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  • 自分用SSまとめ
  • 朋也「軽音部? うんたん?」 4/17 土 ②

自分用SSまとめ

朋也「軽音部? うんたん?」 4/17 土 ②

最終更新:2011年05月09日 16:43

meteor089

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管理者のみ編集可

朋也「軽音部? うんたん?」

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417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:08:55.99:cUBlBpOS0


朋也「じゃあ…頼むよ」

憂「任せてくださいっ、がんばって作りますからっ」

意気込みを感じられる姿勢でそう言ってくれた。

憂「さ、どうぞ、あがってください」

憂ちゃんに通され、平沢家の敷居をまたぐ。

―――――――――――――――――――――

憂「じゃ、出来上がるまで、ここでくつろいでてくださいね」

俺をリビングに残し、荷物を持って台所に向かっていった。
とりあえずソファーに腰掛ける。
…尻に違和感。
なにか下敷きにしたらしい。
体を浮かせ、取り出してみると、クッションだった。
ぼむ、と隣に置く。

朋也(ん…?)

再びクッションを手に取る。

朋也(やっぱり…)

平沢の匂いがした。
いつもこれを使っているんだろうか。


418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:10:10.91:1qYNd8dxO


朋也(………)

顔を埋めてみる。

朋也(ああ…いい…)

朋也(あいつ、いい匂いするもんな…)

朋也(………)

朋也(って、変態か、俺はっ!)

我に返り、すぐさま顔を離した。
背後が気になり、振り返る。
憂ちゃんは、俺に背を向け、なにやら冷蔵庫から取り出していた。
見られてはいなかったようで、ほっとする。

朋也(しかし、妙な安心感がある空間だよな、ここ…)

ごみごみとした春原の部屋とは大違いだ。
まぁ、そのせいで、無用心にもこんな暴挙に出てしまったのだが。

朋也(にしても…なにしてようかな…)

携帯があれば、こういう時、楽しく暇も潰せるんだろうな…。
生憎と俺はそんなものは持ち合わせていなかったが。
今時の高校生にしては、かなり珍しい部類だろう。
うちの経済状況では持つこと自体厳しいから、それも仕方ないのだが。
持ってさえいれば、春原にオレオレ詐欺でも仕掛けて遊べるのに…。
例えば…


419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:10:31.93:cUBlBpOS0


―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――

プルルル

がちゃ

春原「はい。誰」

声『俺だよ、オ・レ』

春原「あん? 誰? 岡崎?」

声『だから、オレだって言ってんだろっ! 何度も言わせんなっ! 殺すぞっ!』

声『あ、後さ…う○こ』

ブツっ

ツー ツー ツー

春原「なにがしたかったんだよっ!?」

―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――

朋也(なんてな…)

いや…それはただのいたずら電話か…。
難しいものだ、詐欺は。


420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:11:51.18:1qYNd8dxO


朋也(妄想はもういいや…)

朋也「憂ちゃーん、テレビつけていいかー」

リビングの向こう、台所にいる憂ちゃんに聞えるよう、少し声を張った。

憂「あ、どうぞ~」

許可が下りた。
テーブルの上にあったリモコンを拾い、チャンネルを回す。
土曜の午後なんて、ロクな番組がやっていない。
救いがあるとすれば、あの長寿昼バラエティ番組だけだったが、すでに終わっている時間だ。
しかたなく、釣り番組にする。
俺は、呆けたようにぼーっと眺めていた。

