自分用SSまとめ
朋也「軽音部? うんたん?」 4/15 木
最終更新:
meteor089
-
view
朋也「軽音部? うんたん?」
347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:56:23.64:cUBlBpOS0
4/15 木
唯「おはよぉ」
朋也「ああ、おはよ」
今日も角を曲がったところで、変わらず待っていた。
そのほがらかな姿を見ると、僅かに心が躍った。
そんな想いを胸中に秘めながら、隣に立ち、並んで歩き始めた。
そのほがらかな姿を見ると、僅かに心が躍った。
そんな想いを胸中に秘めながら、隣に立ち、並んで歩き始めた。
唯「…はぁ」
隣でため息。
朋也「………」
唯「…はぁっ」
今度はさっきより大きかった。
朋也「………」
唯「…もうっ! どうしたの? って訊いてよっ」
朋也「どうしたの」
唯「…まぁ、いいよ」
唯「えっとね、先週新勧ライブあったでしょ」
348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:57:55.37:cUBlBpOS0
朋也「ああ」
唯「あれから今日で一週間経つんだけど、まだ新入部員ちゃんが来てくれないんだよ…」
朋也「ふぅん…」
唯「やっぱり、私の歌がヘタだったから、失望されちゃったのかな…」
朋也「そうかもなっ」
唯「って、こんな時だけはきはき答えないでよっ」
朋也「悪い。眠さの波があるんだ」
唯「意地悪だよ、岡崎くん…」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
4時間目が終わる。
唯「今日も、一緒でいい?」
朋也「ああ、別に」
唯「やたっ!」
349:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:58:27.37:cUBlBpOS0
唯「じゃ、またあとでねっ」
高らかにそう告げると、席を立ち、ぱたぱたと駆けていった。
いつものメンツを集め、その旨を伝えているようだった。
いつものメンツを集め、その旨を伝えているようだった。
春原「とーもーやーくん」
そこへ、いやに馴れ馴れしさのこもった呼び声を発しながら、春原がやって来た。
朋也「…あ?」
春原「がくしょくいーこーお」
春原「いや、でもさ、その前に…河原いかね?」
朋也「…なんでだよ」
その前に覚えた違和感はとりあえず置いておき、訊いてみる。
春原「なんでって…おまえ、言わせんなよ…」
耳打ちするように手を口に添えた。
結局言うつもりらしい。
結局言うつもりらしい。
春原「…エロ本…だよ…」
げしっ!
春原「てぇなっ! あにすんだよ!」
350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:01:40.98:1qYNd8dxO
朋也「おまえが真っ昼間からサカってるからだろうがっ!」
朋也「なにがエロ本だっ! 性欲が食欲に勝ってんじゃねぇよっ!」
生徒1「春原やっべ、エロ本とか…」
生徒2「あいつ絶対グラビアのページ開きグセついてるよな」
生徒1「ははっ、だろーな」
春原「うっせぇよ!」
生徒1「やべ、気づかれた」
生徒2「エロい目で気づかれた」
春原「ぶっ飛ばすぞ、こらっ!」
生徒1「逃げれっ」
生徒2「待てって」
二人のクラスメイトたちは、わいわいと騒ぎながら教室を出て行った。
春原「岡崎、てめぇ、声でかいんだよっ」
朋也「おまえがエロ本とかほざくからだろ」
春原「おまえが中学二年生みたいにって要求したんだろっ!」
351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:01:56.26:SBICiwHrO
ともぴょんキマシタワ
352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:02:09.54:cUBlBpOS0
朋也「だったか?」
春原「もう忘れたのかよっ!? なら、最初からいうなっ!」
朋也「いや、最初のほうは小学二年生だったからわかんなかったんだよ」
春原「ちゃんと第二次性徴むかえてただろっ」
朋也「いきなりすぎて気づかなかったんだ」
春原「なんだよ、おまえの言う通りにしてやったのによ…」
朋也「悪いな。じゃ、次はさ、一発屋芸人のようにやってくれよ」
春原「おまえさ、僕で遊んでない?」
朋也「え? そうだけど?」
春原「さも当たり前のようにいうなっ!」
春原「くそぅ、やっぱ、確信犯かよ…」
朋也「まぁ、結構おもしろかったんだし、いいじゃん」
春原「それ、あんただけだよっ!」
―――――――――――――――――――――
唯「とうとう明日だね、和ちゃん」
