりゃそうだな。この世界には宇宙人も未来人も超能力者もいないんだ。朝倉が宇宙人なわけない。朝倉が思い通りのリアクションをしてくれたことに安心もしたが少しがっかりした。軽く手がかりのにおいがしたんだがな。スカだったようだ。
「あなた、長門さんのことはどう思っているの?好きなの?」
- いきなりずいぶんと突っ込んだ質問をしてくる。好きか嫌いかで言えば、俺が長門を嫌いになる理由などない。性格的にも気が弱そうに見えて実はそうでもない部分もあることを発見したし、照れている長門は素で可愛い。だが、
「俺は長門とまともに話すようになってからまだ少ししか経っていない。恋愛感情を覚えるには早すぎる期間だ」
125 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:40:12.19 ID:L16jdEMsO
「あら、そうかしら」
そう言って朝倉はクスクスと笑う。
全く、からかうのは遠慮してもらいたいね。俺は人に誇れるほどの恋愛経験などはしてないのだよ。
そういう話には自信が持てないんだ。多少開き直り気味で言うと、
そういう話には自信が持てないんだ。多少開き直り気味で言うと、
「ごめんごめん、からかったつもりじゃないの。でもね、前も言ったけど長門さんと付き合うならちゃんとしなきゃ駄目よ?あの子、ああ見えて精神の弱い子だからね」
前も、ってのはジョンに言ったってことなのか?多分そうだろう。
朝倉は長門の分析が出来てないんじゃないのか?などと一瞬思ったが、だからと言って俺も長門の分析が出来ているかと言うとそうではない。出来ていると言うのは傲慢だろう。そもそも先にも言った通り、まだ長門とまともなコミュニケーションを取るようになって日が経っていないのだ。自分以外の人間の性質を断定するには早すぎる期間だと思うね。
127 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:42:36.17 ID:L16jdEMsO
朝倉はまだ何か話しをしたいようだったが俺は前を向いて机に突っ伏し寝たフリをしながら考えていた。ジョン、別世界、時空改変。全く、何も思いつかんね。この午前授業は自分の脳を休めるためにあるというのに、こう考えてばかりじゃ休憩にもならん。どうせだから岡部が入ってくるまで仮眠することにした。明日は期末テストの返却日にして終業式兼クリスマスイヴ、明後日二十五日は冬休み開始日にしてクリスマス当日。
その日も半ば夢心地のうちに午前中が終り、SOS団の集合時間が近づいてくる。我が母には今日は弁当はいらないと伝えておいた。どうせ食べる時間など無いだろうからな。
しかし、集合時間に関しては地理的に光陽園の二人の方が圧倒的に有利であり、となるとビリを飾るのは俺か長門か朝比奈さんの三人に絞り込まれ、長門と朝比奈さんにおごらせるのは、最低でも俺は気が引ける。ハルヒがどうかは知らんが。気を使ってわざと遅れた方がいいかなと思いつつも今日は余裕を持って現地に到着した俺だったが、朝比奈さんと長門は既に到着していた。
俺も今日は大分早く着いたと思ったのだが、まぁ二人がこの調子なら気を遣うまでもないかもな。
俺も今日は大分早く着いたと思ったのだが、まぁ二人がこの調子なら気を遣うまでもないかもな。
129 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:43:56.44 ID:L16jdEMsO
驚くべきことに、地理的に圧倒的優位に立つ光陽園の二人はまだ来ておらず、その後集合時間を二十分程度オーバーしたところで二人がやっと到着した。
「めんごめんご。終業式が長引いちゃってー」
む、お前らの所は今日が終業式か。いいな、北高よりも早い。しかし団の決まりごとにだなぁ、一番最後に来た奴がおごるってー決まりがあってだなぁ、つまり・・・
「今日はワリカンね」
なんですとぉー!
「あたりまえでしょ、終業式が長引くかどうかなんて事前の予測は不可能だわ。あんたに予知能力があれば別だけどね」
いちいち反論するものガキ臭いので、せめてもの反撃の証にため息を大きめに吐いておく。まぁせめて遅れるならメールの一つでもよこしてくれ。
130 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:45:10.86 ID:L16jdEMsO
「さぁいくわよ!今日もジョンに一歩近づくのよ~~~!」
こいつは本当にいつも元気だね。俺の妹とも引けを取らない。俺は聞こえないように、今度は素でため息をはいた。
しかし今日の会議は全く進展しなかった。古泉も昨日とは別人のように話さなかったな。代わりにいつもそのハンサム面に浮かべている微笑に苦笑の割合が多くなったのは確認できた。
「ちょっとみんなどうしたのよ!昨日の勢いはどうしたのよキョン!」
困ったからって俺に振るな。しかしここは正直な意見を言うことにした。
「うーむ、これはネタ切れと言わざるを得ないな。ジョン、宇宙人、未来人、超能力者、次元改変、いろんなキーワードについて考えてみたが、今以上に有益な情報が得られる気配は俺は感じねー」
132 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:46:16.24 ID:L16jdEMsO
「悔しいですが、僕も同意見です。これ以上机の上の会議だけでは問題を解決できそうにありませんね」
朝比奈さんはさっきから考えながらぶつぶつと何かつぶやいている。
「ジョン、ジョン・F・ケネディ、ジョン・トラボルタ、ジョン・・・」
一人連想ゲームでもしているのだろうか。
133 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:48:22.80 ID:L16jdEMsO
「・・・・・・・・・・」
澄んだ暗黒色の瞳がいつもより少し長い間俺を見つめた後、
「・・・・メッセージ」
メッセージ?
「あたしが書いたやつ?」
「・・そう。それをみてみたい」
ハルヒはかばんからA4の紙を取り出し太めのサインペンで織姫と彦星宛のメッセージ縮小版を書き始めた。出来上がったのはナスカの地上絵のようであり古代文明のお偉いさん方が使っていたような文字でありつまりは俺には全く意味不明な文字だった。文字と呼べるかも疑問だが。
長門はそのハルヒの書いた文字を見つめ続けた。何か引っかかることでもあるのか?長門。
「・・・・・・・」
長門はウンともスンとも言わずただ見続ける。長門はどうだ?
