悪役(後編) ◆tt2ShxkcFQ






    ◇    ◇    ◇


駆ける。駆ける。

一人の男が、漆黒に染まった森の中を駆ける。
黒いコートを風になびかせ、全身で風を切りながら。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードは森を駆ける。

水銀燈と約束した30分は先ほど経過してしまった。
追いつけるだろうか……いや、追いついてみせる。
息が乱れるが、速度を緩めるつもりは無い。

別行動をとるにあたり、佐山に依頼された事は次の二つ。

  • 脱出を目標にしている参加者を見つけ保護、もしくは協力すること。
  • 機械に精通している参加者を探し、確保すること。

佐山達は古城の仕掛けを確認し次第、地下に潜ると言っていた。
なんでも脱出の手がかりを探すらしい。
一度地下に潜ると何時出てこられるかは分からない。
時間に縛られるのは避けたいという佐山の意見の元、集合時間を決めることはしなかった。

その代わりに渡されたものが、今ヴァッシュのデイバックの中に入っている。
2つの小さな袋に詰められた黒い粉、黒色火薬だ。
黒色火薬は火をつけると、濛々と黒い煙を空へと吐き出し続ける。
そう、昔から使われている連絡手段、狼煙だ。



次に合う時は、どんなに早くても日が昇った後。
佐山達が煙を立てた事を確認した後、すぐさま向かえる場合は1本の煙をたて、早急にE-2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
何かしらのトラブルがあり、すぐに向かえない場合、2本の煙を立て、その時の次の放送までに集合場所へと向かう手はずになっている。

『俗に言う、反撃の狼煙になる事を祈ろう』

そう言っていた佐山の顔が脳裏へと浮かぶ。
そしてもう一つ、ヴァッシュがやらなければいけないこと。


「リヴィオ……何が起きているのかは分からないが。俺はお前を信じてるからな。
 ……そうだよな、ウルフウッド」


目の前には、数メートル先さえ見えない不気味な闇が続く。
それに負けないよう、さらに足を速める。
殺し合いを止め、全てを救い上げるために……黒い天使は一人、森をかける。



【B-2 学校近くの森/1日目 夜中】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン・マキシマム】
[状態]黒髪化、左肩に刺突による傷(再生中)、脇腹の痛み、全身に打撲
[装備]ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃 6/6 @トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式、拡声器@現実、予備弾丸28発分、佐山のメモ(三回目の放送内容について)、黒色火薬入りの袋×2
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める、今度こそ絶対に。
 0:水銀燈に追いつき、彼女を手伝う。
 1:リヴィオを見つけ、殺し合いに参加している場合は止める。
 2:仲間を募る、機会に詳しい参加者を見つける。
 3:ウルフウッドとの合流。
 4:出来れば水銀燈を佐山達のところへ連れ戻したい。
【備考】
 ※原作13巻終了後から参加
 ※サカキロベルタの名前はまだ知りません。
 ※詩音を『園崎魅音』として認識しています。詩音は死んだと思っています。
 ※口径などから、学校の死体を殺すのに使われたのはロベルタの持っていた銃ではないかと考えています。
 ※義手の隠し銃には弾が込められていません。弾丸を補給すれば使用可能です。
 ※伊波、新庄と情報交換をしました。佐山、ブレンヒルト、小鳥遊、高槻、メカポッポ、片目の男(カズマ)の情報を得ました。
 ※水銀燈の左腕が欠損していることに気づきました。

 ※佐山達との合流のため、狼煙のルールを決めました。
  1、使用するのは早くても日の出後。
  2、佐山達の狼煙を発見し次第、ヴァッシュ達が返答の狼煙を上げる。
  3、すぐ向かえる場合、1本の煙をたて早急にE-2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
  4、すぐに向かえない場合、2本の煙を立て、その時の次の放送までに集合場所へと向かう。