―――――――――――――――――――――

憂「できましたよ~」

おいしそうな香りを伴って、憂ちゃんがホットケーキを持ってきてくれた。

憂「はい、どうぞ」

皿に盛ってくれる。

憂「シロップはお好みでどうぞ」

ホットケーキの横に、使い捨ての簡易容器が添えられてあった。

朋也「サンキュ」


421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:12:34.36:cUBlBpOS0


フォークで生地を刺し、口に運ぶ。
もぐもぐ…

朋也「うめぇ…」

憂「ほんとですか? お口に合ってよかったです」

嬉しそうな顔。
俺はさらに食を進めた。
が、憂ちゃんは一向に手をつけない。

朋也「食べないのか」

憂「私はお菓子をたくさん食べましたから…」

憂「これ以上甘いもの食べると太っちゃいますよ」

やっぱり、女の子だとそういうところを気にするものなのか。
男の俺にはよくわからなかった。

憂「だから、岡崎さんが食べてくれるとうれしいです」

朋也「じゃあ、遠慮なく」

再び手をつけ始める。
本当においしくて、いくらでも食べられそうだった。

―――――――――――――――――――――

朋也「…ふぅ。ごちそうさま」


422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:13:47.76:1qYNd8dxO


憂「おそまつさまでした」

すべてて食べきり、皿の上にはなにも残っていなかった。
片づけを始める憂ちゃん。

朋也「俺も食器洗うの手伝おうか」

帰る前にそれくらいしていってもいいだろう。

憂「いえ、いいんです。岡崎さんはお客さんですから」

憂「それより、岡崎さん…」

ハンカチを取り出す。

憂「口の周り、ちょっとついてますよ。じっとしててくださいね」

朋也「ん…」

ふき取られていく。

憂「はい、綺麗になりました」

朋也「言ってくれれば、自分の手で拭ったのに」

憂「あ、ごめんなさい…お姉ちゃんにもいつもしてあげてるんで、つい」

朋也「いつも?」

憂「はい」


423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:14:09.33:cUBlBpOS0


あいつは…そんなことまでしてもらっているのか。
もしかして、妹に全局面で世話してもらってるんじゃないかと、そんな気さえしてきた。

朋也「…仲いいんだな」

憂「とってもいいですっ」

強く言う。主張したかったんだろう。
憂ちゃんは満足した顔で食器をひとつにまとめると、台所へ持っていった。

朋也(にしても…よくできた子だよな)

台所に立ち、洗い物をする憂ちゃんを見て思う。

朋也(ああ…憂ちゃんが俺の妹だったらな…)

―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――

声「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」

朋也「…うぅん…あと半年…夏頃には起きる…」

声「セミの冬眠じゃないんだから。起きなさい」

勢いよく布団が剥がされる。

憂「おはよう、お兄ちゃん」

朋也「………」


424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:15:19.07:1qYNd8dxO


憂「もう、うつ伏せになってベッドにしがみつかないでよ…」

朋也「眠いんだ」

憂「顔洗ってきたら?」

朋也「めんどくさい」

憂「じゃあ、どうやったら目が覚めてくれるの…」

朋也「いつものやつ、してくれ」

憂「え? いつものって?」

朋也「目覚めのちゅー」

憂「だ、だめだよ、そんなの…私たち兄妹なんだよ…?」

憂「それに、いつもって…そんなこと一度も…」

朋也「いいじゃないか。おまえが可愛いから、したいんだよ」

朋也「だめか…?」

憂「う…じゃ、じゃあ、絶対それで起きてね…?」

憂「ん…」

ほっぺたにくる。
俺は顔を動かして、唇に照準を合わせた。


425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:15:37.79:cUBlBpOS0


やわらかい感触が重なり合う。

憂「んんっ!?」

ばっと身を離す。

憂「な、なんで口に…」

朋也「とうっ」

ベッドから跳ね起きる俺。

朋也「憂っ! 憂っ!」

憂「あ、いやぁ、やめて、お兄ちゃん、だめだよぉ…」

憂「あっ…」

―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――

朋也(………)

朋也(いい…すごく…いい!)