「どうなの有希。思い当たる節でもあるの?」
「・・・・・」
長門は何も言わず、ただ首を横に振った。
139 :名前なしなし:2009/05/06(水) 02:59:08.60 ID:L16jdEMsO
とりあえずここではハルヒはこういう絵を描いたということにする。
とりあえずここではハルヒはこういう絵を描いたということにする。

確かに、手がかりのにおいはした。これもスカだったのだろうか。続いて古泉、朝比奈さんとこのマークを見てもらったが、二人とも特に有益な意見をもたらすことはなかった。
「うぬぬ・・、完全につまったわね・・・。」
「涼宮さん、ここは一つ現地調査の計画を立ててはいかがでしょうか」
141 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:01:45.15 ID:L16jdEMsO
まぁ、そうなるわな。これ以上頭をひねった所でどうにかなるとは思えない。しかしあまり面倒くさいことはしたくないのだが。
「そうね・・・。ジョンに関係のあった場所を中心に何箇所かリストアップしましょう。何かある可能性が高い場所から順次調べていくのよ。我ながらいい案だわ」
提案したのは古泉だが。
ジョンに関係のある場所。やはり第1位にランクインするのは北高であろう。北高の文芸部室。栞やパソコンなどの重要物はすべてこの部屋に関係している。次いで北高の俺の教室、次いで俺の家、あとはどう続くだろう。
「北高の文芸部室については一応調べたわ、あんたが、じゃなくてジョンが消えた直後からね」
「そうですね。一通りは調べたはずですが、あの時は僕らはみんな気が動転していましたからね、もしかしたら何か見落としがあるかもしれません。僕はもう一度調査してみたく思っていますが」
なるほどな。再調査するのも悪くないだろう。俺はそこに踏み入れたのは一昨日が初だし、気になる点も無くはない。
「有希の家にもいったことがあるって言ってたわよね、ジョンは」
「長門の家か。たしか三年前の七夕の日に時間遡行したジョンが元の時間軸に戻るために長門の力を利用したって話だったな。」
144 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:06:22.71 ID:L16jdEMsO
「こうしましょう。北高には冬休みに入ってから行けばいいわ。その方が時間をかけて調査できるでしょ。まずは有希ん家とあんたの家よ。明日はそうね、有希の家の調査にいきましょう!」
「まてまて、長門の意向を無視すんな。長門、大丈夫か?」
「問題ない」
明日は午後二時に駅前に集合になった。終業式が長引いた場合について、団長さんが考慮してくれたらしい。しかしウチの校長の挨拶はテンプレートにまみれているから、あまり長引くことは無いのだがね。しかし長門の家か。ジョンは行ったことがあるらしいが俺は初めてだ。なんとなく楽しみでないといえば嘘になる。
最後に古泉が言った。
「提案があります。ジョンさんの件全般についてですが、僕らだけの機密にしておくべきだと思います。そもそも人に言ったところで簡単に信じてもらえるとは思いませんが、できるだけ周りを混乱させることは避けるべきではないでしょうか」
俺も同意だね。こんなこと他人にばれたら頭のオカシイ奴だと思われちまいそうだからな。信じる奴がいるとは思えん。俺がそうであったようにな。
145 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:07:48.92 ID:L16jdEMsO
「まぁ、そうね。それでいいわ」
長門と朝比奈さんもそれに同意した。
今日のハルヒはあっさりと解散宣言を出した。
「くっくっ・・・」
女共が帰路に着いた後古泉が不気味に笑う。こいつがラスボスだったのかー!なわけない。
「なんだいきなり。気持ち悪いぞ。」
「いやね、嬉しいんですよ」
何がだ。
「僕は光陽園に転校してきてから涼宮さんに気に入られましてね、あなたに会うまでも二人で行動することが多かったわけなんですが、実は最近飽きられている様子だったんですよ」
そりゃまた何で。
147 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:11:23.70 ID:L16jdEMsO
「涼宮さんが僕を気に入ってくれたのは僕が転校生だからなんです。転校生という属性にのみ彼女は興味を持ったわけですね」
あいつらしいな。どうせ転校生マオとかを見て、転校生には不思議なやつが多いんじゃねーのかって思ったってー訳か。
「そうですね。多分そうなんでしょう。しかし見ての通り転校生という属性以外は全く普通なものですからね、そういうわけで飽きられつつあったんですが、SOS団のお陰でしょうね。あなた達に会えて、僕の重要性も涼宮さんの中では回復してきていますからね」
なんとか延命できて嬉しいってか。俺なら素直に喜べないね。こいつが普通かどうかって部分には突っ込まないでおく。
「それもありますが、嬉しい理由は他にあります。」
もったいぶるなよ。
148 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:12:27.46 ID:L16jdEMsO
「すみません、どうも僕の話は回りくどいみたいです。よく言われますよ。涼宮さんはあなた達と出会ってからよく笑うようになりました。あなた達に出会う前は、一日のほとんどは不機嫌そうな顔で占められていましたよ。今の彼女の楽しそうな顔を見ることが出来て僕は嬉しいのです」
「すみません、どうも僕の話は回りくどいみたいです。よく言われますよ。涼宮さんはあなた達と出会ってからよく笑うようになりました。あなた達に出会う前は、一日のほとんどは不機嫌そうな顔で占められていましたよ。今の彼女の楽しそうな顔を見ることが出来て僕は嬉しいのです」
そう言って古泉は父親のような微笑をそのイケメンフェイスに浮かべる。
まぁ、分かる気がするけどな。誰しも不機嫌そうな顔を見るよりも笑顔を見るほうが安心する。
まぁ、分かる気がするけどな。誰しも不機嫌そうな顔を見るよりも笑顔を見るほうが安心する。
「そういうわけで、これからもよろしくお願いしますね」
ニヤケ度が10%上がったような微笑を浮かべながら言いやがる。俺はよろしくと言い返す代わりにフンと鼻息を鳴らした。
「ではまた明日」
「じゃあな古泉」
明日は終業式。そう思うと足取りも軽くなる。俺は家路へと急いだ。腹減ったしな。
152 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:15:04.25 ID:L16jdEMsO
翌日。十二月二十四日兼クリスマスイヴ
予想通りテンプレにまみれた校長の演説と共に終業式が終り、多少は晴れやかな気分に浸かっていた俺だったが、山のような数の宿題に呆然とし、進学を志している身だから仕方ないと思い直すも、やはり休み後半で焦ることになるのだろうと予想していた。過去の長期休暇においてこの予想がはずれたことは未だ無い。
今日の集合は午後二時。終業式だというのに我が母が作ってくれた弁当を食べながら、やはり半熟のゆで卵にどう文句をつけようかと考えていた所で、ケータイに着信が入った。
涼宮か。集合時間にはまだ一時間以上あるが・・・何の用だろう。
「もしもー・・・
「おっそーい!今何時だと思ってんの!もう皆来てるのよ!あんたも早く来なさい三十秒で!三十秒で来ないと罰金十倍にするわよ」
んなアホな。そういうとハルヒは30カウントを約10秒で数え、俺は食いかけの弁当を急いでたたみ、駅までの殺人的坂道走り降りるのだった。階段は上りよりも下りの方が足にかかる負担が大きいそうだが、下り坂道も同じようなもんなのかね。足が痛いよ全く。
「はぁ・・・はぁ・・・」
