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乱れ撃ち手打ち饂飩

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乱れ撃ち手打ち饂飩

「亜美ってば、どこ行っちゃったんだろ」

朝の街並みを一人の少女が往く。
彼女の名は双海真美。年端もいかぬ少女だが、765プロの中では古参の双子アイドルだ。
だが双子の妹、亜美はここにはいない。
一方的に悪趣味なイベントの開催を言い渡され、気がつけばこの街に独り放り込まれたのだ。

真美が巻き込まれたイベントのただ一つのルール、それは仕事仲間を殺し、生き残ること。
しかし、殺し合えと言われて素直に従うほど真美は聞き分けの良い子供ではない。
人を、ましてやかつての同僚を殺すなんて以ての外だし、なにより鬼軍曹・秋月律子を倒すことなど絶対に出来ないだろう。
律子は双海姉妹が最も恐れる人物だ。殺し合いに乗るということは、必然的に彼女と戦うことを意味する。
それだけは死んでも避けたかった。恐らく亜美も同じ考えだろう。

一刻も早く亜美に会いたい。
誰もが疑わしいこの状況でも、彼女だけは味方になってくれると断言できる。
既に誰かの手によって殺められていないよう祈りながら、真美は妹の姿を探す。

「おや?あの二人は……静香お姉ちゃんとミキミキですかな?」

角を曲がると、遠くに二つの人影が見えた。
どうやら同じ事務所の最上静香星井美希の二人が話をしているようだ。
ようやく知り合いに会えた喜びから思わず声をかけそうになるが、すんでのところで思い留まる。
あの二人が殺し合いに乗っている可能性もあるのだ。不用意に近づいてズドンでは洒落にならない。
真美は気付かれないよう物陰に隠れながら慎重に近づき、様子を伺う。
どうか二人が殺し合いに反対していますように……一縷の望みをかけ、静香の発言に耳を傾けた。


「許さない……絶対に殺してやる……!」


――真美は脱兎の如く逃走を開始した。


   ◆   ◆   ◆


話は少し前に遡る。

殺し合いを止めるべく行動を共にする静香と美希は、静香の提案で病院に向かっていた。
病院なら包帯や消毒液などをいくらでも補充することができる。
他の協力的な参加者と遭遇することも出来れば御の字だ。
万が一危険人物と遭遇しても、デストル刀を所持する美希と静香が二人がかりで相手をすればなんとか退けられるだろう。
看護師の経験がある豊川風花がいれば専門的な道具も有効に活用できるのだろうが、いない人間のことを考えても仕方ない。

「そーいえば、静香の鞄には何が入ってたの?」

ふと美希が疑問を口にする。
確かに静香はここに来てまだ一度もデイパックを開いていなかった。

「言われてみれば、確認がまだでしたね。ちょっと見てみます」

デイパックには食料や磁石などの基本的な支給品一式の他に、武器や防具がいくつか入っている。
強力な武器が支給されれば戦局を有利に進めることが出来る一方、役に立たないハズレを引く可能性もある。
使い道のある道具が支給されていることを願いながら、静香は荷物を改め始めた。

最初にデイパックから顔を出したのは、本体の大きさに対して銃口の小さい無骨な銃だ。
かつて静香が出演したミリタリーイベントで得た知識から察するに、これはマシンガンと呼ばれる武器だろうか。
これで人を撃つのかと思うと気が滅入るが、アタリといって差し支えないだろう。

引き続き中身を漁っていくと、美希のものと同様に水やタブレット端末などが入っていることがわかった。
なぜかペットボトルの他に水筒まで入っているのが不自然だが、気にせずに中身を出していく。
そして最後に、鞄の底に眠っているタッパーを見つけた。これが二つ目のランダム支給品なのだろうか。

「な、何よこれ……!」

――饂飩だった。ご丁寧にも、食べやすいよう既に茹でてある。
確かに饂飩は静香の大好物だ。こんな状況でなければ美味しく平らげていただろう。
だが、殺し合いの場においてははっきり言って何の役にも立たない。精々腹の足しになるくらいか。
間違いなくハズレを引いたと言い切れる。

