('A`)がミニ四駆をふたたび走らせるようです 第1話

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('A`)がミニ四駆をふたたび走らせるようです 第1話 - (2013/09/16 (月) 21:17:52) のソース

[[('A`)スレまとめ]]

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:38:56.38 ID:hQVFJGMrO
ジー…ジー… 

今日も強い日差しが日当たりだけはいい貧乏アパートに差し込んでくる。 


(;'A`)「あちぃ…。クーラー壊れるとか…。神様は俺に死ねと?」 

俺の名前はドクオ。都内の某大学に通う1年生だ。 
夏休みだというのに彼女はおろか、友達すらいない俺は今日もこうして部屋でゴロゴロしている。なんと虚しい夏休みだろう。その上一昨日からクーラーまで壊れてるときたもんだ。 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:40:05.12 ID:hQVFJGMrO
(;'A`)「クソ、暑すぎて昼寝も出来ない…。あのクーラーだいぶ古かったからな。電気屋ももう部品がないから修理できないとか言うし…」 

だからといって新しく買い直す金もない。対人コミュニケーションの苦手な俺はバイトをせずに実家からの仕送りだけで生活しているのだ。 

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:41:48.65 ID:hQVFJGMrO
(;'A`)「それにしても暑すぎる…。このままじゃマジで死にかねない…。そうだ!扇風機くらいなら…!」 

ふと思いつき、カーチャンからの仕送りの入った封筒の中身を確認してみる。 

('A`)「よし、食費と光熱費を引いてもなんとかなりそうだな」 

そうと決まったら早速出かけるとしよう。外はさらに暑いだろうが仕方ない。この夏を扇風機すらない部屋で過ごすのは無謀だろう。俺には彼女も友達もいない。熱中症で倒れても誰にも気づかれず、俺の腐敗臭に気づいた他の住人に通報されて初めて発見されるだろう。 
“孤独な大学生、熱中症で死亡” 
そんな見出しが頭に浮かんだ。嫌すぎる。 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:42:43.01 ID:hQVFJGMrO
('A`)「…行くか……うっ…」 

外は予想以上の暑さだった。強烈な日差しが肌を焼き、アスファルトの照り返しが眩しい。 時折吹く風もこんな熱風では体力を奪うばかりだ。 

(;'A`)「俺、生きて電気屋にたどり着けるかな…?」 

(;;'A`)「……あれ、なんだろう…めまいが…」 

ヤバい、元々ひきこもり気味だったのに急にこんな炎天下を歩いたからだろうか。このままでは倒れてしまう。 


(;;'A`)「どこか…どこか休めるところ…あ、あの店」 


そのとき俺の目に入ったのは昔ながらの古びた模型店だった。 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:45:11.17 ID:hQVFJGMrO
('A`)「す、すいません…」 

ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃ…ちょ、ちょっとあんた大丈夫!?」 


あ、もうダメだ…倒れる…。 

ムニュ! 


(;;'A`)「……」 
ξ゚⊿゚)ξ「……」 

('A`)「………」 
ξ゚⊿゚)ξ「………」 

(*'A`)「…柔らかい」 

ξ#゚⊿゚)ξ「この…変態っ!」 

バキッ! 

(;'A`)「グアバッ!」 

俺は顔に残る柔らかな感触の余韻に浸りながら気を失った。 

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:47:27.95 ID:hQVFJGMrO
シャー…シャー…ウィィィン 

…あれ?なんだろうこの音。なんだか懐かしい……… 

ガシャーン! 
「おっお!レーンチェンジでコースアウトしちゃったお!」 
「ブーン、右フロントをダブルアルミに代えてみたらどうだい?」 


…ああ、[[ミニ四駆]]か。懐かしいなあ。俺も子供の頃作ったなあ。みんなでコース持ってる奴の家に集まって、わいわい騒ぎながら走らせたっけ。 
…そういえばあの頃は友達がいたんだよな。いつからこんなになっちゃったんだろう…。 


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:50:59.17 ID:hQVFJGMrO
……………。 

('A`)「…ここは?」 


( ^ω^)「おっお!気がついたかお 


そうか、俺は扇風機を買いに出かけて、途中で気分が悪くなって…。それで立ち寄った模型店で倒れたんだった。 


( ^ω^)「それにしてもいきなりツンの胸にダイブするなんてなかなかやるお!ところで怪我はなかったかお?なにせツンの胸はペッタンコ…」 

グワシャッ! 


