「あんま使えるようなもんはなかったな」
「そうですね、使えそうなモノはありませんでした」
「まー、普通は劇場なんかに身を護る武器なんて置いてる訳ないんやけどな、こんな殺し合いが行われているような場所だから期待してしもうた」
「ねーねー何の話をしてるのー」
「身を護る武器についてや。劇場内は空っぽやったからな、包丁程度は欲しかった……。
無駄にでかい石像とかオブジェのホール、舞台なんかがあったくらいや」
「劇場ですからね、そのようなモノはあるのは当然でしょう」
「ホントツイてない……どんな武器でもあってくれたら備えあれば憂いなしだったんやけどな……」
「お供え物あったらうれしいね? うんそうだよね! あまーいお菓子だったらもっといいよ!」
「……あー」
「小太郎君押さえて押さえて」
「そうですね、使えそうなモノはありませんでした」
「まー、普通は劇場なんかに身を護る武器なんて置いてる訳ないんやけどな、こんな殺し合いが行われているような場所だから期待してしもうた」
「ねーねー何の話をしてるのー」
「身を護る武器についてや。劇場内は空っぽやったからな、包丁程度は欲しかった……。
無駄にでかい石像とかオブジェのホール、舞台なんかがあったくらいや」
「劇場ですからね、そのようなモノはあるのは当然でしょう」
「ホントツイてない……どんな武器でもあってくれたら備えあれば憂いなしだったんやけどな……」
「お供え物あったらうれしいね? うんそうだよね! あまーいお菓子だったらもっといいよ!」
「……あー」
「小太郎君押さえて押さえて」
小太郎、ネリネ、くりむの三人は劇場のホールにいた。何時間か三人で劇場内を探索したのだが使えそうな武器は全く見つからなかった。
そしてもう一つ。
そしてもう一つ。
「ねえ、犬上ー」
「なんや」
「本当に殺し合いなんてあるの? 誰とも会わないじゃん!」
「すぐに他の人と会えるわけないやろ!!! 俺等みたいにいきなりな遭遇は珍しいと思うわ」
「なんや」
「本当に殺し合いなんてあるの? 誰とも会わないじゃん!」
「すぐに他の人と会えるわけないやろ!!! 俺等みたいにいきなりな遭遇は珍しいと思うわ」
あのちょっとした騒ぎの後、小太郎達は直ぐにくりむに殺し合いに付いて説明したが、開会式を全く聞いていなかったくりむはなかなか理解をしなかった。
首が爆散した凄惨な光景を見ていないのは幸だったのか、不幸だったのか。
結論として桜野くりむは依然と殺し合いについて懐疑的だったということだ。
ちなみに自己紹介の時にくりむが高校三年生だということにネリネが驚いたのはまた別の話である。
首が爆散した凄惨な光景を見ていないのは幸だったのか、不幸だったのか。
結論として桜野くりむは依然と殺し合いについて懐疑的だったということだ。
ちなみに自己紹介の時にくりむが高校三年生だということにネリネが驚いたのはまた別の話である。
「ううっ……」
「小太郎さ……ま、君、押さえて押さえて」
「ネリネ姉ちゃん、様がついてるでー。というか最初に言ったとおり様なんてつけんでええんやで」
「小太郎さ……ま、君、押さえて押さえて」
「ネリネ姉ちゃん、様がついてるでー。というか最初に言ったとおり様なんてつけんでええんやで」
小太郎が苦笑いでネリネに身体を向ける。これについてはそこまで深い話題ではない。
最初の出会いの時に小太郎様と言われて様は勘弁してくれということになって妥協案で君になったのだ。
ただそれだけのこと。
最初の出会いの時に小太郎様と言われて様は勘弁してくれということになって妥協案で君になったのだ。
ただそれだけのこと。
「ムキー! 私より年下のくせにー! 無視しちゃってさー!」
「くりむ姉ちゃん本当に年上なんか……」
「子供でも許されないこともあるんだよ!」
「俺何もしてへんで!?」
「くりむ姉ちゃん本当に年上なんか……」
「子供でも許されないこともあるんだよ!」
「俺何もしてへんで!?」
コントのようなやり取りをした一行はとりあえず外に出ようと足を踏み出した。
その時。
その時。
「随分と呑気なものだな」
ドアが蹴破られる音と共に銀色の煌きが真っ直ぐに飛んできた。
その煌きの先にいるのはくりむ。為す術も無くその銀の閃光を体に受け入れ即死するはずだったが。
その煌きの先にいるのはくりむ。為す術も無くその銀の閃光を体に受け入れ即死するはずだったが。
「おおっと、そうはいかへん」
小太郎が手を大きく振るい、閃光を叩き落とす。ガンと鈍い音がホール内に響く。
閃光の正体は何の変哲もない出刃包丁、だがこの速度で胸に当たるとほぼ即死だった。
ネリネと小太郎は閃光を放った正体をきっと睨む。
くりむは刃物がいきなり飛んできたショックからただ唖然とへたりこんでいる。
閃光の正体は何の変哲もない出刃包丁、だがこの速度で胸に当たるとほぼ即死だった。
ネリネと小太郎は閃光を放った正体をきっと睨む。
くりむは刃物がいきなり飛んできたショックからただ唖然とへたりこんでいる。
「やあ、早速だけど――――死んでくれ」
二人の眼光に対して言葉で返しながらも人影が地を駆け抜ける。
人影の正体は真田設子。武器を民家からとりつつ劇場に到着し、三人と出会ったのだ。
設子の右手に先程投擲したものと同じ出刃包丁。左手には銀色に輝く鉄パイプ。
ネリネはその二つの武器を持つ殺気にひるみその場に立ち尽くしたままだ。
くりむもへたりこんでいて態勢は整っていない。そう、ただ“一人”を除いて。
人影の正体は真田設子。武器を民家からとりつつ劇場に到着し、三人と出会ったのだ。
設子の右手に先程投擲したものと同じ出刃包丁。左手には銀色に輝く鉄パイプ。
ネリネはその二つの武器を持つ殺気にひるみその場に立ち尽くしたままだ。
くりむもへたりこんでいて態勢は整っていない。そう、ただ“一人”を除いて。