俺は台所にいる憂ちゃんの背を目指して歩み寄っていった。

朋也「憂ちゃん…」

背後から声をかける。


426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:17:23.65:1qYNd8dxO


憂「はい…?」

手を止めて振り返ってくれる。

朋也「俺の妹になってくれ」

憂「えぇ!? そ、それは…」

朋也「だめか?」

憂「いろいろと無理がありますよぉ」

自分でもそう思う。
だが、情熱を抑え切れなかった。

憂「それに、私にはお姉ちゃんがいますし」

朋也「…そうか」

憂「そ、そんなに落ち込まないでくださいよぉ」

憂「私、岡崎さんにそう言ってもらえて、うれしかったですから」

朋也「じゃあ、せめて、俺のことを兄だと思って、お兄ちゃんって呼んでみてくれ…」

憂「それで、元気になってくれますか?」

朋也「ああ」

憂「わかりました、それじゃあ…」


427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:17:42.22:cUBlBpOS0


すっと深呼吸する。

憂「お兄ちゃんっ」

まぶしい笑顔。首をかしげるというオプションつきだった。

朋也「…はは、憂はかわいいな。よしお小遣いをやろう」

財布から万札を抜き取る。

憂「わわっ、いいですよ、そんなっ。しまってくださいっ」

朋也「なに言ってるんだよ。俺たち、仲良し兄妹じゃないか」

憂「それは台本の上でのことですよっ、目を覚ましてくださぁいっ」

朋也「ハッ!…ああ、いや、悪い…本当の俺と、役の境目がわからなくなってたよ」

憂「もう…変な人ですね、岡崎さんって」

言って、笑う。俺も気分がいい。
素直に笑ってくれる年下の女の子というのは、新鮮だった。

朋也「なぁ、憂ちゃん。この後、予定あるか」

憂「え? そうですね…」

小首をかしげて考え込む。

憂「う~ん…夕飯の材料はもう買っちゃったし…とくにないですね」


428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:18:48.93:1qYNd8dxO


朋也「じゃあ、お兄ちゃ…いや、俺とどこか出かけないか」

今から寮に向かっても、春原が戻っている保証はない。
あの部屋でひとり過ごすくらいなら、そっちの方がよかった。

憂「いいんですか? 私となんかで」

朋也「憂ちゃんだから誘ってるんだよ」

憂「ありがとうございますっ。私も、岡崎さんに誘ってもらえてうれしいです」

朋也「それは、一緒に遊びに出てくれるって、そう取っていいのか」

憂「はい、もちろんです」

朋也「そっか。じゃあ、その洗い物が終わったら、出るか」

憂「はいっ」

―――――――――――――――――――――

食器の洗浄も済ませ、家を出た。
目的地はまだ決めていない。

朋也「どこにいく? 憂ちゃんの好きなところでいいぞ」

憂「いいんですか?」

朋也「ああ」


429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:19:09.45:cUBlBpOS0


憂「それじゃあ、私、前から行ってみたい所があったんですけど…」

朋也「どこだ」

憂「商店街に新しくできた、ぬいぐるみとか、可愛い小物とかを売っているお店です」

憂「今、うちの学校の女の子の間で人気なんですよ」

朋也「ふぅん、そんなとこがあるのか」

憂「はい。だから、そこに付き合って欲しいです」

朋也「ああ、いいよ」

憂「ありがとうございますっ」

―――――――――――――――――――――

商店街までやってくる。
件の店はまだ真新しく、外観や内装が小綺麗だった。
ファンシーな看板を掲げ、手前には手書きの宣伝ボードが立てかけられてある。
店内には、所狭しと商品群が並べられていた。
客層は、この有りようからしてやはりというべきか、女性客ばかりだった。

憂「わぁ、ここですここですっ」

つくやいなや、目を輝かせてはしゃぎ出す憂ちゃん。

憂「いきましょ、岡崎さんっ」


430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:20:18.11:1qYNd8dxO


朋也「あ、ああ…」

この中に男の俺が入っていくことに多少気後れしつつも、憂ちゃんに従った。

―――――――――――――――――――――

憂「うわぁ、かわいいっ」

憂ちゃんが立ち止まったのは、小さめのぬいぐるみが並べられたブロックだった。
デフォルメされ、丸みを帯びた動物キャラの頭部が手のひらサイズで商品化されている。
俺もひとつ適当なものを手に取ってみた。
ぐにゃり、と柔らかい感触がした。低反発素材でも使っているんだろうか。

憂「う~ん、でも、やっぱりないなぁ…」

朋也「なんか探してるのか」

憂「はい…」

持っていたぬいぐるみを棚に戻し、俺に向き直る。

憂「岡崎さん、だんご大家族って覚えてます?」

朋也「ああ、けっこう鮮明に」

それは、最近思い出す機会があったからなのだが。

憂「ほんとですか? よかったです、覚えててくれて」

憂「あれ、かわいいですよねっ」


431:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:20:41.35:cUBlBpOS0


朋也「ん、まぁ、多分な」

一応同意の姿勢だけは見せておく。

憂「でも、もうかなり前にブームが終わっちゃったじゃないですか」

憂「それで、世間からも忘れられちゃってて…」

憂「それでも、私もお姉ちゃんも、いまだに好きなんですよ、だんご大家族」

憂「だから、この小さな手のひらシリーズにないかなぁって、思ったんですけどね」

需要が無くなったことを知っていてなお探すんだから、想いもそれだけ深いんだろう。

朋也「じゃあ、こういうのはどうだ」

俺はうさぎの頭を棚から拾い上げた。

朋也「ほら、これの耳ちぎって、凹凸無くしてさ」

朋也「シルエットだけなら、だんごに見えなくもないだろ」

憂「そ、そんな残酷なことしてまで欲しくないですよぉ」

朋也「そうか? じゃあ、これを三つくらい買って、串で刺して繋げるのはどうだ」

憂「さっきのと接戦になるくらい残酷ですっ」

朋也「なら、これを…」


432:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:21:48.14:1qYNd8dxO


憂「も、もういいですっ、気持ちだけ受け取っておきます…」

朋也「これを、憂ちゃんの鼻の穴に詰めてみよう、って言おうとしたんだけど…」

朋也「その気持ち、受け取ってくれるのか?」

憂「…岡崎さん、もしかして、からかってます?」

朋也「バレたか」

憂「…意地悪ですっ」

ぷい、とそっぽを向かれてしまった。
やりすぎてしまったようだ。

―――――――――――――――――――――

その後、なんとか機嫌を取ることに成功し、また一緒に見て回った。
憂ちゃんが興味を示したコーナーに留まり、しばらく見たのち、移る。
そんなことを繰り返していた。

―――――――――――――――――――――

朋也(やべ…)

巡って回る内、俺の目に見かけたことのある顔が留まった。
同じクラスの女たちだった。何人かで固まって、楽しげに店内を闊歩している。
そういえば、憂ちゃんが言っていた。
この店は今、うちの学校の女に人気があると。
なら、こういうブッキングをすることだって、十分ありえたのに…うかつだった。


