- 【法律論議は】今回の紛争を理解するための基礎知識その1【眠気を誘う】
- 【法律論議は】今回の紛争を理解するための基礎知識その2【眠気を誘う】
- 【法律論議も】今回の紛争を理解するための基礎知識その3【たまには面白い】
- 【興味のある人だけ】今回の紛争を理解するための基礎知識その4【読んでね】
- 【痛車もあれば】今回の紛争を理解するための基礎知識その5【痛い契約書もあるよ】
- 【ピロシキって】今回の紛争を理解するための基礎知識その6【誰さ?】
- 【法律知識は】今回の紛争を理解するための基礎知識その7【あると便利かも】
771 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]: 2007/12/21(金) 10:42:10 ID:C0qpSw0v0 現時点でのドワンゴ・JASRAC間のみくみく楽曲の著作権信託契約の内容(の一部)はJ-WIDの 検索結果によれば下記の通り。 ------------------------------------------------------------------------------------ 作品コード 146-2107-0 みくみくにしてあげる♪【してやんよ】 【権利者】 作詞....IKA_MO 無信託(=JASRACに委託していない権利者) 作曲....IKA_MO 無信託 出版社..ドワンゴ・ミュージックパブリッシング 部分信託(=JASRACから支分権を一部除外している権利者) 【支分権・利用形態の管理状況】 演奏権等...................JASRACが管理 録音権等...................JASRACが管理 出版権等...................JASRACが管理 貸与権等...................JASRACが管理 ビデオグラム等への録音.....JASRACが管理 映画への録音...JASRAC管理..JASRACが管理 コマーシャル送信用録音.....JASRACの管理外・ドワンゴが権利保持 ゲームソフトへの録音.......JASRACの管理外・ドワンゴが権利保持 放送・有線放送.............JASRACが管理 インタラクティブ配信.......JASRACが管理(←ここに注目!) 業務用通信カラオケ.........JASRACが管理 【アーティスト】 アーティスト名: ika ------------------------------------------------------------------------------------ 仮にこの信託契約が有効であるとすると、ニコニコ動画等のインターネット上でのみくみく 楽曲を利用した二次創作でもっとも問題になるのはインタラクティブ配信による利用形態を JASRACが権利者として管理している点にある。 分かりやすく言うと、あなたが「みくみくにしてあげる♪」を使用したMAD・PV等の動 画を作成してニコニコ動画にアップするとJASRACから「使用料を払え、さもなくば削除しろ」 とクレームを付けられる可能性があるということ。 ただしニコニコ動画側とJASRACの間で著作権使用料一括支払の契約が締結されるようなので、 実際問題としてはニコ動に二次利用動画をアップしても法的に問題になることは無いだろう。 問題なのはニコ動以外の動画共有サイトやHPに二次利用動画をアップした場合である。こ の場合JASRACから使用料請求が来る可能性がある。
135 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/22(土) 02:15:40 ID:sXN5hfsJ0 【法律論議は】今回の紛争を理解するための基礎知識その1【眠気を誘う】 スレの流れが異常に早いようですが、基本的なところから知りたいという気の長い人だけ読ん でください CV01初音ミクのパッケージには次の2種類の使用許諾契約書が含まれている A) ヤマハ(株)によるVOCALOIDソフトウェア使用許諾契約書 B) クリプトン・フューチャー・メディア(株)によるVOCALOIDライブラリ使用許諾契約書 初音ミクのユーザーはソフトウェアを使用した時点で、 A)の使用許諾契約をヤマハと B)の使用許諾契約をクリプトンと 締結したものとみなされる 以下、2つの使用許諾契約のうち今回の紛争と関連のある条項のみを解説する ------------------------------------------------------------------------------------ ヤマハのVOCALOIDソフトウェア使用許諾契約書 3. 