「お生憎様、まだ死ねへんのや」
鈍い金属音が鳴り続ける。音の出所は鉄パイプと出刃包丁と小太郎の両手だ。
気で強化しているのか両手に傷はついていない。
何合か打ち合って共に後方に下がる……のと同時に右手に握っていた出刃包丁を投擲。
だが当然の如く片手であっさりと弾かれる。
そして一瞬の静寂。
気で強化しているのか両手に傷はついていない。
何合か打ち合って共に後方に下がる……のと同時に右手に握っていた出刃包丁を投擲。
だが当然の如く片手であっさりと弾かれる。
そして一瞬の静寂。
「少しは骨がある奴がいたか……その齢でここまでやるとはな」
「へっ、姉ちゃんだって相当鍛えてるやないか」
「へっ、姉ちゃんだって相当鍛えてるやないか」
設子は鉄パイプを突き出すように構え、小太郎も左手を突き出すように構える。
それを見てネリネとくりむはやっと正気を取り戻した。
それを見てネリネとくりむはやっと正気を取り戻した。
「ちょ、犬上!?」
「二人とも、此処は俺がやる。だから先に行ってくれへんか」
「そんな! 危険すぎます!? 私も戦います!」
「私もだよ! 会長が逃げる訳にはいかないもん!!」
「大丈夫やって二人とも、直ぐに追いつく」
「二人とも、此処は俺がやる。だから先に行ってくれへんか」
「そんな! 危険すぎます!? 私も戦います!」
「私もだよ! 会長が逃げる訳にはいかないもん!!」
「大丈夫やって二人とも、直ぐに追いつく」
ニッと笑みを浮かべて小太郎は二人をちらっと見る。二人は両足で立ってはいるが足がブルブルと震えている。
顔は青ざめており、怯えが表面に出ている。こんな有様ではこの強敵とは戦いにすらならないと小太郎は瞬時に判断した。
故に、自分一人で戦った方が一番安全で勝率が上がると確信したのだ。
顔は青ざめており、怯えが表面に出ている。こんな有様ではこの強敵とは戦いにすらならないと小太郎は瞬時に判断した。
故に、自分一人で戦った方が一番安全で勝率が上がると確信したのだ。
「行けっ!」
その咆哮と同時に小太郎が前に駆け出した。まずは二人を安全に脱出させるためにホールの出口に陣取っている設子を引き離す。
設子が小太郎の陽動に気を取られている内に二人は戸惑いながらも出口へと急いで走っていった。
彼女達に危害が加わらないよう牽制の掌底を幾つか放つ。設子はそれをひょいひょいと紙のように避ける、最も小太郎が当てる気がそこまでないので躱すのは容易。
設子が小太郎の陽動に気を取られている内に二人は戸惑いながらも出口へと急いで走っていった。
彼女達に危害が加わらないよう牽制の掌底を幾つか放つ。設子はそれをひょいひょいと紙のように避ける、最も小太郎が当てる気がそこまでないので躱すのは容易。
「追わんのか? てっきり、逃がさん! とかいって意地でも阻止してくるかと思ったわ」
「ふん、どうせお前が意地でも阻止するんだろ、動くだけ無駄だ」
「ふん、どうせお前が意地でも阻止するんだろ、動くだけ無駄だ」
二人が出ていった後、彼らは再び距離を取り最初と同じ態勢で互いを見つめ合う。
張り詰めた空間。ピリピリとした殺気がホールに充満していく。
張り詰めた空間。ピリピリとした殺気がホールに充満していく。
「私と一人でやるか……あの女共が使えないとはいえ舐められたものだな」
「俺は男やからな。女性を護るのは当然のことや」
「それはそれは、小さな子供でも心だけは紳士を気取る一人前か?」
「本当ならアンタもその対象なんやけどな。それにあんま戦いたくないねん、女と。殴ったり蹴ったりいややしな。出来ればお引き取りしてくれへんか?」
「俺は男やからな。女性を護るのは当然のことや」
「それはそれは、小さな子供でも心だけは紳士を気取る一人前か?」
「本当ならアンタもその対象なんやけどな。それにあんま戦いたくないねん、女と。殴ったり蹴ったりいややしな。出来ればお引き取りしてくれへんか?」
瞬間。
「その口を閉じろよ――小僧」
鉄パイプが空を撫でる。だが、設子の振り下ろしによりグチュっと潰れて肉塊になるはずの小太郎の“肉体”は。
「見え見えや」
いない。鉄パイプが薙いだのは残像。本体は右斜めに跳躍することで回避。
無論、回避するだけではない、すれ違いざまに首筋に手刀を一閃。
これには一撃でケリを付けなおかつなるべく傷つけずにする配慮がふんだんに含まれている。
無論、回避するだけではない、すれ違いざまに首筋に手刀を一閃。
これには一撃でケリを付けなおかつなるべく傷つけずにする配慮がふんだんに含まれている。
「ああ――お前がな」
鉄パイプを下段から上段へと戻し手刀が首筋を刈る前に受け流す。そして空いた手で掌底を叩き込む。
まともに受けた小太郎は後ろに蹈鞴を踏むがふんばりお返しとばかりに回し蹴りを放つ。
設子はその蹴りを鉄パイプで防ぎ、今度は顎目がけて拳を振るうがすでに間合いからは退却しており空を切るのみ。
そして最初と同じように膠着した空間が生み出された。
まともに受けた小太郎は後ろに蹈鞴を踏むがふんばりお返しとばかりに回し蹴りを放つ。
設子はその蹴りを鉄パイプで防ぎ、今度は顎目がけて拳を振るうがすでに間合いからは退却しており空を切るのみ。
そして最初と同じように膠着した空間が生み出された。
「……っ。もうこれは使えないな」
設子の持っている鉄パイプは蹴りを受けた所が今にも折れそうなぐらいに曲がっていた。
これを武器として使うことは出来ないだろう。
使えない武器などただのお荷物だ、そう言わんばかりに遠くへ鉄パイプを投げ捨てた。
これを武器として使うことは出来ないだろう。
使えない武器などただのお荷物だ、そう言わんばかりに遠くへ鉄パイプを投げ捨てた。
「ふむ、お前――私と同じ匂いがするな、とびっきりの血の匂いが」
唐突に出されたその言葉は小太郎の過去の核心をついていた。頭の中に血に濡れた幼少期の思い出が頭の中をフラッシュバックする。