   ◇        ◇      ◇  


「お前、やっぱり最低の悪党だな」
「言ったはずだよゾロ君、それならば望む所だ。とね」

ゾロの嫌味にそう答えつつ、佐山は自らの荷物を纏める。

「しかし、よくもまぁ思っても無い事をべらべらと言えたもんだ。
 それでもあのバカを説得できなかったってんだから、小鳥遊も報われねぇな」
「確かに、ヴァッシュ君の強情さは私の想像を超えていたよ。
 だが、首輪解体のためにも仲間はまだ集める必要がある。
 彼が水銀燈を諦めていたとしても、恐らくは参加者探しを頼んでいたね」
「はぁ……!?じゃあお前、どっちにしろ行かせてたのかよ。本当に意味がねぇな」
「それは違うよゾロ君、出来る事ならばゼロを共に迎え撃って欲しかったというのは事実だ。
 そして何よりも、ヴァッシュ君の人となりを理解することが出来た」
「……だとしても、やっぱりお前のやり方は気にいらねぇ」
「それで構わないよ。先ほどヴァッシュ君に言ったように、私たちは共有している時間が短すぎる。
 互いを完全に信用していなければ、いざという時命を預ける事は出来ない……私たちの様にね、ゾロ君」

ゾロは眉をピクリと反応させると、佐山を睨み付ける。

「何もそこまでの信頼関係を築こうと言っている訳ではない、それは一朝一夕で作れるものではないからね。
 だが手を組むからには、ある程度は信頼できる人物でなければならない……だからこそ、多少乱暴だがあの手段を取らせて貰ったのだよ」
「本当に自分勝手な野郎だな、一歩間違えればヴァッシュの反感を買ってたぞ」
「だが、そうはならなかった」

佐山の物言いに、ゾロは大きなため息をついた。
そして自らの体の調子を確かめるかのようにグルグルと腕を回す。
悪くない感触に、一つ頷いてからゾロは口を開いた。

「で、ゼロって奴は当然迎え撃つんだよな」
「……それは、この古城の仕掛け次第といった所だね」
「おい、お前がさっき言ってたんだろうが。今ならこっちが有利だって」
「ゼロは君が考えているよりもずっと厄介な相手だよ。ここでは一手のミスが死へと直結する。
 迎撃するか撤退するか、私たちの手元にある全てのカードを確かめてから決めても遅くは無い」
「……そうかい、分かったよ大悪党。
 さっさと二人を起こして仕掛けとやらを確かめに行くぞ」

ゾロの皮肉に笑みを返してから、佐山は新庄を起こすべく歩み寄った。
眠っている新庄へと視線を向ける。
さて、どうやって起こすべきだろうか。
丸みを帯びた体が、呼吸にあわせて規則正しく上下している。
そして視線は何故か下へ、新庄の尻へと向う。
やはりマロい、このままこの尻を……



「伊波さん……」

一人で尻の鑑賞会を行っていた佐山の耳に、一つの声が響く。
床に敷き詰められた絨毯に横になり、寝息を立てている新庄・運切
その新庄の瞳からは、一筋の涙が流れて絨毯に黒いシミを作り上げていた。

『大好きな、友達』

先程の新庄の言葉が、脳裏へと浮かび上がる。
佐山の腕の中、新庄は嗚咽をあげながら伊波のことをそう指した。
体を震わせ、顔を佐山の胸に押し付けながら、新庄は泣き続けたのだ。

佐山は知っている、新庄が言うその意味を。
性別という定義を持っていない新庄が、今までどのような生活を送ってきたかを。
全てを受け入れてくれる友人が、どれ程貴重なものなのかを。
そしてそれを失った新庄が、どれほどの傷を心に負ったかを。

「……新庄君、起きたまえ」

佐山は優しく肩を揺り動かし、そういった。
新庄は薄っすらと瞳を開くと、慌てた様に目をこすってから顔を上げる。

「ん……佐山君?見張り交代の時間……?」
「いや、動かなければならなくなった。休憩はもう終わりだよ」
「え……ヴァッシュさんは?」
「それについては、移動しながら説明しよう」