合成音声の使用の制限 (中略)お客様が本ソフトウェアによる合成音声を以下の形態で使用する場合には、本使用許 諾契約とは別にヤマハ株式会社から別途の使用許諾契約が必要となります。もしそのような使 用許諾契約が必要であれば、ヤマハ株式会社までご連絡下さい。 (a) (省略) (b) 他の楽器や音楽作品中の音との組合せで使用する場合以外で、電話機の呼び出し音(いわゆ る「着メロ」を含む)、電話や電話用機器での警告音として合成音声を商用に使用する場合。 ------------------------------------------------------------------------------------ 明解な規定である。初音ミクの音声のみで着メロ・着うたの楽曲を作成し、商業目的で使用し たいときはヤマハとの使用許諾契約が必要になる。実際的には初音ミク音声のみの着メロ・着 うたはほとんど無いと思われるので、この条項が問題になることはあまり無いだろう。
143 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/22(土) 02:17:28 ID:sXN5hfsJ0 【法律論議は】今回の紛争を理解するための基礎知識その2【眠気を誘う】 その1は>>135 ------------------------------------------------------------------------------------ クリプトンのVOCALOIDライブラリ使用許諾契約書 D. 合成音声の使用に関する制限 (1)(省略) (2)お客様が本ソフトウェアによる合成音声を以下の形態で使用する場合には、本契約とは 別に著作者から別途の使用許諾契約が必要となります。そのような追加の使用許諾契約(使用 形態によっては、追加ライセンス料が発生する場合があります)が必要な場合は、まずクリプ トン・フューチャー・メディア株式会社までご連絡下さい。 (a)(省略) (b)他の楽器や音楽作品中の音と組合せて使用する場合を除き、電話機の呼び出し音、電話 や電話用機器での警告音として合成音声を商用に使用する場合。 (c)(省略) (d) 合成音声によって楽曲のリードボーカル・パートの大部分が構成されており、”歌手” として合成音声がメインの「アーティスト」にクレジットされている録音物や、人間ではなく 機械、テクノロジー、VOCALOID、本VOCALOID製品のタイトル、”バーチャル・シンガー”、 ”バーチャル・アーティスト”といった類のクレジットのある録音物を商用目的でリリースす る場合。但し、実在する人間がその「アーティスト」にクレジットされている作品内での合成 音声の使用は、追加使用許諾を取得することなく本契約の下で許可されています。 ------------------------------------------------------------------------------------ 解釈上の疑問点がいくつもある不明確な規定である。まずD項(2)の「著作者」とは一体誰を指 しているのかが曖昧である。おそらく(a)(b)(c)(d)の各項目ごとにクリプトンand/orヤマハで あったりそれ以外の第三者であったりするのだろうが… D項(2)(b)についてはヤマハの使用許諾契約と同様と解釈できる。上記を参照してね D項(2)(d)は熟読を要する重要な項目。クリプトンが保持している「初音ミク」の商標権とは まったく無関係に使用許諾契約の効力のみで「初音ミク」名義の作品の商業利用にはクリプト ンの許諾が新たに必要になる。 契約上の効力なのでクリプトン・ユーザー以外の第三者は直接この規定に縛られるわけではな い。しかしながらユーザーが創作した初音ミク名義の作品を第三者(たとえばドワンゴ)が商 業目的で使用するためには当然ユーザーの許諾が必要になるので、第三者といえども間接的に は影響を受ける。 D項(2)(d)但書の規定も疑問点のひとつ。実在する人間が「アーティスト」にクレジットされ てさえいれば、その作品のタイトル内に「初音ミク」の文字を使用しても追加使用許諾は必要 ないのか? 素直な文理解釈を取るなら追加使用許諾は必要ないということになる。D項(2)(d) 主文は効力の及ぶ範囲があまりに広いので但書の解釈としては素直な文理解釈を私は採用した い。 ここまでの結論: 1. 商業利用したい作品の「アーティスト」のクレジットはユーザー名義にせよ。 2. さすればタイトルに「初音ミク」の文言が含まれていても(契約上だけなら)安全 3. ただし不正競争防止法・商標法上の権利によりクレジットに「初音ミク」が入る作品は利 用形態によっては差止請求をクリプトンから受ける可能性がある(この点については後述) 原盤権や出版権に関してはまたいずれ…