433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:22:16.22:cUBlBpOS0


俺がこんな店に出入りしているなんて思われたら、たまったもんじゃない。
その情報が春原の耳に入った日には…想像もしたくない。
俺は壁にぴったりと張りついてやりすごすことにした。

憂「岡崎さん、なにをやってるんですか?」

背中から憂ちゃんの声。

朋也「いや…知ってる顔がいたから、ちょっとな…」

憂「ああ…恥ずかしいんですね」

朋也「まぁ…そういうことだ」

憂「じゃあ…これを被って変装してください」

俺になにか手渡してくる。

朋也「お、サンキュ」

後ろ手に受け取って、それを目深に被った。

朋也(これでなんとかなるかな…)

声さえ聞かれなければ、制服を着ているわけでもなし、他人の空似で受け流してくれるかもしれない。
そうなってくれることを願いながら、俺は向き合っていた壁から離れた。

憂「よく似合ってますよ」

振り向きざまに第一声。


435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:23:25.20:1qYNd8dxO


朋也「そうか?」

しかし、俺はなにを被ったんだろう。
なにも考えず、機械的に被ってしまったからな…。

憂「ご自分でも、鏡で確認してみたらどうですか?」

俺の目線より少し下、そこに小さな鏡が置かれていた。
覗いてみる。

朋也「…これ」

ネコミミ付きフードだった。

憂「あはは、かわいいです、岡崎さん」

朋也「…おまえな」

憂「さっきのお仕返しです。罰として、ここにいる間ずっと被っててくださぁい」

朋也「…はぁ」

これじゃ、顔は隠せても余計目立つことになってしまう…。

朋也「ほかにマシなの、なんかないのか」

憂「ありますよぉ。イヌミミがいいですか? それとも、ウサミミがいいですか?」

朋也「そんなのしかないのかよ…」


436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:24:02.16:cUBlBpOS0


憂「ふふ、ここはそういうお店ですよ?」

そうだったな…。
仕方なく、俺は憂ちゃんの罰ゲームに従った。

―――――――――――――――――――――

憂「あ、これ、かわいいなぁ…買っちゃおうかなぁ…」

やってきたのは、携帯ストラップの陳列棚。
俺とは縁のない場所だ。

憂「う~ん、でも、こっちも捨てがたいし…」

憂「岡崎さん、これとこれ、どっちがいいと思いますか?」

両手にそれぞれ別の商品を持って、俺に意見を求めてくる。

朋也「う~ん…俺はこれがいいかな」

そのどちらも選ばずに、俺は新たに棚から取り出した。

朋也「この、『ごはんつぶ型ストラップ』って、なんかよくないか」

憂「えぇ? なんですか、それ?」

朋也「なんか、携帯にご飯粒がついているように演出できるらしいぞ」

憂「いやですよぉ、そんなの…常に、さっきご飯食べてきたよって感じじゃないですか…」


437:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:25:15.82:1qYNd8dxO


朋也「いやか?」

憂「はい」

なかなかおもしろいと思ったのだが…。
しぶしぶ元の場所に納める。

憂「これかこれ、どっちかで言ってください」

再び俺の前に掲げてくる。

朋也「う~ん…じゃあ、そっちの、クマの方で」

憂「クマさんですか? じゃあ、こっち買っちゃおうかな…」

朋也「待て。買うなら、払いは俺がする」

憂「え? 悪いですよ、そんな…」

朋也「いや、ここで好感度を挽回しておきたいんだ。序盤で失敗しちまったからな」

憂「そんなこと気にしてたんですか…」

朋也「ああ。だから、俺にまかせろ」

憂「ふふ、じゃあ…お言葉に甘えて」

朋也「よし」

―――――――――――――――――――――


438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:25:37.32:cUBlBpOS0


ストラップをレジに通し、店を出た。
ついでに、ネコミミフードも買っていった。
長いこと被っていて、買わずに出るのもためらわれたからだ。

憂「いいんですか? こっちも、もらっちゃって…」

朋也「ああ、いいよ。俺が持ってても仕方ないしな」

俺はストラップと一緒に、フードも譲っていたのだ。

憂「でも、これ、けっこう高かったですよね…?」

朋也「ああ、大丈夫。まだ余裕あるから」

憂「岡崎さん、アルバイトでもしてるんですか?」

朋也「まぁ、前はしてたけど、今はやってないな」

朋也「でも、この前単発で、でかいの一個やったっていうか…あぶく銭みたいなもんだから、気にすんなよ」

ぽむ、と頭に手を置く。

憂「あ…はいっ」

にっこりと微笑んでくれる。

憂「ありがとう、お兄ちゃんっ」

朋也(う…)


439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:26:50.95:1qYNd8dxO


胸が高鳴る。破壊力抜群だった。

朋也「…うん」

憂「あはは、…うん、って。岡崎さん顔真っ赤です」

朋也「…憂ちゃんがいきなり妹になるからだ」

憂「ごめんなさぁい」

いたずらっぽく言う。

朋也(さて…)