それでも顔色ひとつ変えずに言葉の代わりに苦笑で返答した。
それでも顔色ひとつ変えずに言葉の代わりに苦笑で返答した。
「否定はしない、か。私と同程度の実力を持つ年下の同業者に会うとはな、世界は広い」
「……そこまでバレてちゃ隠しても仕方ないか、確かに昔の俺は姉ちゃんと同じような職業やった、フリーの雇われみたいなもんやったけどな」
「……そこまでバレてちゃ隠しても仕方ないか、確かに昔の俺は姉ちゃんと同じような職業やった、フリーの雇われみたいなもんやったけどな」
観念したのか昔の事を小太郎はサラッと言った。ただ静かに、何の感慨もない風に。
小太郎にとっては特に笑うところも泣くところも無い日常だった過去を。
小太郎にとっては特に笑うところも泣くところも無い日常だった過去を。
「なあ、姉ちゃん」
「なんだ」
「何でこんな殺し合いに乗ったん?」
「ふっ、何を聞くかと思えばそんなことか。それを聞いてどうするつもりだ?」
「うーん、姉ちゃんレベルの使い手がなんで乗ったか気になっただけや。
俺からすると姉ちゃんは人を殺すのが楽しいってジャンキーには見えないしな」
「なんだ」
「何でこんな殺し合いに乗ったん?」
「ふっ、何を聞くかと思えばそんなことか。それを聞いてどうするつもりだ?」
「うーん、姉ちゃんレベルの使い手がなんで乗ったか気になっただけや。
俺からすると姉ちゃんは人を殺すのが楽しいってジャンキーには見えないしな」
それはほんの少しの間戦った小太郎でもわかった。現に逃がした二人を無理にでも殺そうとしなかった。
自分と同じバトルジャンキーの気は少しはあるとは思いはしたが、それは些細なことだ。
本題は真田設子は説得の余地がある人物だということだ。
自分と同じバトルジャンキーの気は少しはあるとは思いはしたが、それは些細なことだ。
本題は真田設子は説得の余地がある人物だということだ。
「そうだな、強いていえば優勝して組織に戻るってところかな、その過程で強者と戦うのも悪くないって思ったぐらいさ」
サラリと言葉を放つ。それは単純ではあるが、暗殺者として組織に身を置く設子にとっては生きる原理とさえ言える。
そうやって生きる以外に生き方を知らないから。
普通に生きる? それはどうやって? 幼い頃からずっと殺すことしかやってこなかった自分にはわかるわけがない。
殺し合いに立ち向かう? そんなことより皆殺しでもした方が自分にとっては楽だ。
そうやって生きる以外に生き方を知らないから。
普通に生きる? それはどうやって? 幼い頃からずっと殺すことしかやってこなかった自分にはわかるわけがない。
殺し合いに立ち向かう? そんなことより皆殺しでもした方が自分にとっては楽だ。
「わからんこともない……別に人を殺すことを否定するつもりはないしな。
さっきも言ったとおり俺も色々と危ない仕事もやってた経歴がある、自分の力だけが頼りで帰る場所なんてなかった。
それに任務の過程で人を殺したこともある、老若男女問わずな」
「それじゃあお前こそなぜ乗らなかった、元同業。私と同じように殺すのに躊躇はなく、生きるために殺し合いに乗りはしなかったのか?」
「そんなこと出来へんわ。此処には俺を、野垂れ死に寸前の俺を拾ってくれた大切な人がおるからな。
その人、馬鹿みたいにお人好しでな……敵だと思って傷つけた俺を笑顔で抱きしめてくれたんや。
傷が残るかもしれへんのに笑って気にしないでって言ってくれた!」
さっきも言ったとおり俺も色々と危ない仕事もやってた経歴がある、自分の力だけが頼りで帰る場所なんてなかった。
それに任務の過程で人を殺したこともある、老若男女問わずな」
「それじゃあお前こそなぜ乗らなかった、元同業。私と同じように殺すのに躊躇はなく、生きるために殺し合いに乗りはしなかったのか?」
「そんなこと出来へんわ。此処には俺を、野垂れ死に寸前の俺を拾ってくれた大切な人がおるからな。
その人、馬鹿みたいにお人好しでな……敵だと思って傷つけた俺を笑顔で抱きしめてくれたんや。
傷が残るかもしれへんのに笑って気にしないでって言ってくれた!」
次第に大きくなっていく声は設子の耳に確かに響いた。
それが嘘偽りのないはっきりとした意志だということも確認するまでもなく。
そして設子は思った。こいつは救われた自分自身のようだと。
幼少の頃から殺しに携わってきた。組織に所属しているかしていないかの違いはあるが大きな違いとしてはならない。
ずっと一人ぼっちだった。温もりなんて知らずに力しか頼るものがなく孤独に生きてきた。
だが、大きな違いがあるとすれば。
それが嘘偽りのないはっきりとした意志だということも確認するまでもなく。
そして設子は思った。こいつは救われた自分自身のようだと。
幼少の頃から殺しに携わってきた。組織に所属しているかしていないかの違いはあるが大きな違いとしてはならない。
ずっと一人ぼっちだった。温もりなんて知らずに力しか頼るものがなく孤独に生きてきた。
だが、大きな違いがあるとすれば。
「そして俺の帰る場所ができた」
小太郎には“まとも”な居場所ができたということ。
殺しなんて無理にしなくてもいい、自分の持つ力を人を護るために使ってもいいそんな居場所が。
殺しなんて無理にしなくてもいい、自分の持つ力を人を護るために使ってもいいそんな居場所が。
「こんな素性も知れへん俺を――家族みたいに扱ってくれたんや……!」
家族。生まれた時にはどちらにもあったのだろう。だが、それは最初から終わっていた。
親から捨てられて廃棄処分の烙印を押された。それでも。二人は地に這いつくばってでも生き抜いた。
親から捨てられて廃棄処分の烙印を押された。それでも。二人は地に這いつくばってでも生き抜いた。
「俺に優しくしてくれた恩人を絶対に護ってみせる……! そして元の日常に戻す!