71 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/22(土) 17:25:54 ID:dbzi/PrS0 【法律論議も】今回の紛争を理解するための基礎知識その3【たまには面白い】 今回はクリプトン社が保持している「初音ミク」の商標権について解説します 商標権とは何か? 指定した商品(あるいはサービス)について登録商標を独占的・排他的に 使用できる権利のこと。侵害者に対しては差止請求ができる。 注意して欲しいのは商標権は「指定商品」についてのみ効力が及ぶという点。ただし不正使用 に関しては指定商品以外にも効力が及ぶ場合がある。 ではクリプトンの登録商標「初音ミク」の中味を見てみよう。 ------------------------------------------------------------------------------------ 【出願番号】 商願2007-99911 【出願日】 平成19年(2007)9月6日 【先願権発生日】 平成19年(2007)9月6日 【商標(検索用)】 初音ミク 【標準文字商標】 初音ミク 【称呼】 ハツネミク 【出願人】 【氏名又は名称】 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 【類似群】 (省略) 【区分数】 4 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】 (区分)9 移動体電話による通信を用いてダウンロードされる移動体電話機の着信用の音楽, 電気計算機, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ, 自動販売機, 写真複写機,家庭用テレビゲームおもちゃ, 携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD―ROM, 郵便切手のはり付けチェック装置,電気溶接装置,電子出版物,(以下略) (区分)28 スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ, おもちゃ,人形,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具 (区分)41 ゲーム機械器具を備えた遊戯場・遊園地・その他の娯楽施設の提供,映画の上映・制作又は配給, 電子計算機端末による通信を用いて行うゲーム又はゲームに関する映像の提供,放送番組の制作, レコード又は録音済み磁気テープの貸与,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営, 演芸の上演,音楽の演奏,移動体電話による通信を用いて行うゲームの提供,(以下略) (区分)42 インターネット・電子メールその他の通信ネットワークを用いた電子計算機用プログラムの提供, 気象情報の提供,建築物の設計,デザインの考案,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究, 公害の防止に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究, 社会保険に関する手続きの代理,電子計算機用プログラムの提供,(以下略) ------------------------------------------------------------------------------------ 「初音ミク」商標の指定商品および指定サービスの多彩さに少しは驚いてもらえただろうか。 溶接バーナーやスキーワックスに「初音ミク」を含む商品名をつけるとアウトだし、馬の精子 の検査サービスの名称に「初音ミク」を使うことはできない。 今回の紛争と直接関係するのは商品区分9の「移動体電話による通信を用いてダウンロードさ れる移動体電話機の着信用の音楽」である。着メロや着うたの商品名(曲名)に「初音ミク」 (および類似する名称、例:はちゅねみく)が含まれているとクリプトンから差止請求を受け る可能性がある。しかもクリプトンは侵害の予防のために着信サービスに使用された装置や設 備を廃棄させることができる(商標法36条2項)。これは侵害者にとって極めて厳しいペナルテ ィである。 このように商標権は非常に強力な権利である。一般論としては契約上の権利や著作権等よりも 強いと言ってよい。