353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:03:23.08:1qYNd8dxO
和「そうね」
律「確か、演説とかするんだよな」
和「ええ」
律「公約とか、理想みたいなのを延々語るんだろ?」
和「ごめんなさいね、退屈で」
律「いや、和が謝ることないけど」
澪「和が生徒会長になってくれたら、学校も今よりよくなるよ」
和「ありがとう」
唯「和ちゃんの公約って、なに?」
和「無難なものよ。女の子受けするように、スカート丈が短くてもよくするとか…」
和「ソックスの種類を学校の純正品以外も可にするとかね」
和「男の子向けだと、夏はシャツをズボンから出してもよくする、とか…」
和「まぁ、先生受けは悪いし、ほとんど守れないんだけどね」
こいつが本気になればどれも軽く実現しそうだった。
律「じゃあさ、春原をこの学校から根絶します、とかだったらいいんじゃね?」
354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:03:40.65:cUBlBpOS0
律「それなら、先生受けもいいだろうし」
春原「いや、デコの出し過ぎを取り締まったほうがいいよ」
春原「昔、ルーズソックスとかあったじゃん。もう絶滅してるけど」
春原「それと同じで、ルーズデコも、もう世の中が必要としてないと思うんだよね」
律「………」
春原「………」
春原「………」
引きつった笑顔で睨み合う。
澪「また始まった…」
朋也「なら、折衷案しかないな」
春原「折衷案?」
律「折衷案?」
律「折衷案?」
朋也「ああ。間を取って、春原の上半身だけ消滅すればいいんだよ」
春原「僕が一方的に消えてるだろっ!」
律「わははは!」
―――――――――――――――――――――
………。
355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:06:12.44:1qYNd8dxO
―――――――――――――――――――――
放課後。生徒会室に集まった。
和「じゃあ、今日は…」
こんこん
扉がノックされる。
和「…どうぞ」
真鍋の表情が険しくなる。
警戒しているようだった。
警戒しているようだった。
女生徒「失礼する」
ひとりの女生徒が入室してくる。
真鍋が俺に目配せし、廊下の方に小さく顎を振った。
他に誰かいないか、確認するよう指示してきたのだろう。
俺はそのサインを汲み取り、廊下を見渡しに出た。
人影はみあたらない。
女生徒がこちらに背を向けていたので、その場から手でOKサインを送った。
真鍋も目だけをこちらに向けて気取られない程度に頷く。
真鍋が俺に目配せし、廊下の方に小さく顎を振った。
他に誰かいないか、確認するよう指示してきたのだろう。
俺はそのサインを汲み取り、廊下を見渡しに出た。
人影はみあたらない。
女生徒がこちらに背を向けていたので、その場から手でOKサインを送った。
真鍋も目だけをこちらに向けて気取られない程度に頷く。
和「私に用があるのよね?」
女生徒「ああ」
和「でも、どうしてここが?」
356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:07:25.54:cUBlBpOS0
女生徒「去年あなたと生徒会役員をやっていた生徒が、私の友達になってくれたんだ」
女生徒「それで、挨拶しに行きたいと言ったら、ここにいるはずだと教えてくれた」
和「…なるほどね」
女生徒「ああ、申し遅れたが、私は二年の坂上智代という」
こいつが、例の…。
和「ええ、知ってるわ」
智代「そうか。それは光栄だ」
智代「あなたは、かなりのやり手だと聞く。けど、私も退くわけにはいかない理由がある」
智代「明日は誰が勝っても恨みっこなしだ。お互いがんばろう。それだけ言いにきた」
和「…そう」
智代「他の立候補者にも挨拶に行きたいので、これで失礼する」
出入口のあるこちら側に振り返る。
そこへ、春原がチンピラ歩きで寄っていった。
そこへ、春原がチンピラ歩きで寄っていった。
春原「おい、てめぇ。上級生にたいして口の利き方がなってねぇなぁ、おい」
智代「…なんだ、この黄色い奴は」
春原「金色だっ」
357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:09:33.54:1qYNd8dxO
智代「うそをつけ。ブレザーと同じ色だぞ」
春原「なにぃっ!?」
智代「真鍋さん、こいつは部外者じゃないのか」
和「いえ…私の手伝いをしてもらっていたの」
智代「そうか…」
残念そうな顔。
朋也「始末したいなら、別にいいぞ」
春原「おい、岡崎っ!?」
智代「…真鍋さん、そっちは」
和「同じく、私のお手伝いよ」
智代「そうか。なら、正式な許可がおりたということだな」
春原「ああ? なに言って…」
ばしぃっ!