店の中に居る時はわからなかったが、外はもう陽が落ち始め、ほんのりと暗くなっていた。
それだけ時間を忘れて見回っていたのだ。
おそるべし、ファンシーショップ…。
まぁ、入店したのが三時半あたりだったので、実際それほどでもないのかもしれないが。

朋也「もう、帰らなきゃだよな、憂ちゃんは」

憂「はい、そうですね。帰ってお夕飯作らないと…」

朋也「なら、送ってくよ。もういい時間だしな」

憂「ほんとですか? ありがとうございますっ」

―――――――――――――――――――――

平沢家。その門前まで帰り着く。



440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:27:12.99:cUBlBpOS0


朋也「じゃあな」

憂「はいっ。今日はありがとうございました」

別れの挨拶も済ませ、立ち去ろうと踵を返す。

唯「あれ? 岡崎くんだ」

朋也「よお」

そこへ、ちょうど平沢が帰宅してきた。

唯「どうしたの? うちになにか用?」

憂「私を送ってきてくれたんだよ、お姉ちゃん」

唯「送ったって? 憂を? 代引きで?」

憂「Amaz○n.comじゃないんだから…」

憂「あのね、岡崎さんと一緒に出かけてて、それで、もう暗いからって送ってきてくれたの」

唯「えぇ!? 岡崎くんと遊んでたの?」

憂「ちょっと付き合ってもらってたんだ。ほら、あの商店街に新しくできたお店あるでしょ?」

憂「あそこに、ついてきてもらってたの」

唯「えぇっ!? っていうか、なんでもうそこまで仲良くなってるの?」


441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:28:58.75:1qYNd8dxO


唯「そうだよぉ。『ああ』とか、『好きにしろよ…』とかしか言わないし…」

俺を真似た部分だけ声色を変えて言った。

唯「最近になって、ようやくちょっと心開いてくれたかなぁって感じだよ」

唯「なのに、憂とは初日から遊びに行くまでになってるし…これは差別だよっ」

唯「悪意を感じるよっ」

憂「お姉ちゃん…あんまりお兄ちゃんを責めないであげて」

朋也(ぐぁ…)

唯「…お兄ちゃん?」

平沢が訝しげな顔になる。

朋也「今はやめてくれっ」

憂「ふたりっきりの時だけしかそう呼んじゃだめなの? お兄ちゃん?」

朋也「だぁーっ! だから、やめてくれぇ、憂ちゃんっ!」

唯「…ふたりっきりの時? 憂…ちゃん?」


442:ミス:2010/09/25(土) 18:29:53.49:cUBlBpOS0


唯「私と初めて会ったときは、すっごく冷たかったのにぃ…」

朋也「そうだっけ」

唯「そうだよぉ。『ああ』とか、『好きにしろよ…』とかしか言わないし…」

俺を真似た部分だけ声色を変えて言った。

唯「最近になって、ようやくちょっと心開いてくれたかなぁって感じだよ」

唯「なのに、憂とは初日から遊びに行くまでになってるし…これは差別だよっ」

唯「悪意を感じるよっ」

憂「お姉ちゃん…あんまりお兄ちゃんを責めないであげて」

朋也(ぐぁ…)