超特急で坂を下り終えた俺は力尽きたようにガクっと膝を落とす。いや疲れたマジで。日ごろの運動不足がたたっている。
156 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:18:15.72 ID:L16jdEMsO
「キョン~。あたし達をこんなに待たせてくれるなんて、覚悟はできているでしょうねぇ」
ハルヒは不気味にニヤリと笑った。
「アホか。集合時間は二時のはずなのに何故に一時間以上前に到着してんだよ」
半ばあきれ風味の口調で言うと、
「何言ってんのアホキョン。集合時間なんてのはねぇ目安でしかないのよ。このSOS団の絶対的権力者である団長のあたしを、団位最下位のパシリであるキョンのせいで待たせることになるなんてあってはならないのよ!脳みそに焼き付けておきなさい!」
「昨日はあたしはともかくとか言ってなかったっけ。」
「うっさいわね、とにかくあんたは有希ん家で食べるおやつ代全額負担と一発ギャグをやってもらうわ。今のうちに考えておきなさい」
ハルヒは嬉しそうに怒鳴るという器用な技を俺に見せ付ける。一発ギャグて。
160 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:20:14.20 ID:L16jdEMsO
長門は心なしか楽しそうだ。まさか俺の一発ギャグを楽しみにしているのだろうか。プレッシャーだ。
さて、ハルヒは良くてもこの人には謝っておかねばらるまい。
「すみません朝比奈さん、待たせてしまいまして」
「いえ、いいんですよ。わたしも少し前に着いたばかりですから」
そう言って微笑む朝比奈さんは大天使ガブリエルのように神々可愛い。この笑顔が見れるだけでもおやつ代は安いもんかもしれないな。
「そういえば朝比奈さん、書道部のほうは本当にやめたんですか」
気になっていたので聞いてみた。
162 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:23:07.80 ID:L16jdEMsO
「は、はい」
なんと。本当にやめてきたのか。なんか悪い気がしてきたね。謝るべきはハルヒなんだろうが、この団の結成を止められなかった俺にも非はある。代わりに謝らせてもらいますよ。
「いっ、いいんですよキョンくんがあやまらなくても。大丈夫、大丈夫です」
「しかしまたなんで。書道部に思い入れが無かったというわけではないでしょう。」
「知りたいの」
「やっぱり、ジョンについてですか?」
「・・・うん。この世界で彼を知っているのはわたしたちだけでしょ。彼がもし時空改変に失敗してしまったのであれば、彼を助けてあげられるのもわたしたちだけだと思うの」
「確かにそうですが。」
「それに、わたしは何の力にもなれなかった。彼は自分の世界を取り戻そうと必死だったのに、わたしはそれに気がつけなくて、そんな彼を殴ったりもしてしまった。謝りたいの、彼に。そして困っているなら今度こそ力になってあげたい。わたしだって、家族や友達や大切な人が急にいなくなればなんとかして元に戻したいって思うはず。彼と同じ立場だったら同じような行動を取ったと思うの」
165 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:29:05.27 ID:L16jdEMsO
朝比奈さんは真剣だった。それに倣って俺も真剣に考えてみる。俺だったらどうか。家族がいなくなったらどうする。友達がいなくなったら。SOS団がなくなったら。その時になってみないと分からないってのもあるが、多分俺も取り戻そうとするのだろうな。ジョンもそうしたんだし。
「こらーキョン、みくるちゃん何してんの置いていくわよー!」
ったく、よく通る声をしてやがんぜ。そんなに叫ばなくても聞こえますよーだ。
「さ、行きましょう朝比奈さん。置いていかれちゃいますよ」
「うん!」
その後コンビニでこれでもかとお菓子を買い、袋をすべて俺に持たせ、重いので半分を古泉に無理矢理押し付け、長門は新刊の文庫本を読みながら、朝比奈さんはそんな長門を微笑ましそうに眺めながら、ハルヒは先頭をずかずかと歩き長門の住むマンションに到着した。
「どうぞ」
168 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:33:07.62 ID:L16jdEMsO
長門のマンションは駅からほど近いという立地でかつ3LDKくらいだろうか。結構な値段なんじゃないだろうか。俺達以外に人の気配はない。一人暮らしなのか?
長門のマンションは駅からほど近いという立地でかつ3LDKくらいだろうか。結構な値段なんじゃないだろうか。俺達以外に人の気配はない。一人暮らしなのか?
「・・・そう」
「家族はどうしてるんだ?」
「・・・」
「すまん、言いにくかったらいわなくていいから。」
「・・ごめんなさい」
「謝ることないぜ、長門。」
「・・・・」
とりあえず少し安心した様子。
「おー広ーい。あんまり物とか無いのねぇ」
確かに。生活臭の無い部屋だった。リビングにはコタツが置かれているだけで他には何も無い。
窓にはカーテンもかかっていないし、なんとテレビもなかった。笑っていいともとか見ないのかこいつは。
窓にはカーテンもかかっていないし、なんとテレビもなかった。笑っていいともとか見ないのかこいつは。
「好きなところに座って」
169 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:34:45.06 ID:L16jdEMsO
そういうと長門はコタツの一角に腰を下ろした。ハルヒも全く遠慮する気配なくドカっと座る。
俺も長門のちょうど向かい側に、朝比奈さんはハルヒの向かい側に座る。古泉がふざけて俺側に侵入しようとしてきたが断固拒否した。
俺も長門のちょうど向かい側に、朝比奈さんはハルヒの向かい側に座る。古泉がふざけて俺側に侵入しようとしてきたが断固拒否した。
「いいですねぇ、一人暮らしですか。あこがれますね」
コタツが満員なのでフローリングの板の上にあぐらをかく古泉が言った。あこがれる気持ちは何となく分かるが。どうせお前は進学するんだろ?大学生になってからイヤというほど一人暮らしができるじゃないか。
「そうですね、一人暮らしにあこがれ一人暮らしを始めるまではいいものの、食事や家事などの面で家族の大切さを再確認するという話はよく聞きますが、そういう感覚を味わってみたいものです。そういえばあなたは進学を志しているのですか?それとも就職ですか?」
一応は進学を目指している身だ。成績の方はあまりいいとは言えないがな。
173 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:37:39.45 ID:L16jdEMsO
「ふーん。あんたあんまり頭よさそうには見えないとは思ってたけど、やっぱそうなのね」
ったく、すこしは気を使って回りくどい言い方を学んでもいいんじゃないか?
「あたしは面倒くさいのが嫌いなの。常に直球勝負よ。フォークやカーブやシュートなんてのはあたしに言わせればナンセンスだわ」
変化球を使わずにマウンドに立つピッチャーが活躍できるとは思えんがな。と、ぐだぐだと世間話に華を咲かせる俺たちだったが、
このまま雑談していても何も進展しなそうなので、ジョンのことについて少し考えることにした。
「ジョンについてだが、長門家とジョンとの関係は、たしか三年前の七夕にタイムスリップした帰りに長門宅で三年間時間を止めてもらって元の時間軸に復帰したってー話だったな」
「そうだったわね」
一言だけ言い放ち沈黙するハルヒ
174 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:40:52.52 ID:L16jdEMsO
「十九日にジョンさんがこちらに来た時の彼の様子を詳しく話していただけませんか?何かおかしい所があったとか」