春原「ぎゃぁぁあああああああああああああっ!!」
内股に強烈なインローが入り、悶絶し始めた。
うずくまり、ぷるぷると震えている。
うずくまり、ぷるぷると震えている。
358:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:10:00.94:cUBlBpOS0
智代「すっきりしたし、これで本当に失礼する」
転がっている春原を跨ぎ、俺がいる方のドアに近づいてくる。
和「…待って」
智代「なんだ」
立ち止まり、真鍋に向き直った。
和「考え直さない?」
智代「というと?」
和「生徒会長よ。あなた、まだ二年だし、副会長からでもいいんじゃない?」
智代「それは…だめだ。言ったはずだ。退けない理由があると」
智代「あなたにもあるだろう。それと同じことだ」
和「…そうね。引き止めて悪かったわ」
智代「いや、これくらいなんでもない。それでは」
会釈し、歩き出す。
そして、俺の脇を抜けて出て行こうとした。
そして、俺の脇を抜けて出て行こうとした。
朋也「待てよ」
智代「なんだ? 今度はおまえか?」
359:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:12:48.52:1qYNd8dxO
朋也「ああ。差し支えなかったら、おまえのその、退けない理由ってのを教えてくれないか」
智代「…まぁ、いいだろう」
智代「坂のところに桜並木があるだろ」
朋也「ああ」
智代「私は、あれを守りたいんだ」
朋也「守るって…なにから」
智代「この学校…と言っていいのかな…」
朋也「あん? どういうことだ」
智代「この学校の意向でな、あそこの桜が撤去されることになるらしいんだ」
智代「だから、私は生徒会長になって、直接訴えたいんだ」
智代「あの桜は残して欲しい、とな」
朋也「なんでまた、そんなもんのために…」
智代「それは…」
さっきまでの、固い意志を感じさせる凛とした表情が急に崩れた。
どこか悲しそうにして、目を泳がせている。
どこか悲しそうにして、目を泳がせている。
朋也「ああ、いいよ、言いたくないなら」
360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:13:19.56:cUBlBpOS0
智代「うん…助かる」
朋也「でもさ、それっておまえが生徒会長にならなくてもできるんじゃねぇ?」
智代「どうやってだ」
朋也「今の願いを真鍋に聞いてもらえばいいだろ」
智代「でも、これは私が直接したいんだ。誰かが代わりにやったんじゃ、意味がないことなんだ」
朋也「じゃあ、おまえがこのまま選挙で戦ったとして、絶対に勝つことができるのか?」
朋也「真鍋も、そうとう手強いぞ」
智代「それは…」
朋也「もし、負けでもしたら、おまえはただの一般生徒」
朋也「おまえ一人の声なんて、上には届かないよな?」
朋也「だったらさ、副会長として真鍋の下についたほうがよくないか」
智代「でも…」
朋也「ああ、おまえ自身の手でやりたかったんだよな」
朋也「でも、結局おまえが生徒会長の座についても、誰かの手は借りることになるんだぜ」
朋也「桜並木を撤去するなんて、相当大きな力が働いてそう決まったんだろ」
361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:14:30.84:1qYNd8dxO
朋也「だったら、いくら生徒会長でも、ひとりだけじゃ太刀打ちできないよな」
智代「………」
朋也「な? そうしろよ」
朋也「おまえ、この学校に来てまだ間もないんだろ? 聞いたよ」
朋也「だからさ、真鍋の下について、いろいろ教えてもらえ」