唯「…お兄ちゃん?」

平沢が訝しげな顔になる。

朋也「今はやめてくれっ」

憂「ふたりっきりの時だけしかそう呼んじゃだめなの? お兄ちゃん?」

朋也「だぁーっ! だから、やめてくれぇ、憂ちゃんっ!」

唯「…ふたりっきりの時? 憂…ちゃん?」


444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:32:12.83:1qYNd8dxO


唯「………」

じと~っとした目を向けられる。

唯「…中で詳しく聞こうか」

こぶしを作り、親指で自宅を指さす。
その顔は、あくまで笑顔だったが…それが逆に怖い。

―――――――――――――――――――――

唯「ふぅん、岡崎くんってそんな趣味だったんだ?」

テーブルにつき、説教される子供のように俺は正座していた。

唯「そんなこと、言ってくれれば私がしてあげたのに…」

朋也「いや、おまえ、タメじゃん。リアルじゃないっていうか…」

唯「失礼なっ! 私、妹系ってよく言われるのにっ」

朋也「じゃ、一回やってみてくれよ」

唯「いいよ? じゃ、いきます…」

こほん、と咳払い。

唯「お兄ちゃんっ」

満面の笑顔。


445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:33:04.41:cUBlBpOS0


両手を開き、俺の前に突き出している。

朋也「なんか、違うんだよな…」

唯「むぅ、なにが違うのっ」

朋也「いや、そのポーズとかさ…なんだよ」

唯「庇護欲を煽るポーズだよ」

朋也「そういう計算が目に付くんだよなぁ…それに、全体の総量として妹力が足りない感じだ」

朋也「まぁ、おまえは、どこまでいっても姉だな」

唯「それはその通りだけど…なんか悔しい…」

朋也「まぁ、そういうわけだからさ。俺、帰るな」

赤裸々に語ってしまった恥ずかしさもあり、早くこの場を去りたかった。

唯「まぁ、待ちなよ。せっかくだから、一緒に夕飯してこうよ」

朋也「いや…」

唯「う~い~、岡崎くんのぶんも夕飯作ってくれるよね~?」

被せるようにして、台所で作業する憂ちゃんへ声をかけた。

憂「岡崎さんがそれでいいなら、作るよ~」


446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:36:29.88:1qYNd8dxO


向こうからは好意的な返答が届く。

唯「だってさ。どうする? おにいちゃん」

朋也「だから、それはもうやめろっての…」

朋也(でも、どうするかな…)

いや…もう答えは出ている。
コンビニ弁当なんかより、憂ちゃんの手料理の方がいいに決まってる。

朋也「俺の分も頼んでいいか、憂ちゃん」

あまりまごつくことなく、俺は注文を入れていた。

憂「は~い、まかせてくださぁい」

二つ返事で引き受けてくれる。

唯「うん、素直でよろしい」

朋也「そりゃ、どうも」

唯「ところでさ、なんで憂にはちゃんづけなの?」

朋也「年下だし、苗字だと、おまえと被るからな」

唯「えぇ、そんな理由? なら、私も唯ちゃんって呼んでよっ」

朋也「アホか」


447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:36:51.24:cUBlBpOS0


唯「私も朋ちゃんって呼ぶからさっ。そうしよ?」

朋也「ありえないからな…」

唯「ちぇ、けち~…いいもん、別に。私にはギー太がいるから」

言って、横に置いてあったケースからギターを取り出した。

唯「だんごっ、だんごっ」

ギターを弾きながら歌いだす。
それは、俺も聞いたことのある、だんご大家族のテーマソング。
だが、オリジナルとは違い、曲調が激しかった。

唯「だんごっ、大家族ぅ、あういぇいっ!」

ロック風にアレンジしていた。

唯「岡崎くんも、サビはハモってよぅ、あういぇいっ!」

サビなんて知らない。
とりあえず、適当にだんごだんご言って合わせておいた。

―――――――――――――――――――――

憂「お待ちどうさま~」

憂ちゃんがお盆に料理を乗せて運んできてくれる。
まずは前菜のようだった。


449:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:41:03.00:cUBlBpOS0


唯「わぁ、肉じゃがだぁ」

憂「はいお姉ちゃん」

平沢に手渡す。

唯「ありがと~」

憂「岡崎さんも」

朋也「ああ、サンキュ」

俺も受け取った。
最後に自分の座る位置に置くと、また台所へ戻っていった。

朋也「おまえは料理したりしないのか」

唯「ん? しないけど」

朋也「じゃあ、おまえ、家事は掃除とかやってるのか」

唯「それも、憂だよ?」

朋也「なら、おまえはなにをやってるんだよ」

唯「私はね、生きてるんだよ」

朋也「あん?」

そりゃ、死んでるようにはみえないが。


455:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:47:11.84:1qYNd8dxO


唯「だからね、私は生きてるから…いいんだよ…」

つまり、なにもしてないということか…。

朋也「神秘的に言うな。憂ちゃんに全部やらせてるだけだろ」

唯「ぶぅ、だって憂がやったほうが全部上手くいくんだもん」

唯「私が掃除しても、逆に、変な取れないシミとかついちゃうし…」

唯「料理だって、やってたら、電子レンジの中でアルミホイルが放電したりするんだよ?」

それは料理の腕とはあまり関係ない。常識の問題だった。

朋也「ほんと、おまえ、憂ちゃんいてよかったな」

朋也「親御さん、家空けてること多いって聞いたけど、おまえ一人じゃ即死してたよ」

唯「そんな早く死なないよっ! 丸二日は持つもんっ!」

延命するにしても、そう長くは持たないようだった。

憂「はい、これで最後だよ~」

今度は焼き魚と、人数分のコップ、そして麦茶を持ってきてくれた。
先程と同様、俺たちに配膳してくれる。最後に自らのぶんを揃え、食卓が整った。

唯「じゃ、食べようか」

ぱんっ、と手を合わせる。


456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:47:36.82:cUBlBpOS0


憂ちゃんもそれに倣った。

唯「いただきます」
憂「いただきます」

綺麗に声が重なる。

朋也「…いただきます」

俺も若干遅れて同じセリフを言った。
こんなこと、かしこまってやるのはいつぶりだろう。
少なくとも、うちではやったことがない。
小学校の給食の時間以来かもしれない。