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :ツン痩せさせました :2008/07/31(木) 01:54:24.72 ID:hQVFJGMrO
ξ#゚⊿゚)ξ「…誰がペッタンコですって?」 


(х´ω`)「ほんの冗談だお。殴ることないお…」 


ξ#゚⊿゚)ξ「冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょ?」 


(´・ω・`)「ブーン、今のは確かに君が悪いよ」 


(х´ω`)「うう、ショボンまで…。わかったお、ブーンが悪かったお。謝るお」 


ξ#゚⊿゚)ξ「本当に反省してるのかしら?」 


(;'A`)「あ、あの…」 


ξ゚⊿゚)ξ「あ…さっきはごめんなさいね。具合が悪かったのよね?もう大丈夫?」 


(;'A`)「あ、は、はい。すいません、ご迷惑をおかけしました」 



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:57:36.71 ID:hQVFJGMrO
俺は店内の長椅子に横たえられていた。いかに俺が軽いとはいえ、あの少女が1人で運ぶことは無理だろう。あの微デブの男とハの字眉毛の男が俺を運んでくれたのだろうか。 


/ ,' 3 「フォッフォ、気づいたようじゃの」 


と、店の奥から1人の老人がやってきた。この店の店主のようだ。 


/ ,' 3 「孫娘が乱暴をしてすまなかったの」 


('A`)「い、いえ」 


/ ,' 3 「外はまだ暑いし、少し休んでいかれるとよいじゃろ」 


('A`)「すいません、そうさせていただきます」 

と、ここで俺はさっき店主の孫娘に殴りとばされた微デブの男の右手に目を向けた。 


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 01:58:59.35 ID:hQVFJGMrO
('A`)「それは…」 


( ^ω^)「おっお!ミニ四駆だお」 


('A`)「まだ売ってたんですね」 


( ^ω^)「昔みたいな大きなブームじゃないけど、当時のファンを中心に流行ってるんだお。新製品も出てるんだお。ブーンのマシンも[[バイソンマグナム]]っていう最近のマシンなんだお」 


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:00:29.55 ID:hQVFJGMrO
そういってブーンという男は手に持っていたマシンを俺に見せた。 

('A`)「俺が知ってるミニ四駆と結構違う…」 

そのマシンのシャーシは俺が子供の頃使っていたものよりもずんぐりしていた。だが一番の違いはなんといってもモーターの位置だった。 



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:02:37.58 ID:hQVFJGMrO
('A`)「モーターが真ん中にある…」 


(´・ω・`)「このシャーシはMSシャーシといってね、新しく発売されているミニ四駆PROというシリーズのシャーシなんだ。両軸モーターをセンターに置くことで駆動のロスを少なくしてるんだ」 

今度はショボンと呼ばれた男が説説明してくれた。 


('A`)「まだ進化してるんだ…」 



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:05:42.21 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「おっお!ところで名前はなんていうんだお?」 

と、ブーンという男が馴れ馴れしく話しかけてきた。 


(;'A`)「ド、ドクオです」 


( ^ω^)「僕はブーンっていうんだお!VIP大学の一年生だお!」 

(´・ω・`)「僕はショボン。ブーンと同じくVVIP大学の一年生さ」 

ξ゚⊿゚)ξ「私はツン。ラウンジ短大の一年生よ」 

/ ,' 3 「ワシは荒巻スカルチノフ、そしてここは荒巻模型店じゃ」 



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:07:17.18 ID:hQVFJGMrO
なぜか唐突に自己紹介が始まったが、そんなことより…… 


('A`)「VIP大学…俺と一緒だ」 


( ^ω^)「お?そうなのかお?」 

(´・ω・`)「それは奇遇だね」 


俺は大学では極力目立たないよう、人と目を合わせないようにしているから、出会ったことはないだろうし、もし出会っていても覚えてはいないだろう。 



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:09:26.22 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「ところでドクオはさっきブーンのミニ四駆をじっと見てたお。ドクオもミニ四駆に興味があるのかお?」 


('A`)「俺も昔走らせてたから…。懐かしくて」 


( ^ω^)「おっお!良かったらドクオもミニ四駆に復帰しないかお?」 


(´・ω・`)「そうだね。一緒に走らせるレーサーが増えると嬉しいよ」 



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:11:11.33 ID:hQVFJGMrO
ミニ四駆…。少年時代の懐かしい思い出が蘇ってくる。たまにはあの頃を思い出してみるのも悪くはない。 