古泉は長門を見て言う。
「・・・・・彼はあの部屋をみせてくれと言った」
そう言い長門は襖を指差す。
「・・・何の部屋なんだ?」
「寝室。彼はしばらく眺めていたけど、何も無いと判断しあきらめた様子だった」
ジョンは長門の寝室を見せろと言ったのか。なんかまた後ろめたい気分になる。
「あんた有希に変なことしてないでしょうね!」
からかい半分の顔でハルヒが言うが、俺じゃないだろう俺じゃ。ジョンに言え。
俺達もその部屋とやらを見せてもらうことにしたのだが、
「・・・・・・・・・・」
見事に何も無い。畳のみだ。いちおう隅の方まで見て回ったが特にめぼしいものは無い。ジョンはなぜこの部屋を見せてくれなんて言ったのだろうか。わからん。
175 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:43:27.22 ID:L16jdEMsO
推測ですが、と古泉。
「向こうの世界では、例えばこの部屋には時間を止める装置があって、この部屋でジョンさんは三年間眠り続けた、というストーリーはどうでしょうか。もっとも情報が不足していますから、推測はいくらでも出来ますがそれ以上に確信を持てる段階まで進むことはできそうにないですね」
「手がかり無しね・・・」
残念ながらそのようだ。俺も沈黙する。
「まぁ、お菓子でも食べながら考え直しましょう」
苦笑混じりに古泉が言う。
そうだな。糖分を脳に回しせば何か良い案も浮かぶかもしれないな。うんそうだそうしよう。弁当も食いかけだったしなんか腹減ってたんだ。
サラダ味がハルヒに取られたので、俺はうまい棒のなっとう味を食べながら考える。
「なぁ、時空改変って具体的には何をするんだろうな」
「ふむ、何をするんでしょうね」
さすがの古泉もお手上げ状態のようだ。
「そもそも、ジョンさんの世界と私達の世界は最低でも三年前の七夕の時点では同じでした。そこはいいですよね?うわ酸っぱ!」
176 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:46:13.26 ID:L16jdEMsO
まぁな。三つあってどれか一つがめちゃめちゃ酸っぱいガムのうちの一つを食べた古泉だったが見事に当たったようだ。
「その日以降に何かがあり僕達の世界がジョンさんの世界よりも優位に立つことになる状況になったんでしょう。何が起こったかについては知る由もありませんが。それによく考えれば僕達にとってはジョンさんが改変を失敗してくれたほうがいいではありませんか。成功すれば僕らの存在がどうなるのかは分かりませんしね。消えてなくなるかもしれません」
よっちゃんイカを食べて酢臭くなった朝比奈さんが心配そうな顔をする。しかし確かにそうなのだ。ジョンを助けるよりも改変を阻止する方が俺達にとっては都合がいいってことになるってのは俺も考えた。
「だめよそんなの!いい、ジョンは次元の狭間に閉じ込められて困ってるのよ。あんた困ってる人を見かけたときほっとくの?手を差し伸べるでしょ普通?」
俺のサイフに手を差し伸べてほしい。
「バカ。それは自業自得でしょうが。いい、まずジョンを助けるの。その後でジョンの世界もあたしたちの世界も両立できるようにすればいいのよ」
どうやって。そんななんでも都合よくいく訳ねーだろ。それにジョンは次元の狭間に閉じ込められているって設定で決まりかい。
「それを探してるんじゃない。ったく、バカな団員を持つと苦労が耐えないわ」
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 03:47:21.54 ID:G3WwxkgVO
ガムかwうまい棒かと思ったw
ガムかwうまい棒かと思ったw
180 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:48:40.55 ID:L16jdEMsO
なんだと。オイこら。えーこら。
「そういえばキョン。そろそろ一発ギャグしなさい」
う。忘れてなかったか。二本目のうまい棒、めんたいこ味を食べながらハルヒはまたニヤリとし
「あたしを出し抜こうなんて4億光年早いわ。ほら、考える時間は十分にあったでしょ。やりなさい」
仕方なく俺は立ち上がりとりあえず考えていたネタをやったが、笑っていたのは古泉のみであり、つまり古泉はいつでも笑っているので俺のネタで笑ってくれたわけではなく、朝比奈さんにおいてはついに震えだした。
俺が一発ギャグをやっている間、長門はガブリチュウを食べながら動かない石像のように俺を見つめていたが、俺がダルシムのものまねをした時に
「ぷふ」
となんとも笑ったのかどうかよく分からない効果音を発したのだが、顔を見ると笑いを堪えようとしているようにも見えたので、しめしめと思い、
「ヨガファイヤー!ヨガファイヤー!ヨガフレイム!プギャー!」
長門はもう笑ってはくれなかった。
182 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:50:20.88 ID:L16jdEMsO
その後、古泉がなぜか持ってきたボードゲームなりトランプなどをして盛り上がった。大貧民は俺とハルヒの壮絶な大富豪取り合い合戦の戦場と化したが結局俺が寸分の差で勝利した。
いやぁ気分がいいね。ハルヒには日ごろ世話になってるからなぁ。せめてカードゲームの場ではお返しをしたいと思っていた所なのだよ。こう見えてもカードゲームやボードゲームは得意だったりするんだぜ俺は。
いやぁ気分がいいね。ハルヒには日ごろ世話になってるからなぁ。せめてカードゲームの場ではお返しをしたいと思っていた所なのだよ。こう見えてもカードゲームやボードゲームは得意だったりするんだぜ俺は。
「うぬぬぬぁあっ!悔しいったりゃありゃしないわ。パシリのキョンに負けるなんて、涼宮家末代までの恥ね・・・」
そこまで言うか。と本気で悔しそうな顔をするハルヒ。そんなこんなで今日も過ぎていったが、俺はふと考える。
結局今日も進展はしなかったな。
「さて、もう遅いですし今日はお開きにしますか」
と古泉。時計の針は午後八時を指していた。ったく、楽しい時間は過ぎるのが早いと言うけれど、全くその通りだね。あぁ楽しかったさ悪いか。俺も部活なり同好会なりに所属したりはしなかったからな、何か寂しかったのかもしれん。
183 :名前なしなし:2009/05/06(水) 03:51:36.13 ID:L16jdEMsO
「あしたはあんたの家ね。ちゃんと掃除しておきなさいよ。エロ本とかも隠しておきなさいよ今のうちに」
そういやそうだったな。
なぜか朝比奈さんが顔を赤くし、ハルヒはニヤニヤしながら言ったが、残念ながらそんなもんは無いね。いや、無いと思う。処分したはずだからな。しかし後で再確認せねばなるまい。ハルヒはともかく他2名のレディーにそんなはずかしい物を見られでもしたら俺のクールでニヒルなキャラ像が崩壊しちまうからな。
「そうね、あんたの家に行くついでにクリスマスパーティーをしましょう。ちなみに今日のはクリスマスイヴパーティーよ。イエスキリストが生まれたのは明日なの。世間では今日の方が本クリスマスとして騒がれてるようだけどね、ちゃんと生まれた日に祝ってもらわないとキリストもがっかりするわ」
186 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:02:40.58 ID:L16jdEMsO
「なっ!いきなりだなオイ。キリスト教徒でもないマルチ宗教国家である日本国の国民に祝われてもキリストは嬉しくないと思うがな。」
「何よ、どうせ何も予定無いんでしょ。あんたに彼女なんかいるわけ無いもんね。過去だってクリスマスの日に赤いハートのマークが付いたことはどうせ一度も無いんでしょう。いい機会じゃない、女の子三人とクリスマスを過ごせるって言うのよ、あんたが女の子と同じ時を過ごすなんて5兆光年早いと思うけどね、このあたしが5兆光年を埋めてあげると言ってんの。感謝しなさい」