344 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/22(土) 20:42:05 ID:dbzi/PrS0 【興味のある人だけ】今回の紛争を理解するための基礎知識その4【読んでね】 [ボーカロイドシリーズの使用許諾契約について再説] そろそろ著作権関係の話題に入るつもりだったのですが、スレを読んでみたら使用許諾契約の 内容や効力について誤解している人が多いようなので急遽内容を変更します。すでにその1・ その2でヤマハとクリプトンの使用許諾契約書について解説していますが、今回は法律的な厳 密さよりも分かりやすさを優先して説明します 初音ミクのパッケージの中には2種類の使用許諾契約書が入っている A) ヤマハ(株)によるVOCALOIDソフトウェア使用許諾契約書 B) クリプトン・フューチャー・メディア(株)によるVOCALOIDライブラリ使用許諾契約書 初音ミクのユーザーはソフトウェアをインストールした時点で、 A)の使用許諾契約をヤマハと B)の使用許諾契約をクリプトンと 締結したものとみなされる。ユーザーのあなたは2つの契約の内容に同意したことになる。 まずはヤハマの契約書から見てみよう ------------------------------------------------------------------------------------ ヤマハのVOCALOIDソフトウェア使用許諾契約書 3. 合成音声の使用の制限 (中略)お客様が本ソフトウェアによる合成音声を以下の形態で使用する場合には、本使用許 諾契約とは別にヤマハ株式会社から別途の使用許諾契約が必要となります。もしそのような使 用許諾契約が必要であれば、ヤマハ株式会社までご連絡下さい。 (a) (省略) (b) 他の楽器や音楽作品中の音との組合せで使用する場合以外で、電話機の呼び出し音(いわゆ る「着メロ」を含む)、電話や電話用機器での警告音として合成音声を商用に使用する場合。 ------------------------------------------------------------------------------------ 明解な規定である。あなたがボーカロイドを使用して楽曲を作成した場合、ヤマハとの使用許 諾契約で制限を受けるのは事実上次のケースだけ。 「楽曲が初音ミクの音声のみで構成され、着メロ・着うたとして商業目的で使用したいとき」 ホントにこれだけである。実際問題として着メロ・着うたが初音ミクの合成音声だけで作成さ れることはほとんどない。したがって、ユーザーがヤマハから新たな使用許諾を受ける必要が あるケースはゼロに近いと言える 結論:初音ミクユーザーはヤマハとの使用許諾契約によって自分が創作した作品の使用に制限 を受けることは99.999999%ない 《次回は問題満載のクリプトンの使用許諾契約書について解説します》
641 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/23(日) 00:21:41 ID:SrrGP+w/0 【痛車もあれば】今回の紛争を理解するための基礎知識その5【痛い契約書もあるよ】 [ボーカロイドシリーズの使用許諾契約について再説2] 今回はクリプトンの使用許諾契約書についてです。正直言ってクリプトンの使用許諾契約書は は突っ込みどころ満載で、洗練されたヤマハの契約書とは対照的です ------------------------------------------------------------------------------------ クリプトンのVOCALOIDライブラリ使用許諾契約書 D. 合成音声の使用に関する制限 (1)(省略) (2)お客様が本ソフトウェアによる合成音声を以下の形態で使用する場合には、本契約とは 別に著作者から別途の使用許諾契約が必要となります。そのような追加の使用許諾契約(使用 形態によっては、追加ライセンス料が発生する場合があります)が必要な場合は、まずクリプ トン・フューチャー・メディア株式会社までご連絡下さい。 (a)(省略) (b)他の楽器や音楽作品中の音と組合せて使用する場合を除き、電話機の呼び出し音、電話 や電話用機器での警告音として合成音声を商用に使用する場合。 (c)(省略) (d) 合成音声によって楽曲のリードボーカル・パートの大部分が構成されており、”歌手” として合成音声がメインの「アーティスト」にクレジットされている録音物や、人間ではなく 機械、テクノロジー、VOCALOID、本VOCALOID製品のタイトル、”バーチャル・シンガー”、 ”バーチャル・アーティスト”といった類のクレジットのある録音物を商用目的でリリースす る場合。但し、実在する人間がその「アーティスト」にクレジットされている作品内での合成 音声の使用は、追加使用許諾を取得することなく本契約の下で許可されています。 ------------------------------------------------------------------------------------ 「D項(2)の著作者って一体誰なの?」