('A`)「…一台買ってみようかな」 


( ^ω^)「やったお!ミニ四駆仲間が増えるお!」 


/ ,' 3 「フォッフォ。ミニ四駆コーナーはこっちじゃよ」 


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:13:02.59 ID:hQVFJGMrO
店長に案内された先にはたくさんの種類のミニ四駆やパーツが並べられていた。決して大きな店ではないがミニ四駆には力を入れているらしい。 


/ ,' 3 「フォッフォ。好きなのを選ぶといい」 


俺は並べられたマシンを眺めてみた。俺の子供時代に全盛期だった[[フルカウルミニ四駆]]もあれば、見たこともない新しいマシンもある。フルカウルより前の[[レーサーミニ四駆]]も何台が混ざっている。 
ふと、俺は一台のマシンに目がとまった。 


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:14:56.43 ID:hQVFJGMrO
('A`)「これは…」 


/ ,' 3 「おお、それはエンペラーPROじゃのう。昔流行ったレーサーミニ四駆のエンペラーをMSシャーシでリメイクしたんじゃよ」 



39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:16:37.61 ID:hQVFJGMrO
ダッシュ一号エンペラー…それは俺にとって思い出深いマシンだった。 
俺が子供のころは第二次ミニ四駆ブームの真っ只中だった。俺もご多分に漏れずミニ四駆が欲しくて誕生日プレゼントにとカーチャンにねだったのだ。 
そして誕生日、俺はドキドキしながらプレゼントの包みを開けた。しかし中に入っていたのは俺の欲しかったトライダガーXではなく、見たこともないイボイボタイヤのマシンだった。 

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:17:16.21 ID:hQVFJGMrO
当時はレッツ&ゴーの影響もあり空前のフルカウルミニ四駆ブーム。小学生の間では、フルカウルじゃなければミニ四駆じゃない!という風潮だった。 
「ドクオのマシンなにそれwww」 
「だせぇwww」 

そんなことも言われた。しかし俺はカーチャンに買い直してくれなんて言わなかった。家が貧乏なのを知ってたから。 
…それにニコニコしながら俺がプレゼントを開けるのを眺めていたカーチャンの顔を思い出すと、とてもそんなことは言えなかった。 



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:19:10.79 ID:hQVFJGMrO
('A`)「…俺、これにします」 


/ ,' 3 「ほう。なかなか良いマシンじゃよ」 


そのあとはブーンとショボンに手伝ってもらいながらいくつかのパーツを選び会計を済ませた。こうして俺の扇風機代はミニ四駆に化けた。 


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 02:22:57.26 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「おっお!これで新しいミニ四レーサーの誕生だお!」 


(´・ω・`)「これからよろしく、ドクオ」 


/ ,' 3 「コースは開店中ならいつでも自由に使っていいからの。定休日は火曜日じゃ」 


ξ゚⊿゚)ξ「せいぜい売り上げに貢献しなさいよね」 


('A`)「う、うん。色々ありがとう」 


( ^ω^)「どういたしましてだお!そうだ、ドクオ」 

そういいながらブーンは俺に右手を差し出した。 

( ^ω^)「これからはミニ四レーサーとして仲間でありライバルだお!これからよろしくお」 


('A`)「よ、よろしく」 


俺はおずおずとその手をとった。馴れ馴れしくてちょっと変な奴だけど…久しぶりに触れた人の手は温かくて…俺は正直ちょっと嬉しかったんだ。 
こうして俺はふたたびミニ四レーサーになった。 


178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:07:27.01 ID:hQVFJGMrO
('A`)「色々ありがとう。じゃあ、今日はこれで」 

マシンとパーツを買った俺は帰宅するつもりだったが 

( ^ω^)「お?もう帰っちゃうのかお?せっかくだからここで組んでいくといいお」 

と呼び止められた。 

('A`)「え?いいの?」 


/ ,' 3 「もちろんじゃ。ピットスペースはそこの机じゃからの」 


お言葉に甘えて組んでいくことにした。 

('A`)「さて…」 


まずはマシンを箱から出してみる。当たり前だが、以前自分が組んだ元祖エンペラーよりも複雑な構造のようだ。 


180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:12:30.78 ID:hQVFJGMrO
('A`)「パーツが多いな…」 