俺の過去と女事情を的確に言い当て俺を黙らせる。しかしまぁ、反対する理由は無いね。北高の誇るプリティ天使である朝比奈さんとクリスマスを過ごせるのであれば文句があるわけなどない。
それにこいつに反対意見を提出したところで受理されるのはその予定を行った後だからな。
それにこいつに反対意見を提出したところで受理されるのはその予定を行った後だからな。
187 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:04:25.51 ID:L16jdEMsO
「古泉くんは?明日大丈夫でしょ?」
「全く問題ありません。しかしクリスマスパーティーですか、いいですね。そうだ、バーベキューでもしましょうか。ちょうど父が新しいセットを買ってきたのですよ」
「それいいわね!決定!みんな、肉持ってきなさい!野菜はいいからとにかく肉よ!」
俺ん家の家事情をまったく無視して話を進めやがる。まぁ今更止める気は無いがな。
「クリスマスパーティーかぁ、ケーキもほしいですよね」
「いい所に気が付いたわねみくるちゃん。それよそれ、ケーキが無きゃ始まらないわ!」
バーベキューよりもそっちのが重要だろう。
「有希は大丈夫?」
「問題ない」
ということで明日は午後3時に駅前集合となった。集合時間が午後三時だから一時間前には到着していないとヒドイ目にあうな。
188 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:05:39.47 ID:L16jdEMsO
「あとはなんでもいいから遊べそうな物を持ってきなさい!キョン、あんたはホストなんだからお客様をもてなす準備もしておきなさいよ。それから集合時間は守ること!以上!」
ハルヒは太陽のような笑顔で俺を見つめる。まぁいいさ、お前の暴言については逐一突っ込まないでおいてやる。こういう高校生らしい青春も悪くないさ。
「じゃあな長門、明日な。」
「また・・・」
マンションの玄関まで見送りに来てくれた長門と別れ、俺達は別々の帰路につく。ハルヒの野郎はよっぽど機嫌がいいのか、もろびとこぞりてを口ずさみながらスキップで闇に消えていった。
俺は帰り際に朝比奈さんに呼び止められた。
俺は帰り際に朝比奈さんに呼び止められた。
「キョンくん、今日はお話を聞いてもらってありがとうございます」
「お話って、あぁ、いえいえお礼を言われるほどのことじゃないですよ。聞いたのはこちらですしね。」
「えへ、じゃあ、また明日ねキョンくん」
そう言って小走りで去っていく朝比奈さんはまだ、酢臭かった。お疲れ様です、朝比奈さん。
189 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:07:05.87 ID:L16jdEMsO
俺も家路へと急ぐ。確か今日の晩飯はかに玉とか我が母が言っていたからな。
あ
空から舞い降りる白き粒。こりゃ、いいクリスマスになりそうだな。全くもって。
192 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:10:11.10 ID:L16jdEMsO
翌日。十二月二十五日兼クリスマス。
ここ最近は温暖化だの何だのと各国の首脳陣が言っているがその影響でか、子供の頃よりも降雪の量や割合は少なくなった気もする。しかしながら本日は雪が降り続いている。まぁいちおう降ってはいるのだが、雨に換算すると霧雨程度のもので、山間部では何センチか積もっているらしいのだが、都市部ではそうまでは至っていない。まったく半端なものだ。
ハルヒも同じことを思ったようで、
「まったく歩きにくいったりゃありゃしないわ。どうせならもっと大々的に降ればいいのに。雪合戦したりとか雪だるまつくったりとかしたかったのに!」
「おめーは子供か。」
「フンだ。なによ、日本は四季がはっきりしている国なのよ。冬なら冬らしくもっと寒くなって雪もじゃんじゃん降るべきだわ。なのに何なのよこの半端さは。政府も温暖化対策にもっとお金をつぎ込むべきなのよ。超大型のエアコンを作って地球を冷やすべきだわ」
それじゃ根本的な解決にならん。
193 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:11:08.95 ID:L16jdEMsO
「なによ。みくるちゃんもそう思うわよねー」
「ひえっ、えっ、その、わたしは暖かいほうが・・・わきゃぁー、ななな何するんですかぁー」
ハルヒは後ろから朝比奈さんの体に手を絡ませ動けないようにし耳をはむはむ噛み始めた。
俺は呆れ半分羨望半分でその光景を眺めていたのだが、羨ましい思いがにじみ出ていたのだろうか。
俺は呆れ半分羨望半分でその光景を眺めていたのだが、羨ましい思いがにじみ出ていたのだろうか。
「目がヒモみたいになってるわよ」
ハッ!いかんいかん。
長門はいつかのようにじっとに朝比奈さんを見ていた。長門。ニーズはある。お前は希少価値なんだぞ。
「そういやハルヒ、お前の荷物はやけに膨れているが何が入ってるんだ。あんまりおかしいものを持ってこられても困るぜ」
194 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:12:11.80 ID:L16jdEMsO
「ふふふ、気になる?でも教えないわ。その時のお楽しみね。あたしがあんたたちを楽しませてやろうってんだから感謝しなさいよ」
どーせロクなもんじゃないな。まぁ一応期待はしておこう。
しかし珍しく今日は俺が最後ではないのだ。SOS団副団長であるニヤケハンサム野郎、古泉一樹の姿がまだ無い。時間にルーズな奴だとは思えないのだが、何かあったのだろうか。電話の一つでもかけようかどうしようかと思っていた所に、ハルヒのケータイに着信が入った。
「もしもし、あ、古泉くん?どうしたの?みんなもう来てるわよ。・・・え、あ、うん。わかった、炭ね。わかったわ。あ、ちょっと待ってキョンに代わるから」
俺に用があるのか?
198 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:15:24.10 ID:L16jdEMsO
「もしもし古泉か?俺だ」
「申し訳ありません、バーベキューセットが思っていたより大きくて一人では運べそうもないので、みなさんが買出しを終えてあなたの家に着く頃にあわせてタクシーを使ってそちらに運ぼうと思います。なので買出しには皆さんだけで行ってください」
「あぁ、そういうことか。了解したぜ」
「家の方に到着しそうになったらメールか何かでご一報ください。それから住所を教えていただけませんか?」
「住所?ああ、お前は俺の家の場所を知らないもんな。というかここにいる皆も知らないが。住所だけで所在が分かるのか?」
「ええ」
こいつは郵便局員のバイトでもやってたのだろうか。そんなバイトがあるかどうかは知らんが。
「○○△△■■-189番地だ」
「ふむ、なるほどあそこですか。北高の学区の端付近ですね。意外と大変そうですね、通学」
「通学は大変だが、まぁ一番大変なのはあの殺人的坂道を登ることさ」
他校の学区の範囲などよく分かるものだ。俺なんか自校の学区でもさして興味は無い。
「なるほど。あぁ、涼宮さんにも言っておきましたが、炭が足らないのでそちらの方も買ってきてください。お願いしますね」
199 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:16:31.59 ID:L16jdEMsO
適当に返事をし俺は電話を切った。
「さぁ行くわよぉ~!肉!ケーキ!肉!ほら有希も!肉!!」
「に、にく・・」