についてのはその2ですでに述べたので省略。ここでは 一応クリプトン社のことだと思ってもらえばok D項(2)(b)についてはヤマハの使用許諾契約書第3条(b)と同じと解釈できる。つまり「楽曲が初 音ミクの音声のみで構成され、着メロ・着うたとして商業目的で使用したいとき」にはクリプ トンの新たな許諾が必要になる。しかし現実にはほぼすべてミクの着メロ・着うたはミクの合 成音声+他の楽器・音源で構成されている。したがってD項(2)(b)が実際に適用されるケース はほとんどないだろう D項(2)(d)は本日のメインテーマ。かなり驚くべき規定である。この規定をストレートに解釈 すると、初音ミクを連想させるクレジットを含む「ミク音声メインの録音物」を商業目的で 「リリース」するときにはクリプトンの許諾が必要になる。むむぅ…この条項の効力範囲は 異常なほど広いぞ。もしも「録音物」の範囲がネット上の電磁気的なデータまで含んでいる としたらこの条項は万能に近い。クリプトンさん、この規定はちょっとやり過ぎ。 D項(2)(d)但書『但し、実在する人間がその「アーティスト」にクレジットされている作品内 での合成音声の使用は、追加使用許諾を取得することなく本契約の下で許可されています』も 疑問点の多い規定である。たとえば実在する人間が「アーティスト」にクレジットされている 場合、次のうちどこまで許されるのかといった疑問が湧いてくる。 1. 作品のタイトルに「初音ミク」が含まれていてもいいのか? 2. 作品のタイトルに「初音ミクを連想させる文言」が含まれていてもいいのか? 3. 作品のタイトル以外のクレジットに「初音ミク」あるいは「初音ミクを連想させる文言」 が含まれていてもいいのか? 私の意見ではD項(2)(d)の効力範囲はあまりに広すぎるので、但書を素直に解釈して上記の 1.2.3.すべてを認めるべきだと思う。 結論1:商業目的でないならボーカロイドを使用して作成した楽曲に「初音ミク」を含むタイト ルをつけてもまったく問題ない。もちろんネットにアップしたり他人に譲ったりするのもの自 由。誰の許可も必要ない 結論2:商業目的で「初音ミク」のクレジットを含む作品を使用するときはクリプトンの許諾が 必要になる場合がある 結論3:クリプトンさん、D項(2)(d)を改正して。ヤバいよこれ
「洗練されたヤマハの契約書とは対照的です」 < Wikiいじってる人のツッコミ。そりゃ会社の歴史の長さだけでも10倍違う会社ですから
37スレ111
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/streaming/1198411305/111
37スレ111
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111 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/23(日) 21:36:53 ID:1yTQSucb0 【ピロシキって】今回の紛争を理解するための基礎知識その6【誰さ?】 今回はちょっと趣向を変えて具体例で話を進めます。なお登場する一部の固有名詞は架空のもので 実在する個人・団体・楽曲とは一切関係ありません 1)ピロシキ(31歳)はソフトウェア「初音ミク」を購入し、自分のパソコンにインストールした この時点で発生する権利・義務 a. ヤマハとの使用許諾契約に基づく権利・義務 b. クリプトンとの使用許諾契約に基づく権利・義務 2)ピロシキは初音ミクと他のDTMソフトを併用してオリジナル曲「恋愛防火ロイド」を完成させ、 そのファイルをハードディスクに保存した。 この時点で発生する権利 a. 著作権 b. 著作人格権 c. 原盤権(=著作隣接権の一種・レコード製作者の権利) d. 国内一般法により発生する各種の権利 e. 国際条約により保障される各種の権利 ・著作権は単一の権利ではなく多数の支分権(複製権・演奏権等)の束である点に注意 ・著作人格権は他人に譲ることはできない ・「原盤権」は正式な法令用語ではない。音楽業界で慣用されている業界用語にすぎない。その内 容はレコード製作者の権利(著作隣接権のひとつ)とほぼ同じ。ピロシキが楽曲のファイルをハー ドディスクに固定した時点で発生する。原盤(この場合はハードディスク内のマスターファイル) はピロシキの許諾がなければ誰もコピーできない ・dとeについては当面の問題とは無関係で説明省略 3)ピロシキは「こんな神曲はぜひ大勢の人に聴いてもらわなくっちゃ」と思い、ぬこぬこ動画に 「恋愛防火ロイド」をアップした。驚いたことにこの動画は200万再生を超える大人気作となった 4)ドカンゴミュージックパブリッシング(音楽出版社。