(´・ω・`)「MSシャーシはフロント、センター、リヤの3つのユニットにわかれるからね。ユニットごとに違うセッティングを用意しておけば、コースに合わせてすぐに変更できる 
…っていってもギヤの噛み合わせの関係とかもあって、そんなことする人はほとんどいないんだけどね」 


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:13:19.87 ID:hQVFJGMrO
('A`)「とりあえず組んでみるか」 


説明書を読みながら丁寧にシャーシを組み上げる。ギヤは付属のギヤから一緒に買った超速ギヤに、モーターもトルクチューンモーターに取り替える。トルクチューンモーターは最初から真鍮ピニオンギヤが付いている。なかなかお得だ。 



182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:14:07.85 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「お、ドクオ待つお、その真鍮ピニオンギヤは取り替えた方がいいお」 


('A`)「え、どうして?真鍮ピニオンの方が抜けにくくていいんじゃないの?」 

(´・ω・`)「確かに抜けにくいことは抜けにくいんだけど、真鍮ピニオンだとカウンターギヤが削られてすぐボロボロになっちゃうんだ。だから普通のプラスチックのピニオンに交換するんだ」 


('A`)「でもこれどうやって外すの?」 

(´・ω・`)「ふふ、ブーン、アレを」 

( ^ω^)「お、了解だお」 


ブーンが取り出したのは一本のニッパーだった。 


183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:15:37.51 ID:hQVFJGMrO
('A`)「それでどうするの?」 


(# `ω´)「こうするんだお。えい!」 

バキッ! 


(;'A`)「な、なにをするだーッ!」 


( ^ω^)「大丈夫だお。軸は傷つけないように気をつけてるお」 


(;'A`)「そ、そうですか」 


(´・ω・`)「あ、真鍮ピニオンを割るときは良いニッパーを使っちゃだめだよ。刃がダメになるからね。100円ショップで売ってるのとかを使うといいよ」 


('A`)「なるほど。…あ、そういえば工具買ってなかった」 
これでは組み立てられない。うっかりしていた。 

('A`)「工具はどんなのを買えばいいんだろう?」 


184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:17:15.46 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「おっお。それじゃあブーンがお勧めの工具を教えるお」 

( ^ω^)「パーツの切り離しとかに使うニッパーは出来れば薄刃ニッパーがいいんだけど、少したかいお。最初は600円くらいのニッパーで十分だお」 




186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:21:49.49 ID:hQVFJGMrO
('A`)「俺が子供の頃はニッパーなんて買えなかったから爪切りを使ってたなあ」 


(´・ω・`)「うん、切れ味の良いものなら爪切りもなかなか使えるよ。ただやっぱりニッパーは一本持ってないとね」 


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:35:08.80 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「次はドライバーだお。ブーンはドライバーはぶっちゃけ100円ショップので構わないと思ってるけど、たまにねじ穴を壊しちゃうようなのもあるから注意だお」 


(´・ω・`)「ブーンみたいな馬鹿力の持ち主には関係ないけど、ビスを回すのは結構力がいるんだ。持ち手が大きいものだと回しやすいよ」 


('A`)「俺力ないからそれがいいかも」 

190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:36:47.78 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「ヤスリも必要だお。ヤスリはダイ○ーのダイヤモンドヤスリがお勧めだお。よく削れるお」 


(´・ω・`)「ニッパー、ヤスリ、ドライバーはとりあえず必須だね。この3つのはセットになって売ってるのもあるから、そういうのを買ってもいいね」 


192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:38:32.19 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「次はなくてもいいけどあったら便利なものを教えるお」 


(´・ω・`)「ピンバイス、デザインナイフ、ピンセットっていったところかな」 


( ^ω^)「ピンバイスとデザインナイフは肉抜きするなら必須だお。他にも色々用途があるし、持ってて損はないお」 

193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 19:40:18.92 ID:hQVFJGMrO
('A`)「ピンバイスって高いよね?子供のころ憧れだった」 