俺が殺し合いに乗らない理由は、それだけで十分なんや」
俺が殺し合いに乗らない理由は、それだけで十分なんや」
どこでこの少年と道を違えたのだろう。心中で呟くが答えは返ってくるはずもない。
単純に考えて運が良かった、それ以外の何物でもない。
単純に考えて運が良かった、それ以外の何物でもない。
「……まあいい。お前がどんな覚悟でいようが私がこのゲームに乗るということに変わりはない。
私の居場所は、組織にしかないんだから」
「そういう組織は末端は平気で切り捨てるで? 俺はそこまでしてあんたは戻る価値はないと思うんやけどな。
情なんてないで、そういう組織には」
「黙れっ……! それ以外に私には道はもうないんだ! 安易に引き返せはしない……」
私の居場所は、組織にしかないんだから」
「そういう組織は末端は平気で切り捨てるで? 俺はそこまでしてあんたは戻る価値はないと思うんやけどな。
情なんてないで、そういう組織には」
「黙れっ……! それ以外に私には道はもうないんだ! 安易に引き返せはしない……」
そうして設子はデイバックから新たな出刃包丁を取り出し順手に持ち、親指を伸ばして背につける。
目の前の敵を排除するために。迷いは、ないとはいえない。
目の前の敵を排除するために。迷いは、ないとはいえない。
(殺すしか能がない自分が手をつないで仲間を作る? みんな一緒に脱出しよう?
無理なんだ、もう。この血に濡れた手を繋いでくれる人などいない。私は、全員殺して、ここから脱出する!)
無理なんだ、もう。この血に濡れた手を繋いでくれる人などいない。私は、全員殺して、ここから脱出する!)
小太郎も言葉では分かり合えないと判断したのか再び構えを取る。
数分前までは明るい声が響いていたホールには今や殺気が充満している。
瞬間、静から動へ。音無き空間が破裂する。
タンッと硬い音が床を響かせた。
小太郎の拳が、設子の持つ出刃包丁が。相手を薙ごうと勢い良く互いの身体に突き刺さろうとした時。
数分前までは明るい声が響いていたホールには今や殺気が充満している。
瞬間、静から動へ。音無き空間が破裂する。
タンッと硬い音が床を響かせた。
小太郎の拳が、設子の持つ出刃包丁が。相手を薙ごうと勢い良く互いの身体に突き刺さろうとした時。
「ひゃはっ」
微かな笑い声がホールの出入口から流れた。二人は声の元に片目を向ける。
「みーつけたぁー!」
笑い混じりの怒声と共に銃弾の群れが二人を蹂躙しようと空を飛翔する。
発生源にいるのは赤髪の少年、長沢勇治。
最初の戦闘で逃げた設子をもう一度殺そうと追いかけてきたのである。
発生源にいるのは赤髪の少年、長沢勇治。
最初の戦闘で逃げた設子をもう一度殺そうと追いかけてきたのである。
(回避っ! 間に合わんか……くそっ、こんな不意打ちで殺られるなんて!)
コンマ一秒以下の状況で設子の頭は迫りつつ有る弾丸の回避方法を導こうとフル回転するが解答はなし。
このまま身体を貫かれて血飛沫に崩れ落ちる他のヴィジョンが思いつかない。
絶望。諦め。負の感情が設子を支配しようとした時。
このまま身体を貫かれて血飛沫に崩れ落ちる他のヴィジョンが思いつかない。
絶望。諦め。負の感情が設子を支配しようとした時。
「っらぁ!」
小太郎の怒号に次いで二人の足元の床が爆ぜた。
脚に貯めていた気を瞬間的に外に流すことで爆発を起こしたのだ。
それの弊害で起こった強い風に二人は吹き飛び辛うじて銃弾が届く前に躱すことができた。
だが、苦難はまだ終わったわけではない。
勇治は弾切れになった突撃銃のリロードを行って直ぐにでも銃撃を再開する。
この隙に勇治の元まで攻め込めばいいのだが、爆風で態勢を崩している、相手との距離が長過ぎる故に不可能。
隠れることが出来る障害物もない。
このまま二人揃って狩られるのを待つだけか、と設子は思った。
脚に貯めていた気を瞬間的に外に流すことで爆発を起こしたのだ。
それの弊害で起こった強い風に二人は吹き飛び辛うじて銃弾が届く前に躱すことができた。
だが、苦難はまだ終わったわけではない。
勇治は弾切れになった突撃銃のリロードを行って直ぐにでも銃撃を再開する。
この隙に勇治の元まで攻め込めばいいのだが、爆風で態勢を崩している、相手との距離が長過ぎる故に不可能。
隠れることが出来る障害物もない。
このまま二人揃って狩られるのを待つだけか、と設子は思った。
「けっ……あんま逃げたくはないんやけどな!」
が、実際は違った。
その言葉と同時に小太郎は地面を強く踏みしめた。
跳躍。軽い音と同時に跳ぶ。
その様は弾丸と言っても差し支えない。
そのまま倒れこんでいる設子の元へ向かう。
その言葉と同時に小太郎は地面を強く踏みしめた。
跳躍。軽い音と同時に跳ぶ。
その様は弾丸と言っても差し支えない。
そのまま倒れこんでいる設子の元へ向かう。
(……はっ、どっちにしろ殺られるのか。こんな早くに退場とは、な)
来るべき終焉に設子はどこか冷静だった。
つまらない人生だった。ただ、組織の道具として生きて、何処ともわからない島で野垂れ死に。