そう言ってから、小鳥遊へと視線を移す。
呼びかけて体を揺すって見るが、未だ目を覚ます気配は無い。

「やはりまだ目を覚まさないか。少々強く打ち付けすぎただろうか」
「うわ……それすっごい今更だよ、佐山君」
「仕方がない、私が担いでいこう」

そう言って佐山は身を屈めると、器用に小鳥遊の体を右肩に担ぎ上げる。
右腕が痛むのか、一瞬顔をゆがめた。

「佐山君、まだ腕が治ってないんでしょ。ボクかゾロさんが……」
「配慮は無用だよ新庄君、治療符のおかげで大分楽になってきた。
 それにゼロが迫っているこの時に、戦うことが出来る新庄君やゾロ君の両腕がふさがれるのは良くない」
「え……ゼロ?」

佐山は首を傾げる新庄に一つ頷くと、デイバックを再生途中の左腕に引っ掛けて歩み始める。
背負った小鳥遊は想像していたよりも重く、佐山の右腕には鈍痛が走る。

「おい、待て佐山……やっぱりダメだ。
 さっきお前が言ったように、俺はお前を完全には信用できねぇ」
「な……ゾロさんっ!?」

首筋に冷たいものを感じて、佐山は後ろを振り向いた。
鋭い眼光のゾロが秋水を右腕にもち、佐山の首へと突きつけている。


「何を言っているのかね。ゾロ君」

慌てる様子も無く、佐山はゾロへと問いかける。

「俺は、お前のさっきの言葉がどこまで嘘なのかが分からねぇって言ってるんだ。
 小鳥遊はお前の荒治療のおかげで本当に俺らに牙を向けるかも知れねぇ。
 そうじゃなくても、俺は見てないが……伊波を助けるときの様には戦力になら無いかもしれねぇ」
「ゾロさん、やめてよっ」

新庄の懇願を無視して、ゾロは佐山に問いかける。

「お前は邪魔になれば、そいつを見捨てるつもりなのか」

ゾロは刀を握る右腕に力を込める。
ゾロは決して、ヴァッシュの様に甘い性格ではない。
倒すべき相手は倒し、命を奪うべき相手からは、躊躇わずにそれを実行するリアリストだ。
だが決して、情の薄い性格でもない。
今は亡き親友との約束を守り通そうと努力し、同じ船の仲間を大切に思う心を持っている。
自分の信念に背く行いは決してしない……そしてそれは、従っていた船長にも言えることだ。
だからこそ確かめたかった。
目の前のこの男は、決定的なところで自分との考え方が合わないのではないか。
この男に従って動くことが、果たして選ぶべき道なのか。

「答えろ佐山、お前にとって、小鳥遊はなんだ」

単なる協力者か、あるいは仲間か……それとも、ただの手駒なのか。
答えを待つゾロに、佐山は微細も変化を見せずに、日常と変わらぬというかのようにゾロに向き直る。

「確かに、小鳥遊君がこれからどうなるかは分からない。
 立ち直ってくれると思いたいが、そうはならないかもしれないね……。
 もうどうにもならなくなったとしたならば、その時は覚悟が必要かもしれない」
「さ、佐山君……」
「そうか……それがお前の答えか」

鋭い視線を佐山へ向けながら、ゾロは僅かな怒りを顔へ浮かべて刀を収める。

「だが、どんな事が起ころうとも。小鳥遊君は私にとって……」

佐山はそのまま踵を返し、扉へと歩み始める。




「私の大切な、友人だよ」



それを聞いたゾロは目を見開いた。
新庄は微笑みながら、デイバックを担いで佐山に着いていく。

「はっ……上等だ、今はお前について行ってやるよ、大悪党」

小さくそう呟くと、ゾロも自らのバックを持って歩き出した。
その顔に、僅かな笑みを浮かべながら。


【A-2 居館一階 廊下/1日目 夜中】
佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:全身打撲、左腕欠損(リヴィオの左腕)、右腕の骨に皹、全て回復中
[装備]:つけかえ手ぶくろ@ドラえもん(残り使用回数2回)、獏@終わりのクロニクル、治療符@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式×5(二食分の食事を消費)、S&W M29 6インチ 5/6@BLACK LAGOON、予備弾丸26/32
     空気クレヨン@ドラえもん 、防災用ヘルメット、 ロープ、防火服、 カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、
     ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
     クチバの伝説の進化の石(炎、雷、水)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん、
     メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONEPIECE、
     デリンジャーの残弾20、 鉄パイプ爆弾×4、治癒符2枚@終わりのクロニクル、ジャバウォックの右腕@ARMS 、伊波の首輪、ハクオロの首輪
[思考・状況]
1:古城の仕掛けを調査する。
2:ゼロへの対処を決める。
3:首輪を解体し、構造と機能を調べる。
4:地下を探索する。