( ^ω^)「今は100円ショップで売ってるお。刃の太さが1.5、1.8、2.0ミリのを1本ずつ買って置くといいお。あとは用途に応じて買い足すといいお」 



194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:43:06.45 ID:hQVFJGMrO

ξ#゚⊿゚)ξ「あんたさっきからやけに100円ショップ推すわね。ウチのお店が経営苦しいの知らないわけじゃないでしょ?」 


(; ^ω^)「お…ごめんお」 


/ ,' 3 「フォッフォ。いいんじゃよ、ツン」 


(´・ω・`)「ちなみにデザインナイフの刃の背で削るとボディのバリが綺麗にとれるよ。これ豆知識ね」 



196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:45:12.29 ID:hQVFJGMrO
('A`)「今日はとりあえずニッパー、ドライバーヤスリだけにしておくよ」 


(´・ω・`)「そうだね。あとは必要に応じて揃えていくといいよ」 


工具を買った俺はふたたびマシンを組み立て始めた。 
ちなみにブーンとショボンに勧められたパーツは 

・トルクチューンモーターPRO 
・超速ギヤセット 
・丸穴ボールベアリング 

・バレルタイヤ付き大径ライトウェイトホイール 

・スタビヘッドセット 

・30ミリのビスが入っているステンレスビスセット×2 


・9ミリベアリングローラー×3セット 
・FRPワイドプレート×2 

・Xシャーシ用FRP強化プレート(フロント用) 

・Xシャーシ用FRP強化プレート(リヤ用) 


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:46:45.53 ID:hQVFJGMrO
('A`)「…なんだか昔とずいぶんちがうんだな。スポンジタイヤとかワンウェイホイール、スライドダンパーとかは使わないの?」 


( ^ω^)「おっお。ブーンも復帰直後はギャップに戸惑ったお」 



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:49:33.69 ID:hQVFJGMrO
(´・ω・`)「ミニ四駆はコーナーでタイヤを滑らせて曲がるだろう?だから摩擦抵抗の高いスポンジタイヤだと大きく減速してしまうんだ。 
それにスポンジタイヤは空気の抜けた自転車のタイヤのようなものだからね。そう考えると納得いくだろう?」 


(;'A`)「な、なるほど」 

199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 19:50:14.55 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「ワンウェイホイールは効果どうこう以前に精度が悪いし重いから減速しちゃうんだお。スライドダンパーはまあ、もともと減速させるためのパーツだから速度アップは望めないお」 


(;'A`)「みんながこぞって使っていたパーツが無意味だったなんて…」 

(´・ω・`)「まったくの無意味ってわけじゃないんだよ。実際ワンウェイホイールを自分で改良して速くしてる人なんかもいるしね。スライドダンパーだってウルトラダッシュみたいな高回転モーターのマシンを安定させたり、使い道がないわけじゃない」 


( ^ω^)「おっお。結局は使う人次第だお。無意味なパーツなんてないんだお」 


('A`)「奥が深いんだな…」 


(´・ω・`)「今回君に勧めたパーツはみんな基礎的なパーツだから、基本を押さえた上で自分らしさを出していけばいいさ」 



205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 20:05:00.15 ID:hQVFJGMrO
('A`)「なるほど。…ところでボールベアリングは丸穴でいいの?六角じゃなくて」 


( ^ω^)「六角ベアリングはガタが大きすぎて使いものにならんお」 


(´・ω・`)「本当はダンガン用のHGベアリングがあるといいんだけどね。もう製造してないみたいなんだ。あと、精度でいうと620ベアリングが一番良いんだけど、これは少し高いし、使うのに工夫がいるから慣れてからにするといいよ」 



208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/07/31(木) 20:10:32.49 ID:hQVFJGMrO
('A`)「600円もして使いものにならないとか…(さっき無意味なパーツはないって言ってなかったか?)。わかった。とりあえず組んでみるよ」 

―1時間後― 

(*'A`)「できた!」 
( ^ω^)「おっお!なかなか良い出来だお」 

(´・ω・`)「うん。すごく丁寧に作られてるね」 

(*'A`)「そうかな?」 

俺の家は貧乏だったから、ミニ四駆を組み立てるときはそれは丁寧に作ったものだ。それが今でも身についているようだ。 


211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 20:14:50.65 ID:hQVFJGMrO
(´・ω・`)「ミニ四駆を作るときに一番大切なのは丁寧に作ることなんだよ。ちょっとした精度の違いが速さに出るからね。ドクオのマシンはきっと速くなるよ」 