「おうどんなの!いいなー、ミキの鞄にもおにぎりとか入ってればよかったのに……」
「何を暢気なこと言ってるんですか!どう考えてもあの人の嫌がらせでしょ!」

同じハズレでも、他の物ならまだ「運が悪かった」で済ませられた。
しかし、これは明らかにあの憎きプロデューサーの手によって作為的に支給されたものだ。
彼が『死ぬ前くらい好きなものを食べさせてやろう』と嘲笑っている様子が容易に想像できる。

「許さない……絶対に殺してやる……!」

自身のみならず、饂飩まで侮辱された思いの静香はより一層プロデューサーへの殺意を強める。

「もー、静香ってば怒ってばっかり。せっかくおうどんが入ってたんだから素直に喜べば……って、あれ?」

何かに気がついたのか、美希は周囲を見渡し始める。
だが特に変わった様子はない。人っ子一人いない静かな街だ。

「どうかしましたか?」
「今誰かいたような気がしたんだけど……多分気のせいなの!」
「何ですかそれ……」

あまりにもマイペースな美希との会話に付き合っていたら、静香の怒りは呆れへと変わっていた。
そんな自由気ままなところも、美希が多くのファンを惹きつける魅力の一つなのだろう。

「じゃ、確認も終わったんだし、早く行こ?」
「あ、待ってくださいよ!」

早くも静香の荷物に興味をなくしたのか、美希は先へ進みたがっている。
広げた支給品をデイパックへと戻し、二人はまた病院へ向けて歩き出した。
思いもよらぬ波紋を呼んでしまったと気付かずに……。


【一日目/朝/C-5】

【星井美希】
[状態]健康
[装備]デストル刀
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:プロデューサーにじかだんぱん? するの!
 1:プロデューサーを探す。殺し合いには乗らない
 2:プロデューサーを殺そうとする最上静香を見張る

【最上静香】
[状態]健康
[装備]イングラムM10(32/32)
[所持品]支給品一式、饂飩セット、9x19mmパラベラム弾入りマガジン(32×5)
[思考・行動]
基本:プロデューサーを殺す
 1:プロデューサーを探す。殺し合いには乗らない
 2:饂飩が気になる……でもあの人は許せない


   ◆   ◆   ◆


「マズイっしょ……静香お姉ちゃん、絶対何人かヤッちゃってる目してたよ……」

息も絶え絶えなんとか逃げ果せた真美は静香の殺意を思い出し、改めて恐怖する。
あれ程に怒り狂った静香は見たことがなかった。
何があったのかは知らないが、彼女は間違いなく殺し合いに乗っている。
そして、同じ場で話をしていた美希も恐らく仲間だろう。きっとチームを組んで参加者を始末していく算段に違いない。

「こうしちゃいられないよ!早くみんなに知らせなきゃ!」

あの二人の手によって犠牲者が出る前に、他の参加者に彼女たちの危険性を伝えなければならない。
未だ会えぬ亜美や律子の身を案じ、真美は無人の街を駆けた。



あともう少しだけ注意深く観察していれば、静香の殺意が仲間に向けられたものではないと気付くことが出来たのだが……。
無情にも彼女がそれを知ることはない。


【一日目/朝/C-5】

【双海真美】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:死にたくない。でも人は殺さない
 1:亜美ー!どこー!?
 2:静香お姉ちゃんとミキミキには気をつける

※静香と美希が殺し合いに乗っていると誤解しています。


【イングラムM10】
最上静香に支給。
AAI社(アキアゴ・アームズ・インダストリーズ)で設計された短機関銃。
原作バトルロワイアルをはじめ、他にも様々な作品で活躍しているサブマシンガンである。
非常に強力だがすぐに弾切れを起こす為、扱いにくい。

【饂飩セット】
最上静香に支給。
タッパー詰めされた調理済みの饂飩、温かい出汁の入った水筒、割り箸の三点セット。
食用以外の用途はほぼないが味は絶品。

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