ハルヒのなすがままになっている長門と朝比奈さんをながめながら俺達はの買出しへと向かう。おまえはどんだけ肉が好きなんだと逐一突っ込みたくなるほどにハルヒはポンポンとかごに肉ばかりいれていく。これでは食いきれるかどうか微妙だ。
「あのぉ、こんなにたくさんは食べきれないんじゃあ」
カートを押す朝比奈さんが心配そうに言う。豚肉300グラム4パック、牛肉500グラム焼肉用8パック、鳥肉少々、ウィンナー一袋、ベーコン少々。これを五人、まぁ妹と母も入れたとして七人で食べきるのは確かに少々辛いかと思われるが。
200 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:17:46.22 ID:L16jdEMsO
「なによみくるちゃん、ちゃんとタンパク質をとらないと胸が大きくならないわよ。それに大食いの男共が二人もいるんだからすぐなくなるわよこんなの。ねぇキョン」
と言いまた朝比奈さんに絡みつくハルヒ。朝比奈さんに限ってはその部分のタンパク質は間に合っていそうだし(ていうか脂質じゃないのか?)、俺は大食の自信は無いね残念ながら。
「・・・・・」
しかし今の話を黙って聞いていた長門は、また一つ肉のパックをかごに入れるのだった。
だが流石に野菜も入れた方がいいだろう。とりあえずキャベツとタマネギと、鳥肉もあったからネギでも買ってネギ間の焼き鳥でも作るか。
209 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:32:03.51 ID:L16jdEMsO
「あーっ!何やってんのよキョン!野菜を買うなんてのは軟弱物のやることなのよ。男なら黙って肉食ってりゃいいのよ肉!戻してきなさい」
こいつは農家の人たちに謝ったほうがいい。
「何言ってる。日本人は元来野菜を食べるのに適した胃腸の構成をしているのだよハルヒ君。こう肉ばかりだと常にハイテンションで元気なお前の胃袋でもさすがに疲れるだろうよ。よって少しは野菜を入れておくのさ」
見ろ、朝比奈さんもうなずいている。ハルヒは一瞬ムスっとした顔をしたが、
「むー、まぁ、あんたがそれでいいならいいわ。あとお菓子ね!昨日食べたうまい棒うまかったわ!何味か忘れたけど。うまい棒を大人買いしましょ!あ、あと炭ね。古泉くんに頼まれてたの忘れる所だったわ!」
210 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:33:29.33 ID:L16jdEMsO
こいつが俺の言うことをすんなりと聞くとはな。大雪にでもなったりして。
「ん?なんか言ったキョン?言いたいことがあるならハッキリいいなさいよ」
「ん、あぁ、お前が俺の言うことを素直に聞くなんて珍しいこともあるんだなと思ってさ。可愛いところもあるじゃないか」
思ったことを素直に言ってみたね。
「なっ、なな何言ってんのよエロキョン!みくるちゃん、カートをこのアホキョンに押させなさい。キョンはパシリなんだからこういう肉体労働系は優先的にパシリがやらなきゃいけないのよ。全く大体・・・」
ハルヒはぷんすかしながら早足で進んでいく。まったく微笑ましいリアクションをしてくれるぜ。
しかしエロキョンは無いだろエロキョンは。
しかしエロキョンは無いだろエロキョンは。
211 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:34:25.90 ID:L16jdEMsO
さて朝比奈さん、代わりましょう。かごの荷物も多くなってきたし重いですからね。
さて朝比奈さん、代わりましょう。かごの荷物も多くなってきたし重いですからね。
「あ、ありがとうキョンくん」
なぁに、我が天使である朝比奈さんに御両手にかかっていた負荷とあれば我が両手も万々歳で受け入れるでしょうハッハッハ。
「そこぉ、なにイチャついてんの!団内でイチャつくのは禁止!次やったら逆立ちで校庭十週の刑よ!早く来なさいカゴ係がいないと買い物ができないでしょ!」
へいへい行きますよ。ったく店内には他の客も大勢いるってのに大声で叫びやがる。恥ってもんがこいつには無いのかね。
そんなこんなで俺達は買い物を終え、ちょうど我が家が見えてきたあたりで古泉の乗ったタクシーが到着した。
「ちょうどよかった、これ降ろすの手伝って下さい」
213 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:35:50.27 ID:L16jdEMsO
古泉が持ってきたバーベキューセットはかなり本格的なものだった。こりゃうまい肉が焼けそうだ。雪も買い物を終えた頃から止んだ様だし、天気もいい。ちと寒いが肉でも食えば体も温まるだろう。
てかどうせやるなら鍋とかの方がよかったかもな。冬にバーベキューはあまりやらなさそうだ。
と今になって思ったがも言わないでおいたね。みんな結構ノリノリだしな。
と今になって思ったがも言わないでおいたね。みんな結構ノリノリだしな。
「とりあえず荷物を置こう。入ってくれ」
「おじゃましまーす」
ハルヒがでかい声で挨拶する。
「こんにちわぁ~、キョンくんのおともだちー?」
あー、紹介しよう。我が妹だ。
214 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:37:12.22 ID:L16jdEMsO
あんた妹にもキョンって呼ばれてんのねと言ってハルヒはヒッヒッと笑う。聞かなかったことにしてくれ。
ハルヒ達は母にも挨拶をし、母は俺が進学校である光陽園の生徒を連れてきたことに驚き、俺に勉強を教えてあげてはいただけないだろうかと頼み込む母にもそろそろ鬱陶しくなったのでバーベキューの準備にとりかかることにした。
「よし古泉、そろそろ準備するか。女子は食料の方の準備を頼む」
庭にセットを組み立て、炭に火をつける。意外と難しいんだな炭に火をつけるのって。
「ふう、とりあえずこれで準備はOKですね。あとは焼いて食べるだけです。しかし、先ほど買い物袋を拝見させていただきましたが、肉の量はすさまじいですね。全部食べきれるのでしょうか」
苦笑混じりに古泉が言う。
215 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:38:34.46 ID:L16jdEMsO
「それを言うな。ハルヒの中では男=大食いとなっているようだ。俺達が全部食ってくれるとか言ってたぞ。いちおう聞くがお前は自信あるか?」
「それを言うな。ハルヒの中では男=大食いとなっているようだ。俺達が全部食ってくれるとか言ってたぞ。いちおう聞くがお前は自信あるか?」
「無いですね。運動部の方であれば部活等でエネルギーも多く消費しますから、より多くのエネルギーを摂取するために食事の量も多くなるようですが、僕は生まれてかれこれ運動系の部に所属したことはありません。まぁ野球の経験はあるのですが。よって胃袋の大きさも人並みですね」
「俺もそんなもんさ。」
「しかし、あまり大声では言えませんが実は涼宮さんは意外と大食らいなんですよ。それこそ同年代の女性よりは大分食べますね。同年代の男性よりも食べるかもしれません。彼女が常にエネルギッシュなのはそのせいかもしれませんね」
細胞に梱包しているミトコンドリアの数が常人とは違うのかもしれんな。そのエネルギーをせめてもう少し世のため人のために使えばいいものを。
女共が一口大に切った野菜や肉を持ってきた頃には鉄板も十分温まっており、紙コップにウーロン茶を注ぎ、よし早速第一号の肉を焼きにかかろうかと思い我が箸で肉を掴もうとしたその矢先、俺の手首に衝撃が加えられた。
216 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:39:38.48 ID:L16jdEMsO
アウチッ!なにすんねん!