なかなかに最低な結末じゃないか、そう嘲り笑う。
さあ、黄泉の世界に逝こう、目を閉じた。
つまらない人生だった。ただ、組織の道具として生きて、何処ともわからない島で野垂れ死に。
なかなかに最低な結末じゃないか、そう嘲り笑う。
さあ、黄泉の世界に逝こう、目を閉じた。
「……?」
だが。
「ったく、何ほうけてんのや、姉ちゃん」
「……ぁ」
「……ぁ」
五体満足、設子の身体に怪我はなかった。爆風で全身打ち身の状態ではあるが、小太郎に新たに傷をつけられたものはない。
それどころか設子は今、小太郎に抱えられている。
両手は腰に当てられ、体は横に。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
設子はこの小さな身体にどれほどの力が備わっているのだろうかと戯言じみた感想をぼんやりと流すがすぐに正気を取り戻してあたふたとした。
それどころか設子は今、小太郎に抱えられている。
両手は腰に当てられ、体は横に。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
設子はこの小さな身体にどれほどの力が備わっているのだろうかと戯言じみた感想をぼんやりと流すがすぐに正気を取り戻してあたふたとした。
「お前っ、な、何を! それにっ」
「ただ、俺はあんな形で姉ちゃんを死なせたくなかっただけや。姉ちゃんだってあんな終わり方嫌やろ?」
「ただ、俺はあんな形で姉ちゃんを死なせたくなかっただけや。姉ちゃんだってあんな終わり方嫌やろ?」
小太郎はそのまま出口に向かうのではなく、右に位置する窓目がけて疾走する。
当然、出口には勇治が陣取っているからだ。設子を抱えた今突っ込むのは無謀。
加えて小太郎達がいるホールには身を隠す障害物がない。
大きな階段が中央に鎮座しているのみであり突撃銃を相手に取るには不利な場だ。
それなら、脇目もふらずに逃げてしまうのが一番。
窓ガラスを破ってそのまま逃げ延びようと言う考えなのだろうが勇治はそれを逃さない。
弾丸の装填をし終わった突撃銃を小太郎に向ける。
当然、出口には勇治が陣取っているからだ。設子を抱えた今突っ込むのは無謀。
加えて小太郎達がいるホールには身を隠す障害物がない。
大きな階段が中央に鎮座しているのみであり突撃銃を相手に取るには不利な場だ。
それなら、脇目もふらずに逃げてしまうのが一番。
窓ガラスを破ってそのまま逃げ延びようと言う考えなのだろうが勇治はそれを逃さない。
弾丸の装填をし終わった突撃銃を小太郎に向ける。
「はっはーーー!!!! 血みどろになって吹き飛びなぁっ!!」
「遅ぇ――っ!」
「遅ぇ――っ!」
再び弾丸の雨が降り注いだ。床や壁が点々と穴を開けていく。
しかし、その中には小太郎はいない。
しかし、その中には小太郎はいない。
「瞬動っ、二連!」
残像が残る程の加速。弾丸が穿つのは小太郎の残像のみ。本物は加速により既に窓の近くにまで到達している。
小太郎は片手を設子の身体から離して、窓に向ける。
手には気を。微弱でも十分。何も、壁に穴を開けようというわけではないのだ。
ガラスを割るぐらいの力があればいい。
小太郎は片手を設子の身体から離して、窓に向ける。
手には気を。微弱でも十分。何も、壁に穴を開けようというわけではないのだ。
ガラスを割るぐらいの力があればいい。
「空牙っ!」
手から放たれた気弾が窓ガラスを枠ごとぶち破る。そのまま設子を抱えながら窓から外へと飛び出した。
勇治は慌てて窓に銃口を向けるが既に遅し。小太郎達はもう窓から外へ逃亡している。
挙句の果てに手がブレてあさっての方向へ銃弾が飛んでいく始末だ、ふんだりけったりである。
勇治は慌てて窓に銃口を向けるが既に遅し。小太郎達はもう窓から外へ逃亡している。
挙句の果てに手がブレてあさっての方向へ銃弾が飛んでいく始末だ、ふんだりけったりである。
「くそっ、くそおおぉぉおおぉおっっ!!! 何なんだよ、殺させろよ、早くっ!!!
これは人を殺せるゲームなんだろ? 何で殺せないんだよっ、ああああああああああああああっっっ!」
これは人を殺せるゲームなんだろ? 何で殺せないんだよっ、ああああああああああああああっっっ!」
突撃銃という圧倒的なアドバンテージを持ちながら獲物を安々と逃がした事に加えてここまでの長距離の移動。
人を殺したいのに殺せないイライラ。
勇治の頭の中は火山が吹き出してマグマで煮えたぎっているといっていいぐらいに切れていた。
殺人衝動だけが膨らんでいき、結果が伴わない。開始から数時間経った現在、キルカウントがゼロだという屈辱も拍車を掛ける。
人を殺したいのに殺せないイライラ。
勇治の頭の中は火山が吹き出してマグマで煮えたぎっているといっていいぐらいに切れていた。
殺人衝動だけが膨らんでいき、結果が伴わない。開始から数時間経った現在、キルカウントがゼロだという屈辱も拍車を掛ける。
「僕はっ……強いんだ! 誰が来ようと全部、殺せるんだよ! ふざけるな、ふざけるなぁっ!