朋也「この学校にはこの学校のルールがあるんだからさ」
本当に、いろいろと。
俺もここで真鍋に使われる前は知らなかった裏がたくさんある。
俺もここで真鍋に使われる前は知らなかった裏がたくさんある。
智代「…今から副会長に変更しても間に合うだろうか」
朋也「どうなんだ、真鍋」
和「ええ…可能よ。前日になって変更なんて、前代未聞だけど」
智代「そうか。どこで手続きを踏めばいい?」
和「選挙管理委員会が使ってる教室が旧校舎の三階にあるから、そこへいけば」
智代「わかった。ありがとう、新生徒会長」
朋也「っと、今まで真鍋が当選するって前提で話しちまってたけど、その限りじゃないからな」
智代「いや…私と真鍋さんの二強だって、なんとなくわかっていたからな」
362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:14:51.19:cUBlBpOS0
智代「これで、もう真鍋さんがなったも同然だ」
にこっと笑う。その相貌には邪気がない。
自虐的なそれでもなく、純粋な、祝福する時の笑顔だった。
自虐的なそれでもなく、純粋な、祝福する時の笑顔だった。
智代「それじゃ、失礼する」
廊下へ出て、戸を閉めた。
足音が遠ざかっていく。
旧校舎へ向かったんだろう。
足音が遠ざかっていく。
旧校舎へ向かったんだろう。
和「………」
朋也「だとよ、新生徒会長」
和「…岡崎くん、あなたやるわね。あの坂上さんを、ああもスマートに言いくるめるなんて」
朋也「そりゃ、どうも」
和「これからも私の元で働く気はない? 磨けば光るものを持っている気がするんだけど…」
朋也「いや、もうこの遊びもそろそろ飽きたからな。遠慮しとく」
和「おいしい目をみれるわよ? 大学の推薦だって、欲しければ力になってあげられるわ」
朋也「俺、進学する気ないんだけど」
朋也「それに、いくらドロドロしてて面白いってことがわかっても、生徒会だからな」
朋也「俺の肌に合わねぇよ」
364:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:16:01.91:1qYNd8dxO
和「そう…残念」
和「でも…これで今夜はゆっくり眠れるわ」
和「不確定要素は、なにも知らない一般のミーハーな無党派層だけだし…」
和「明日はただのデキレースになるでしょうね」
朋也「そっか」
和「今まで本当にありがとう。晴れてあなたたちは自由の身よ」
つまりもう帰っていいということか。
普通にそう言えばいいのに。
普通にそう言えばいいのに。
朋也「ああ、そうだ、ひとつ教えてくれ」
和「なに?」
朋也「おまえの退けない理由ってなんだ?」
和「え?」
朋也「坂上が退けない理由があるから戦うっていった時、おまえ、折れたじゃん」
朋也「だから、おまえにもあるんだろ。理由がさ」
和「そうね…あるわ。それは…」
がっ、と下にあったものを踏みつけ、片足の位置を上げた。
366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 17:16:30.40:cUBlBpOS0
そして、腕を組む。
和「プライドよ」
あきれるほど自分に正直だった。
坂上の、安易に立ち入れなそうな理由を聞いた後では、ちょっと可笑しくて笑ってしまいそうになる。
坂上の、安易に立ち入れなそうな理由を聞いた後では、ちょっと可笑しくて笑ってしまいそうになる。
朋也「そっか。まぁ、そういう奴も、嫌いじゃないよ」
和「それは、どうも」
春原「…あの、和さん…足、頭からどけてくれませんか…」
―――――――――――――――――――――