※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。
※地下空間に隠し部屋がある、と推測を立てています。
※リヴィオの腕を結合したことによって体のバランスが崩れています。
 戦闘時の素早い動きに対して不安があるようです。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
※○の窪みに関しては、首輪は1つでいいという仮説を立てています。
※ハクオロのデイパックの中身はまだ確認していません。
※水銀燈に関してはヴァッシュと再合流後、検討しようと考えています
※ヴァッシュ達との合流のため、狼煙のルールを決めました。
  1、使用するのは早くても日の出後。
  2、地下の探索が終了し、合流の必要が生じた場合に狼煙を上げる。
  3、1本の煙を確認した場合は早急にE-2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
  4、2本の煙を確認した場合はその時の次の放送までに集合場所へと向かう。



【新庄・運切@終りのクロニクル】
[状態]:健康、顔に腫れもの、精神的な疲労、全身にダメージ(小)
[装備]:尊秋多学園の制服、運命のスプーン@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式(食料二食消費、水1/5消費)、コンテンダー・カスタム@Fate/Zero
     コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾26/30)
[思考・状況 ]
0:何があったの?
1:伊波さん……
2:佐山とここから脱出する
3:ブレンヒルトについてはまだ判断できない。
4:人殺しはしない。

小鳥遊宗太については、彼の性癖とかは聞いています。家庭環境は聞いていません
※新庄の肉体は5:30~6:00の間にランダムのタイミングで変化します。
 変化はほぼ一瞬、霧のような物に包まれ、変化を終えます。
 午前では女性から男性へ、午後は男性から女性へ変化します。 現在は女性。
※参戦時期は三巻以降です
※まひるに秘密を話しました。次の変化のときに近くの人に話す必要は…



ロロノア・ゾロ@ワンピース】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(中)(止血、消毒、包帯済み)、左腿に銃創(治療済み)、右肩に掠り傷、腹部に裂傷、全て回復中
[装備]八千代の刀@WORKING!!、秋水@ワンピース、雪走@ワンピース、治療符@終わりのクロニクル
[道具]支給品一式×2(食料7/12、水7/12消費)、麦わら海賊団の手配書リスト@ワンピース、迷宮探索ボール@ドラえもん、
    不明支給品(1~3)、一方通行の首輪(血がこびりついている) 、ARMSのコア(ジャバウォック)@ARMS
[思考・状況]
 1:とりあえずは佐山達と行動を共にする。
 2:ウソップとルフィの仇打ち
 3:ゲームにはのらないが、襲ってきたら斬る(強い剣士がいるなら戦ってみたい)
 4:ゼロは迎え撃ちたい。
 5:ルフィ(死体でも)、チョッパーを探す。
 6:新たな刀が欲しい
 7:首輪の秘密が気になる。
 ※参戦時期は少なくともエニエスロビー編終了(45巻)以降、スリラーバーグ編(46巻)より前です。
 ※雪走が健在であったことに疑問を抱いています。
 ※八千代の刀@WORKING!!は僅かにですが歪んでいます。



【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:全身に痛み、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)、地下の地図、伊波まひるのヘアピン@WORKING!!
[思考・状況]
1:伊波さん……
※獏の制限により、過去を見る時間は3分と長くなっています。このことに気づきかけています。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。



※A-2古城跡・主塔2階Dr.くれはの医務室に伊波のデイパック(支給品一式(食料一食消費、水1/5消費)、マジックハンド×2 @
WORKING!! )が放置されています。
※A-2古城跡・居館2階客室にカルラの大剣@うたわれるものが放置されています。
※A-2古城跡・庭園に大型レンチ@BACCANOが放置されています。





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最終更新:2013年02月26日 18:11