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第16話

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第16話

立て続けにスカイライン、ショーティ、歌妃へと同じことをする。どこか可笑しそうにリュカが、「女同士のキスってのもなかなかそそるな」とたわけたことを呟いた。
 ティンカーベルは大きさ的に少し悩み、結局、無理やり口を開かせて舌を出させ、舐めるだけにとどめた。
 そして最後に、ディスの体から矢を抜く。その途中で何気なく、くぴぴが呟いた。
「リュカ」
あくまでも、作業を続けながら。
「これは、正しいことだと思う?」
 唐突な問いかけに、リュカは小さく嘆息しながら問いで返した。
「俺に、どういう答えを求めてる?」
 くぴぴは答えず、沈黙でリュカを促す。リュカはもう一度嘆息して、続けた。
「お前がそんなことを気にする必要はない」
リュカにしては珍しく、真剣な口調。
「あるべき姿に戻すことが、お前の役割だ。例えそれが永劫(えいごう)の繰り返しだとしても、やらなければならないんだよ。『整える者』としてな」
「いあ」
くぴぴは真剣な言葉をあっさりと無視して。
「ディスちんにやったらリオ怒るんだよねぇ」
 会話はこれっぽっちも繋がっていなかった。
「・・・意味深に聞くなよ・・・」
リュカが頭を抱える。
「真面目に答えた俺がバカみたいじゃねェか」
「やーい、ばーかばーか」
さすがにカチンときた。
 リュカは銃の引き金に手をやって、そして少し考えた。そういえば弾丸はもう残っていなかった。もし残っていたとしたら、迷わずに撃っていたことだろう。

 全ての矢が抜かれて、半ば冷たくなったディスの唇へと顔を寄せる。
「相変わらず、わいるどな顔だじょ」
きゃっきゃと、子供のように喜びながら。
「最初の子もきれーな顔してたけど、やっぱディスちんが一番かっこいーじょ」
「・・・さいで」
リュカは疲れた顔で、それだけ返した。
 そしてディスの唇へと自分のそれを近付け、妖艶に重ねる。片手でディスの髪を撫で、もう片手で自分の髪を整えながら。舌をねじ込み、動かないディスの舌へと絡め、頬を紅潮させた。
 次第に、ディスの体へと温かみが戻ってくる。舌を抜き、唇で唇を噛むような甘いキスへ移り、そしてまた舌を絡める。どこか愛しそうに。そして妖艶に優しく。
「はぁ・・・」
唇を離し、くぴぴが息をつく。ディスの体には熱が戻り、傷口もほとんどが塞がっていた。
「あーあ。これでまたリオに怒られるじょ」
「なあ、くぴぴ」
リュカが、ふと気づいたように声をあげた。
「一応、俺のこの体も死んでるんだよな」
「そだね」
「ならさ、俺にやることあるだろ?」
 何を求めているのかは即座に知れた。くぴぴは眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せ、あからさまに嫌そうな顔をする。
「どーせあんたの力で、もう回復してるんでしょ」
ふん、とそっぽを向いて。
「それに、もうメインディッシュ終わっちゃったからやんないじょ」
「ヲイ・・・」
リュカの抗議。意味は全くなかった。

「で、記憶操作はどうするんだ?」
 ロランは夢うつつで、その言葉を聞いていた。体は気だるさで動こうとしないが、しかし会話だけは聞き取れる。飛びそうになる意識をこらえて、ロランはそのやり取りを聞き続けた。
「全員やるじょ」
リュカではない、もう一つの声がそれに答える。先ほどの話を聞いていた限りでは、『くぴぴ』という名前らしい女。
「ファフニールの記憶と、それに代替(だいたい)する記憶を入れ替えるだけだじょ。十秒で終わる」
 先ほど薄目を開けたときに、目の前にいたのは女だった。ひどく美しい、まるで高貴な人形のような印象を覚える女。ロランはとにかく、言葉を一つも聞き漏らさないために意識を集中した。
 どうしても知りたい情報を、得るために。
「そこの」
リュカの言葉。
「死霊術士だけは、記憶を残しておいてくれないか?」
 死霊術士――ロラン以外にはありえまい。理由を知りたい。何故なのか。
「何で?」
丁度よく、女が聞いた。
「下手に残しておくと、後が大変だじょ」
「利用価値があるんだよ」
どこか含んだように呟く。
「それに、こいつは余程、自分の力に自信があるように思える。一つくらいは、恐怖の記憶を持たせてやってもいいじゃねェか」
「ふーん」
どうでもいい、といった様子の答え。
「ま、何があってもくぴぴは責任とらないじょ。後から言ってきても取り返しつかないからね」
「ああ」
 そこで、ロランの意識は吹き飛んだ。
 知りたかった情報――女が、何者なのかを知る前に。

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