( ^ω^)「そうだお!ブーンなんか復帰して初めて作ったとき、早く走らせたいあまりに雑に作って走行中に分解しちゃっだんだお」 


('∀`)「なんだよそれwwwwww」 


(´・ω・`)「そんなこともあったねwwww」 


( ^ω^)「おっおっお!wwwwww」 

212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 20:17:10.94 ID:hQVFJGMrO
ああ…こんな風に誰かと笑い合うなんでいつぶりだろう…。 


( ^ω^)「ドクオ、じゃあさっそく走らせてみるお」 


('A`)「うん…あ、ボディどうしよう。シールも貼ってないや」 


(´・ω・`)「ボディの塗装は明日にして、とりあえず走らせてみたらどうだい?」 


213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/31(木) 20:19:00.30 ID:hQVFJGMrO
( ^ω^)「本当は今すぐに走らせたいんだお?顔に描いてあるお!」 


(*'A`)「あ、わかった?」 


正直走らせたくてウズウズしてたんだ。ミニ四駆を走らせる前のこの高揚感はいくつになっても変わらないらしい。 



269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :すみません、規制されてました :2008/08/01(金) 02:13:56.28 ID:fOrHgKynO
(´・ω・`)「おっと、その前に慣らしをしないとね」 


('A`)「あ、そうだね。忘れてた」 


( ^ω^)「まずはギヤの慣らしだお。モーターはノーマルモーターを使うお」 

('A`)「え?ギヤとモーターの慣らしって別々にやるの?」 
(´・ω・`)「その方が双方の状態をベストにできるからね。さあ、この使いかけの電池を使うといい」 


('A`)「ありがとう…スイッチオン!」 

ギャギャ、ウィィーン…… 

スイッチを入れると、慣らし前のギヤが鳴らす、少しうるさい音が響き渡る。 



272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:23:02.41 ID:fOrHgKynO
('A`)「動いた…!」 


何年かぶりに聞くこの音、モーターの焦げるような臭い。なにもかもが懐かしい。 


(´・ω・`)「さあ、そのマシンはスプレー缶に固定して置こう。その間にモーターの慣らしもやっちゃうよ」 

そういいながらショボンは一台のシャーシを取り出した。 



273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:24:13.19 ID:fOrHgKynO
('A`)「それはなに?」 


それはホイールが1つだけつけられたシャーシだった。 


(´・ω・`)「これはワークマシンといってね、モーターの慣らしをしたり、タイヤを削ったりするときに使うシャーシなんだ」 


('A`)「わざわざ慣らし専用のシャーシなんて作るの?」 

(´・ω・`)「一台あると色々便利だしね。さあ、モーターを貸してごらん」 


そういうとショボンはトルクチューンからピニオンギヤを外し、ワークマシンにセットした。 



275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:25:55.07 ID:fOrHgKynO
シュイィィィィン… 


(´・ω・`)「これで数分間回したら、次は電池を逆に入れて逆回転させるんだ」 


('A`)「逆回転?」 


(´・ω・`)「うん。僕も理屈はよく知らないけど、両方回転させた方がいいみたいなんだ」 

……………。 


( ^ω^)「おっお!もういいんじゃないかお?」 


慣らしが終わるまでどのくらいかかっただろうか? 早く走らせたくてウズウズしていた俺には何時間にも感じられた。 

277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:28:10.60 ID:fOrHgKynO
('A`)「へへ…もうすぐ走らせてやるからな」 


ギヤの削りカスを拭き取りグリスを注す。モーターをはめ、さっき買ったアルカリ電池を入れる。 


('A`)「…スイッチオン」 

シャァァァァ……… 

慣らし前とは違い滑らかな音が響き渡る。 

(´・ω・`)「うん、いい音だ」 


( ^ω^)「ドクオ頑張るお!」 


ξ゚⊿゚)ξ「コースアウトして商品棚に突っ込ませたりしないでよね」 

/ ,' 3 「フォッフォッフォッ」 


みんなが見守る中、俺のエンペラーは… 

(*'A`)「行けえ!」 

今スタートした。 

279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:37:44.57 ID:fOrHgKynO
( ^ω^)「おっお、なかなか速いお」 


(´・ω・`)「うん、スムーズな走りだ」 


(*'A`)「思ったより速いぞ!」 

そう、それは少年時代の俺が経験したことのない速さだった。 


(*'A`)「いっけえ~!」 

俺のエンペラーは無事コーナーを曲がり、さらにスピードを増す。そして… 


( ^ω^)「おっお、次は鬼門のレーンチェンジだお」 


280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/08/01(金) 02:44:03.95 ID:fOrHgKynO
(;'A`)ゴクリ 


エンペラーはレーンチェンジに差し掛かり、そして… 


ガッシャーン! 