唯「ん~、おいしい~」

憂「ほんと? ありがと、お姉ちゃん」

唯「憂の料理はいつもおいしいよぉ。お弁当もね」

憂「えへへ」

仲良く会話する姉妹。
本来ならここに両親が居て、一緒に食事をして…
それで、その日学校であったことなんかを話すんだろうか。
そういった光景があるのが、普通の家族なんだろうか。
俺にはわからなかった。
ただ…
無粋な俺なんかが、土足で踏み込んでいい場所じゃないことは漠然とわかる。


457:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:48:51.77:1qYNd8dxO


唯「どうしたの? 岡崎くん。ぼーっとしちゃって」

朋也「いや…なんでもないよ」

言って、肉じゃがを口に放り込む。

朋也「うん…うまいな」

憂「ありがとうございますっ」

唯「私も料理勉強しようかなぁ…」

憂「お姉ちゃんならすぐできるようになるよ」

唯「ほんと? じゃあ、今度教えてよ」

憂「うん、いいよ。お姉ちゃんの今度は、今まで一度も来たことないけどね」

唯「あはは~、そうだっけ」

憂「ふふっ、うん、そうだよ」

ふたりとも同じように、えへへ、と笑いあう。
俺は箸を動かしながら、その様子をぼんやりと傍観していた。

―――――――――――――――――――――

唯「だいぶ遅くなっちゃったね」

平沢が玄関の先まで見送りに来てくれる。


459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:49:19.90:cUBlBpOS0


憂ちゃんは中で後片付け中だ。

朋也「そうだな。長居しちまった」

あの場は本当に居心地がよく、離れることがひどくためらわれた。
それは、なんでだろう。
あの感覚はなんだったんだろう。

唯「どうせなら、泊まってく?」

朋也「馬鹿。んなことできるかよ」

唯「なんで? 明日は休みだし、みんなでサッカーする日だよ?」

唯「ちょうどいいじゃん」

朋也「そういうことじゃなくて…」

男を泊める、というその意味に、なにか感じるところはないのだろうか。
それとも、俺がそんな風に見られていないだけなのか。

朋也「とにかく、もう、帰るよ」

唯「ちぇ、つまんないなぁ…」

朋也「じゃあな」

唯「うん、また明日ねっ」

―――――――――――――――――――――


460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:50:56.22:1qYNd8dxO


平沢家で過ごしていた今さっきまでの時間。
それが別世界の出来事に思われるような、あまりに違いすぎる空気。
気分が重くなる。
ただ、静かに眠りたい。

朋也(それだけなのにな…)

―――――――――――――――――――――

居間。
その片隅で、親父は背を丸めて、座り込んでいた。
同時に激しい憤りに苛まされる。

朋也「なぁ、親父。寝るなら、横になったほうがいい」

やり場の無い怒りを抑えて、そう静かに言った。

親父「………」

返事は無い。
眠っているのか、ただ聞く耳を持たないだけか…。
その違いは俺にもよくわからなくなっていた。

朋也「なぁ、父さん」

呼び方を変えてみた。

親父「………」

ゆっくりと頭を上げて、薄く目を開けた。


461:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:51:37.98:cUBlBpOS0


そして、俺のほうを見る。
その目に俺の顔はどう映っているのだろうか…。
ちゃんと息子としての顔で…

親父「これは…これは…」

親父「また朋也くんに迷惑をかけてしまったかな…」

目の前の景色が一瞬真っ赤になった。

朋也「………」

そして俺はいつものように、その場を後にする。

―――――――――――――――――――――

背中からは、すがるような声が自分の名を呼び続けていた。
…くん付けで。

―――――――――――――――――――――

こんなところにきて、俺はどうしようというのだろう…
どうしたくて、ここまで歩いてきたのだろう…
懐かしい感じがした。
ずっと昔、知った優しさ。
そんなもの…俺は知らないはずなのに。
それでも、懐かしいと感じていた。
今さっきまで、すぐそばでそれをみていた。
温かさに触れて…俺は子供に戻って…
それをもどかしいばかりに、感じていたんだ。


462:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:53:10.75:1qYNd8dxO


………。

「だんごっ…だんごっ…」

近くの公園から声がした。
それは、今となってはもう耳に馴染んでいた声音。
平沢だった。
あんなところでなにをしているんだろう。
俺はその場に呆然と立ちつくし、動くことができなかった。
そうしている内、平沢が俺のいる歩道に目を向けた。
こっちに気づいたようで、小走りで寄ってくる。