以下D社と略す)は「恋愛防火ロイドを 着メロ・着うたとしてダウンロード配信したいので曲の管理をうちにまかせてほしい。もちろんお 金は払います」とピロシキに申し込んだ。ピロシキはこの提案に口頭で同意した この時点で発生する権利・義務 a. ピロシキとD社間の契約締結により発生する権利・義務(契約は口頭だけでも成立する) このピロシキ・D社間の契約の内容と効力が本日のメインテーマである 疑問点1 この契約により曲の著作権はピロシキからD社に譲渡されたのか? 1. 音楽業界の商慣行では「曲の管理をまかせる」とは「曲の著作権を管理者に譲渡する」ことを 意味している。したがってピロシキがこの商慣行を知りつつD社の提案に同意したのであれば曲の 著作権はD社に有効に移転する 2. 逆にピロシキがこの商慣行を知らずにD社の提案に同意した場合には問題がある i) 契約の重点が「ダウンロード配信の許可」にあるときは、配信に関する合意は有効だが曲の著 作権譲渡の合意は無効(あるいはそもそも不存在)となる。したがって契約は存続するが曲の著作 権は移転せずピロシキが依然として著作権者である ii) 契約の重点部分が「曲の著作権の譲渡」にあるときはピロシキは契約全体を取り消して無効に することができる。取り消せば契約は無効となり著作権は移転しない iii) ピロシキが音楽業界の人間であった場合には、たとえ商慣行に無知であったとしても契約は 有効であり曲の著作権はピロシキからD社に移転する
119 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/23(日) 21:38:03 ID:1yTQSucb0 【法律知識は】今回の紛争を理解するための基礎知識その7【あると便利かも】 その6は>>111 疑問点2 この契約により原盤権はピロシキからD社に譲渡されたのか? 音楽業界には「曲の管理をまかせる」が「曲の原盤権を管理者に譲渡する」ことを意味するような 商慣行は存在しない。したがって原盤権は移転せず依然としてピロシキが権利者である 疑問点3 この契約によりD社は曲をJASRACに登録(信託契約)することができるか? 1. 音楽業界の商慣行では「曲の管理をまかせる」とは「曲の著作権を譲渡しJASRACに登録する」 ことを意味している。 2. 音楽出版社が楽曲をJASRACに登録(正確には著作権信託契約)するためには、その楽曲の著作 権を必ず譲り受けている必要がある。つまりD社は曲の著作権者でなければならない 3. したがって、疑問点1でD社に著作権が有効に移転したケースについてのみD社はJASRACに曲 を登録できる 疑問点4 この契約によりD社は曲のダウンロード配信サービスを開始することができるか? 1. ピロシキはクリプトン社との使用許諾契約を遵守する法的義務を負っている。クリプトン社は 商業目的で楽曲を着メロ・着うたに使用するときは(使用許諾契約に基づいて)新たな追加的許諾 が必要である主張している。(実はこのクリプトン社の主張にはいささか疑問があるのだが、長く なるのでここでは論じない) 2. 一般に契約上の権利は当事者の間でだけ有効であり、第三者には効力が及ばない。つまりピロ シキ・クリプトン間の使用許諾契約にD社が縛られることはない。 3. ピロシキはD社との契約で曲の配信サービスに同意した以上、クリプトンから新たに使用許諾 を受ける義務を負う。これはピロシキの法的義務であってD社にはなんら法的義務はない 4. したがってD社はクリプトンの許諾の有無とは一切無関係に、ピロシキとの契約で取り決めた 開始日時よりダウンロード配信を開始することができる。もし開始日時の取り決めが無かった場合 には契約成立後ならいつでもD社は配信を開始できる 5. もし開始日時までにピロシキがクリプトンから追加的許諾を得ることができず、配信が開始さ れてしまった場合はどうなるか? 答え:ピロシキは契約違反としてクリプトン社から損害賠償を 請求される可能性がある 【注意!】疑問点4の結論は実はまだ結論とは言えない。D社が実際に初音ミク楽曲の配信サービ スを開始できるかどうかは次の問題点も検討しなければならない a) 登録商標「初音ミク」の指定商品には「着メロ・着うた等」が含まれている。今回のケースで D社は商標権を侵害しているといえるかどうか b) 初音ミクの公式画像の著作権を侵害しているかどうか c) 不正競争防止法に違反しているかどうか これらを解説すると長くなるので今回は省略した。また、ヤマハとピロシキの使用許諾契約につい てもあまり重要でないので省略した