どいつもこいつもバカにしやがって、みんな殺す、殺してやるぅっ!!!!!」
どいつもこいつもバカにしやがって、みんな殺す、殺してやるぅっ!!!!!」
狂気は収まることを知らず、ただ加速していく。
この箱庭の中で少年は、奪い尽くす。
純粋に、人を殺すという願いのために。
この箱庭の中で少年は、奪い尽くす。
純粋に、人を殺すという願いのために。
◆ ◆ ◆
「殺してやるぅっ!!!!! だってよ、おお怖い怖い。最近のガキってのはこうも切れやすいんだろうかね」
「旦那もそんな年取ってないでしょうに。しかし、兄貴の爪の垢でも飲ませてやりたいぜ、あのガキ」
「旦那もそんな年取ってないでしょうに。しかし、兄貴の爪の垢でも飲ませてやりたいぜ、あのガキ」
ホール内で勇治が激昂しているのをこっそりと手塚義光とアルベール・カモミールは聞き耳を立てていた。
義光は武器を探すついでに誰か他の参加者と接触するために地図にランドマークとして載っている劇場を目指してここまで進んできた。
そして着いたらこの騒ぎである。
手持ちには生憎と途中で寄った家に置いてあった包丁ぐらいしか身を守れる武器はない。
故に、この争いに介入しなかった。今も、足早に劇場から離れている。
突撃銃相手に刃物片手に突入する勇気はいくら義光といえども無謀。
さらには、こんな早くに蜂の巣になるのは洒落にならないと思ったのも理由の一つとしてあげられる。
義光は武器を探すついでに誰か他の参加者と接触するために地図にランドマークとして載っている劇場を目指してここまで進んできた。
そして着いたらこの騒ぎである。
手持ちには生憎と途中で寄った家に置いてあった包丁ぐらいしか身を守れる武器はない。
故に、この争いに介入しなかった。今も、足早に劇場から離れている。
突撃銃相手に刃物片手に突入する勇気はいくら義光といえども無謀。
さらには、こんな早くに蜂の巣になるのは洒落にならないと思ったのも理由の一つとしてあげられる。
「ったく、あのガキがあんな代物持ってるってのにこっちは刃物が何本かとイタチ一匹かよ、ついてねえ」
「オコジョっすよ、旦那ぁ!」
「悪い悪い、そういえばそうだったな、忘れてたわ」
「絶対わざとっすよね……」
「オコジョっすよ、旦那ぁ!」
「悪い悪い、そういえばそうだったな、忘れてたわ」
「絶対わざとっすよね……」
はぁと溜息を吐くカモに対して義光は口を三ヶ月に曲げてくつくつと笑う。
今の危機的状況を楽しむかの如く。最も、それを大っぴらに声には出さないが。
今の危機的状況を楽しむかの如く。最も、それを大っぴらに声には出さないが。
「しかし旦那は何で笑ってるんだよ」
「あぁ? んなこと聞いて何になる」
「いや、普通の人ならぎゃー怖い、とか死にたくない死にたくない! とかもっとわめき散らすと思うんすよね」
「あぁ? んなこと聞いて何になる」
「いや、普通の人ならぎゃー怖い、とか死にたくない死にたくない! とかもっとわめき散らすと思うんすよね」
ネギパーティのような異能の世界に関わっている学生、兄貴と慕うネギ・スプリングフィールドのように魔法使いもこの島にはいるのかもしれない。
だが、カモは最初の首輪爆破で吐き気をもよおして倒れたり、顔を背けたりするなど一般人らしい反応がほとんどだったと聞いた。
この島に集められているのは学生の大半が一般人だということだ。荒事に慣れている参加者はそこまで多く無いということだ。
今カモと行動を共にしている義光は微妙な立ち位置だ。
荒事には慣れて日常茶飯事といった雰囲気を纏ってるとはいえ異能の力は持っていない。
だが、カモは最初の首輪爆破で吐き気をもよおして倒れたり、顔を背けたりするなど一般人らしい反応がほとんどだったと聞いた。
この島に集められているのは学生の大半が一般人だということだ。荒事に慣れている参加者はそこまで多く無いということだ。
今カモと行動を共にしている義光は微妙な立ち位置だ。
荒事には慣れて日常茶飯事といった雰囲気を纏ってるとはいえ異能の力は持っていない。
「こんなくそったれた馬鹿騒ぎ楽しまないでどうするよ、カモ。
ただ、ぐずぐずと落ち込んで死ぬのを待っているほどできた人間じゃねえんだ、俺は」
「旦那はこの殺し合いが楽しいんで?」
「ああ、ぞくぞくするぐらいにな。なんていったってバトル・ロワイアルだぜ?
普通ならこんなの一生に一度もねえよ」
「そりゃあこんなのが日常に溢れていたら嫌すぎっすよ。どんだけ世紀末なんすか」
ただ、ぐずぐずと落ち込んで死ぬのを待っているほどできた人間じゃねえんだ、俺は」
「旦那はこの殺し合いが楽しいんで?」
「ああ、ぞくぞくするぐらいにな。なんていったってバトル・ロワイアルだぜ?
普通ならこんなの一生に一度もねえよ」
「そりゃあこんなのが日常に溢れていたら嫌すぎっすよ。どんだけ世紀末なんすか」
カモは頭の中に浮かんだ殺し合いが日常的にある妄想を断ち切る。
街中の至る所が血濡れている、想像しただけでゾッとした。
街中の至る所が血濡れている、想像しただけでゾッとした。
「まあ、多少のリスクを負ってこのゲームに望む気だが死ぬ気はないぜ?
俺としてもこんな若くして幸薄く死ぬのはゴメンだ」
「ははっ、自由気侭に生きている旦那が幸薄いとか冗談キツイっすよ」
「うるせえ、首締めるぞ」
「いやー、旦那ほど薄幸なのも俺っちは見たことがねえ! よっ、薄幸男!」
「お前ホント変わり見早いな……」
俺としてもこんな若くして幸薄く死ぬのはゴメンだ」
「ははっ、自由気侭に生きている旦那が幸薄いとか冗談キツイっすよ」
「うるせえ、首締めるぞ」
「いやー、旦那ほど薄幸なのも俺っちは見たことがねえ! よっ、薄幸男!」
「お前ホント変わり見早いな……」
義光は呆れ顔で肩に乗るカモに向けてデコピンをして地面に落とす。
うおっ何するんでぇ! と声が聞こえたが無視。
うおっ何するんでぇ! と声が聞こえたが無視。
「それだけじゃねえさ。ここには未知の領域にあるものがわんさかとある、そんな気が俺にはするんだ」
「そういや、旦那は魔法を知らないんでしたね」
「当たり前だ、んなファンタジーなもんこの年で信じてるわけねえだろ」
「それもそうっすけど……でもあっさりと信じたじゃないっすか」
「その確定的な証拠はお前だ、カモ」
「へっ、俺っちが?」
「そういや、旦那は魔法を知らないんでしたね」