「キョン、あんた団長の挨拶も待たずに食べようとするなんて一体何を考えてんの?少しは学びなさいよ!」
「まなびなさいよー」
妹がハルヒのセリフをリピートする。ちなみに妹はというと、どうやら朝比奈さんを大分気に入ったみたいで先ほどから朝比奈さんにまとわりついている。その豊かな胸に顔をうずめ、
「みくるちゃんふわふわ~」
などとのん気な事を言っている。羨ましいなオイ。
「うふふふ」
朝比奈さんも満更ではなさそうだ。将来は保育士とか小学校の先生とか合ってそうだな。子供好きそうだし、子供からも人気がありそうだ。
217 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:41:34.47 ID:L16jdEMsO
「ごほん!」
皆が一斉にハルヒの方を向く。そういや挨拶がどうとかだったな。どーでもいいが早く食わせてもらえないかな。
「さて、我々SOS団の結成からなんと今日で四日目です」
21、22、23、24、25
「五日目じゃねー・・・
「五日目です!!!」
こいつ・・・。
「思えば色々ありました。ジョンの消失、喫茶店での会議、クリスマスイヴパーティー・・・
確かに色々あったな。懐かしむべきほどの時間は経っていないが。
「しかしながら、ジョンに繋がる大きな手がかりはまだ発見できずにいます。これは悲しむべきことです。ジョンは今も次元の狭間で苦しんでいるというのに私達はそれを指をくわえて見ていることしかできません」
220 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:44:12.23 ID:L16jdEMsO
見る事すらできていないだろ。ハルヒは虚空を見つめ空を指差し、
「我々は何としてもジョンの行方を見つけ出さねばなりません。今日はそのための英気を養うためのパーティーです。これから我々は戦場へと赴かなければなりません。みんな、今のうちにじゃんじゃん食べてエネルギーをたくわえておきなさい!それじゃ、 乾杯!」
「かんぱーい」
俺は第一号の肉を鉄板に乗せる。そういやバーベキューなんてやるのは何年ぶりだろうか。前にやったのは、思い出せないほど前のことだ。しかしながら寒空の下で食べる肉はかなり美味しかったな。
俺との肉取り合い合戦に勝利し勝ち誇るハルヒや(余るほどあるというのに)、一切れの肉を食べ終わるまでに3分くらいかける長門や、焼けた野菜に肉を包み何か朝比奈流の新しい料理を開発していた朝比奈さんや、無邪気に朝比奈さんにじゃれる妹、それらを微笑ましく見守る父親のような古泉をひとしきり眺め、俺はふと空を見る。雪雲はどこかに行ってしまったようだ。冬の空気は澄んでいて綺麗だと言うが、全くもってその通りだね。
221 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:47:16.30 ID:L16jdEMsO
そこには、あまねく星空が広がっていた。
バーベキューもそうだが、いつが最後だろうな。まともに星空を見たのは。
「きれい」
長門が言う。長門も同じものを見ていた。
「そうだな」
「星座、知ってる?」
長門の宇宙のような瞳が俺を見る。そういや長門に疑問系で話しかけられたのは初めてだな。
「んー、オリオン座と北斗七星くらいは分かるが、あとは分からないな。分かるのか?」
「・・・・」
長門はコクリとうなずく。
「オリオン座より南東方向に比較的明るい星がある。それがシリウス。シリウスがあるのがおおいぬ座。おおいぬ座より北東方向にある比較的明るい星、それがプロキオン。プロキオンのある星座がこいぬ座。オリオン座の一番左上の赤くて明るい星、あれがベテルギウス。シリウスとプロキオンとベテルギウスをつないだ三角形を冬の大三角という」
222 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:49:47.14 ID:L16jdEMsO
長門は指を指しながら説明してくれた。冬の大三角は聞いたことあるな。シリウスも聞いたことはある。ハリーポッターに出てきたよな確か。ベテルギウスとプロキオンは初耳だ。さすが本を読んでいるだけあって物知りだな、長門。
「・・・」
照れてうつむくのかと思いきや、珍しくもそうはならずまだ黙って天を見上げている。ジョンの世界では長門は宇宙人らしいが、こっちではそんな属性は無くとも、何か通じるものがあるのだろうか、宇宙に。
俺達の話を聞いていたのか、ハルヒが、
「ねぇねぇ、オリジナルの星座を作りましょうよ!あんたの星座を作ってあげるわ!」
オリジナルって。てかお前に作ってもらっても嬉かねー。
224 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:50:58.16 ID:L16jdEMsO
「なによ、あんたにお似合いのマヌケな星座を作ってあげようと思ったのに。そうね、あの星とあの星とあの赤い星でキョン座よ。どう?」
そう言ったハルヒは満点の星空のような笑顔を浮かべていた。そんな無邪気な笑顔を見ていると悪くないかなと思えてきてしまうね、キョン座ってのも。あの星とあの星とあの赤い星ってのがどれだか分からんが。赤いのはベテルギウスか?
結局肉は余った。始めから分かりきっていたことだがな。我が食卓にはここ数日間、肉の割合が増えることだろう。
冷えてきたので室内に移動することにした。バーベキューセットは物置に一時格納し、明日解体することにする。
「あんたはケーキ持ってきなさい。あ、あとあんたの部屋借りるわ。いいって言うまで入ってきちゃだめよ。古泉くんもケーキ持ってくるの手伝ってあげて」
そういうと女子共は俺の部屋に入り、何をしているのかは知らないが朝比奈さんの悲鳴が聞こえてきた。
「えええちょちょっと何するんですかー、えっ、わー、自分で、自分で脱ぎますー、わきゃぁー、うっうう」
225 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:53:21.08 ID:L16jdEMsO
い、一体何をやっているのだろうか。妄想だけが一人歩きするような悲鳴であったが、とりあえず朝比奈さんの無事を祈りつつ、俺と古泉はケーキを人数分切りそろえ部屋にもどる。一応ノックしとくか。自分の部屋だというのに。
「入っていいかー」
「ふっふっふ、どうぞー!」
「わっ・・・」
部屋にはなんとサンタがいた。頬を朱に染めて立っているそれは見るもの全てを幸せにしてしまうような美貌をもった美少女サンタ、つまりは朝比奈さんミニスカサンタバージョンだ。俺が絶句していると、
「これはこれは」
古泉が口を開く。
「非常によくお似合いです。申し訳ありませんがこのような常套句しか思い浮かびませんね。うん、そうですとも。とてもよくお似合いですよ」
226 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:54:15.68 ID:L16jdEMsO
「でしょ!あたしの衣装センスに間違いは無いのよー!」
そういうとハルヒは朝比奈さんを抱き寄せ、愛くるしいサンタの顔に自分の頬を寄せた。
「みくるちゃん、あなたものすごい可愛いわ。これほどの可愛さなら本物のサンタと取って代わっても誰も文句言わないわ。みくるちゃんはこれからSOS団専属サンタになるのよ!いいみんな、今まで町で見かけたサンタは全部ニセモノよ!みくるちゃんこそが本物なの。プレゼントが欲しければみくるサンタにお祈りしなさい!」
「ふひー」
頼りなさそうなため息を吐く朝比奈さんだったが、いや俺はお祈りの一つや二つなら捧げてもいいと思ったね。プレゼントをよこせというのは傲慢だが。あぁ、ハルヒのかばんがふくれていたのはこの衣装のせいか。どこで手に入れたんだかな、こんな衣装。
227 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:55:31.80 ID:L16jdEMsO
そんなわけで俺の部屋でもハルヒの勢いは変わらず、俺達は主に古泉が持ってきたゲームで遊び呆けた。こいつはゲームマニアか何かなのかね。
ハルヒがリベンジマッチとばかりに果敢にも俺に挑んできた大貧民では、またしても俺が寸分の差で勝利を飾り、エースコンバット4のプレイヤー同士の対戦では長門と古泉の20分に渡る死闘の末古泉が勝利し、名前なんつったかな、指定された数字に手足を移動させ崩れたら負けってゲームはハルヒの独壇場でだった。ちなみにこのゲームでは俺は一回戦で長門に敗れた。手加減したつもりは無かったのだが長門は意外にも粘り強く、無惨にも俺は崩れ落ちた。こいつは結構負けず嫌いな所もあるのかもな。長門の意外な一面をまた一つ発見した気分だ。
この頃になると妹は疲れたのか、サンタ朝比奈さんの膝の上ですやすやと寝息を立てていたが、ハルヒの勢いは留まることを知らず、次は王様ゲームをする運びとなり・・・
とまぁこんな感じでいかにも高校生らしいモラトリアムなクリスマスを俺達は過ごしていた。王様ゲームについても特に執筆するほどのことは無かったが、まぁ、とある一回については俺が心に留めておきたいと思った風景を見ることができたので、それについてお話ししようか。
229 :名前なしなし:2009/05/06(水) 04:59:04.76 ID:L16jdEMsO
それは9回目の時だった。8回もやってるというのに俺が王様のクジを引くことは未だ無く、そのくせ4回も王様の命令を受けてしまっているという状況だったのだが、
「ふ、どうやら俺の時代が来たようだ」
「なっ、まさか」
ノリノリのハルヒが大げさなリアクションをする。
「そうだ、俺がゼロだ!」
クジが0~4でゼロの奴が王様って設定になってるわけで、コー○ギアスの主人公を真似たって訳じゃない。皆のリアクションからして誰もコー○ギアスを知らないっぽくてどこかスベった感じになったからといって言い訳をしているわけでもないぞ。いちおう言っておくが。
230 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:00:08.05 ID:L16jdEMsO
「いやぁハルヒよ、先ほどは安部総理のモノマネをしろなんてー無理難題をよくも押し付けてくれたな。これでようやくウサ晴らしができるってもんだ」
「ほぅ、いくら王様とはいえ命令を下せるのは一人だけ。あたしに当たる確率は四分の一よキョン。大層な自信ねぇ」
確かにそうなのだが、まぁハルヒ以外に当たっても大丈夫な命令にしとこう。
「3番は」
そう言い、少しだけ間を持たせる。ハルヒが一瞬ビクッと動いたのを俺は見逃さなかった。しめしめ。
「ポニーテールに髪型変更!」
声を大きくして言うことじゃあないが、俺はポニーテール萌えなのだ。古泉で無いことを祈るが、誰だね3番は。
うっ、と反応するハルヒ。
231 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:01:17.53 ID:L16jdEMsO
「あ、あたしよ・・」
命令ですよハルヒさん。ポニテにしてもらいましょうかね。
「な、なんであたしがあんたなんかの命令に従わなきゃいけないのよ!」
これが王様ゲームだからですよハルヒさん。そういう仕組みなんですよ。
ハルヒは10秒くらいうぬぬぬと唸っていたが観念したのか、
ハルヒは10秒くらいうぬぬぬと唸っていたが観念したのか、
「分かったわよ、すればいいんでしょすれば!」
ポケットから髪留めゴムを取り出して、長い黒髪を器用に後頭部でまとめあげる。
「わわっ、かわいい。似合ってますよ涼宮さん」
と朝比奈さん。全くその通りです。ハルヒポニテヴァージョンは見事に似合っていた。俺の目には魅力度三十八パーセント増しになったように見えるぜ。
「なっ・・」
一瞬怒ったような顔をしたハルヒだったが、次の瞬間にはなんと、笑い出した。なんだなんだ、何か面白いことでも言ったか?