唯「あ、やっぱり岡崎くんだ。どうしたの? うちに忘れ物?」

朋也「いや、別に…」

唯「じゃあ…深夜徘徊?」

内緒話でもするように、ひそっと俺にささやいてくる。

朋也「馬鹿…そんなわけあるか」

もう俺は冷静だった。

朋也「ただ、帰るには時間が早すぎたからさ…」

唯「えー? もうお風呂あがって、バラエティ番組みててもおかしくない頃だよ?」

朋也「俺にとっては早いんだよ。いつも夜遊びしてるような、不良だからな」


463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:53:36.40:cUBlBpOS0


唯「またそんなこと言ってぇ…」

朋也「おまえのほうこそ、こんなとこでなにやってたんだよ」

唯「ん? 私はね、歌の練習だよ」

朋也「こんな時間に、しかも外でか」

唯「うん」

朋也「それ、近所迷惑じゃないのか」

校則さえまともに守れない俺が言うのも違う気がしたが。

唯「大丈夫だよ。ご近所さんはみんな甘んじて受け入れてくれてるから」

朋也「そら、懐の深い人たちだな」

唯「私が小さかった頃から知ってるからかなぁ…みんな優しいんだよ」

唯「とくに、渚ちゃんとか、早苗さんとか、アッキーとか…古河の家の人たちはね」

そんな名前を出されても、俺にはピンと来ない。

朋也「そっか…」

朋也「なら、がんばって練習してくれ」

言って、歩き出す。


464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:54:45.33:1qYNd8dxO


唯「あ、岡崎くんっ」

朋也「なんだよ」

立ち止まる。

唯「これからまだどこかにいくの?」

朋也「ああ、そうだよ」

唯「あした、体大丈夫?」

朋也「まぁ、多分な」

唯「っていうか、平日とかも、それで辛くないの?」

唯「いつも、すごく眠そうだし…」

唯「やっぱり、夜遊びはやめといたほうがいいんじゃないかな」

朋也「いいだろ、別に。不良なんだから」

唯「それ、本当にそうなのかな。今でも信じられないよ」

唯「岡崎くん、全然不良の人っぽくないし…」

朋也「中にはそういう不良もいるんだ」

唯「前に、お父さんと喧嘩してるって言ってたよね?」


465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:55:04.59:cUBlBpOS0


唯「それで、喧嘩が原因で、肩も怪我しちゃったって…」

唯「それと関係ないかな?」

唯「お父さんと顔を合わせないように、深夜になるまで外を出歩いて…」

唯「それで、遅刻が多くなって、みんなから不良って噂されるようになって…」

唯「違う?」

なんて鋭いのだろう。
あるいは、安易に想像がつくほど、俺は身の上を話してしまっていたのか。

朋也「違うよ」

俺は肯定しなかった。こいつの前では、悩みの無い不良でいたかった。

唯「本当に、違う?」

朋也「まだお互いのことよく知らないってのに…よくそんな想像ができるもんだな」

唯「できるよ。そうさせるのは…岡崎くん自身だから」

唯「きっと、なにか理由があるんだって、そう…」

唯「そう思ったんだよ」

朋也「もし、そうだとしたら…」

朋也「おまえはどうするつもりなんだ」


466:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:56:29.43:1qYNd8dxO


訊いてみた。

唯「岡崎くんは、私が遅刻しないように、いつも頑張って早くきてくれるから…」

唯「私も、それに応えてあげたい」

唯「できるなら、力になってあげたいよ」

朋也「親父に立ち向かえるように、か…?」

唯「それはダメだよ。立ち向かったりしたら…分かり合わないと」

朋也「どうやって」

唯「それは…」

唯「すごく時間のかかることだよ」

朋也「だろうな。長い時間がいるんだろうな」

朋也「俺たちは、子供だから」

俺は遠くを見た。屋根の上に月明かりを受けて鈍く光る夜の雲があった。

唯「もしよければ…うちにくる?」

平沢がそう切り出していた。
それは、短い時間で一生懸命考えた末の提案なんだろう。

唯「少し距離を置いて、お互いのこと、考えるといいよ」


467:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:56:50.13:cUBlBpOS0


唯「ふたりは家族なんだから…だから、距離を置けば、絶対にさびしくなるはずだよ」

唯「そうすれば、相手を好きだったこと思い出して…」

唯「次会った時には、ゆっくり話し合うことができると思う」

唯「それに、ちゃんと夜になったら寝られて、朝も辛くなくなるよ」

唯「一石二鳥だね」

唯「どうかな、岡崎くん」

唯「岡崎くんは、そうしたい?」

朋也「ああ、そうだな…」

朋也「そうできたら、いいな」

唯「じゃ、そうしよう」

事も無げに言う。

朋也「馬鹿…」

朋也「おまえは人を簡単に信用しすぎだ」

近づいていって、頭に手を乗せる。

唯「ん…」


468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 18:57:49.29:1qYNd8dxO


くしゃくしゃと少し乱暴に撫でた。

朋也「じゃあな。また明日」

唯「あ…うん」

背中を向けて歩き出す。
俺は支えられた。あいつによって。
いや、支えられた、というのは違うような気がする。
あいつはただ、そばにいただけだったから。
でも、それだけで、俺は自分を取り戻すことができた。
同じようなことが前にもあった気がする。
不思議な奴だと…そう、胸の内で感じていた。

―――――――――――――――――――――




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