「当たり前だ、んなファンタジーなもんこの年で信じてるわけねえだろ」
「それもそうっすけど……でもあっさりと信じたじゃないっすか」
「その確定的な証拠はお前だ、カモ」
「へっ、俺っちが?」
虚を突かれたようにカモは目をぱちくりとする。
「喋る動物は常識的じゃねえ」
「あー……ですよねー」
「あー……ですよねー」
喋るオコジョ、これが常識として存在している狂った世の中で義光は生きてきたわけではない。
「まあ、それ含めてだ。楽しませてもらうぜ?」
「旦那には参るぜ、どこからその気概は出てるんだか」
「ばーか、楽しいの感情に理屈を求めてんじゃねえよ。人間はロボットじゃねえんだ。
楽しいなら楽しい、むかつくならむかつく、悲しいなら悲しいでいいだろうが」
「旦那には参るぜ、どこからその気概は出てるんだか」
「ばーか、楽しいの感情に理屈を求めてんじゃねえよ。人間はロボットじゃねえんだ。
楽しいなら楽しい、むかつくならむかつく、悲しいなら悲しいでいいだろうが」
これ以上話していても埒があかない思ったのか義光は会話を切り上げる。
「さてと、あの逃げた奴らは乗ってんだろうかね?」
「犬耳つけた野郎の方は知り合いっす、犬上小太郎って奴。あの女を助けていたことから乗ってはいないと思うんすけど。
助けられた女は、わかんないっすね。というか俺っち達が到着したときには突撃銃を手にヒステリーってたとこだし」
「はん、今から追いかけるっていってももう遠くまで行ってるかもしれないしな。
あいつら、消えるようにいなくなりやがった」
「犬耳つけた野郎の方は知り合いっす、犬上小太郎って奴。あの女を助けていたことから乗ってはいないと思うんすけど。
助けられた女は、わかんないっすね。というか俺っち達が到着したときには突撃銃を手にヒステリーってたとこだし」
「はん、今から追いかけるっていってももう遠くまで行ってるかもしれないしな。
あいつら、消えるようにいなくなりやがった」
義光は舌を鳴らして足元にあった小石を蹴り上げることで軽い苛立ちを解消する。
最初から追いかけるつもりはなかったからそれほどの損失とはいえない。
追いつけるならできればという気楽なものであったというのも要因の一つだが。
ともかく、これだけ離されると追いつけるわけがないと早々に決断をした。
最初から追いかけるつもりはなかったからそれほどの損失とはいえない。
追いつけるならできればという気楽なものであったというのも要因の一つだが。
ともかく、これだけ離されると追いつけるわけがないと早々に決断をした。
「とりあえずはあのガキだ。こっちもあれに対応できる武器が手に入るまでは守りに徹するしかねえな」
「それが一番っすねえ」
「それが一番っすねえ」
だが、義光達は気付かなかった。石の地面にある赤い点模様に。点々と続く血の跡に。
◆ ◆ ◆
「……ここまで、来れば大丈夫、やろ」
「お前、その怪我……!」
「お前、その怪我……!」
劇場からそれなりの距離が離れた路地で二人は倒れこむように座った。
そしてその時初めて設子は気づいた。
小太郎の腹からはポタポタと血が滴り落ちていることに。
ふと傷口を垣間見ると学生服の中に着ていたTシャツは赤で染まっていた。
そしてその時初めて設子は気づいた。
小太郎の腹からはポタポタと血が滴り落ちていることに。
ふと傷口を垣間見ると学生服の中に着ていたTシャツは赤で染まっていた。
「掠り傷や、問題あらへん」
「怪我については今は言及しない……それよりも聞きたいことがある。
なぜ私を助けた。お前一人助かるならそんな怪我負わなかったはずだ」
「怪我については今は言及しない……それよりも聞きたいことがある。
なぜ私を助けた。お前一人助かるならそんな怪我負わなかったはずだ」
本人の言う通り、重傷ではないが決して軽い怪我ではなかった。
だが、そんなことよりも、と設子は小太郎に問いかけた。殺そうとした敵に助けられた。
暗殺者として孤独に生きてきた自分のプライドを粉々に砕かれる行為が何よりも設子は気に入らなかった。
だが、そんなことよりも、と設子は小太郎に問いかけた。殺そうとした敵に助けられた。
暗殺者として孤独に生きてきた自分のプライドを粉々に砕かれる行為が何よりも設子は気に入らなかった。
「姉ちゃんが気にすることあらへんよ。俺がやりたいからそうした、ただそれだけや」
「私が気にする、生き恥をさらすくらいなら……! 死んだ方がましだ」
「私が気にする、生き恥をさらすくらいなら……! 死んだ方がましだ」
苦虫をかみしめたかのように渋い顔で設子は吐き捨てた。
情けをかけられたという事実が重くのしかかる。別に死にたがりというわけではない。
実質助けられていなければあの場で屍となっていた可能性の方が高かった。
情けをかけられたという事実が重くのしかかる。別に死にたがりというわけではない。
実質助けられていなければあの場で屍となっていた可能性の方が高かった。
「なあ、姉ちゃん」
「何だ、助けてやった代わりに見返りでも求めるのか? ふん、身体目的か」
「アホか、そんな馬鹿なことするか」
「何だ、助けてやった代わりに見返りでも求めるのか? ふん、身体目的か」
「アホか、そんな馬鹿なことするか」
阿呆らしいとはっと小太郎は鼻で笑った。
そんな風に余裕を装っているが実際のところは痛みで顔を歪めていてもおかしくはない状態なのだ。
軽口を交わしている間にも出血は収まらない一方だ。
さすがにまずいとでも思ったのか小太郎は自分の着ているTシャツを脱いで細く引きちぎって包帯替わりとする。
そんな風に余裕を装っているが実際のところは痛みで顔を歪めていてもおかしくはない状態なのだ。
軽口を交わしている間にも出血は収まらない一方だ。
さすがにまずいとでも思ったのか小太郎は自分の着ているTシャツを脱いで細く引きちぎって包帯替わりとする。
「……今のお前は手負いの身だ。もう一度戦えば殺すことだってできる」
「やれるもんなら、な。そう簡単にくたばらへん。最後の最後まで俺は、あがき続けてやる」
「やれるもんなら、な。そう簡単にくたばらへん。最後の最後まで俺は、あがき続けてやる」
互いに無言。黙々と小太郎はケガの治療をして設子はそれを黙って見たままである。
何故自分を助けた? 見返りも求めずに?
いくら考えてもその答えは見つからなかった。
だから。
何故自分を助けた? 見返りも求めずに?