232 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:03:47.70 ID:L16jdEMsO
「これはこれは、さすがと言うべきですか」
「これはこれは、さすがと言うべきですか」
古泉までもが笑っている。どーゆーこった?
「ジョンもね、同じことを言ったのよ。あたしと古泉くんと一緒に北高に潜り込んだときにね・・・
「やはりジョンさんは、別の世界の"あなた"なんですね。もっともジョンさんが言ったのは確か、"三十六パーセント増し"だったと思いますが」
なるほどな。さすがはジョンだ。考えていることも俺とそう違わないのだろうな。何か狙いをかわされたような気がして恥ずかしくなったね。
「はい、もういいでしょ」
そう言ってハルヒははらりとポニテをほどく。俺としてはもう少し見ていたかったのだが。
233 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:04:40.13 ID:L16jdEMsO
「何よ、あんた命令を出すときに期限までは言わなかったでしょ。せめて今日中とか条件をつけておけばよかったのに。まったくアホね」
ハルヒは次やるわよと言いクジを手に取る。まぁいいか、網膜には焼き付けておいたから当分は忘れなさそうだ。またいつか見たいもんだぜ。
そんなこんなで夜は更けていく。さすがに午前二時を回る頃にはみんな疲れが出てきたのか、ハルヒは長門とお互いに寄り掛かるような感じで、古泉はコタツにそのまま突っ伏して、俺はコタツに足を突っ込んだまま床に寝転び、そのまま寝てしまったようだ。やれやれ、悪くない青春だと思うけどね。我ながら。
てかこいつら、お泊りするつもりだったのか?
237 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:10:45.08 ID:L16jdEMsO
翌日 十二月二十六日
翌日、男共はバーベキューセットをかたずけ、女共は俺の部屋の片づけをしてくれた。
解散際にハルヒはこう言った。
解散際にハルヒはこう言った。
「さて、やることはやったはね。あんたの部屋から卑猥な雑誌やビデオが出てこなくて残念だわ。見つけたら証拠として押収しSOS団パシリとして一生下働きをさせるための材料にしようと思ったのに」
そう言いハルヒは怪しくニヤリと笑った。そんなものは処分したからな。前にも言ったが残念ながら存在しないのだよハルヒ君。てゆーか掃除と見せかけてお前はそんなもんを探していたのか。
変な所いじってないだろうな。油断のならん奴だな全く。いや変な所なんて無いが。
変な所いじってないだろうな。油断のならん奴だな全く。いや変な所なんて無いが。
ふーんとハルヒは鼻をならす。信じてないなこいつ。
238 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:11:57.97 ID:L16jdEMsO
「まぁいいわ。今日はこれで解散にしましょ。まぁあんたのもてなしにしては上出来だったわ。楽しかったからね。今後の行いによってはパシリから団員その一にランクアップさせてあげてもいいわよ。がんばりなさい」
「まぁいいわ。今日はこれで解散にしましょ。まぁあんたのもてなしにしては上出来だったわ。楽しかったからね。今後の行いによってはパシリから団員その一にランクアップさせてあげてもいいわよ。がんばりなさい」
へいへい。
「明日は北高に行くわよ。みんな、ジョンのこと忘れちゃだめよ。クリスマスパーティーはジョンを助けるための英気を養うためのものだったんだからね。これだけ食べて遊べんだんだからいいアイディアの一つや二つや三つ、浮かんできてもおかしくないわ!」
「お前がジョンのことを一番忘れてそうだったがな。覚えててくれて安心したぜ。しかし明日とは急だなオイ。SOS団には休日ってもんは無いのかね。冬休みなんだから少しはゆっくりしたいよ。」
「なによキョン。パシリごときが団長様に楯突こうってわけ? 謀反の罪は重いのよ。あたしたちはジョン救出という最優先任務を背負ってるの。任務を無事遂行できるまで休むことは許されないのよ!わかった?それからあんたを団員その一にランクアップさせるって話は無かったことにするわ。それで謀反を許してやるってんだから感謝しなさいよ」
240 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:12:52.31 ID:L16jdEMsO
「全く、初めからそんな気は無かったんだろう。やれやれ。」
「んん、分かった?」
そう言うとハルヒはヒマワリのような笑みを浮かべる。
そうだな、お前は思い立ったら即行動、途中棄権は許さない、そんな奴だったな。俺が反対意見を主張した所で通る訳など初めから無いってのはもう分かりきっていることさ。まぁいい、この際最後まで付き合ってやるよ。俺もお前らと共に見届けたくなってきたからな。ジョンの行方を。
そうだな、お前は思い立ったら即行動、途中棄権は許さない、そんな奴だったな。俺が反対意見を主張した所で通る訳など初めから無いってのはもう分かりきっていることさ。まぁいい、この際最後まで付き合ってやるよ。俺もお前らと共に見届けたくなってきたからな。ジョンの行方を。
「集合場所は駅前のいつもの場所ね。時間は後でメール回すわ。みんな、異論は無いわね」
沈黙を肯定と受け取り、
「じゃあ解散!」
242 :名前なしなし:2009/05/06(水) 05:16:09.54 ID:L16jdEMsO
俺は女性陣が片付けてくれた綺麗な我が部屋に戻り、とりあえず仮眠を取ることにしたね。30分だけ。
この後、事態は急展開を迎えることになる。