502 名前:スレ13の771 [sage]: 2007/12/24(月) 22:22:38 ID:q/ZhefLO0 前々スレのazumaさんの投稿で明らかになったドワンゴ・ミュージックパブリッシングのメールの 内容が気になったのでちょっとコメントしておきます azuma◆mf21aXMzrg氏の投稿の引用: >で、CDを製作する場合 >楽曲の原盤権はボクが保有 >CDの原盤はD社さんが保有 >とするのがいいそうです。 >D社さんが「CD」の原盤を保有する際、著作(隣接)権JASRACへの登録がマストになる可能性があるそうです。 >しかし、全てを信託するのではなく、配信等にのみかかる著作権信託は >別の信託団体に預ける、ということも可能らしいので、 >「著作権信託に関してはご契約の際、都度ご確認頂かざるを得ないかと存じます」 >だそうです。 1)引用5行目の「D社さんが「CD」の原盤を保有する際、著作(隣接)権JASRACへの登録がマストに なる可能性があるそうです」について a. JASRACに登録できるのは音楽著作権のみ。著作隣接権(たとえば原盤権)は登録対象外 b. 音楽出版社(たとえばドワンゴ・ミュージックパブリッシング)が楽曲の著作権をJASRACに登 録するためには、必ず著作者(たとえばazuma氏)から著作権を譲り受けて自らが著作権者になる 必要がある(著作権信託契約約款3条1項)。そして信託契約の成立と同時に著作権は音楽出版社か らJASRACに移転する。楽曲の著作権の移転経路は下の通り 著作者→音楽出版社→JASRAC c. ドワンゴがCD製作のためにCDの原盤を保有する際、CD収録楽曲の著作権をJASRACに登録しなけ ればならない法的な理由は一切ない。JASRACへの登録が必要なのはビジネス上の理由からである。 詳しい事情は省略するが音楽出版社の利益確保・権利の防衛・事務の簡素化のためにはJASRACへ登 録したほうが有利なのだ 2)引用6行目「全てを信託するのではなく、配信等にのみかかる著作権信託は別の信託団体に預 ける、ということも可能らしい」について 楽曲の著作権をJASRACに登録(委託)する際、著作権の一部を委託範囲から除外することができる。 JASRACでは音楽著作権を11の支分権・利用形態に分割して管理しており、そのうちどれか一つ(あ るいは二つ以上)を委託しないことも可能。委託しなければその部分の著作権はJASRACに移転しな い。 1.演奏権等 2.録音権等 3.出版権等 4.貸与権等 5.ビデオグラム等への録音 6.映画への録音 7.コマーシャル送信用録音 8.ゲームソフトへの録音 9.放送・有線放送 10.インタラクティブ配信(←ここに注目!) 11.業務用通信カラオケ ニコニコ動画等のインターネット上で活動している動画の作者やユーザーにとって直接関係がある のは「インタラクティブ配信」の部分。これさえ委託範囲から除外しておけば、インターネット上 でJASRAC登録楽曲(たとえば「みくみくにしてあげる♪」)を二次利用した動画をどこへアップし ようとJASRACはいっさい口出しできない
42スレ538(771氏ではない)
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/streaming/1198495935/538
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/streaming/1198495935/538
538 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]: 2007/12/24(月) 22:29:49 ID:pccvBwWF0 >>502 c. ドワンゴがCD製作のためにCDの原盤を保有する際、CD収録楽曲の著作権をJASRACに登録しなけ ればならない法的な理由は一切ない。JASRACへの登録が必要なのはビジネス上の理由からである。 詳しい事情は省略するが音楽出版社の利益確保・権利の防衛・事務の簡素化のためにはJASRACへ登 録したほうが有利なのだ この部部に関しては、必要不必要ではなく、レーベル会社としての方針にかかわってくると思う。 ドワンゴの親会社であるエイベックスは原盤権の確保をおこなっているからね。 アーティストが原盤権を自分で保持していたほうが有利に(出版者には不利)になるのだから、 子会社であるドワンゴが原盤権確保せずにCD販売なんておこなったら、親会社に示しがつかなくなるんじゃないかなぁ。
楽曲の原盤権という不思議な語が (原盤権は原盤、すなわち音源の権利) D側から出ている点、問い合わせにより得られた情報によれば、「当たり前だが、ドワンゴで着うたを配信している以上、ユーザーが勝手に自作の着うたを配信するのは禁止。というか、元々こちらの対処としてJASRACに登録した次第。」というかなりキナ臭い話があるらしい点、今後も注意が必要かと(この文、「Wikiをいじってる人」による。「wikiの人」とは別人です)。