いくら考えてもその答えは見つからなかった。
だから。
「助けられたことは不本意だ、だが事実でもある」
「そうかよ」
「だが借りができた。借りたままは私の癪に障る」
「はぁ?」
「ともかくだ、借りを返すまではお前と行動を共にする。後、お前が私を助けた理由を知りたい。
なぜ、私のような敵を助けたのか? 理解できるまではお前とは行動を別にはしない。
そして、その怪我が快方に向かったらもう一度私と戦え。今度は邪魔の入らないようにだ」
「そうかよ」
「だが借りができた。借りたままは私の癪に障る」
「はぁ?」
「ともかくだ、借りを返すまではお前と行動を共にする。後、お前が私を助けた理由を知りたい。
なぜ、私のような敵を助けたのか? 理解できるまではお前とは行動を別にはしない。
そして、その怪我が快方に向かったらもう一度私と戦え。今度は邪魔の入らないようにだ」
殺し合いを止めるといったわけでもなく、抗うといったわけでもない。
ただ借りを返す、答えを見つける。それ以外に他意はない。
それに設子はあくまでフェアに小太郎と決着をつけたいと思ったのだ。
ただ借りを返す、答えを見つける。それ以外に他意はない。
それに設子はあくまでフェアに小太郎と決着をつけたいと思ったのだ。
「暗殺業をやってるくせに変なところで律儀なんやな……」
「私の心持ちだ。フェアに戦ってお前に勝つことで私の価値は上がるし、私の強さは確かな形で証明される」
「私の心持ちだ。フェアに戦ってお前に勝つことで私の価値は上がるし、私の強さは確かな形で証明される」
そうやって設子はこれまで生きてきた。人生の殆どを占めている暗殺の信条として掲げながら。
自分の価値を組織に認めさせるために。私はまだ役に立つんだということを言外に突きつけてきた。
それはこれからも変わらない。
自分の価値を組織に認めさせるために。私はまだ役に立つんだということを言外に突きつけてきた。
それはこれからも変わらない。
「まあええわ。その約束、確かに受け取った。とりあえず、どこか落ち着ける場所に移動した方がええ。
こんな道端で話しているのもなんやしな。近くの家にでも入ろうや」
こんな道端で話しているのもなんやしな。近くの家にでも入ろうや」
腹の手当を終えた小太郎はひょいっと立ち上がって近くの家へと歩き出した。
怪我のためか少し動きが鈍いが、きちんとした足取りで前に進んでいる。
設子もその後を付いていく。
再び無言の空間が生まれる。コツコツと地面を踏みしめる音だけが辺りに流れる。
怪我のためか少し動きが鈍いが、きちんとした足取りで前に進んでいる。
設子もその後を付いていく。
再び無言の空間が生まれる。コツコツと地面を踏みしめる音だけが辺りに流れる。
「……お前、私のことを信じてるのか?」
「当然。姉ちゃんが言ったんやろ」
「私が嘘を言っているとも取れるんだぞ? そんな約束はあっさりと嘘にするかもしれない……
そうやって油断しているうちに後ろからグサッて刺すとは思わないのか」
「当然。姉ちゃんが言ったんやろ」
「私が嘘を言っているとも取れるんだぞ? そんな約束はあっさりと嘘にするかもしれない……
そうやって油断しているうちに後ろからグサッて刺すとは思わないのか」
小太郎は歩みを止めて振り返る。
そしてにやっと笑いながら。
そしてにやっと笑いながら。
「設子姉ちゃんはそんなことせえへんって信じてるから。理由はそれで十分やろ?」
今の設子にとって一つだけ確かなことは。
小太郎の言葉が、胸に強く響いた。
それだけは偽りのない真実だった。
小太郎の言葉が、胸に強く響いた。
それだけは偽りのない真実だった。
【B-1/劇場/一日目・早朝】
【長沢勇治@キラークイーン】
【状態】最っっっっ高にイライラ
【装備】コルト M4 カービン(0/30)
【持ち物】支給品一式、予備マガジン、献身@永遠のアセリア、スティンガー×12@魔法少女リリカルなのは
不明支給品0~2
【思考】
0.人を殺したい、今すぐに。
1.優勝を目指す。
【状態】最っっっっ高にイライラ
【装備】コルト M4 カービン(0/30)
【持ち物】支給品一式、予備マガジン、献身@永遠のアセリア、スティンガー×12@魔法少女リリカルなのは
不明支給品0~2
【思考】
0.人を殺したい、今すぐに。
1.優勝を目指す。
【B-1/一日目・早朝】
【手塚義光@キラークイーン】
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、出刃包丁、アルベール・カモミール@魔法先生ネギま!
【思考】
1.今は乗らない。ただし殺しに躊躇はない
2.武器が貧弱な現在は守りに徹する。
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、出刃包丁、アルベール・カモミール@魔法先生ネギま!
【思考】
1.今は乗らない。ただし殺しに躊躇はない
2.武器が貧弱な現在は守りに徹する。
【B-1西部/一日目・早朝】
【真田設子@恋する乙女と守護の楯】
【状態】疲労(大)
【装備】
【持ち物】支給品一式、不明支給品0~1(武器はなし)
【思考】
基本:犬上小太郎に借りを返し助けた理由を知りたい。それを済ませ、小太郎の怪我が快方に向かったらもう一度戦う。
1.小太郎と共に行動。
2.銃が欲しい。
【状態】疲労(大)
【装備】
【持ち物】支給品一式、不明支給品0~1(武器はなし)
【思考】
基本:犬上小太郎に借りを返し助けた理由を知りたい。それを済ませ、小太郎の怪我が快方に向かったらもう一度戦う。
1.小太郎と共に行動。
2.銃が欲しい。
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
【状態】疲労(大)、脇腹に銃創(応急処置済み)
【装備】
【持ち物】支給品一式、お菓子セット@現実、確認済み支給品0~2
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1:落ち着ける場所に移動。
2:那波千鶴との合流。他は後回し。
【状態】疲労(大)、脇腹に銃創(応急処置済み)
【装備】
【持ち物】支給品一式、お菓子セット@現実、確認済み支給品0~2
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1:落ち着ける場所に移動。
2:那波千鶴との合流。他は後回し。
【B-1南部/一日目/早朝】
【ネリネ@SHUFFLE!】
【状態】疲労(中)
【装備】
【持ち物】支給品一式、確認済み不明支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1: くりむをつれて逃げる。
2: 知り合いとの早期の合流。
【状態】疲労(中)
【装備】
【持ち物】支給品一式、確認済み不明支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
1: くりむをつれて逃げる。
2: 知り合いとの早期の合流。
【桜野くりむ@生徒会シリーズ】
【状態】疲労(中)
【装備】
【持ち物】支給品一式、確認済み不明支給品1~3
【思考】
基本:????
1:殺し合いは本当?
【状態】疲労(中)
【装備】
【持ち物】支給品一式、確認済み不明支給品1~3
【思考】
基本:????
1:殺し合いは本当?
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