(;'A`)「エンペラーっ!」 


派手にコースアウトした。 


281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 02:57:45.29 ID:fOrHgKynO
……………。 


('A`)「あーあ、完走できなかったか」 


( ^ω^)「おっお、でもそれだけスピードが出てたってことだお」 


(´・ω・`)「フロントのローラーのスラスト角を調整するといいかもしれないね。それかブレーキをつけるとか」 


('A`)「よし!調整してもう一度挑戦するか!」 


ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっとあんたたち!今何時だと思ってるの?もう閉店時間とっくに過ぎてるのよ?」 


(;'A`)「え?」 


(;^ω^)「お?」 


(´・ω・`)「おや」 

287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage :2008/08/01(金) 03:43:15.22 ID:fOrHgKynO
言われて初めて気がついたが、外はもうすっかり暗くなっていた。 

('A`)「いつの間に…」 

時間を忘れて何かに熱中するなんてずいぶん久しぶりだ。 

( ^ω^)「しかたないお。今日はこのくらいにして帰るお」 

(´・ω・`)「僕たち大学生は休みが長いしね。気長にいこう」 

('A`)「う、うん。そうだね。2人は明日も来るの?」 

( ^ω^)「そのつもりだお」 

(´・ω・`)「明日は土曜日だから社会人の人達もくると思うよ。みんななかなか個性的なマシンを使うから参考にするといい」 

('A`)「社会人でミニ四駆やってる人もいるんだ…。うん、俺もまた明日来るよ」 

( ^ω^)「お、了解だお。それじゃ今日は帰るお」 

('A`)「うん。あ、今日は皆さんお世話になりました」 

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、一応お客さんだしね」 

/ ,' 3 「フォッフォ。また来なさい」 


291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 03:47:46.72 ID:fOrHgKynO
( ^ω^)「じゃあ、店長、ツン、また明日だお!」 

(´・ω・`)「ではまた明日」 

そして俺たち3人は店を出た。 


( ^ω^)「おっお、ドクオの家はどっちなんだお?」 

('A`)「…あっち」 


(´・ω・`)「じゃあ僕と同じ方向だね。途中まで一緒に帰ろう」 


( ^ω^)「ブーンは反対方向だお!じゃあ、また明日だお!」 

294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 03:59:39.89 ID:fOrHgKynO
('A`)「……」 

(´・ω・`)「……」 

(;'A`)(ヤバい、さっきまではミニ四駆のことで盛り上がってたけど、俺人と話すの苦手だし…気まずい) 

(´・ω・`)「…今日走らせてみてどうだった?」 


('A`)「…あ、う、うん、楽しかったよ」 


(´・ω・`)「復帰したてでわからないことも多いだろうけど、なんでも聞いてね」 

('A`)「あ、ありがとう。…ところで明日来る社会人の人達ってどんな人達なの?」 


(´・ω・`)「ふふ、なかなかおもしろい人達だよ。使ってるマシンも個性的だしね。サスマシンとか、痛車とか」 

('A`)(サスマシン?痛車?) 

(´・ω・`)「おっと僕はここで左だ」 

('A`)「…あ、俺は右」 

(´・ω・`)「うん、じゃあ気をつけてね。また明日」 

('A`)「う、うん。また明日」 

295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/01(金) 04:07:46.46 ID:fOrHgKynO
―自宅― 

('A`)「ふう…。疲れた」 

今日は久しぶりに人とたくさん話した。もう普段の1年分くらい話したんじゃないだろうか? 

('A`)「俺のエンペラー…」 

今日組み上げた俺のマシンを見つめる。 
(*'A`)「へへ」 

ああ、やっぱりミニ四駆はいいなあ。 

('A`)「よし、今日はもう寝よう」 

明日はどんな人達が、どんなマシンを持ってくるんだろう?ちょっと不安だけど楽しみだ。 

('A`)「おやすみ…」 

電気を消し、誰にともなく呟く。こうして俺のミニ四レーサー復帰の記念すべき第一日目は幕を閉じた。



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